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4: アンカレッジ到着

この物語はSFカテゴリーにて投稿中の『光と陰-織りなす夢の形-』のプロローグ(下巻)です。主人公”ヒデ”の視点でソフィアとジュリアのBLANC TWINSが描かれている日記をお楽しみください。


 《あらすじ》

1980年代のある夏の暑い日に偶然上野公園で1人の金髪美女に出会う。まるでアニメフィギュアのような容姿のソフィアにノックアウトされてしまった。生まれて初めて情熱を感じるようになった理屈っぽい性格の大学生のヒデ。そして今までろくに1人で国内旅行もしたこともない彼だが、それがきっかけで夢を探すヨーロッパへの一人旅が始まった。ヨーロッパの国々で過ごすとともに異文化や価値観の違い、また真のライフスタイルというものを実感する事になる。しかし、その先には予想もしていなかったことが起こるのであった。さて異文化の果てとは一体どんなことろなのであろうか?


日本での価値観しか知らないヒデは、スイス・フランス・イギリスと放浪しつつその国のカルチャーや価値観の違いを体感し少しずつ異文化を理解し吸収していく。

そしてその異文化の果てには・・・


その先には驚くべきパラレルワールドがあったのだ。ソフィアとジュリアの謎の双子美人姉妹 Blanc Twins との関係が深まり吸い込まれるようにSF体験をしていくのだが…


モラトリアム期間にいる思春期のヒデは『いったい自分の夢のかたちとはなんなのか?』という問いかけに悩みながら自分なりの将来を模索していく。


荒廃したパラレルワールドを舞台に水陸両用の移動ヴィークルであるホバージェットでヒデと一緒に旅をする美人姉妹の妹ジュリア。彼女と一緒に行く先々で戦いに巻き込まれながら“剣姫ジュリア”に惹かれていく。

そして2人はお互い同じ価値観を持っている事に気が付き愛が芽生えていくのだが…


本編も宜しくお願いいたします!

そして僕らは予定通り夕刻にアンカレッジに到着した。アンカレッジは僕がスイスに飛ぶ際に北回りで寄った場所でもあるが、そもそも港町であったとは空港からは全く気が付かなかった。ここでは、やはり海抜が上がり元々あった港や商業施設・住宅をも水没してしまい、新しい港が奥にセットバックされていた。そこから山側に向けて斜面を利用した街が再開発されている。この港にもホバージェットが上陸し格納できる設備があるため僕らは格納庫に停車し街にくりだした。連合国内ではあるが、何が起こるか予測がつかないので僕らは一応簡易武装をしている。まずはホテルを探して港前のホテルエリアに向かっているとベイサイドのプロムナードが綺麗にライトアップされ海面にそれが映りこんでいた。そして幾つかあるホテルの中で一番小綺麗な建物に入り空き部屋2つを確保してダブルルームに各々入っていった。


「へー いいね! 港が綺麗に見えるね!」と僕がジュリアに言った。「そうね!綺麗ね。実は私はここもアラスカも初めてなの。今日は久々に2人でゆっくり寝られるわね!」とジュリアはダブルベッドを叩きながら嬉しそうに言った。「そうだね、あれから何だかんだ言2人だけになるときはなかったからね。今夜も同じベッドで寝たいな。」、「もちろんよ!」「そうそう、もう少ししたら、この街の中のバーに彼女らと一緒に食事に行くわね。明日は私達と行く方向が違うから、今日で一旦お別れなの。せっかく久しぶりに会えたのに残念ね。」続けざまに「それと、私達はこれからカナダ内陸のエドモントンに向かうんだけど、ロッキー山脈が遮っていてどのルートで行ったらいいのか? ガルシアのミリタリー仲間も来るらしいから聞いてみようと思ってるのよ。」と付け足した。


そうか次はカナダに行くんだな! 千島列島からカムチャッカ半島そしてアラスカまではそもそもなんとなくイメージが湧いていたのだが、カナダは全くのノーマークだった。太平洋を横断して僕らは今北米大陸にいるのだ。移動が早いため感覚が追いついて行けてない自分がいた。それに僕が好きなのは断然ヨーロッパだから、新大陸は全く興味がなく前知識もまるでなかったのにも気がついた。まるで地理感がないのだ。 


