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ゴッド・スレイヤー  作者: 山夜みい
第三章 飛躍
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第十三話 「お前はそうじゃねぇだろ」


静まり返った室内に、ことりと酒瓶を置く音が響いた。

ひっく、としゃくりと上げた女は窓の外に目を向ける。


「……あの子らは、そろそろ着いたかねぇ」


地上の空は薄暗く、先行きの悪い未来を暗示しているようだ。

そんなことを考えてしまう自分に嫌気が差して、テレサはため息を吐く。


「《魂の泉》か……おのれの業を、弟子に背負わせる事になるなんてね」


偵察任務から帰ってきた時のことを思い出す。

ようやく帰ったと思ったら、家の中は荒らされていた。

直感的に、ジークにまつわるなにかが起きたのだと思った。


それでも彼らなら無事だろうとテレサは信じていてーー。

そうして治療院に足を運べば、ジークの引き裂くような悲鳴が聞こえてきたのだ。


(……あの時も、そうだった)


テレサは額を抑えた。

過去の幻想が、忘れられない悪夢が、テレサを苛む。


(葬送官の任務から帰った時、あの子が悪魔に襲われていて……アタシは、間に合わなかった)


ぎゅっと、動悸が激しくなった左胸を抑える。

腹の底から不快感がこみあげてきて、吐き気を催してしまう。


「ごほッ、ごほ、ごほッ!」


テレサは口元を抑え、赤く染まった手を見て顔を歪める。

そして彼女は懐から一枚の写真を取り出した。

輝かしい笑顔を見せる男の、かつて存在した唯一の証を見て、呟きが漏れる。


「なぁ……エヴァン。あんたは間に合わなかったアタシを、許せないだろうけど」


彼を殺した自分を、許してはくれないだろうけど。


「せめてあの子だけは……あの子たちだけは、救われてもいいだろう?」


懇願するように、テレサは言う。

その言葉を聞く者はいない。応える者もいなかった。


「ジーク。せめてあんたには……同じ想いを、してほしくないんだが……ふぅ」


手足は震え、全身から嫌な汗が噴き出してくる。

既にリリアを異空間に閉じ込めてから三日が経っている。

ジークにはああいったが、一週間というのは限界ギリギリの時間だ。


ーー間に合うだろうか。

ーーいや、間に合わせるのだ。


そのために自分は腕を磨いてきたのだから。

だからテレサは再び酒瓶に手を伸ばす、胸を苛む痛みと戦いながら。

弟子の帰りを、待っている。


ーーだからノックの音がした時、まさかと思った。


エル=セレスタの、テレサが滞在している宿を知っている人間はほとんどいない。

ジークなら、冥界に行って三日で帰ってくる事もあり得ない事じゃない。

そう判断したテレサは扉に駆け寄ろうとして、違和感に気づく。


いや、違う。

ジークじゃない。


あの子なら、こんなよそよそしいノックなんてしない。

もっと慌てたように、急ぐようにテレサの名を呼ぶはずーー。


「だれ

【お邪魔するよ】

「……っ!」


誰何(すいか)の声は、最後まで続かなかった。

厳重にかけていた扉が開かれ、透き通った身体をした一人の男が入ってくる。

ぶわッ、とテレサの警戒度が跳ね上がる。


(神霊……ッ!)


「……女の部屋に押し入るなんて、無礼な奴だね」

【おや、そうかい? 鍵が開いていたからいいのかと思ったよ】


さらりとしたエメラルドの髪を揺らす神霊に、テレサは苦々し気に呟いた。


「鍵は閉めていたんだがね」

【ふむ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………」


テレサは咄嗟に脱出経路を探した。

空間を渡る事は出来ない。今、そんな陽力の余裕はないのだ。


窓は、開いてる。

あそこから飛び出せば少なくとも追い込まれはしないがーー


(神霊を相手に逃げ切れるか? いや、無理だ)


外に飛び出せば何があるか分からない。

もし彼の信徒が待機しているなら囲まれる可能性がある。

いや、そもそも。


「あんた、なにが目的だ……?」

【失礼だなー。せっかく神様が降りてきたんだぜ? もっと喜びたまえよ】

「ドゥリンナ様が降りてきたなら、喜びもするがね」

【ははっ! 嫌われてるなー。まぁしょうがないか。ドゥリンナとは色々あったしねぇ】

 

神霊はそう言って。【でもさ】と言葉をつづけた。


【用があるのは君じゃないんだ】


パチン、と神霊は指を鳴らす。


【『表裏流転(パラダイムシフト)』】

「しまーー」


それは、ある神だけが持つ絶対権能。

賢者を笑い、愚者を欺き、己の愉悦だけを高める冒涜者の力。


(アタシの加護が無効化されるッ、その前にーー!)


