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うちのばーちゃんは世界一!  作者: 伊元リョウジ
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第一章ー5・突撃1時間前。

「さて、それでは我らが隊長様の復帰戦だ。せめて敵地まではエスコートさせてもらうよ」

 そういってキムは携帯でどこかに連絡を取る。ここから中東まで最短で行くということは、おのずとどこに電話を掛けているのかも予想はつく。

「よし、今から山に行くよ」

「あの山か。ミツクニは今も元気?」

「引退して息子に跡を継がせてたみたいだけど、アンタが復活するってきいたら自分で運転するって言いだしてる。」

 心配事が一つ増えながら、キムの車で山に向かう。山といっても、ただの山ではない。「鬼が住み、轟音で唸る」とかいう現地の言い伝えにかこつけて、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射装置を山の中腹に作ったバカの住む山だ。



「久しぶりだね。元気だったかい?ミツクニ」

 数十年ぶりにあった大男は、年のせいか少しばかり小さく見えた。しかしその雰囲気は相変わらず底抜けに陽気だ。

「はっはぁ!お前さんが復帰するってのに、バカ息子にその花道を譲るわけにゃあ行かんからな!」

 相変わらず話自分の話したいことしか話さない男だが、昔から全く治らないものだ。すでにあきらめてる。

「場所は中東のクソ野郎の家。ここから何時間で行ける?」

「宇宙からなら50分くらいだな。帰りの足も期待しとけ、世界一ぶっ飛んだ飛行機を用意してやるぜ!」

「期待してる。キム、通信機の調子はどう?」

「良好さ。地球の裏側でも60分の1秒以内にラグを抑える優れもの。多少乱暴に使っても壊れないけど、流石に銃で撃ったら軽く爆発するかも。リチウムイオン電池使ってるんだ」

 スマートフォン程の小さな機械を渡され、それから伸びるイヤホンを耳に入れる。

「・・・感度良好、行ってくる」

「それじゃあレディ、良い旅を」

 キムの軽口に軽く手を挙げ、座席に乗り込む。今アタシが乗り込んだのは、ICBMの先端。核弾頭を載せていたところから、核弾頭を引っぺがして座席を取り付けただけの最高に頭の悪い乗り物。その運転手がミツクニ。世界中どこを探しても見つからない「自家用弾頭(プライベートミサイル)」のドライバーというわけだ。

「さぁて、フライトの時間だぜベイビー!カウント!5!4!面倒だから省略!ヒィー!ハァー!」

 口から泡を飛ばしながらミツクニがスイッチを入れる。爆音の中激しいGを受けながら、もう何十年もすっていないタバコに火をつける。しばらく口の中で煙を転がし、肺の中に流し込む。アタシの、仕事前のルーティーンだ。

「待ってな、マコ」

 そして待ってなクソども。この代償は高くつくよ。


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