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夢幻のインベルスィオン  作者: ハイネ
3/11

五十嵐家の事情

リビングに向かうと食卓には今日の朝ごはんがずらりと並んでいた。

本日のメニューは鯛の塩焼き、あさりの味噌汁、冷奴、ヨーグルト。

鯛に関しては丸々焼いてるので各自でほぐして取り分けるスタイルだ。

格闘マニアである祖母は意外にも料理好きであり、旬の食材を使うことも度々ある。

旬の食材をがスーパーで安く手に入った時に五十嵐家では作られることがあるので今日は格安で手に入れたのだなと分かりやすいのも祖母の意外すぎる一面でもある。


「いただきます」


作った方に感謝をするのも祖母に教え込まれた一つである。

幼少期に色々心配され反抗期も少しばかりあった俺でもそこは変わらず続けていたので感謝を込めていただくのだ。

そして、今日も味噌汁が美味い。


「言い忘れていたが、奏太(そうた)から来月一度戻ると連絡があった」

「そのことなら俺にも連絡あったよ。母さんと一緒に戻るってさ」

「だったら話が早い。また古い知人に連絡を取ったからワラビを採りに行くぞ」


毎度の事ながら唐突だな。

先ほどの話と関係があるのだがそれはひとまず置いておく。


「えっと…それいつ行くんだよ?」

「週末の土曜日に軍手と長靴と新聞は用意しておけ。それと車は来島(くるしま)が出してくれるそうだ」

来島(くるしま)さんとこの野菜は美味しいからまたお礼言わないと。稽古の後に必要な物の準備しとくから来島(くるしま)さんの到着時間教えといて」

「わかった」


祖母はいつも通り態度はでかいが、こくりと頷く。

来島(くるしま)さんこと来島和俊(くるしまかずとし)さんという方は本当に祖母の知人。

畑や田んぼ等を所有している方で、料理好きな祖母に大変お世話になっているからとよく野菜を分けてくださるのだ。

見返りとしては収穫のお手伝いとかが多い。

こちらとしては五十嵐家の家計が少しでも余裕が持てるのが来島さんのお陰なので毎度喜んでお手伝いに伺っているのであった。



一度話を戻すが、

五十嵐家は祖母・父・母・姉・そして自分で構成されている5人家族。

奏太(そうた)いうのは俺の父さんのことだ。

父さんは仕事の関係で単身赴任中で、母さんは身の回りの世話をする為に父さんの所へ向かっている。

姉ちゃんは大学を進学を機に家を出たので、現在の五十嵐家は祖母と俺の2人だけ。


祖母がやたらはりきって旬食材を揃えようとしているのも単身赴任先から帰ってくる父さんと母さんに美味しいものを食べてもらいたいという愛情なのだ。


「態度は相変わらずだけど、人に接する姿勢は尊敬すべき点だなぁ」

「何を独り言言っている」


祖母が冷ややかな目でこちらを見る。

流石に今考えてることバレたら恥ずかしい。


「あ、いや気にしないで」


昔から祖母は俺にだけやたら厳しいので2人で暮らすってなった時はすごく嫌だったけど、めちゃくちゃわかりにくい気配りや思いやりが最近になってわかるようになって来たのでなんとかやっていけるなと思うようになっていた。

美味しい料理を毎日食べられることを幸せに感じながら、今日も白米を頬張るのである。



『昨日未明、河川敷で男性の変死体があるとランニング中の男性より110番通報がありました。検死の結果、男性の死体からは大きな刃物で心臓を抉られた形跡があるとみてここ1ヶ月で発生している事件と同じ犯行手口とみて特設捜査本部は同様の事件と発表致しました。これで連続殺人事件の被害者は5人になります。引き続き捜査に進展があり次第放送します。では、次のニュースです……』


白米を頬張っている最中、毎朝見ている番組から本日のニュースが流れていた。


「これで5人目とかやばいだろ」

「ふむ、犯人は段々こなれてきてるという感じだな。」

「婆さんなに流暢に分析してるんだよ」


はぁ、とため息をつく。

実はここ1ヶ月間で俺の住む県内で無差別連続殺人事件が発生している。

最初はそこまで大きな事件ではなかったのだが、犠牲者が5人に増えて今では一番注目を置いている事件だ。

ニュースからの情報しかないので断片的ではあるが、詳細についてはこうである。


1人目は70歳代のお爺さんで近所の公園で刃物で切りつけられ、仰向けに倒れていたのを近所の人に発見された。

司法解剖の結果、心臓を刺されたのかと思いきや心臓丸ごとごっそり無くなっていたことがわかった。


2人目は女子大生。

同様の手口で大学前で発見された。


3人目は幼稚園児。

同様の手口で用事の家の前で発見された。


4人目は30代の男性でニート。

同様の手口で家の中で発見された。


5人目は先ほどのニュースの通り、河川敷で発見された。


5人には何の共通点もないので捜査本部も犯人の捜索に苦労しているようだ。

何しろ、別々の市で発生しているので次どこで誰が狙われるかもわからない。

被害が出ていない俺の住む市でも目撃情報がないかと警察が1件1件訪ね回っているのだ。

彼らがこんなに頑張っているのに何も進展がないので本当にかわいそうで仕方がない。


「疾風、そろそろ時間だぞ」

「お、やべ遅刻するわ。ごちそうさまでした!」


同県の被害が発生している地域は既に休校連絡が回っているようだが、俺の通っている学校は休校になっていないので今日も学校に行かなければならない。

こればかりは理由もなく休校にできないから仕方ない。


「婆さん、片付け…」

「そこに置いておけ私が片付けておく」


食器を机に残したまま、急いで洗面所に向かい歯磨きをする。

歯磨きが終わるとリビングに置いていた荷物を取り出し、玄関へ向かう。


「じゃあ、行ってきます!帰りに何か買い物するならいつも通り連絡してくれ」


リビングにいる祖母に向かって声をかける。


「了解した」


リビングにいる祖母からも返事があった。

学校帰りに何か必要があるものがあったらいつも祖母から連絡が来るので今日もそのことを伝えて家を出る。


「今日は曇りかぁ」


傘は必要ないとお天気キャスターが言っていたので置いていくけど、雲行きが怪しかったら早く帰ることにしよう。

学生らしく今日も学校へ向かうのであった。

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