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ゴッド・スレイヤー  作者: 山夜みい
第三章 飛躍
62/231

第一話 神々の会議

 

 ーー天界、円卓の間。


 荘厳な神殿の中、白い大理石の椅子が十二個並んでいる。

 普段は使われていないこの場所には、緊張した面持ちで並ぶ天使たちが居た。

 そこへーー。


 ごごご、と音を立てて扉が開き、一人の女性が入ってくる。

 その瞬間、居並ぶ天使たちはザ、と膝をついた。


 天使長の一人が口を開く。


「偉大なる叡智のお方、アステシア様。拝謁の機会を賜り恐悦至極」


「……」


 アステシアは興味なさげにそっぽ向き、椅子へ向かう。

 冷淡な態度を受け天使長はむしろホッとしたように息をついていた。

 部下の一人が囁いてくる。


(今日は機嫌が良いようですね)


(あぁ、助かった)


 そんな天使たちの態度を知ってか知らずか。

 アステシアは椅子へ座り、本を開く。


「ーーやあアステシア。久しぶりだね」


「……」


「無視? ねぇ無視? 僕、君になんかしたかな?」


 アステシアは本に目を落としたまま言った。


「ソル、うるさい。黙る」


「片言!? 久しぶりに会ったのに!」


「二、三百年程度を久しぶりとは言わない」


「君が神々の会議に出ないからだよね!? いつもサボるのに!」


「…………」


「無視!?」


 はぁーー……と深く長いため息が漏れた。

 彼女に声をかけたのは、円卓に座る一人だ。短めの金髪が輝いている。

 優し気な雰囲気だが、体つきも細く、頼りない印象がある男だ。


 だがその男こそーー。

 六柱の大神が一人、太陽神ソルレリアその人である。


「そんな態度でいいの? 今回の議題は君んとこの子の話になると思うけど」


 ぱたん、とアステシアは本を閉じた。

 まっすぐにソルレシアを見つめ、空色の瞳を細める。


「あなたも、あの子に手を出す気?」


「そんなおっかない事しないさ。ただ、認識を共有しておきたいと思ってね」


「……」


「大体、ラディンギルやイリミアスには接触を許してるじゃないか。僕も仲間に入れておくれよ」


「あれらは押しかけて来たのよ」


 ふん、とアステシアがそっぽを向く。

 それ以上喋る気はないと示す動作。しかし、新たな乱入者はそれを許さない。


「ーー兄者に対してなんて態度か、叡智の!」


「げ」


 アステシアは顔を歪めた。

 どさり、と。対面、円卓の椅子に一人の男が座り込んだ。


「六柱の大神とあろうものが、神々の会議をいつも欠席。あまつさえ天界の運営を投げ出し、読書にふけり、たまに出席したかと思えば兄者に対してぞんざいな態度を取るなど! 恥を知れぇ!」


「……六柱の大神なんて人間が決めたものでしょ、海神デオウルス。そんな事言っていいのかしら」


 アステシアの瞳が妖しく光る。


「ねぇソル。知ってる? あなたの弟なんだけど、自分の部屋に……」


「ちょぉっと待てぇえええええ!」


 デオウルスは汗をだらだら流しながら言った。


「きききききき貴様、なにを、なんでそれをっ」


「あら。忘れたの。私は叡智の女神。私に暴けない秘密はないわ」


 例外はあるけどね、とアステシアは内心で笑う。

 余裕ある叡智の女神に、海神はぐぬぬぬと歯噛みし、


「ま、まぁ、読書にふけるのは仕方ないな。以後、気を付けるように!」


「はいはい」


 アステシアはひらひらと手を振る。

 円卓の間、その端に居た天使長は戦慄を隠せない。


(かつて怒りに任せて円卓を破壊し尽くしたあの(・・)デオウルス様を手玉に取るとは……!)


