10: 北半球一周へコンプリート
この物語はSFカテゴリーにて投稿中の『光と陰-織りなす夢の形-』のプロローグ(下巻)です。主人公”ヒデ”の視点でソフィアとジュリアのBLANC TWINSが描かれている日記をお楽しみください。
《あらすじ》
1980年代のある夏の暑い日に偶然上野公園で1人の金髪美女に出会う。まるでアニメフィギュアのような容姿のソフィアにノックアウトされてしまった。生まれて初めて情熱を感じるようになった理屈っぽい性格の大学生のヒデ。そして今までろくに1人で国内旅行もしたこともない彼だが、それがきっかけで夢を探すヨーロッパへの一人旅が始まった。ヨーロッパの国々で過ごすとともに異文化や価値観の違い、また真のライフスタイルというものを実感する事になる。しかし、その先には予想もしていなかったことが起こるのであった。さて異文化の果てとは一体どんなことろなのであろうか?
日本での価値観しか知らないヒデは、スイス・フランス・イギリスと放浪しつつその国のカルチャーや価値観の違いを体感し少しずつ異文化を理解し吸収していく。
そしてその異文化の果てには・・・
その先には驚くべきパラレルワールドがあったのだ。ソフィアとジュリアの謎の双子美人姉妹 Blanc Twins との関係が深まり吸い込まれるようにSF体験をしていくのだが…
モラトリアム期間にいる思春期のヒデは『いったい自分の夢のかたちとはなんなのか?』という問いかけに悩みながら自分なりの将来を模索していく。
荒廃したパラレルワールドを舞台に水陸両用の移動ヴィークルであるホバージェットでヒデと一緒に旅をする美人姉妹の妹ジュリア。彼女と一緒に行く先々で戦いに巻き込まれながら“剣姫ジュリア”に惹かれていく。
そして2人はお互い同じ価値観を持っている事に気が付き愛が芽生えていくのだが…
本編も宜しくお願いいたします!
海上航行で急いでいる僕らの頭上を、カナダエリアから飛び立ったと見える連合の大型輸送機が何機もスペイン方面に向かって通過していった。「ねえ、ジュリア、戦争が始まるとBAの君にも何か軍部から司令が来るの?」、するとジュリアは、「場合によるけど、来ることもあるわね。でも、今回の戦争は長距離ミサイルで牽制している状況だから、まだしばらくは白兵戦にはならないわね。帝国軍は前回の大戦で人間の兵士を大量に投入していたんだけど、その兵士が核爆弾でやられてほぼ壊滅してしまったの。これは自業自得だけどね。だから人間兵士には限りがあって、今はドローンやロボットを大量に最前線に送り込んだ戦いをしているのよ。だからもし帝国からの空爆がうまく運んで、敵がカナダ東海岸に上陸できるシナリオになった時点でお呼びがかかるかもしれないわね。まあでもあくまでも日本は中立だから。」と説明してくれた。
そうこう言っているうちにポルトガルが見えてきた。このままジブラルタル海峡を通過しミハスコスタあたりから上陸するほうが1番効率がいいのだが海峡は海賊の拠点でもある。それを危惧して僕らは平地の割合が高そうな手前のカディス付近から上陸することにした。やはりこの辺りも見渡す限りの砂漠であった。僕らは久々の砂漠を砂埃を上げながら進んでいった。そしてロンダに向けて逆方向の北側から回り込むルートで入ることにしたのだった。ロンダの地下要塞への入り口はこの前出発した南側のゲートのみだからだ。そのゲートに向かって進行している時に、前方よりやはり砂煙を上げて急接近してくるスピーダーが2台あった。ジュリアが、「えっ、あれは、Androidだわ! 信じられないけど 戦闘準備よ!」と叫んだ。運転は僕がして、ジュリアはガリオンをファイティングモードに変えロングソードとスピアー(大和槍のように片側だけ穂がついた槍)を背中に背負い、そして「ヒデ! レーザーを奴らに当てて!」と叫んだ。僕は、2台の中の先頭のAndroidを狙いレーザー砲を発射した。そして運良く当たった。スピーダーはショートして操縦不能となり砂丘に突っ込んでいった。乗っていたAndroidも宙に浮いて物凄いスピードで砂漠に転がっていった。もう片割れのAndroidはそこで猛ブレーキを掛けながらスピンしながら止まった。彼らも武装しており、アーマーを着てブラスターガンとサーベルを持っていた。僕らは彼らの100メートル手前でホバージェットを止めた。ジュリアがヘルメットを装着し、そしてハッチを開けてガリオンとともに勢いよく外に飛び出ていった。
