第4話
「はぁはぁ」
全力で走っているが、人影がまったく見えてこない。それどころか人の気配も全くない。
一本道なのですれ違えば気づくはずだ。まさか罠に引っかかってしまったのか?そんな考えが頭をよぎる。
しかしここはE級ダンジョン。あのパーティーが低級の罠に引っかかるなんてことは考えにくいし、もし引っかかったとしても、何らかの反応があるはずだ。
じゃあどこに?これだけ走って見つけられないなんてありえない。ありえないが、走るのをやめたら、生きることを諦めたことになる気がして俺は足を止めることが出来なかった。
(ちか・・・し・か)
「えっ」
またあの声だ。もう分かっている。ダンさんの声じゃない。じゃあ誰だ?
「誰ですか?他の人たちはどこへ行ったか分かりますか?」
敵か味方かも分からないが、藁にもすがる思いでその声に返答した。
(何のために力を欲す)
「お願いです!助けてください!どこにいますか!」
継続して使用していた暗視で周辺を見渡すが誰もいない。どうすればいい?焦りと疲労で考えがまとまらない。
足を止めちゃだめだ。とにかく進まないと。返答の無い声の正体を探しつつ俺は前に進んだ。
あれから30分は経っただろうか。洞窟の両端に蝋燭がたてかけられた通路が現れた。最終地点なんだろうと予想できた。
本来最終地点にはダンジョンのボスがいて、討伐することでダンジョンクリアとなる。しかし何となくだがボスはいないような気がした。モンスターが一切出てこない事、Eランク限定という表示、新規ダンジョン、アイアンハートの神隠し。これがEランクのダンジョンで起こっていることに違和感しか感じない。
そういった事からこの先に見えている最終地点にはボスのようなものはいないんだろう。そう感じていた。
じゃあ何があるのかなんて俺には分からない。予想に反してボスが出てくるかもしれないし何にもなくダンジョンを脱出できるかもしれない。しかし、不思議にも足は止まらなかった。怖いよりもワクワクする気持ちが勝っていたんだと思う。アイアンハートの皆とはぐれた時点で普通のダンジョンなら死んでいた。その開き直りがそうさせたんだと思う。
そして俺は大きな扉の前にたどり着いた。
ふぅっと息を吐き、扉に手をかけた。
(力が欲しいか)
またこの声が響く。俺の答えは決まっている。
「力が欲しい!」
(何のために力を欲す)
「・・・先輩を、助けて欲しい!助けるための力が欲しい!」
正直な気持ちだった。アイアンハートがいなければ俺はいなかったと思う。冒険者としての心構えや、ダンジョンについて本当にたくさんの事を教えてくれた。これは他のパーティーの荷物持ちとして同行していた時にも大いに助けられた。ダンさんたちを助けられるなら俺はどうだっていい!そんな気持ちがそのまま言葉に出たんだろう。
ゴゴゴゴゴゴッ
俺を導くように扉が開いていった。