17歳の志願兵
1914年8月4日
「よう!ジョージ!これみたか!?」
高校の親友の一人エレン・コルドバが号外新聞を持って声をかけてきた。
そのくちゃくちゃになった号外に書かれていたのは
「ドイツへ宣戦布告!」と書かれていた。
サラエボでのフランツフェルディナント大公夫妻暗殺に端を発したヨーロッパの情勢不安から遠からぬうちに戦争が勃発するであろうことは、教師である父親が言っていた。
その影響からか私たちの住むバーミンガムでも町中で戦争の話がされていた。当然我々10代の高校生たちもその話を聞いていた。
しかし、大人たちと我々の世代では興味を持つ方向が全くもって逆に近しかった。大人たちは戦争を危惧していたが、我々には戦場に行くことがある一種のアトラクションにしか見えなかった。
当時の新聞はこぞって、「戦争になれば我が大英帝国軍が短期で勝利を得るであろう」的な新聞記事を書き、世論を煽り立てた。
その煽りに乗ったのが我々10代であったのだ。
エレンは「なあ!行くだろ!」と言って指差したのは、バーミンガム第17ライフル連隊の新兵徴募所だった。
私もその煽り、熱に乗っていた一人だった。父親と同じく大学に行って、教師なりなんなりになるような普通の人生よりは、もっとアグレッシブな経験をしたいというある一種の高揚感と親への反抗心があったのは間違いない。
私たち二人はお互いに顔を見合わせ、頷くなり新兵徴募所に走った。
そこに座っていたのは、イギリス陸軍の礼装を着こなし、勲章をつけ、見るからに筋肉質な若い軍曹が座っていた。その軍曹は我々を見るなり、びっくりしていたが、
私が「陸軍に行きたいです!」と第一声でいうと軍曹はニコニコ笑いながら「まあ落ち着いて、話を聞こうじゃないか。」と私たちを徴募サイン書の置いてある机に案内した。
軍曹の名前はマーク・ジョイナスと言った。
マーク軍曹は我々に親切に陸軍の話をし、1時間近く話してくれた。その間にも何人もの高校生、若者が走りこんできた。
結局その場ではサインすることはなかったものの、親と相談し、明日ここへ戻ってくることになった。
その夜、夕食の席で私は陸軍へ志願入隊したいことを父親、エリックに話した。父親は一瞬考え込んだが、「それがお前の選ぶ道なら反対はしない。それに戦争は短期間で終わる。大丈夫だろう。」と言い、承認してくれた。
母親、ローズは目に涙を浮かべたものの「国王陛下への奉仕だと思って、立派に務めてきなさい。」と言い許してくれた。
兄と姉そして妹は祝福してくれた。
そして、1914年8月5日私は新兵徴募所へ高校の友人達7人と走った。