僕らは繁華街に繰り出してガルシア達の行きつけのバーに入った。そこの雰囲気は何となくイギリスのパブに似ている。バーカウンターで楽しげに大声で語り合う人々もいるが、奥にはラウンジもあり僕らはそこに案内された。ローテーブルを囲むようにバーガンディーカラーのチェスターフィールドソファーがコの字型にまわっていた。そしてその場のホストのようにイメルダとガルシアが奥に座り僕らは左側に座ってメニューを見ていた。するとカウンターで呑んでいたガタイがいい2人の男が近づいてきてガルシアとハグし僕らの正面にガッと座わりこんだ。僕らはガルシアに紹介され握手を交わした。彼らはジュリアが言っていた例のガルシアのミリタリー友達でサブマリーン部隊カナダエリアに駐在しているらしい。アンカレッジは彼らのテリトリーでたまにバンクーバーにも行くらしいのだ。


男の1人が「キミ 細くて綺麗だね! 本当に軍人なの?」とジュリアに言った。するとすかさずイメルダが「あんた何言ってるの? 連合軍のBAなのよ!」するとその男が、「マジ! バトルエース??君が? 信じられねーわ! ロボット100体やっつけたんだ!?おっかねー」と驚きを隠せないようであった。またイメルダが「あんたなんか すぐにやられちゃうわよ! 気をつけなさいよ!」「そうそう今日はその綺麗でお強いジュリア様があなた達に聞きたいことがあるんだよ」、「何何? 彼女いるとかー?」と茶化して笑っている。するとジュリアが全く彼らのノリに合わせずにいつも通りの口調で、「ここからカナダのエドモントンに行きたいんだけど、どういうルートが一番いいの? 移動手段はホバージェットよ。」と簡潔に言った。男が「なるほど、エドモントンね。ロッキーがあるからあまりルートはないんだよな。俺らが一番使うのが、まずは海沿いにバンクーバーに行って、そこから山道を抜けてエドモントンへ行くのがいいんじゃねえかな!?」ジュリアが、「その先のハドソンベイ方面に行くには?」と被せるように聞いた。「あっち方向は、色々とルートがあるんだが、ホバージェットだったら、サスカチャワン川を下ってウィニペグ湖まで行ってそこからまたネルソン川を北上すれば着くぜ! まあ平地だから陸路でもいけるけどな。」と教えてくれた。「なるほど。じゃやっぱりひとまずバンクーバーに行くのがいいのね。」とジュリアが軽く確認した。「俺らはそれをお勧めするぜ!」と2人の男が口を揃えて言った。「わかった。有り難う!」それでこの会話は終わった。


オーダーしたタパスとワインが運ばれてきた。「ガルシアがここの赤ワインうまいんだぜ!飲もうぜ!」と久々に再会した友人達と陽気に盛り上がろうと僕らにも勧めた。そしてイメルダがハウスワインの大きなボトルを僕ら全員に注いでまわり、男らがスペイン語で「チンチン!」と大声で言ってみんなで乾杯した。さらに色々なタパスがも運ばれてきたので僕らは呑みながら摘んだ。確かにワインもタパス料理も美味しい。もう一人の男が、「にいちゃん、羨ましぜ!こんな美人の姉ちゃんと一緒に2人だけで旅行できるなんて。俺らも一緒に行きたいぜ!」と僕に向かってニヤけて言った。イメルダが「いい加減にしなさいよ! 絡むのは! この人達はアンタらとは系統が違うんだからね!」と冗談ぽい口調で嗜めた。ガルシアも会話に入ってきて、スペイン語で男3人だけの会話に誘導していってくれた。彼ら2人はガルシアにガールハントの武勇伝を赤裸々に話しておりテーブルを叩きながら大声で楽しそうに盛り上がっていた。イメルダが僕らに体を向けて「男って単純でいいわねー!」と言いながら僕ら3人で話をする姿勢になった。僕が「ジュリアがBAで強いのはわかっているけど、BAってあんな強そうな大男達でもビビるんだね?」と、するとイメルダが、「そりゃそうよ。ジュリアは格が違うからね。あいつらだったら簡単にジュリアに1発で切り落とされちゃうわね。」ジュリアも「まあね。男達は筋肉はあるけど動きが遅いから簡単ね」と謙遜もせずにぼそっと言った。「ねえイメルダ、この前ジュリアは男達に絡まれて素手で撃退したんだけど・・・」と純粋に疑問が出てきて聞こうとしたら「当たり前よ! 素手でも強いわよー!!素早いパンチに回し蹴りの連発とか すっごいわよ!」、「知っているよ!目の前で見たからね。かっこよかったよ! ねえ師匠!もう一度見たいな。」とジュリアに向かってニッコリと言った。「今度チャンスがあればね!