テレサは陽力消費を考えず、空間を渡ろうとした。


遅かった。


ぐにゃりと、空間が歪んで。

ぼとり、とリリアの身体が落ちてきた。


時間が停止していた身体は、現世への帰還と共に動き始める。

死の理が歪み、彼女は悪魔へ生まれ変わろうとしていた。


「~~~~~~~~~ッ!」


葛藤は一瞬、判断は刹那にも満たなかった。


「《哀れな魂に光あれ(カルマリベラ)》ターリ

【余計なことするなよ】


凄まじい蹴りが、テレサを襲った。

どん、どん、どん、と宿の壁を突き破り、テレサは家屋の屋上に突き落とされた。


「が、は……」

【あーあ。手間かけさせてくれるよね、全く】


リリアの悪魔化は止まっていた。

どういう方法かーー彼女の身体を宙に浮かせる神霊はため息を吐く。


【せっかく面白い事しようと思ってたのに……まぁいいか。これはこれで面白いし】


リリアの頬を愛おしそうに撫でる神霊に、カッとテレサの身体は熱くなった。


「お前、お前、お前ぇええええええええええええええ!!」


激昂し、空間ごと神霊を圧殺しようとする。


ーーリリアは、もう無理だ。


彼女は死んだ。

もう二度と帰らない。万が一の望みは潰えてしまった。


ならば、せめて。

彼女の身体だけは、何としてでもーー!


凄まじい陽力が爆発する。

五十年以上葬送官を続けてきたテレサの、元序列七十五位の実力が発揮された。

空間は歪み、神霊は跡形もなく消滅し、リリアの身体は尊厳を保たれた。

そのはずだった。


「が、は……ッ!」


テレサはくの字に身体を曲げていた。

攻撃を受けたーーわけではない。彼女の身体が、力の発動を拒んだのだ。


(こんな、時に……ッ)


「ごほ、ごほッ、ごほ、ごほッ……!」

【あらら。さすがに時空の魔女も年かな? 身体には気を付けないとねぇ】

「どの、口が……!」


燃え滾る怒りを向けた瞳に、神霊は肩を竦めるだけだ。

そうして彼は、くるりとテレサに背を向けて、


【じゃあ俺はそろそろ行くよ。こう見えても忙しいんだ】

「裏切り者ッ! このクソ神がッ! あんたなんて終末戦争の時に死ねばよかったんだ!」

【あはは! その台詞、もう聞きなれたよ】


そう言って神霊は姿を消した。

彼が宙に浮かせていた、リリアの身体と共に。


ーーなんだ、どうした!?


ーー何があったんだ!?


