表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

勇者キーワード

勇者が子供だった

作者: 仲仁へび



 勇者様が子供だった。


 世界中で有名なあの勇者様が。


 とても信じられないかと思うが、魔王を倒して各国の王から賞賛されて、年上の美女を何人も侍らせているという、ハーレムなあの勇者様が。


 各地で頻発するモンスターをいつも即座に討伐しているというあの勇者様が。


 一年前に全ての魔法を習得したという、あの勇者様が。


 誰も対等に戦えないという、理不尽な強さを持つ勇者様が。


 そんなものなら、普通もっと年をとっていると思うだろう?


 なのに、子供だった。


 十歳未満のお子様だった。


 一体、どういう事だ?


 勇者様のお忍び姿を偶然目撃しちまったんだが、めっちゃ子供だったんだが。


 まじで、俺は何を見たんだ?


 思えばおかしいなと思う点はあった。


 誰もが見惚れる美女を侍らせているらしいのに、誰とも恋仲になっていないようだし、浮ついた話がない。


 侍らせる、というより近くにいる美女は勇者様より年上ばかりだから、熟女が好みなのかと噂されているが、年齢を考えれば納得だ。


 それに、各国の王が褒美として何かをあげようとしても、勇者様がもらったのはお菓子だけだったという話がある。


 欲が無くて、謙虚で、色恋には興味のない人なんだろうって話だったが、子供だったのなら納得だな。


 功績が多い事は、長い修練を積んだ事だと思っていたけど、天才だったならその必要ないよな。


 普通なら長い時間かかるから、一般常識に照らし合わせて、それで思いこんでいた。


 これっていいんだろうか。


 俺達子供に戦わせちゃってるよ。


 いいんだろうか。


 うわあ案件なんだが。


 人としていいんだろうか案件なんだが。


 俺、まだ独身だけど、これから先いいお嫁さん見つけて、子供生まれた時、まともに子供の顔見れるかな。





 国民に犠牲を強いるような世界にしたくない。


 そういった各国の王様の演説を聞いたのは1年前。


 魔王が暴れ始めた時、各国で王様になった人たちが、不安がる国民に演説した事があった。


 その時は立派な王様たちだと思ったよ。


 こんな王様なら、俺達のてっぺんを任せられるって。


 それで、無理な徴兵はなくなって楽になったけど。


 だからって、子供に押し付けて良いものなのか?


 命のやり取りを、大人にもなっていない子供に?


 まだ満足に自分の判断もできやしないだろう子供に?


 勇者様は、才能があって確かにすごいんだろう。


 様々な功績を残していて、俺達が戦うより、よっぽど良い結果を残せるんだろう。


 でも?


 子供だぜ?


 剣を持って戦うより、棒切れをもってごっこ遊びしてなきゃいけない時期の。


 誰かを守るより、人に守られていなきゃいけない時期の。


 本当にそれで良いのか?







 数年後。


 モンスターが出たぞ!


 村人の声を聞いて、俺は剣を手に取って現場へ向かう。


 俺が組織した、自警団の出番だ。


 ただの一般人である俺にはこれくらいしかできない。


 自分の村を守る事くらいしか。


 俺一人じゃ、世界の在り方を変える事なんてできないけど。


 それでも、少しでも勇者様の負担を減らせるならと思って、モンスターと戦う道を選んだ。


 村の近くのモンスターなら、雑魚ばっかりだし、俺達のような一般人でも頑張ればなんとかなるしな。


 正直おっかないし、危険は少なからずあるけど、子供の背中に隠れる大人にはなりたくなかったんだ。


ーーモンスターが出たぞ!


 ああ、今日は数が多いな。


 でも頑張らなくちゃな。


 勇者様が少しでも健全な子供時代を過ごせるように。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