 デオウルスは六柱の大神の中で最も力ある神だ。

 柔と技、理によって実力を誇るラディンギルと双璧を為す実力者である。

 だがーー六柱で最も恐ろしい神が誰かと言えば、天界中がアステシアの名を上げるだろう。


 再び、円卓の扉が開かれた。


「フーッハハハハハ! 相変わらずだな、アステシア、デオウルス!」


「むさくるしい男がお姉さまを説教するからよ、べー、だ!」


 ラディンギルは高笑いし、イリミアスは舌を出して挑発する。

 先ほどのやり取りを聞かれていたデオウルスは苦い顔だ。


「貴様は相変わらず声が大きいな、武の。そして鍛冶のお前、女神たるもの舌を出すな。下級神に示しがつかんとは思わんのか」


「あたしはあたし、よそはよそ! そんなの勝手にやればいいわ!」


「どいつもこいつも……」


「まぁまぁ。良いじゃないか。こうして来てくれただけでもありがたいよ」


「全く。兄者はいつも甘すぎる。それだからこやつらがつけあがるのだ」


 ソルレリアの言葉に嘆息するデオウルス。

 そしてーー。


「あら、お揃いですの……? わたくし、遅れてしまったかしら」


 美貌の女神が円卓に足を踏み入れる。

 栗色の髪を揺らす、おっとりとした女性だ。


 天使たちは再び跪いた。


「いと麗しき大地のお方、ラークエスタ様。御身の美しさはいつ見ても変わりませぬ」


「あら、あらあら。うふふふ。嬉しい事を言ってくれますわ」


 口元を手で隠した女性ーー地母神ラークエスタに、天使長はうっとりとした笑みを浮かべる。

 抗議の声が上がった。


「ちょっと、あたしにはそんな事言わなかったじゃない! どういう事!?」


「あら。イリミアス。よそはよそ、ではないのかしら?」


「それとこれとは話が別よ! 乙女の尊厳の問題なのよ!」


 傲然と言い返したイリミアスに、皮肉気な笑いが応える。


「感心したぞ鍛冶の。貴様に乙女の尊厳が残っていたとは。少しは恥を知ったらしい」


「なんですってこのブラコン!?」


「だ、誰がブラコンかぁ!?」


「はぁーー……さっさと始めてくれないかしら。私、帰っていい?」


「まだ時間があるなら鍛錬でもしようか! おいソル、ちょっと付き合え!」


「やだよ、君の鍛錬っていつもガチじゃないか」


 やいやい、と言い争う六柱の大神たち。

 おのれより遥か高みに座す神々の様子に、天使長は感動していた。


(三百年ぶりに、六柱の神が一堂に会するとは……!)


 だが、そんな彼の感動も長くは続かない。


 ーー……たん、と。


 静かな音が、響いた。

 その瞬間、水を打ったように静寂が広がっていく。


「友情は尊きもの。じゃが、節操は弁えねばならぬ」


 ザ、と。


 円卓に座っていた神々が地面に降りた。

 一斉に跪いた大神たちに、声の主は告げる。


「此度は世界の命運を変えうる神々の会議。この旨、しかと心得よ」


『はッ』


「座るがいい」


 大神たちはそれぞれ席に着く。

 彼らが開けた道を、一人の老爺がゆっくりと歩いていく。


「ソルレシア、進行は任せる」


「はい」


 天使長は、居並ぶ天使たちは震えていた。

 顔が上げられない。声を聞くだけで魂が揺れている。


(隊長、これが、あの方が……)


(あぁ。私も初めて見る)


