男子高校生の悩み
「なぁ、今日のニュース見た?6人目は隣の街の中学校の教諭らしいぜ」
いつも連んでる南雲大地は険しい顔をしながら今朝のニュースについて俺に聞いてきた。
5人目のニュースから2日後、6人目の死体が隣町で発見されたらしい。
同市内での出来事なのでもう他人事じゃなくなってきた。
「一応、家でチェックしてきたけど、この街もそろそろやばい感じしてるよな…。学校自体も休校になりそうな雰囲気だし、警察の風当たりが日に日に増す一方じゃないか」
「実は被害にあった教師がさ、うちの檀家さんと面識あったらしくて次自分が狙われるんじゃないかって漏らしてたことを昨日海兄が言ってたよ」
今はちょうど昼休み。
昼食を教室で取る人が大半なのだが、俺と大地は静かな場所で昼食をとりたいのでいつものように理科室にいた。
「海里さん相変わらず忙しそうだなぁ。でも、陸斗さんがいるから大丈夫そうだよな?」
「いやまぁ、陸兄がいるから回ってるには回ってるけど、海兄に相談する人がますます増えてね…。海兄が癒しスポットだからしょうがないんだけど」
実のところ、大地はこの街でも有名なお寺の息子で3人兄弟の末っ子。
兄1人が檀家さんや訪れて来る人たちの話を聞いてとても癒されると有名なので、周りからは癒しスポットと呼ばれている。
南雲三兄弟は一般的に見てイケメン部類に含まれ、その中で断トツで次男がモデル並みのイケメンなので多くの女性がやってくるので色々尾ひれがついてこの家は俺が住んでいる街中ではかなり有名だ。
色々語っているが、南雲家には普段から出入りさせてもらっているが、俺は相談事はまだ行ってもらったことがないので癒しスポットがどういうものかは把握していない。
何故なら行く度に相談事で訪れている人が南雲家で行列を作っているのでそもそも相談する機会すら与えてもらえないような状態だ。
次男の海里さんが事務処理を担当。
長男の陸斗さんが僧侶としてのお勤めを果たしているというイメージだ。
そんな兄達が寺に継いでいるので末っ子の大地は家業に入らなくても大丈夫らしく、本人は自由にさせてもらっているようだ。
「こうも人が頻繁に出入りしてると海里さんが僧侶として将来的に機能するか怪しいよな」
「陸兄と違って、海兄はまだ大学生だからね。陸兄が後を継いでしかも来年結婚も決まってるからうちとしては後継が決まって安泰ってところ。義理の姉になる人もすごくいい人だし、後は孫が生まれてくれば父さん母さんも心配事はなくなるからね。海兄も最初は僧侶になるつもりだったけど、自分は家に貢献できること何もないのが悩みみたい」
「へぇ、あの海里さんが悩みね」
「最近、変わったお客さんが来てるのでその人との会話してるのちらっと聞いたんだ。本音を言うなんて珍しいから何事かと思ったよ」
変わったお客さんというのも気になってくるが、南雲家は相変わらず大変そうだ。
「事件のせいで相談事が増えて海兄さんが目に見えて疲れてるんだよね、本人は平気って答えてるけど俺からしたらもう来ないで欲しいって思ってる」
「みんな不安になってるから空海寺に相談にやってきてるんだろ?海里さんには気の毒だけどさ」
「相談者だけじゃなくて警察もうちの寺に目撃情報入ってないかって聴きにきてさ、警察の方も相当苦労してるみたいだよ。だって犯人の姿が監視カメラに映らないらしいからさ」
犯人が監視カメラに映らないという情報を今初めて知った。
というよりも警察がマスコミにも公表していない情報のようでニュースにもなっていないらしい。
色んなとこから情報が入りやすい空海寺に警察が聴きに行ってる辺り、警察自体も事態が把握しきれていなく、思ったよりも深刻な状況のようだ。
「その話聞いて俺も余計に不安になった」
「あぁ〜もう、早く事態収まってくれ!!!!」
頭をガシと抱え、俺たち以外いない理科室で大地はそう大声で叫ぶ。
「とにかく今日は早く帰ろう。今の俺たちに出来るのはそれしかないんだし」
「ほんとそうだよな…。何か警察から情報あったら疾風に連絡するな!」
大地がそう言って焼きそばパンをむしゃむしゃ食べている。
家が家なだけに相当ストレスが溜まっているみたいだ。
今週の休みにでも息抜きに大地と海里さんを連れ出して遊びにでも行くか。
昼休みもあとわずかなので急いで昼食を済ませ、次の授業の為に2人で教室へ向かった。