それはそうと ヒデも剣の訓練するのよね? 明日から少しづつ始めない?」、「わかった、ジュリア師匠! 何もできないけどよろしくね! でもお手柔らかに!」、「まず私が剣の振り方の型を見せるから、それを真似してみるといいと思うわ。」という真面目な会話になっていったので、イメルダが、「ちょっとジュリア! 2人だけの会話はいつでもできるんだから、今は私と楽しい話しましょうよー」と抱きついてきた。ジュリアもニコッと笑い、「あなたは、あの索敵レーダーを届けたらどうするの?」と聞くと、「そうねー これからの戦況にもよるけどね。今のところはこのエリアでは帝国軍の派手な動きはなさそうね。これからどうなるのかしらねー」と人ごとのように答えた。ジュリアも「終わったらまた一緒に冒険したいわね!?」とハグして2人は本当に仲良しのようだ。ジュリアが、「ねえ、そういえば、イメルダ。大西洋に浮かぶアトランティスって聞いたことある?」、「少しね。なんだか、古代からあって、聖人が王様になる国でしょ? でも、なかなか上陸できないって聞くけど。」、「そうらしいわね。そこに行ってみたいと思ってるんだよね。」。「えっ アトランティスへ?本気?」とイメルダが、続けて「行ったきり戻って来れないとかも聞くよ。」と。「半分好奇心 半分お仕事 無地帰って来れたら、また日本で会いましょう!」とジュリアが冗談をいうように軽く答えた。


そして流れとしてはイメルダ達の仕事が終わり、僕らが無事帰れたら日本で合流することになった。ふと隣を見るとガルシア達は3人で盛り上がっていた。彼女ら2人も顔を寄せ合って何やら小声で話しているようだ。僕はこのバーの中を見渡して人々を観察していたのだが、スペインの地下レジスタンスの環境とは全く違っていると感じた。向こうはまさに張り詰めた戦場という状況下であったが、こっちは戦争の危機感だけがまるで麻薬のように蔓延したある意味楽園に近い雰囲気である。やはり帝国軍は海を跨いでは攻めづらいのか? この世界では、対地対空防衛システムが発達しているから、軍艦をもって国土に上陸しても、ロケットを飛ばしても、迎撃する準備時間さえあれば全て破壊されることになるからだ。その分陸続きの西ヨーロッパでは何かしら局地線が起こっている。しかし何のために他国を侵略するのであろうか? 僕の頭で考えられるのは、領土拡大?地下資源?捕虜確保? しかしユーラシアに位置する帝国領は温暖化により暖かくなっているのだから、酷暑で灼熱の不毛の西ヨーロッパには魅力がないはずだ。地下資源に関してもユーラシア領の方が揃っていると聞く。捕虜?つまり労働力はここでは必要ないと思える。では、何のために? 考えられることは軍部が政権を握っているから、国民統制のために仮想敵国を作って『我々がいないとダメなんだ!』と思わせているのか? 帝国の威信なのか? それとも噂通り地下資源が枯渇して来ているのか? 今更だが戦争の意義が分からず少し不思議な世界だと思っていた。


だが、しかし、現実には再度開戦したのだ。それも資源が不足していると言う噂は本当なのであろうか?

戦争再開に付いてはジュリアはバトルエースとしてどう思っているのだろうか? そして先程ジュリアからいきなり出てきた僕も初耳のアトランティスとは? あの太古の時代に大津波により沈んでしまったという伝説があるあのアトランティスのことなのか?この世界ではまだ存在しているのだろうか?という幾つもの驚きを隠せなかった。しかもなんと『行ったやつは帰れない!?』とかいう場所に僕らは行く可能性があると言うことなのだ。

ふと我に返り隣を見ると、彼らの盛り上がりは頂点に達しており、他のミリタリー仲間も立ち呑みで会話に加わっていた。そして僕とジュリアはイメルダを残して部屋に戻ることにした。