 原初の深淵より生まれし混沌の意志。

 始まりの神にして創造する者、世界を生みし者。


『一なる神』ゼレオティール。

 原初の深淵から出る事が滅多にない超越者はゆっくりと席に腰掛けた。


「少し、席が寂しい。此度の関係者を呼ぼうかの」


 たん、とゼレオティールは杖を鳴らす。

 次の瞬間、円卓の空いた席に次々と人影が現れた。


「これで、全員そろったな」


 十二の席、全てが埋まった。


「久しぶりの再会だ。友好を深めたいところだが、早くしないと怒る人がいるんでね」


 太陽神ソルレシアの、おどけたような声が響く。


「まずは最優先の議題を一つ。地上に現れた、半魔についてだ」


 ざわりと、円卓の間にさざなみが立った。

 デオウルスは不愉快げに眉を顰め、ラークエスタは片目を瞑る。

 ラディンギルは口元を歪め、イリミアスは胸を張り、


 そしてアステシアは。


「先に言っておくけど」


 そう前置きし、


「自発的にあの子へ手を出したら、あなた達が抱える秘密を天界中にばらまくから」


「「「…………」」」


 口を開こうとしていた神は黙り込んだ。

 だが、六柱の大神を抑えるには足りない。


「事は世界の命運に関わっている。説明を求めたい」


「そうですねぇ……確かにわたくしも、気になります」


 ラークエスタの言葉に、アステシアはムッとして、


「あなたのそれは半魔として? それとも男として?」


「あら。男として見てはいけないの?」


 二人の視線がぶつかり、火花が散る。


「わたくし、別に秘密にしているようなことはありませんもの、話すならどうぞ」


「あの子はまだ十五歳なんだけど」


「立派な男ですわ。まだ育ち切らない未成熟な殿方を育てるのも、えぇ。わたくし、好きですのよ」


「この年中発情女……!」


「あら、嫉妬? そういえばあなたは万年処女でしたわね。なんでしたら、あなたが手をつけた後でもいいですのよ? わたくしが手取り足取り教えて差し上げましょうか?」


「なななな、何言ってるのよ、馬鹿なの死ぬの!?」


「照れてるお姉さま、可愛い……」


「男なら女の一人や二人、同時に相手にしても平気ですわ。ねぇ?」


 地母神であり、時に美の女神として崇められるラークエスタ。

 その色香に惑わされた男は数知れず、男神たちの間にいたたまれない空気が満ちる。


「ごほん。ラークの言い分はともかくーー。

 ゼレオティール様、僕も気になります。彼は一体何者なんですか?」


 ソルレシアは空気を切り替えるように発言した。


「加護を得て一か月でヴェヌリスを撃退し、その眷属を討滅して見せた。それだけなら有望な新人。前例がないわけでもないですが……ゼレオティール様の加護を宿しても肉体を維持し、さらには冥王配下の死徒まで倒したとあっては、話が変わってくる。前代未聞ですよ。運命の子……亡き予言神メルヴィオの言葉は本当なのですか?」


「……」


 ゼレオティールは黙して語らない。

 太陽神ソルレシアは、父なる神を見つめながら考える。


 ーー運命の子。


 終末戦争初期。

 予言神メルヴィオが最期に遺した言葉を思い出す。


「確か、彼が残したのはこんな言葉でしたね」



 蒼き月が赤く染まりし時、運命の子が現れる。

 その者、蒼きいかずちを纏いて世界に問い、問われる者なり。

 ()に七つの光が宿りし時、光と闇が世界を覆うだろう。


 おぉ、心せよ、心せよ! 

 其は終末の化身! 混沌の申し子なり!

 与えるものが救いとは限らぬ。

 もたらすものが破滅とも限らぬ。


 黒き者とまみえるとき、其は答えを出すだろう。

 白き翼をしたがえ、金色の野を原初の使徒がかけゆく。

 天と地と、あまねく声をとどけん。

 その者、運命の子。

 赤き瞳を輝かせ、漆黒の衣をまといて世界を変える、新たな命なりーー。



『…………』


 円卓に座る全員がソルレシアの言葉に耳を傾けていた。

 予言神メルヴィオが遺した言葉は冥界の神々も含め、全ての神々が聞いているのだ。


「どうなんです?」


 答えを求める視線が、一斉に集中する。

 静寂が広がる円卓を眺め、ゼレオティールは頷いた。


「そうさな。あの子が運命の子かもしれん」


「……!」


「儂が加護を与えたのは本当じゃ。あの子が儂の加護に唯一適合する者じゃったからの」


「ーー恐れながら申し上げます。危険では?」


 海神デオウルスが声を上げた。

 アステシアの刺すような視線に負けず、彼は言う。


「予言によれば、運命の子は破滅をもたらす可能性があると言う。黒き者……恐らくこれは冥王でしょう。冥王と相対した時、もしもそやつが冥界側に付くことになれば……第二の冥王が生まれることになる。また(・・)繰り返すことになるのは、絶対に避けねばなりません」


