侵略-2:強襲型、始動 (後編)
とは言った物の、やはり始めての強襲型刺客…以降、アサルトと呼称する…を放ったのだ。
改善点も多く出てくるだろうし、無理な調整がアサルトの活動を逆に妨げるかもしれない。
そもそも、上手い具合にセイバーナイツがあのメカジキ型アサルトを見つけられるとも限らないし……
ああ、不安だ。そこはかとなく、不安。これ以上ないくらいに以下略。
「公、そのように落ち着きがないと、下々の者共に見くびられるぞ。」
「グラヴィ侯。今までどちらにいらしたのです?」
「自室にて、思案していた。我らが世界の未来に関して。」
そわそわしていた所に、今まで姿を見せなかった紫の紳士…グラヴィが現れ、落ち着いた口調で私に言う。
確かに、上位に位置する者、常に冷静さを欠いてはならぬ物だとは分かっているが…私は彼ほど、達観していない。
私達の世界の崩壊まで、本当に時間が無いのだ。あと1年弱…それだけしかない。私達がこうしている間にも、世界は刻一刻と崩壊し、民を死に追いやっている。
「公。気持ちはわからぬでもない。だが、今は目の前の事に集中せよ。」
「…ええ。分かっています。」
グラヴィの言葉に頷いた瞬間。普段は偵察用にしか使わないスクリーンが降り、セイバーナイツ達の姿が映し出された。
……何、これ?
「感度良好。今回から、データを収集しようと思いまして。ピートの1人に、カメラを持たせて撮影しております。」
「サンディエ子爵。」
自分の髪を軽く弄びながら言ったサンディエに、どこまでも冷静な…悪く言えば冷たい視線でグラヴィは返す。
私とウィンダートの仲があまり良くないように、実はグラヴィとサンディエの仲も、良好とは言い難い。
ウィンダートの様なあからさまな敵意は流石に互いに向けないが、それでも時々静かに火花を散らしている時がある。
「今回で倒す事が出来れば、記録など必要なかろう。」
「仰る通りですがね、グラヴィ侯。しかし、私は1回目で倒せるなどとは思っていないのですよ。」
「ほう?貴公は随分と自分の部下を信用しておらぬのだな?」
「科学者としては、追試と再現性と言う物が欲しいのでね。偶然に頼る気など、毛頭無いのですよ。」
……バチバチ、バチバチ。そんな音が聞こえる気がする。
2人とも、火花を散らす前に戦いの方に集中して頂きたいのですが。
しかし…改めて見ると、セイバーナイツ…戦い方が、素人じみている。騎士としての教育を受けていない者が、にわか仕込みで戦っている様子が手に取るように分かる。
「喧嘩慣れ」はしているのだろう、ピートの攻撃をかわす動きは、まさにそれだ。だが…「戦い慣れ」をしている訳では無い。動きに無駄が多すぎる。
「これでは、武器の良い的だわ…」
私が彼らの立場ならば、既に勝負は決している。最初の一撃で眼前のピートを斬り払い、次の一撃でアサルトを断ち切る。そして、指揮者を失って瓦解したピート達を、個別に撃破…と言った所だろうか。
しかし彼らは違う。襲ってくるピート達1人1人を相手取り、確実に倒してから次の相手に移っている。
…何と、効率の悪い。
「ピートの数が減ってきたな…」
「確かにそれなりに出来るようですね。しかし…」
今まで切り結んでいたピートが、ざっとその身を引く。
その意味を理解し切れなかったのか、黒い騎士…セイバーダークネスと名乗る方は、軽く首を傾げた、次の瞬間。
元となったメカジキの持つ突進力を生かした、槍による突きが、アサルトから放たれる。だが、その攻撃にいち早く気付いたらしい白い騎士、セイバーライトニングが剣で受け止め、ギリギリで突きの方向をいなす。
成程、慣れてはいないが、弱い訳でもないと言う事か。
「相手がカジキなら…一本釣りだぁぁぁ!」
「普通は延縄漁法だ、馬鹿!…ダークネススラッシュ!」
「ライトニングアタック!」
ザン、と言う音が聞こえてくるような気がした。
突きをいなされると思っていなかったアサルトが、呆然としている間に、ダークネスがその槍を、ライトニングが吻をそれぞれ断ち切る。
そして彼らは止めと言わんばかりに、剣の柄にあった妙な凹みへ、宝珠と思しき玉をはめ込み…
『トワイライト・クロス!』
その攻撃が止めとなったのか。アサルトはサンディエのシンボルカラーである黄色い粉となって、この世界に拒絶された。
「おっと、どうやらやられてしまったようです。」
あまり緊張感を感じさせない声で言いながらも。
サンディエの拳がわなないていたのを、私は見た。
…セイバーナイツ。やはり…
「厄介な、存在ですね……」
やってみようか次回予告~
フレイル:すまないな、ウィン。既に俺のアサルトが動いている
ウィンダート:何で!?今回こそ僕だと思ったのに!
サンディエ:…やはり、アサルトには重大な欠陥があるようですね…
グラヴィ:公?
ブリザラ:…卑怯と言われようと、虐殺者と言われようと…この世界は、頂きます
次回、侵略-3:重大な欠陥
…と、相方にあわせて次回予告なんぞぶちかましてみましたが…うーむ、奴じゃないけど…いります?(読者様に聞くな)
ヒーロー物って、次回予告が付き物なので、やってみましたが…
あとがきの方向性が決まったら、本格的な「予告」か、いつもの「作者のぼやき」になると思います。
それでは次回、「侵略-3」でお会い致しましょう。