ジュリアから『今レーザーを撃て!』というテレパシーが伝わって来たので、僕はその立っているAndroidに向けてレーザーを撃った。彼はショックで動作が止まり、その間にガリオンが襲いかかかりサイドに付いたブレードでそのAndroidの左足を切断した。その後からジュリアが飛び込んで行き、槍を振り回してそのAndroidの首を切断した。その間僕はいつものように、放り出されたもう1体に向けてレーザーを発射し当たったが、シールドを構えていたためあまり効果がなかったようだ。すかさずガリオンとジュリアが両脇から挟みこんでいた。まずガリオンが襲いかかり、彼はシールドでそれを抑えている。そのタイミングでジュリアが槍を振り回したが、彼はサーベルでそれを振り払い、ジュリアの槍が宙に飛んで地面に突き刺さった。次にジュリアはロングソードを背中から抜き構えたときに、ガリオンが彼の右足に噛みついた。彼がサーベルをジュリア目掛けて振り下ろすその瞬間に、彼女が逆手を取って左側によけながら胴を突いて突き刺さった。彼女が言ったように不思議と敵の動きが事前に察知できるようになったようだ。そしてジュリアがロングソードを抜きながら、左足でサーベルを持っている彼の腕を蹴りサーベルが外れた。ガリオンが太腿部分を噛み切っている間に、すかさずジュリアはロングソードを再度振り上げて彼の頭を切り落とした。
そのAndroidは破壊される前に「俺の他にもまだまだお前らを殺しにくるぜ!楽しみにしてな!」と捨て台詞を残して自爆モードになり爆発したのだった。
ということはこの2体の他にも未来から来ているということなのだろうか? と思うや否やまた同方向から砂塵が見えてきた。今度はもっといる。8体がスピーダーに乗ってこっちに向かっているのが遠目に確認できた。ジュリアが、「ヒデ、操縦して!」と叫んで、指笛を吹くとガリオンも戻ってきた。僕は彼女らがデッキに載ったのを確認してホバージェットを動かしてAndroid達から逃げるモードになっていた。ガリオンはそのままデッキに残り、ジュリアが中に戻ってきた。そしてすぐさま後部のレーザーをオンにし出力を抑えた連射モードにし、後ろから追ってくるAndroid達に照準を合わせている。デッキに残っていたガリオンも尻尾部分に搭載されているブラスターガンで狙っていた。そして2人はそれぞれ発砲して4体づつに当たった。8体のAndroidはスピーダーがやられて、それぞれ転倒して投げ出された。ジュリアは、「ヒデここで止めて! レーザーで援護して!」と言って、ロングソードとスピアを持って再度外に出た。Android達は体勢を立て直しこちらに走って向かってきていた。6体が同じ風貌で、3体・3体の2つのグループになり、最後の2体がそれと違った風貌の3グループ編成になっている。また、ジュリアが、「ヒデ、2番目のグループを撃って!」と言い残して、ガリオンと共に奴らに向かって行った。
ガリオンが凄いスピードで走りながら、1番先頭のAndroidに尻尾のブラスターガンを浴びせ動きが止まった。3、4歩遅れて来ていたジュリアがそいつの首をロングソードで切り落とした。その間ガリオンは2体目に襲いかかり押し倒し首に噛みついていた。彼がそうして戦っている間に、僕は狙いを定めて、2番グループの先頭にレーザーを発射した。当たった! そして慎重に再度狙いを定めて、あと2体にもレーザーを浴びせて3体がフリーズして立ったままになった。ジュリアが1グループの残り1体と剣で戦っている。3、4回お互いの剣がぶつかり合う音が聞こえた。ジュリアがフリーズして立ったままになっているAndroid達を見て、暫くすると再起動するため、一瞬相手から距離を置き背中に装備していたスピアを持ち槍投げのように投げた。そしてフリーズしているAndroidの最初の1体の心臓部分に突き刺さり火花が散った。続けて2体目にガリオンが首目掛けて飛びかかった。ジュリアは交戦中の1体に再度近づき、右からロングソードを振り下ろし、相手がそれをサーベルで受けたが続け様に右足の回し蹴りが彼の後頭部に入った。彼はそれを受けてバランスを崩し前のめりになったのだ。ジュリアはすかさず右に持ったロングソードを時計回りに大きく旋回させてAndroidの首を切り落としたのだった。素晴らしい!
