6: エドモントンにて
この物語はSFカテゴリーにて投稿中の『光と陰-織りなす夢の形-』のプロローグ(下巻)です。主人公”ヒデ”の視点でソフィアとジュリアのBLANC TWINSが描かれている日記をお楽しみください。
《あらすじ》
1980年代のある夏の暑い日に偶然上野公園で1人の金髪美女に出会う。まるでアニメフィギュアのような容姿のソフィアにノックアウトされてしまった。生まれて初めて情熱を感じるようになった理屈っぽい性格の大学生のヒデ。そして今までろくに1人で国内旅行もしたこともない彼だが、それがきっかけで夢を探すヨーロッパへの一人旅が始まった。ヨーロッパの国々で過ごすとともに異文化や価値観の違い、また真のライフスタイルというものを実感する事になる。しかし、その先には予想もしていなかったことが起こるのであった。さて異文化の果てとは一体どんなことろなのであろうか?
日本での価値観しか知らないヒデは、スイス・フランス・イギリスと放浪しつつその国のカルチャーや価値観の違いを体感し少しずつ異文化を理解し吸収していく。
そしてその異文化の果てには・・・
その先には驚くべきパラレルワールドがあったのだ。ソフィアとジュリアの謎の双子美人姉妹 Blanc Twins との関係が深まり吸い込まれるようにSF体験をしていくのだが…
モラトリアム期間にいる思春期のヒデは『いったい自分の夢のかたちとはなんなのか?』という問いかけに悩みながら自分なりの将来を模索していく。
荒廃したパラレルワールドを舞台に水陸両用の移動ヴィークルであるホバージェットでヒデと一緒に旅をする美人姉妹の妹ジュリア。彼女と一緒に行く先々で戦いに巻き込まれながら“剣姫ジュリア”に惹かれていく。
そして2人はお互い同じ価値観を持っている事に気が付き愛が芽生えていくのだが…
本編も宜しくお願いいたします!
エドモントンは山に囲まれてかなり広いエリアに街が広がっていた。カナダでは都市それぞれが自治を行なっており、かつてのメイヤー(市長)職が都市国家の政治を担っているようだ。予想に反して時間がかからずここに到着できたため早速シティカウンシルセンターに行きこの街の代表に会うことにした。レセプションで要件を伝えると国賓扱いにて代表のミスター・ブラウンの部屋に通された。
ジュリアは稀に見る雰囲気で雄弁に日本代表属氏のメッセージを伝えていた。こんな一面もあるんだと驚き彼女の横で感心していた。そして先方もこのミッションの真意を理解してくれたらしく、是非技術先進国の日本と友好条約を結ぼうという流れになった。カナダでは、やはり、ここエドモントンが衛星都市国家群の中枢になっているようだ。よって国防に関する年度予算などもエドモントンが統括として決定している。ユーラシア帝国から侵略にあった場合、このエドモントンの難攻不落に近い地理的条件が大きな理由らしい。確かに僕らも通過してきたロッキー山脈に守られているから容易に納得ができた。そして1時間近い会合をした中で次なるミッションであるハドソンベイ・ウォーターシティの代表を紹介してもらうことに成功したのだった。ブラウン氏の方からそのメイヤーにアポを取ってもらい早速明日会う運びとなった。
この会合が終わり一旦ホバージェットに戻ったが主役のジュリアはどっと疲れが出たようだ。少し席をフラットにして休んでもらうことにした。確かにこんな役割はいつもはソフィアが担当しているのだから、ジュリアにとっては物凄いストレスだったに違いない。「ジュリア、よく頑張ったね! すごくかっこよかったよ! 君の違った戦いをみた気がするよ。」と労いの声をかけた。「ありがとう、ヒデ。ほんと、普段こんなことしないから実際のファイティングより疲れたわよー」とぐったりしていた。『剣姫にもこんな一面があるんだな』と少し微笑ましかった。ジュリアをこのまま休ませることにして、僕は折角だから駐車場に停めてあるホバージェットを降りて付近を散策することにした。山に囲まれた土地だけあり、少し冷たさがある山風が通り過ぎていき秋の気配を感じることができた。本当にここエドモントンは僕らが慣れ親しんだ都市のように普通の街の造りだ。山の上に位置し標高が高い都市なので災害前の状態がそのまま残っているのであろう。気候も今となってはちょうど良い。人口もカナダでは1番増加傾向にあり首都的な存在となるのも納得ができた。新鮮な空気を久々に吸いながら20分近く散策して戻ってきた。
すでにジュリアは起きてコーヒーを飲んでいた。「大丈夫?」と僕は声を掛けた。「もう大丈夫よ。ありがとう。さあ リカバーできたからハドソンベイに向かいましょう!」、「またあの線路に戻ってウィニペグに行くんだよね?」と僕は確認した。「そうよ。それが1番効率がいいと思うわ。そして湖を抜けて川を下ってチャーチルまで行きハドソン湾に出たいの。」、「わかった。じゃ行こう!」と先ほどの線路まで戻り再度車輪走行ができるように調整し再スタートした。やはり路線の上を走ると楽でもあるし効率が良い。距離はある程度あるのに下り坂のため順調に移動ができてすぐにウィニペグ湖が見えてきた。僕らの行き先はその先のハドソンベイ・ウォーターシティのため、ここには寄らずにレイルウェイから降りて今度はウィニペグ湖から川下りをするようにハドソンベイを目指した。すでにその頃にはジュリアは完全復活していた。
「ジュリア、回復順調だね。もう元気になった?」と声を掛けた。「有り難う! もうさすがに大丈夫よ。慣れない精神的な仕事はすごく疲れるわね。運転有り難うね。」、「僕はこれぐらいしかできないから、ジュリアの役に立てて嬉しいよ。」、「じゃ、このままバドソンベイに向かいましょう!」といつものジュリアに戻っていたので一安心だ。
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