今夜は久々に2人だけの夜になった。アトランティスの話は気になったが、その話は明日に残し、僕らは一緒にシャワーを浴びて裸でダブルベッドに入った。僕は恥ずかしいのだが、ジュリアは裸でも恥じらいを感じないようだ。確かに彼女の体は美しい。まさに人間が最高の美をイメージして創るサイボーグのようだ。この完璧な美しさだからこそサイボーグではないのかと思ってしまったのだと思う。筋肉質ではあるが普段はそれを表面には見せておらず柔らかそうな白い肌で隠されている。全体的なプロポーションもバランスが良く非の打ち所がない。まず顔と頭が小さく上半身は細身であるが、ヒップは少し大きく長い脚の太ももの部分が頭部より少し太くなっているのが僕の壺に入るのだ。胸も大きすぎず小さすぎず丁度よく、よくいう表現ではあるがお椀を被せたような形になっていて形も良い。そんな完璧な身体に無造作なボブヘアーがアクセントとしてノリをつけているんだと思う。目付きもキリッとはしていないのに何故か魅力的なのだ。どこかおぼろげで遠くを見ているような視線のためまるで剣士とは思えない表情なのだ。それなのに全てを見通しているような達観した印象を受ける。まあジュリアを擁護すると、どんなことにも動じない余裕の表情という表現が合っているのかもしれない。


そして決め手はそのボブの長い前髪で左目がほぼ隠れている状態なのだが、そう、全体的な雰囲気はヨーロッパのお伽話のエルフにイメージが被る。僕らはベッドの上に座った。ジュリアの肌から微かに香る石鹸の匂いが好きだ。『そうだ、ソフィアの香りと同じだ。』僕は女性のメイクやフレグランスには全く興味がなく、むしろ気管が弱いので抵抗感すらある。そのため過敏でありデメリットなのかメリットなのかは分からないが、微かな匂いでも嗅ぎ分ける臭覚があるのだ。人間それぞれ個々に持っている匂いがあると思っているが、無意識のうちにその匂いが、『その人が自分に合うのか合わないのか』を判断する材料となっていると思っている。それからするとジュリアの匂いは安心してリラックスできる匂いなのだ。そして僕はこのものすごく強いエルフに奉仕するかのように愛撫した。というより、彼女は体をリラックスして預けてくれるため、まるでマッサージのように彼女の表情を見ながら奉仕するのだった。それはいつしか身体のコミュニケーションに代わり最後には体勢が逆転した。そして僕らはお互いの身体が痺れる快感に酔いしれながら夢の世界へと入っていったのだった。人間それぞれ性癖が違うと言うが、僕の場合五感の中の視覚が8割を占めると感じる。全ての価値判断は『美』に通じるのだ。彼女はこういった時も美しい人形のようで嫌らしさを微塵も感じさせないのだ。そう、言ってみれば美しい裸婦の絵画のようだ。こういうシーンでは、『美』にプライオリティを感じない男性も多いのであろうが、僕にとっては最も重要な要因となる。逆を言うと、少年漫画に付いているグラビア写真には全く魅力を感じない。もしかしたら、ジュリアは僕のそんな価値観が好きなのかもしれないとも思った。


 日の光が差し、港が賑やかになってきたので目が覚めた。ジュリアは珍しくまだ身体を寄せ合ったまま、僕を半分抱き枕のようにして寝ている。寝ている姿でさえも人形のように美しい。思わず頬にキスをした。するとゆっくりと目が開いて「おはよう!気持ちいい朝ね!」と言いながら両腕を大きく伸ばして起き上がった。そして、僕たちはまた一緒にシャワーを浴びてカナダに向けて出発の準備をした。僕は日本から持ってきたピンクのポロシャツにハイゲージのグレーブルーのセーターにデニム、ジュリアもブラックシャツにブラックデニムだった。


 ホテルのカフェで港を見ながらブレックファーストメニューをとった。コーヒーとイギリスのようなカリカリトーストだ。カナダだからだろうか?これは僕の世界で食べたイギリスのトーストのように美味しかった。僕はバターにジャムを付けて、ジュリアはバターに蜂蜜を付けていた。これでヨーグルトとフルーツも食べて出発に向けて準備万端だ。僕らはまるで普通のカップルのように手を繋いで意気揚々と駐機場へと向かった。


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