「ならどうしろっていうの?」


「今すぐ殺すべきだ」


 その場の空気が変わった。

 アステシアは胸の内に発露した怒りを抑え、理性を総動員して問う。


「…………へぇ。ゼレオティール様が加護を与えたのに?」


「世界を滅ぼす可能性があるのなら、致し方ないことだろう。我らが父にも間違いはある」


「……そう」


 ゆらりと、アステシアが立ち上がる。


 ーー……轟ッ!


 彼女の放つ神威に円卓の間が揺れた。


 天使たちは顔を蒼白にさせ、威圧感に耐えきれない下級天使は気絶する。


「もう一度言ってもらえる?」


 そんな者たちなど一顧だにせず、アステシアは首を傾げた。


「誰が、誰を殺すって?」


「必要ならば我が手を下そう。誰もやりたがらないだろうからな」


「私がそれをさせないわ。あなたに出来ると思ってるの?」


「出来る出来ないではない。世界の為に、やるべきことをやる。それだけだ」


 互いに神威を放つ二柱の大神。

 アステシアの声は凍えるほど冷たく、低い。

 天使たちは呼吸を忘れるほどの重圧に怯み、他の神々は面白そうに目を輝かせた。


 だが、


「ーー二人とも、やめるんだ。ゼレオティール様の御前だぞ」


「……ッチ」「……フン」


 太陽神ソルレシアの言葉に、彼らの神威は霧散する。

 真っ暗な闇の中に光が差す、まさに太陽の言葉だ。


「ーーお主らの言いたい事は分かる」


 ゼレオティールが言った。


「あの子が世界にもたらすものが何か……この儂にもまだ分からん」


「……」


「じゃが、このまま何もせずに手をこまねいていれば、闇の軍勢が世界を呑みこむじゃろう」


 カツン、とゼレオティールは杖を突いた。


「人の子が終末戦争と呼ぶ戦いから早五百年。あの子の出現と同時に世界は動き出した。同時多発的に起こった先の大侵攻で、中央大陸では三つの国が滅び、新たな人類は不穏な動きを見せている。北のノーセリア大陸では三人の神霊が大地を殺した。このまま手をこまねいていては、遠からず世界は滅ぶじゃろう。今まさに、闇の時代が始まろうとしているのじゃ」


