第5話
扉が完全に開き、俺は一歩を踏み出した。扉の向こうは真っ暗で使用中の暗視でもまったく見えなかった。
こんなことは今までに一度もなく、俺は困惑した。
(こんなことならライトを持ってくればよかった)
と後悔するが、暗視スキルを取得後、無意味なスキルで落胆し、無理やり自分を納得させるためにライト不要!失くしたものもすぐに見つかる!なんて自分を慰めていたから、当然そんな準備は必要なかった。
そして俺はもう一度前を向き、じっとその先を見つめる。なぜか嫌な感じはしない。とにかく進もうと俺は歩き出した。
すると、両端にかけられたライトが点灯した。俺が歩くたびに一つ、また一つと点灯していく。
そのおかげで後ろと左右だけではあるが視界が確保できた。すごくありがたい事ではあるが、誰かに監視されているようで不気味だ。
数歩進むと、地面に模様のようなものが見える。罠か?と一瞬疑ったが、よく見ると魔法陣の一部みたいだ。何となくだがこのまま進んでいいような気がしてその模様を避けることなく進む。
そして模様の中心であろう場所まで到達すると洞窟全体が明るく照らされた。眩しさはない。淡く優しい光だ。左右にはモンスターの石像がびっしりと、しかし綺麗に並んでおり、その先、俺の真正面には誰も座っていない玉座があった。とても綺麗に装飾された椅子で、どこか威厳すら感じた。
その瞬間、床の魔法陣が強烈に発光した。俺は驚き目を閉じ、光が収まるのを待った。
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「うわあああぁあぁぁ!」
魔法陣の周りには大量のモンスターが俺に対し敵意剥き出しで威嚇してくる。とっさに逃げようと、振り向くが後ろにもモンスターがこちらを威嚇する。
あぁ、やっぱり罠だったんだ。そう諦めその場にへたり込むが、モンスターが襲ってくる様子はない。
よく見ると魔法陣の中には入ってこれないようだった。しかしEランクでモンスターを倒したことがない俺は魔法陣の中に入ってこれないとわかっていても恐怖で汗が止まらなかった。そんな中周りを見て感じたのは、先ほどまであった石像のモンスターはそこにいなくなり、台座だけになっていた。
周りのモンスターは石像が実物化したものだろう。今は石っぽさはなく、明らかに本物だった。
そのまま玉座に目をやると、一本の剣が立てかけられていた。
【新職業獲得】
【ダンジョンの支配者】
ピコンと効果音と共に、メッセージが現れた。
【スキル獲得】
【ダンジョン構築】【ダンジョン編集】【ダンジョン探知】
俺は、ダンジョンの支配者になったようだ。