どんなに高度に造られたAndroidであっても、腕力自体は凄いのだが、俊敏性に関してはやはりエンハウンスドには敵わないのだった。そしてジュリアはさらに右方向に飛んでいき、まだレーザーショックから完全に復帰していない最後の個体の胸の心臓部分に剣を差し込んだ。その光景を見ている間に、なんと最後の2体のグループが走ってホバークラフトに迫って来ていたのに気がついた。『やばい!レーザーだと間に合わない!』と思い、すぐにカーゴルームに入り、僕の日本刀を取り出した。カーゴはハッチが開いているため2体が迫って来ているが確認できる。『やばい!間に合わない!』最初の1体がデッキに乗りハッチのエッジに手をかけサーベルで僕めがけて突こうとしながら頭部が中に入ってきたのだった。僕は無我夢中で刀を鞘から抜き腹の真ん中に構えて向かって入ってくるAndroidに向けて思いっきり差し込んだ。ギリギリ間に合いAndroidの腹部にグサっと刺さる感覚があり入り口で止まった。すでに顔が僕の真ん前に来ていたのだが、目が痺れたように上下に微動していた。僕は焦って腰に下げていたブラスターガンを抜き思わずそのAndroid目掛けて数発発射した。ショートしたように見えた。『やばい、こいつらは自爆するんだ!』と頭に映像が浮かび、やつから刀を抜こうとしたがなかなか抜けずに、反射的にAndroidを外に蹴り出した。それは転げ落ちて行ったのだが、もう1体が続け様にサーベルを振りかざしながら中に入ろうとしているところであった。僕にはもう刀がないため焦ってブラスターガンを続け様に5発打ち込んだのだった。彼もショックでショートし動きが止まった。『やばい! このフネが自爆でやられるとまずい!』とまたイメージが湧き、すぐさま運転席に戻り、ホバージェットを全速で前進させた。この一連のイメージでの指示はジュリアからのテレパシーのように感じた。ある程度奴らから離れた時点で旋回しジュリアの方向を見てみるとすでに全てのAndroidを倒した後であった。彼女も自爆モードを恐れてガリオンの背中に跨り僕と反対の方向へ距離を取るために疾走していた。『危なかった!ほんと危機一髪だった。』まさか僕が刀を使うことになるとは全く予想をしていなかったのだった。しかし、あのタイミングでやらなければ、今頃僕がやられていたと思うと背筋が凍ったのだった。ジュリアの顔を見たらやはり彼女がテレパシーを送ってくれたのだと確信した。そして僕は時計回りに大きく弧を描くようにホバージェットを旋回させながら彼女らに近づいていった。同時に2人も近づいて来て奴らの爆発前に無事拾うことができたのだった。
「ヒデ、すごかったわ! 良かった!良かった! 2体もかわしたんだから立派な剣士よ! でも最後の1体がまだ生きているからレーザーで撃って!」とジュリアに言われて、『そうか、やつはまだなんだ!』と認識した。再度後部レーザー砲の照準を合わせて、パワーをマックスにして撃ち込んだ。ショートして立っているAndroidがレーザーを全身で受けて黒焦げになり仰向けに倒れた。「やったー!」思わず僕はガッツポーズで叫んだ。「ヒデ!すごかったわよ。私もあいつらがこのフネを襲っているのを見てハラハラしてたんだけど、助けに行くには距離があって、念は送ったんだけど・・・ごめんね! でもやっつけてくれたから。」、僕が、「ほんと、やばかったよ! とっさにやったから何がなんだか・・・フネがやられるとまずいとだけ思ってたよ。やっぱり君からのテレパシーだったんだね!」そしてジュリアが近づいてきて、僕をきつく抱きしめた。「凄いわ!さすが私が選んだ男の子だけあるわ!」と言いながら、ヘルメットを開けてキスをしてくれた。ガリオンも凄凄まじかった。まさに2人は無敵であった。僕らがこうしてフネに戻った状況で、自爆スイッチが入ったAndroid達は物凄い轟音で爆発し砂漠に粉々に散っていった。ガリオンはカーゴに座り、僕らはフロントシートに一旦座り気持ちを落ち着かせていた。僕はこの時九死に一生を得た感じで放心状態となっていた。
この戦いで分かったことは、確かにジュリアは本人も感じたように敵の攻撃を察知してその1歩先を読んでいた。さすがの高性能Android部隊であっても相手にならない。そして僕にはジュリアのテレパシーが伝わって来たのが分かった。僕ら3人は凄い密接に連動し合ったユニットとなり、未来から来た高性能Androidを10体も撃破したのである。これは紛れもない事実である。その時、アトランティスの王からギフトを与えたと言われたのが、『このことか!』と初めて実感できたのである。素晴らしいものをいただいたのであった。