「しかし……」


 なお渋るデオウルスに、ゼレオティールは苦笑いした。


「お主は実際に会った事がないから分からぬかもしれんな。デオン」


「ならば、会わせてください」


「絶対に却下よ。気に入らないならその場で殺すつもりでしょう」


「……」


 デオウルスは無表情で黙り込んだ。

 世界の為ならば父なる神の命令にも背く、それが彼の答えだ。

 ゼレオティールはため息をついて、


「あの戦いで、儂は大きく力を削がれた。お主らには苦労を掛ける」


「とんでもないことです。あなた様がいなければ世界は滅んでいましたわ」


 ラークエスタの言葉に、他の神々も賛同する。


「そうね、そうよ。じーじが心配する事じゃないわ! ジー坊はきっと大丈夫よ!」


「ま、このオレの弟子だからな」


「そいや、ウチの子が世話してる奴らしいね。ちょっと挨拶してこようかな」


「へぇ……ドゥリンナの子が……わたくし、ますます気になってきましたわ」


「ラーク。あなた……」


 剣呑な目で地母神を見つめるアステシアだが、


「うん。僕も気になったきたな」


「ソル!?」


 太陽神の言葉に、ぎょっと目を見開く。


「あなたまで何言ってるの?」


「だって気になるじゃないか。君たちが、ゼレオティール様がそこまで言う男なんだよ?」


 太陽神は笑って、


「本当に言うほどの男なのかどうか、確かめてみたくなって当然じゃないか」


「……彼はうちの子の、大切な花婿」


 それまで黙っていた女神が、小さく呟く。


「余計なことをすれば、凍らせる」


「「「ナニを!?」」」


「さぁ。何だと思う?」


 二コリ……と笑みを浮かべる女神だが、その顔は仮面のように温度がない。

 ひゅっと、男神たちが思わず股を閉じる。

 男神たちを視界から排除し、アステシアは声の主に目を向けた。


「アウロラ」


 ーー白雪を思わせる、儚げな女神だ。

 心強い味方を得たアステシアだが、かけた声は物憂げだった。


「その、あなたの子は……」


「まだ分からない。運命の子、次第」


「……そうね」


 アステシアは両目を閉じて黙り込む。

 途端、ストッパーが消えて話題が白熱する神々だが、


「今、ジークに手を出すことは儂が許さん」


 一なる神の唸るような言葉で、再び静寂が戻ってくる。


「少なくとも、あの子から接触がない限りは動向を見守る。我らが介入するのは、本当の瀬戸際だけじゃ」


「……分かりました」


 ジークの話題はそれで打ち切られた。

 そういえばと、円卓を見回したラディンギルが首を傾げる。


あいつ(・・・)はどうした? 来てないのか」


「来てないわね。見てもないわ。見たくもないわよあんな男」


「こんな時、嬉々として乗り込んできそうだがな。あの男は」


 ラディンギルは物憂げにつぶやいた。


「……何か企んでいなければいいが」


 神々の会議はいくつかの議題を経て終わりを告げる。

 表向き接触を禁じられた神々だが、その頭は渦中の男でいっぱいだった。

 アステシアの神域に現れた当初は『興味がある』程度だったがーー。


 もはや彼らの胸中は、その範囲を超えている。


(堅物処女のアステシアがあそこまで入れ込み、ゼレオティール様が加護を与え、ラディンギルが弟子を取り、あのイリミアスが武器を作った? そんなもの、気にならないわけがありませんわ。えぇ、えぇ。ゼレオティール様の言いつけは守りますとも。つまり間接的に接触すればいいんですのよね?)


 地母神ラークエスタは「うふふ」と笑顔で本心を隠し、


(やはり我は危険だと思う。さすがに秘密裏に始末することは早計だろうが……むぅ。ゼレオティール様の言いつけがなければすぐに飛んでいくのだが。さすがにまだ脅威と決まっていない以上、我が動くのは……そうだ、眷属を使うか?)


 海神デオウルスは主神の命と己の信念で揺れ、


(どうせ厄介ごとは僕の所に回されるんだし、早めに会いたいよね。ていうかみんな天界の運営忘れてない? 君たちがサボるせいで君たちの眷属が僕の所に仕事を持ってくるんだよ。もう百年ぐらい働き詰めなの分かってる? 人界にはこんな言葉があるらしいね。そう、有給休暇。僕はむしろ悠久休暇が欲しいよ。だからこんな時くらい好きにしていいよね。直接手を出すことはできないけどさ。あの子の方から接触してもらえば問題ないし。加護を与えた子の数は僕が一番だしね)


 太陽神ソルレリアは仕事から抜け出す算段を整える。

 他の神々もまた、どのようにジークと接触するかを考えていた。


 もちろん『一なる神』が彼らの心を見抜けないわけがない。


「……ま、今の儂ではあれらを止められんからの。ジーク。お主に頑張ってもらおうか」


 そんな風に呟き、ゼレオティールは原初の深淵に戻るのだった。

 その背中を、じっと見つめる目には気付かずに。



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