周囲がにわかに騒がしくなる。

テレサに気づいた誰かが声をかけてくるが、彼女は答えられなかった。

とめどなく流れる涙が瞳を濡らし、激情で胸を掻き毟っていた。


「ぁ、あぁあぁ……ッ」


ーーまた、救えなかった。


ーーまた、間に合わなかった。


「なにを、何をやってるんだ、アタシは……ッ!」


最愛の家族だけではなく、愛弟子の片割れまで失ってしまった。

こうしている間にもジークは命を懸けてリリアを救おうとしているのに。

自分のミスで、彼の行いを無意味なものに変えてしまった。


「すまない……リリア」


テレサは拳を握り、どうしようもない怒りを、地面にぶつけた。


「すまない……ジーク……」


その言葉を聞く者は、どこにも居ない。

テレサの耳に、嘲笑う神の哄笑が響いていたーー。










「どうして……」


呆然と呟きながら、ジークは顔を上げる。

《魂の泉》に囚われたはずのリリアは、どこにも居ない。

確かに手順はあっているはずだ。周りを見ると、困惑した二人の姿が見えた。


「おい、どうしたんだ?」

「お兄ちゃん……? あの人は……」


ジークは首を横に振る。


「居なかった……どこにも」

「え?」


心の中にぽっかりと穴が開いて、暗い靄が立ち込めていた。

《魂の泉》にリリアはいない。そのことがジークに不安のどん底に陥れる。


どくん、どくんどくんと心臓が早鐘を打つ。


あらゆる可能性がジークの脳裏を駆け巡った。

そのたびに、彼は最悪の可能性を考えてしまう。


ーー自分たちが間に合わず、テレサの陽力が尽きたのかもしれない。


ーーあるいは《魂の泉》なんてまやかしで、テレサが嘘をついていたのかも。


ーー本当のリリアはもう、死んでいるのかもしれない。


「ぁ、ぁ」

「お兄ちゃん!?」


ジークは膝から崩れ落ちた。

ずっと張りつめていた心の糸が、ぷつんと切られていく。


助かるはずだった。

助けられるはずだった。


希望があったからこそジークは耐えられたのだ。

アンナを死なせ、リリアまで失えば、ジークは自分の無力さを許せなくなる。


こんな時の為に修業したはずなのに。

もう何も失わないと、決めたはずなのに。


「ぁ、ぁあぁああああああああああああああああああああッ!!」


どうしていつもこうなんだ。

どうしてみんな、僕を置いていくんだ。


母も、父も、アンナも、リリアも。

世界はいつも、ジークから一番大切なものを奪っていく。


「お兄ちゃん、しっかりして、お兄ちゃん!」


ルージュが激しくジークを揺さぶるが、彼の心には届かない。

目の前が真っ暗になって、見えない鎖にがんじがらめになっていた。


どうして僕はこんなに弱いんだろう。

僕がちゃんと死徒を倒しておけば、リリアは助かったはずなのに。


僕のせいで、大切なあの人を失ってしまった。

あの優しい笑顔も。あの心がぽかぽかする声も。触れる肌の温もりも。

全て、取り戻すことが出来ない。


僕のせいで。

僕のせいで。

僕のせいで。


ーーそう、お前は呪われた子だ……。


「ぁ、あうぅ……ッ」


ーーお前と関わる者は不幸になる。言われただろう。存在自体が罪なのだと。


「ち、ちが」


ーー違わない。だってリリアはどこにも居ないじゃないか。


「ぅ、ぁ」


弱くてちっぽけで情けない自分が、耳元で囁いてくる。

十五年間半魔として生きてきた、最悪の記憶ばかり思い出す。


ーーそのうちお前は、ルージュも失うぞ。


「ぁ」


ーーお前のせいで殺す。お前が殺す。お前がお前がお前がお前がお前が


「いや、だ……もう、いやだよぉ……」


とめどなく流れる涙が嫌な風に触れて、身体が冷たくなった。

立つ気力も湧かない。耳元で叫ぶルージュの声も聞こえない。


ジークの心は、奈落へ落ちて












「しっかりしろ、馬鹿野郎ッ!!」











がつんと、頬に衝撃が走った。

きりもみ打ったジークはなすすべなく地面を転がり、花弁が舞い上がる。鈍い痛みが走る頬を押さえながら顔を上げれば、フーッ、フーッ、と荒い呼吸を繰り返すオズワンが居た。