そして僕らは冷静になり考えた。
Android達に『ここに来るとばれていたのはなぜであろうか?』
考えられることを整理してみた。
①たまたまこの周辺に張っていた。
②ソフィアかイメルダに送ったメッセージがハッキングされた。
③日本内にモール(内通者)がいる。
そして現実的な可能性としては、コンピューターを入れ替えたのでハッキングされたのでは?という推察もできるが・・・
いずれにしても、すでに合計11体のAndroidが未来から送り込まれているのだ。これは尋常ではない。またさらに未来からAndroidが来る可能性もあると思うと、すでにこの世界は安全ではなくなってしまったのだ。ロンダでホバージェットを修理してもらっている間に、色々と今後の動き方を考えることにして格納庫に向かった。
ロンダ基地と交信し格納庫の扉が開き無事に到着できた。そして、いつものジュリアのガレージスペースに停めてメンテナンススタッフを呼び蓄電池の不具合を説明した。どうやら蓄電池自体ではなく接続部分がやられたので今日1日あれば直せるらしい。これで一安心だ。またジュリアは到着後すぐにソフィアに通信していた。Androidに待伏せされて襲われたというこの件を話したところ、1時間後に出発する日本からの定期便スーパーソニックジェット機があるので、それに乗ってこちらに来るとの事であった。到着までの所要時間は約6時間だ。その間、僕らは取り敢えずアーマーを着用したまま地下の施設に降り食事を取ることにした。そして前回の滞在時にも利用したバーにてピザとコーヒーを取った。「ソフィアが来るって何かあったの?」と僕が不思議に思い尋ねた。するとジュリアは重い雰囲気で語り出した。「さっきのAndroidの襲撃は深い意味があると思うの。それでソフィアにも話したんだけど、ソフィアも緊急事態だと思ったらしく、多分一旦この世界から離れることになると思うの。やはり私達もそうなんだけどヒデの命の保障が難しくなってきたの。多分奴らはどんどんAndroidを送り込んでくると思うわ。何故かタイムトラベルが可能になったんだと思うの。ヒューマノイドよりアンドロイドなどの機械の方がタイムトラベルのショックがないからね。今回みたいに戦闘態勢を取っている時であればなんとかなると思うんだけど、どこに潜んでいるかわからないから不意打ちをくらう場合もあると思うわ。私達はヒデの命を守らなければならない務めがあるから、それは絶対に避けなければならないの。だから残念だけど一旦ヒデの世界に戻るわ。いいわね! 私達はあなたを絶対守るから!」
なるほど、そんなに切羽詰まった事態になっていたのかとやっと状況が把握できた。そのバーではジュリアと最後のおさらいとして今回の冒険の思い出話をしていた。本当に生きている実感がして命の危険があったにも関わらず不思議と楽しかった。やはり一番の出来事としてはアトランティスだろう。わずか1日の滞在ではあったが自分の中の何かが変わったと思う。松果体と言われる部分が活性化してきているのかもしれない。ジュリアも今回の戦闘時にそれを確認できたようだ。相手の動きが予知できるようになったとか。僕は、いわゆる千里眼の能力も限定的でもいいからアップしているといいなと思った。ただ現状況では確認できず・・・また果たして何の役に立つのかも不明である。
「ねえ、ジュリア、一旦帰国しなければならないことはわかったんだけど、戻ったら僕らはどうなるんだろう?」、「そうね・・・いきなりの展開だから全く考えてなかったわね。ヒデだけではなく私達も狙われているの。私達の未来社会では、私達のようなエンハウンスドヒューマンは、彼らメイルAndroidにとっては宿敵で絶滅させなければならないスピーシーなの。未来社会にも得意分野別にあと数人しか存在していないの。私達はヒデも知っての通り過去を未来にとってより良い状況に持っていくミッションもあってここにタイムトリップしてきたこともあるんだけど、私達は未来社会の同志のために生き延びないとならない使命もあるのよ。だから今までスイスの田舎で潜んで暮らしていたの。そこに未来を変える可能性を持ったヒデが登場してきたわけなの。取り敢えず一刻も早く元世界に戻ってソフィアと3人でこれからのことを考えましょう。」「それと・・・気のせいだと思いたいんだけど、アトランティスにいる時に、ものすごい津波がきて地球の陸地が飲み込まれるイメージが送られてきたの。」、「えっ ジュリアもそうなの? 実は僕も見たよ。だけどたまたま過去のイメージかなと思ってたんだけど、でも、ここの世界では津波や洪水でアトランティスは海に沈んではいないんだから、よくよく考えてみるとこれから起こることの警告イメージなのかもしれないね。怖いねー わかった! 取り敢えず元の世界にみんなで避難しよう! それから色々考えようね。」と僕もやっと納得できたような気がした。
