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⑮旅138日目、(北海道最終日)


旅138日目。

苫小牧を走っています。

ここまでの総走行距離10000キロ到達。

遂に10000キロです。

信じられない距離を走りました。

ここまで自転車はタイヤがパンクしてみたり

チェーンが外れてみたりを繰り返しましたが、

よくぞ10000キロ以上走ってくれました。

この相棒は自分以上に頑張ってくれています。

そしてこの日も無事に

苫小牧東港に到着してくれました。

よく頑張った。


フェリーは事前に予約済です。

乗船券を購入しようとした時、

財布の中にフェリー代が無いことに気付く。

これは自分のミス。

苫小牧へ来るまでには

コンビニもいくつかあったのです。

財布を確認しなかった凡ミスになります。


一旦、港から戻ってATMを探すことに。

市街地への標識を見つけ走り出す。

しかし、その市街地までが本当に遠く

コンビニや銀行が全然見つからない。

来た道を引き返すべきだったかもしれません。

コンビニがない。

宮城ならばそんなことはないのですが、

これが北海道。

次第に焦りだします。

出港の時間が迫る。

これはマズイ。


相当な距離を走ってから、

ようやく市街地に入り

銀行を見つけるも今日が日曜日で銀行が休み。

その銀行の近くに郵便局を見つけるも

自動ドアの手前で

「本日終了しました」のアナウンスが流れる。

なんというタイミング……。

郵便局の近くに交番を見つけて入り、

ここから1番近いコンビニを教えてもらう。

まだギリギリいける距離。

しかし、走り出して三分後、

自転車のチェーンが外れる。

なんとか直して走り出そうとしたのですが、

乗ってすぐその場でチェーンが外れる。

このタイミングで故障。

自力では直せません。

もうダメです。

もうフェリーには間に合わない。


この相棒は今まで頑張ってくれましたから

責めることはできません。

フェリーの予約をキャンセルするしかありません。

さすがに落ち込みます。

チェーンで汚れた手をタオルで拭いていると

「こんにちは」

見知らぬ男性が自分に声を掛けてきます。

「自転車どうしたんですか?」

自分が事情を告げると


「なるほど、そうかよしわかった。

まずはATMに行って

フェリーターミナルまで自分の車で行こう」


ちょっと待ってくれ……。

この展開に戸惑ってしまいます。

「いや、しかし……」

躊躇している自分。

男性は自転車を車に乗せようと

車内を片付けています。

信じられません。

このような人が今自分の目の前にいるなんて。

この状況で断る理由が見つからない。

お言葉に甘えさせてもらうことにしました。

自転車と自分を車に乗せてから、

出発前に男性は会社に

ちょっと遅れると携帯電話で話しています。

なんという人だ。

奇跡だと本当に思いました。

そして恐縮しながら出発。


男性の名前は「イヌイさん」と言いまして、

話を聞くと自身も旅の経験があり

同じように助けてもらったことがあるとのこと。

なので、自分のような旅人を見かけたら

必ず声を掛けて何か困っていたら

助けるようにしているとのことです。

「気にしなくていいからさ、

同じように困っている人を

見かけたら助けてあげてね」

とイヌイさん。

こういう人いるんだなぁ。

すごい人です。


その後、コンビニのATMで

無事にフェリー代を確保し、

フェリーターミナルまで乗せてもらいました。

諦めていた状況から

このような展開になるなんて。

本当に素晴らしい人だ。

どうやって感謝の気持ちを

伝えればいいのかわからずに

何度も頭を下げて自分なりに必死に

「ありがとうございました」

を伝えました。

「それじゃ気を付けてね」

そう言うとイヌイさんは笑顔で去っていきました。

かっこいい人です。

イヌイさんの為にも

絶対に帰ると気合いを入れました。


そして、フェリーの手続きをするために

ターミナル内に入ろうとすると、

なんとイヌイさんが戻ってきました。

「忘れるとこだった」

そう言うと右手に五千円札を持ち

自分に差し出します。

さすがに受け取れない事を伝えますが、

なんかあったら心配だからとイヌイさん。

どうしようかと迷いましたが、

これは断れないなと……。

自分はその五千円札を受け取りました。

そして、無事にこの旅を終えて

必ず受け取った五千円を返すと決めました。

ターミナルに向かう前に、

少しだけイヌイさんの職場に寄ったのですが、

その時に会社名を記憶していました。

イヌイさんに手紙を書いて

五千円を返すつもりです。

もう一度頭を深く下げてお礼を伝えると、

イヌイさんは自分の肩を叩いて

笑顔で去っていきました。


この旅は自分ひとりでしているもので、

自力で全て達成してやるんだと

思っていたのですが、それは違いました。

この旅ではたくさんの方々に助けられ応援されて、

ここまでようやく来れたんです。

イヌイさんに出会えて正直助かりました。

イヌイさんがいなかったらどうなっていたのか。

自分ひとりでやれたのか。

自分はまだまだです。

まだまだ人に感謝しないと

ダメだなと痛感しました。

そして、どうやって恩返しを

しなければいけないのか、

そこのところも

大事なことなんだと気づかされました。

冬の北海道で様々なことを学びました。

そして北海道の最終日に

素晴らしい人に出会いました。

これが旅138日目の話です。


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