「なに、を」

「なにを、はこっちの台詞だクソがッ! お前はそうじゃねぇだろうがッ!」

「……」


オズワンはジークに馬乗りになった。

襟首をつかんで揺さぶり、真っ赤になった顔で吠える。


「恋人を助けに来たんだろ!? そいつがここに居なかったんだろ!? お前はそれで諦めんのか!?」

「だって、だってリリアは」

「希望が断たれた程度で諦める、お前はそんなちっぽけな男だったのかよ!?」


オズワンは怒っていた。


ーー彼はジークの事情を表面上しか知らない。


それでも、自分が手も足も出なかった神に真っ向から挑んだ男が。

こんなにも無様に泣きわめき、涙を流す姿なんて見たくなかった。

自分が憧れた男(・・・・・・・)は、こんな程度じゃないと思いたかった。


身勝手な想いをぶつけられ、ジークは。


「君に……お前に、何が分かるんだ」


唸るように、オズワンを睨みつける。


「リリアは、心臓を貫かれて死んでたんだ。悪魔化しようとしたところを師匠が助けてくれて……!」

「……」


ふつふつと、怒りがこみ上げてくる。

自分の無力さに対する怒り、理不尽な世界に対する激情……。

そんな八つ当たりめいた怒りを抱えたジークは、オズワンに殴りかかった。


「たった一つ、これがたった一つの方法だったんだ。お前に、お前に何が分かるんだッ!!」

「分かんねぇよクソが!」


がん、がん、とジークはオズワンを殴り合った。

二人はもんどり打って地面で絡み合い、殴り、蹴り、髪を引っ張った。


「おれは、お前のことを殆ど知らねぇ!」

「だったら!」

「でもなァッ!」


ガツンと、尻尾で身体を巻き上げられ、ジークは地面に投げ飛ばされた。

すかさず反撃しようとすると、オズワンは額を突き合わせた。


「お前がッ! 諦めの悪い奴だってことは分かる!」

「……っ」

「世界中で誰が無理だと言っても! お前だけは諦めねぇ! あの神に挑んだ時みてぇになぁ!」

「…………でも、でも!」


殴ろうとした手を力なく下ろし、ジークは唇を噛んだ。

怒りと悲しみがないまぜになって、どうしていいのか分からなくなった。


そんな言葉を貰っても、戸惑うばかりで。

彼女の魂がここに居ない。その事実ばかりが心を苛んでくる。


「リリアが、どこにも居ないんだ……」


俯き、ジークは呟いた。


「ここに居なきゃ、もう……」

「テメェは、そいつの死体は見たのか? 師匠が閉じ込めたっつーそれを?」

「……見て、ない」

「じゃあまだわかんねぇだろうが。クソが。なんで死んだって決めやがる」

「………………」


世界が、理不尽だということを誰よりも知っているからだ。

運命が、厳しすぎる不条理を導くと知っているからだ。


いつだって世界はジークに厳しくて、過酷な運命を押し付けてくる。

あらゆる方法で試練を押し付け、潰されそうなほどつらくなって、ようやく超えても。


「これでもまだやるか」と、問いを投げてくる。


母が、父が、アンナが死んだように。

アーロンに捕らえられたように、コキュートスに襲われた時のように。





「ーー運命、ぶっ壊すんだろ」





「え」


虚ろな瞳を持ち上げると、オズワンは鼻を鳴らし、


「あのクソ神に言ってたやつだ。お前が、言ったんだぜ」


ビシ、と鼻先に指を突きつけ、


「もしもリリアとやらが死ぬっつーなら、そんな運命ぶっ壊せ! 足掻いて足掻いて足掻いて、泥だらけになって取り戻せ! おれはお前の事は殆ど知らねぇけどな、お前がすげぇ奴だってことは知ってる。ガキの分際で神に挑むような、大馬鹿野郎だって知ってる。なら、ならよ。最後まで足掻いてみろや。それがテメェが抱く『漢』ってやつだろうがッ! そうじゃねぇのかよ、あぁん!?」


「……っ」


ガツンと、魂を殴られたようだった。

かつて自分が吐いた言葉を返され、ぎゅっと胸が締め付けられていく。

視界にもやがかかって、熱い涙が零れ落ちた。


「…………リリアは……生きてる、の……?」

「んなもん分かんねぇよ。おれは、決めつけんなつっただけだ」

「もし、居なかったら……」

「『もし』だのなんだのは、そうなったときに考えればいいんだよ馬鹿野郎」

「…………」

「今この場で全部投げ出して、それで解決すんのか。しねぇだろうが。おぉ?」

「…………………………うん」


オズワンの言葉に納得したわけではない。

ただ、噴き出してきた心の闇に呑まれそうな自分が嫌だった。

きっとリリアならこんな時、「立て」と背中を押してくれるだろうから。


(そうだ。まだ、決まったわけじゃないんだ)


ジークは自分を叱咤する。


悲しみに暮れるのはいつでも出来る。

無力感に浸るのもいつでも出来る。


でも、今行動しないせいでリリアに何かあれば……



僕は、僕を許せない。



「ぐす、ふぅーーーー……………………ごめん、オズ」

「謝るなら、そっちの妹に謝るんだな、クソが」


ジークが視線を向けると、ルージュはびくりと肩を震わせた。

涙目の彼女はゆっくりこちらに近づいて来て、


「馬鹿ッ!」


叫んだ。


「お兄ちゃんの馬鹿! なんであたしの言うこと聞かずにゴリラのいう事聞くの!?」

「え、えぇ、そっち……?」

「お兄ちゃんはゴリラに殴られて悦ぶマゾ趣味の変態なの? 縛られて殴ったほうが気持ちいいの?」

「いや、あの、そういうわけじゃなくてね……?」

「もっと、あたしを頼ってよ」


こつん、とルージュはジークの胸に顔をうずめた。


「何もかもに絶望しないで、あたしにも頼ってよ」

「……うん」

「じゃないと、あたし、あたし……」

「ごめんね」


震えるルージュの身体を、ジークはそっと抱いた。

リリアが居なくなって、そんな寂しさを共有できる人が居なくて。

自暴自棄になってしまったけれど、辛いのはルージュも同じだったのだ。


自分のせいだと、自責の念を感じるのはジークだけではない。

むしろ自分がしっかりしなければ、この妹はますます自分で抱え込むだろう。


「……僕、お兄ちゃん失格だね」

「失格じゃないよ……馬鹿だけど、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ」

「そっか」

「うん」


ジークはルージュの肩をそっと押して、


「リリアは、生きてると思う?」

「……分からない」

「……」

「でも、助けたい」

「…………うん。そうだね」


その返事だけで、充分だった。

パァン!とジークは頬を叩き、気合を入れなおす。


「良し。じゃあすぐに帰ろう。テレサ師匠に何かあったのかもしれない」

「分かった。じゃあ

『おぉっと、そいつぁ困るな。せっかくここまで来たってのに』

「え?」


声が、泉に反響する。

不気味な波紋を立てた泉の向こうには、黒フードを被った者達が二人居た。


(その、声は)


忘れられない声。

記憶に刻まれた声にジークは目を見開く。


フードの一人が、頭をさらけ出す。

紫色の肌、鋭く尖った耳、得意げな表情は生前のもので。



「久しぶりだなぁ、ジーク」



ジークを奴隷扱いしていた男ーー。


アーロンがそこに居た。



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