⑳4月7日、家族
4月7日
帰ってきてからこれまでの間に
まずは散髪をしました。
旅の間は資金がギリギリだったので散髪せずに、
帽子で隠しほったらかしにしていたのです。
なので、ボサボサの長髪になっていました。
このボサボサが自分を旅人らしく
させていたのかもしれませんが。
そんな旅人感は今は必要ありませんので、
短く刈り込んで髪を整えて、
それなりな服を着こんだら
旅人の姿は消えていきました。
顔の日焼けはまだ残っていますが、
徐々に消えていくと思われます。
散髪をした後は、ハローワークに通ったり
友人に会って旅の報告をしたりと
多少は身体も休め過ごしていました。
旅人は日常に戻りました。
けれど、この日常があること自体が
幸せなことなのかもしれません。
この震災によって日常すらも
取り戻せない方々だっているのですから。
徐々に家で過ごす
この生活にも慣れてきて
今日も1日が終わると思っていた23時過ぎ、
それは突然のことでした。
ガタガタと揺れたと感じて
すぐに大きな地震が発生しました。
就寝していた母親はすぐに飛び起きて
自分と一緒に家の外に避難。
普通じゃない揺れでとにかく
家から出ることしかできませんでした。
震度6強、
自分が経験してきた地震で最も強いもの。
余震なんだろうけど、桁が違う余震です。
けれど、この1ヶ月前には
これよりも強い地震が発生したのです……。
これだけの強い地震ですから、
また津波が発生するのではと思いました。
近所からもいろんな声や音が聞こえてきます。
皆が不安に襲われていました。
ようやく揺れがおさまってから
母親と家の中に戻ったのですが、
あれだけ強い地震があると落ち着くまでに
多少の時間は必要で
二人で座ってしばらく話していました。
「大きな地震だったね。地震経験したね」
確か母親が自分に向けて
こんなことを話したと記憶しています。
旅を終えて、この期間まで
何度も余震は続いていたのですが
これだけ強いのははじめてです。
自分も今の地震を経験して
本当に怖いと思いました。
震災の時、
本当に怖い思いを母親はしたんでしょう。
どれだけ不安だったのだろうかと思います。
被災された方々は
どんな思いで今の地震を耐えたのだろう。
沿岸部の方々は
特に怖かったのではないでしょうか。
今の自分がやれることは、怖い思いをした
母親のそばにいてあげることかもしれません。
大切な人のそばにいてあげることが今は大事。
今は家族のそばにいるのが
自分の役目だと思います。
あの時、震災の時に
そばにいることができなかったので……。




