第1話 魔族というものは
今、私は空を飛んでいた。
魔王と共に。
今ごろ、みんなは心配して…。
「お前、静かなんだな。」
「……。」
「それとも…怖くて声も出ないのか?」
愚弄なのか、本当に心配しているのかわからない。
「―――さいよ…。」
「ん?」
「私を早く殺しなさいよ…っ!」
覚悟もできている、父上やみんなに負担をかけるのであれば私は…。
「…あのなぁ。俺がそんなことするわけないだろ。」
「……え?」
魔王ならぬ言葉を聞いて、私は固まった。
あの悪逆非道な魔王からは考えられない。
「俺はひどいこと…はやったことはあるが、200年も前のことを言われてもな。」
「???」
200…?
「ほら、ついたぞ。」
魔王城は薄暗くなく、むしろきれいで、私の王城とおなじくらいだった。
「お前、名前は?」
「し、シーク・リノリブよ。」
「そうか。俺はブレッド・グレッグだ。」
……って何自己紹介してんのよ。
「これからお前はこの城の中で生活をしろ。」
あ、そうそう、そんな感じ…
「俺が許可するまでだ。外は危ないからな。」
………。
「ミリア」
パンパンと手をたたくとメイド姿の悪魔が出てきた。
「部屋まで頼む。」
「かしこまりました。」
「え、え。」
部屋?もっと檻みたいなとこじゃ…。
「それとも、牢獄のほうがよかったか?」
「魔王様。」
「冗談だ。」
…魔王も冗談言うんだ…。
「…ねぇ、ミリアさん。」
長い廊下を歩いている間、話しかけた。
「なんでしょうか?」
「ミリアさんは私を殺さないんですか?」
さんは目を見開き、それから笑った。
「ふふっ。面白いこと聞きますね。200年前だったら今、あなたは生きてすらないですよ?」
また、200年前…。
「人間は理解してないのですよ。昔のままの情報。まぁ、それだから変わってないのですけど。」
「変わってない…まぁ、社会的には変わってないですね。」
「技術だけが上がってる、でしょう?」
「えぇ。」
「今の魔王様は変わられました。見てわかるでしょう?」
「まぁ…。」
「いいですか?私たちは仲間…いえ、家族です。あなたもその一員。今すぐとは言いません。理解してもらえますか?」
優しく笑った。彼女が悪魔なのか天使なのかわからなくなってきた。
「今日は休みなさい。疲れたでしょう。」
「ここが私の部屋…?」
普通…いやむしろ豪華だ。
「疲れたでしょう、ゆっくり休んでください。」
ふわりと笑った彼女を見て、私の心はぐにゃりと乱した。
「ん…ぁ?」
見知らぬ天井、見知らぬ部屋…。
あぁ、そうだ。昨日連れ去られて…。
「……お風呂入りたいなぁ。」
『入りますか?』
「ほわぁぁ!?」
ひとりごとのつもりが聞かれて…というか、どこから声が…。
『どうしますか?』
「うっ……。い、いいですかね?」
『よくなかったら、聞きませんよ。』
「い、いただきます…。」
私は着替えて、廊下に出た。
「おはようございます。シークさん。」
「お、おはようございます…。」
「ごめんなさいね。安全のために声だけは聞こえるようにしているの。」
「び、びっくりしましたよ!寝言…変なこと言ってないですよね…?」
「どうでしょうか。」
いたずらな笑みを浮かべたミリアさん。やっぱり悪魔だ…。
「それにしても、昨日は遅くに寝たでしょう。5時ですよ。早起きなんですか?」
「うちのメイドが5時起床なんですよ。世話される側として申し訳ないのですよ。」
「…!あなたはお優しいのですね。」
「よく言われます。自分では当たり前なんですけどね。」
「だからこそ、ですよ。さぁ、ここです。」
更衣室に入り、服を脱いで、扉を開いた。
「やっときたー。って、人間のお姫様じゃん!」
「「えっ!」」
ぞろぞろとメイドたちがが、近くに寄ってきて、気づいた。
「ひぁ!?」
「シークさん?」
思わず声を上げ、顔を隠した。
「一つ、いいですか?」
「はい?」
「…魔族って、混浴なんですか…?」
「もしかして人間は別々に入るのですか?」
こくりとうなずいた。
「すみません、今までそんなことは知らずに…。すぐに別のところに…。」
「いえ、大丈夫です…。」
これから先、ここで暮らすことになる。慣れなければ、いけない。
「言ってやって―。男子なんて、ろくでもないやつばかりだしねー。」
「ほら、男子あっち行け―!」
「ひっでぇ。はいはい、行くぞー。」
「すみません。」
「なぁに、こっちのルールにつき合わせてんのは俺らだ。文句なんかねーよ。」
カッコいー!
それから、魔界での生活が始まった。
メイドたちや執事たちが休憩時間にやってくる。
人間界や魔界の話をしたり。
はたまた、ボードゲームをしたり。
不安は少しずつ薄れていった。
だから。
「いいのか?」
「自分が決めたことです。文句もないです。」
「わかったよ。」
グレッグに頼んだことがあった。
「皆、集まったな。今日は新人を紹介する。ただし、見知った顔だがな。」
「ここで働くことにしました。シークです。」
サプライズだから驚くこともあっただろうがさすがは魔王のメイドたち。笑顔で迎えてくれた。
―――で。私はメイドたちに囲まれた。
「シークちゃん!なんでメイドなんか!」
「そうだよ!強制させられてない!?」
「そんなことないですよ。ずっと部屋にいるのが暇だからですよ。」
「…かっけぇ…。」
「そ、そんなことないです。」
「かわぇー。」
「あなたたち。」
「はいはーい。行きますよー。」
ミリアさんの一声でみんなが解散していく。
ミリアさんはメイド長。この1週間、しご…訓練してもらいました。
部屋の掃除、料理、片付けなど様々で基本だが、教わることはたくさんあった。
「まさか、あなたがメイドなんてするとは思わなかったわ。きっと、信用してくれたのかしら。」
去っていくメイドたちを見ながらミリアは言った
「信用ですか…。どうでしょうね。」
「おや、ひどいですね。」
分かってるくせに。
「さぁ、初仕事ですよ。行きましょう。」
「えぇ。」
どう…でしたでしょうか。
やっぱりわかりにくいところが…。
とにかく、これを読んでいただいてありがとうございました。
また出したいと思います。
よろしくお願いします!