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夢幻のインベルスィオン  作者: ハイネ
2/11

1日の始まりについて

ジリジリジリジリ…


部屋中に目覚ましの音が響き、その音で部屋の主が目を覚ます。

目を覚ましたとはいえ、まだ身体を睡眠を欲しているのか瞼が自然と閉じようとしている。


「ねむい、ねむすぎ……。まだ5時だからだいじょうぶ…」


そもそも何故この時間から起きる必要がない。

一般的な高校生はもう少し遅くに起床すべきだし、部屋は静寂に包まれている、これならすぐに寝れそうだ。

そう自分に言い聞かせて再び夢の中へと落ちて行く。


「ほぅ?まだ寝るつもりか」


意識が薄れて行く中、聞き覚えのありすぎる声が聞こえたような気がした。

本来ならここで目を覚ますべきなのだが、身体は睡眠を欲している為すぐに起きるのは難しい。

だからせめてあと5分は猶予が欲しいのだ。


「起きる気がないらしい。ここはいつもの起こし方(アレ)をしないといけないのだが、文句は言うなよ」


深い眠りに落ちて行く中、自分以外の声が自分の部屋に響き…


カンカンカンカン


10回ほど金属が金属にぶつかり合う音が聞こえ、流石に深い眠りに落ちようとしていた部屋の主も布団から飛び起きる。

そして未だに金属のぶつかり音が止まないのでそちらの方に目を見やる。


「う、うるさい!!!」

「さっさと起きたらいい話だろうが」

「5時起きなんだからもう少し寝かせてくれよ!!!」

「ふん、気合いが足らんのだ。気合いが」


右手には叩きすぎて歪になってる銀のおたま、左手は凹みが目立ってるフライパンを持ち、現代ではなかなか着てる人はいないであろう割烹着姿の同居人…もとい家主の祖母がベッドで寝ている俺を見下ろしていた。


「遅い、稽古をサボるつもりか?」

「毎日稽古してるんだからたまにはゆっくり寝かせてくれてもいいんじゃない?成長期なんだからもう少し寝ててもバチは当たらないと思うんだけど」

「ふん、言い訳しよって。この軟弱者が。1日サボるとサボり癖がついて抜けなくなるのでそれでは意味がない」


祖母は渋い顔でそう答える。

『もう軟弱者で良いです』と答えたいほどだが、これを言ってしまうと更に拗れるのは目に見えている。

ここで反論してもいいのだが、起きる起きないで言い争っても余計体力を使うだけだ。

何分、祖母の言い分がわかるが故に最終的にこちらが折れるしか先が進まないのは分かり切ってる。


「はいはい、すみませんでした。俺が折れますんで、30分後にいつもの場所で良いですか?」

「最初からそう言え。こちらは既に準備できているのだから早く来い。」


祖母は『分かれば良いんだ』な顔をして、俺の部屋を後にした。


「相変わらず怖い師匠(せんせい)だ…」


小さくため息をつく。

じっとしてるとまた祖母がやってきてしまうので着替える準備を始めた。



ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー



「はぁっ…はぁっ…………っつ…」

「1時間30分経過したのでもう引き上げるぞ」

「あ、ありがと….うござい…ました……」


汗だくになりよれよれになってる道着を一度正し、一礼をする。

そして、指導していた側の祖母も一礼する。


「では、朝御飯の支度をしてるので早くリビングへ来るといい」

「おぅ」

「そこは『はい』だろうが、まぁいい。さっさとシャワー浴びてくるんだな」


先程まで俺に指導していたはずの祖母はそう告げ、台所へ向かった。

汗ひとつかかずに指導している祖母は本当に超人じゃないかと毎度驚かされる。


「とりあえずシャワー浴びてこよう」


ふぅと息を吸い込み、道場を後にした。


実の所、五十嵐疾風(いがらしはやて)はあまり運動が好きではなかった。

というのも小学生の頃は同級生より少し小さめでぽっちゃり体型だった。

流石にこのまま行くと虐められるのではないかと深刻に考えた両親が祖母に相談し、「そういうことなら鍛えればいい」と言い出したのがきっかけである。


元より祖母は家の敷地内に道場を経営していたが、近年はサッカーや野球などのスポーツのに興味を持つ子供達が増えた影響で道場を畳むことになったが、建物自体は取り壊す費用ももったいないとのことなのでそのままにしているらしい。

現在は俺専用の道場として日々祖母に指導してもらっているのだ。


「婆さん格闘マニアだから色々させられてきついんだよなぁ……」


念の為言っておくが、ぽっちゃり体型は解消され筋肉がついたし、人並みに身長も伸びた。

習慣化してるので辞める理由もなくそのまま継続して祖母に指導してもらっているが、格闘マニアゆえに色々な技を仕込もうとしてくるのである。

流石に全部は無理なので剣道だけには絞ってもらったが、隙あれば違う技を教え込もうとしてるので毎日それを止めるのに必死だ。


ちなみに祖母の口調が軍人のようなのは割と軍隊マニアでもある影響である。

もう俺は慣れているので今更気にしないが、近所から少し変わり者の婆さんとの認識されているようだ。


「さて、朝ごはん食べてくるか」


敷地内にある道場から風呂場へ移動し、軽くシャワーを済ませたのでリビングへ向かう。

これが五十嵐疾風(いがらしはやて)の1日の始まりである。

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