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うちのばーちゃんは世界一!  作者: 伊元リョウジ
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第一章ー4・取り戻す準備。

  孫が家に戻ってこないまま3日が過ぎた。一日だけなら無断外泊でであろうかと推測もあるが、二日目も帰ってこなかったために警察に捜索願を出した。世界の中でも人を探す能力はとびぬけているこの国の警察ならばと思ったが、3日目に「上層部の判断により、なぜか捜査が打ち切られることになった」との知らせを受けて、アタシ自身で探すことにした。学校や通学路、マコの生きそうな場所を一通り調べたが、余りにも情報がなくなりすぎている。おそらくマコが通った時間帯の監視カメラの映像がくまなく切り取られているのだ。明らかに大きな組織がアタシの孫をさらった。ここまでわかればやることは限られてくる。






 16:30。アタシは行きつけのバーにいた。なじみの店長と洒落た店内が気に入っている。いつも行くのはマコが寝静まってからだが、今日は別件で早めに来た。

「まだ開店前だけど、何かあったのかい?」

 アタシに声をかけたのは、ここで店長をしているキム。くたびれたおっさんといった風体をしているが、30年ほどの付き合いで、いろいろなものを仕入れている「商人」だ。

「孫がさらわれた。武器がいる。情報もだ。一番上等なのをありったけよこしな」

「・・・伝説の傭兵部隊の隊長様の孫を?命知らずもいたもんだ」

 頬を書きながら、キムがキーボードをたたき始めた。頬を書く癖は、彼が本気で驚いている証拠。情報を取り扱うキムの、あまり見ることのない癖だ。

「あまりにも情報統制力が高すぎて、どこのどいつが攫ったのかがわからない。証言らしい証言も、直接は見ていないが変な家が公園に立ってたとかいうやつだけさ」

「ほう、だとするとそいつは『コレクター』のやつらかもしれないね」

 聞きなれない集団だ。引退している身とはいえ、ごくたまに昔つぶした組織の残党に狙われるくらいの鉄火場には身を置いていたのだが、耄碌してきたのだろうか。などと考えていると、キムが資料の束をこちらに渡してきた。目を通しておく。

「アンタが知らないのも無理はない。コレクターはここ数年で台頭してきた『特殊能力収集集団』だ。なんでも記録上は数百年前から確認していた化け物どもを管理、使役し、超パワーを世界の為に使用するべく結成した・・・なんて表向きにはいっているけど、実態はクソの掃きだめみたいな地獄さ。そこで拷問死した人間も数多くいるって話だよ。それで、その変な家はそこから脱走する常習犯みたいなもんでね。よくその手の話を聞くのさ」

 キムの話を聞きながら、その組織からのマコ強奪プランを練っていると

「ほかの仲間にも声をかけておくかい?特にローズあたりなら喜んで参加しそうだけど」

「キム、気持ちはうれしいが、あの筋肉馬鹿を呼んだら孫の強奪から敵組織のせん滅にプランを変更しなきゃいけない。この資料によれば、世界各地に拠点があって、そのすべてに数万人単位の人間が関わっているんだろう?さすがのアタシも数年間も休まず戦い続けるのは御免だよ」

「逆に数年間でその規模を壊滅させることができると踏んでいるアンタのほうが恐ろしいよ・・・ああ、君のお孫さんだけど、髪の毛が緑に近い金髪だったりする?」

「そうだ、見つかったか?」

 アタシが資料から目を離すと、キムの調べた情報がモニターに映し出されていた。

「どうやら中東の支部に輸送されたようだね。でも特殊能力さえなければどうってことはないはずだ。数日後にはきれいさっぱり怖いことを忘れて戻ってくるさ」

「戻ってきそうにないからアタシがこうしてここにいるのさ。マコは“ジン”の娘だ」

 アタシがそういうと、キムは少し考えこみ

「まさか、アンタに孫ってそういう意味だったのか!?」

「うるさい、アタシだって自分にびっくりしてる。でもね、この数年は悪くなかった」

「そうかいそうかい・・・まぁ、いずれにせよその幸せを奪ったやつらには仕返しをしなきゃね」

 そういうと、キムは何枚かの地図を渡してきた。

「ここが拠点の正確な位置。これは建物の見取り図。ちょっと前に建てた業者から引っ張ってきた。ここにお孫さんは捕まっている。それとこれは脱出するときに使えそうな『開放するとやばい化け物』達の捕まってる部屋。そしてこれが、お待ちどおさまの武器だ」

 キムが取り出したのは、ショットガンとハンドガン。

「USAS-12。わが祖国が誇る20発ドラムマガジン。室内戦が多く予想されるからね。アンタの国のより威力こそ劣るけど、弾切れするよりかはいくらかマシだろう?マガジンは二つ。重いから気を付けて、ってあんたに言うのは野暮か。お詫びにハンドガンはアンタの国のものにしたよ。PL-15。マガジンは5本。もっと欲しいときは現地で調達してくれ。ほかに必要なものは?」

「ナイフを一本。あるならたくさん」

「はいはい、たくさんは出せないけど、10本用意した。特殊な合金を使ってるから切ろうと思えば石だって鉄だって切れるけど、最低でも10トン以上は圧力をかけないと切れないから注意。肉や骨ならアンタでも行けるだろうさ」

「よし、ありがとうキム。支払いはこれで」

 こっちの世界でしか使えないカードをキムに渡し、キムが支払いを済ませる。

「そうだ、これだけ買ってくれたんだ、このまま返すのも忍びない。何か手伝おうか?」

 キムがそう言って笑顔をこちらに向ける。昔馴染み、いや戦友であるキムになら任せられるか。

「よし分かった、オペレーターを頼む」

「そう来なくっちゃ!久々にチーム再結成だ!」

「昔みたいにしくじるのは御免だよ?」

「あの時の話はやめてくれよ・・・僕も若かったんだ」


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