しかし、もしそのお告げのように、かつて僕の世界で大津波により沈んだと言われているアトランティスのように、ここの世界が同じように沈んだとしたら・・・ここまで栄えてきた国家や文明は一旦リセットされるわけであるし、この世界はどうなるのだろうか? アトランティスの王が御伽話のように自然災害をコントロールして大津波を起こすのか? それとも恐竜たちが滅んだように隕石が地球に激突するのか? やはり一旦ここから逃げるのが1番自然であると思えた。
僕らはソフィア到着まであと約5時間あるため荷物整理にホバージェットに戻ることにした。ジュリアにとってみれば一緒に戦った戦友ガリオンとのしばらくのお別れとなるのだが、ここで津波にやられると不味いため一旦異世界の入り口まで避難させることにした。そして、武器類はこの世界に来たときに身につけたロングソードとアローにブラスターガン2丁のみを残してカーゴルーム内の武器庫に片付けた。そして僕らは最後の時を過ごすかのようにシートをリクライニングし冒険の締め括りのようにくつろぐことにした。「このホバージェットは最高だったな。また戻って来て一緒に冒険できるといいな。ありがとう。」と僕は2度と会うことができない可能性があるホバージェットに独り言のように語りかけて小声で言った。
するとジュリアも、「一旦お別れね、残念ね・・・最高の乗り物よね。ヒデの世界もキャンピングカーはあるけど、ちょっと違うのよねー まずかっこよくはないわね。海も移動できないし。そうそうあのマーメイド・アイランド もう1度行けなかったわね・・・最高の島だったわ。またこの世界に戻れたら絶対に行きましょうね!」と僕らは思い出話を噛み締めながら今回の冒険を振り返り記憶に留めるようにしていた。そのうち僕らはあまりにも脳が疲れていたようでいつの間にかうたた寝してしまったのだった。ソフィアが到着したという連絡で目を覚ました。10分後にこの世界に来るときに出て来た秘密のドアの場所で落ち合うことになったのだ。
僕らは名残惜しいが、僕達の移動住居であるホバージェットに別れを告げ、来た時と同じ格好で荷物を持ちガリオンも連れて歩き出した。ゲート前につき暫くするとソフィアが大きなリュックを背負って現れた。僕とジュリアにハグをしてキスをした。思えば彼女とも久々の再会であった。そして、「私たちが元世界に戻ったあと、こちら側のゲートは一旦クローズされることになったわ。あのAndroid達の脅威が去らないと再び開くことはないの。とっても残念ね。」と下を向いて言った。「でも、日本では、何があっても未来に残ることができるようにAIプログラムの最適化は終わらせてきたわ。」と悔いはないといった風に語った。「じゃ、早速戻りましょう!」と僕ら3人はドアを開けて、来た時の通路を抜けてから門番がいるゲート前についた。門番達は覗き窓から僕ら3人とガリオンを確認してドアを開けた。すると来たときに居た同じ男性の門番達が姉妹に親しそうにハグして、ガリオンには驚いていたが『早く行きなよ!』という仕草をした。そして僕らはアーマーと武器を外し、ジュリアはガリオンを武器庫に連れて行き、プロテクトモードというガリオンが自分を保護し水の中でも生きていけるモードにして眠らせたのだった。もし彼女がこの世界に戻って来る時があれば、それまでガリオンは生きているということになるらしいのだ。彼女はまた共に過ごすことを誓って涙を流しながらガリオンに別れを告げた。僕はこの時初めてジュリアの涙をみた。
そして僕らは出口前に集まった。ソフィアが、「ヒデ、行くわよ! いいわね。私達はE Hだからあまりショックは受けないんだけど、ヒデの場合は初めてだし戻るときにはかなりすごいショックがあると思うわ。」、「わかった。頑張るよ。」とは言ったが不安ではあった。まずソフィアが、そしてジュリアが僕の手を繋いで、時空の歪んだゲートに入っていった。
さてさて、一体どうなるのでしょうか??
次回は最終回となります!