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いじめ?

 久しぶりの投稿です。久しぶりに書いていたら熱が入りました。

 稲垣先輩、マジで良い人だ。

 今日の仕事も、稲垣先輩が引き受けてくれることが殆どだし。

 理由を訊けば、「昨日、出しゃばって、嫌な思いをしたと思うから」と、何故か反省しているようだった。ちなみに私は稲垣先輩が出しゃばろうがなんだろうが、怒らない。だってもうマネージャーの自己紹介の時から格差が確定しているもの。外見って言うのはしょうがないけどね。しょうがないけどね! うぅ。

 これがラブコメとかだと、先輩マネがよく意地悪してくるとかあるのかもしれないが、残念ながら……ゴホン、嬉しいことに、稲垣先輩はそんな意地悪な先輩とは程遠い。

 女神のような存在。それが稲垣先輩だった。


「ツジユリ、今日来てなかったね」

「確かに、今日はツジユリの姿を見てませんね」

 稲垣先輩が言うので、私も答える。

 ツジユリを今日は見ていない。しかも最近、あまり学校でツジユリを見かけない。

 うーん。今日は体調が悪いのかな。顧問の先生に言えば良かったのに。


 顧問の先生は、体育担当の本織(もとおり)先生だ。かなりいかつい先生で、厳しいと噂されるが、本織先生は生徒のことをちゃんと考えている人だ。

「あ、マネージャー」

 ふいに本織先生に呼ばれ、私と稲垣先輩は反射的に「はーい」と答えた。本織先生は苦笑しながら「ちょっといいかー?」と手招きをした。


「実は、辻本のことなんだけどな」

「ああ、ツジユリ」

「ツジユリが、どうかしたんですか?」


 怪訝そうな表情をする先生。何事かと私は目を見張る。


「実は最近、辻本、全然学校に来てないんだよ」

「え?」

 私は反射的に答える。確か、本織先生は、ツジユリの……担任じゃなかったな。ツジユリD組で本織先生二年生担当だもんな。じゃあ何で分かったんだろう。

 ……あ、体育担当だったっけか。

「辻本、いじめられているとか、そんな情報ないか?」

「え、あー、ないと思いますよ?」

「私が見てるときは、そんなことは、なかったと思いますけど……」

 私の曖昧な返事とは対照的に、ちゃんと応えている稲垣先輩。

 私は違うクラスなので分かりません。っていうか、ツジユリとは部活でしか一緒じゃないからな……。

「確か進藤は、A組だったよな? A組で何か噂されてないか?」

 いえ、全く噂されておりませぬ。たまに出てくる話題と言えば……。


 ん? そういえばツジユリと六年生の頃一緒だったっていう女子が言ってたような気がする。

「ツジユリ、ぶりっ子だし、性格めっちゃ最悪だよ」

 周りの女子は「えーマジでー」「D組のあの子でしょ? 男好きって話もあるよ」などと話していた。

 可愛い女子には「性格が悪い」とか、マイナスな噂が付きまとうのはあるあるだと思う。

 まぁ、可愛い女子にそういうのはつきものってことで、おいておいて。


「可愛いから色々と言われていることはあるのかもしれませんが、本人は気が付いていないようですし、大丈夫だと思いますけどね?」


 本織先生は「そうか……」と言いながら顎に手を押しあてた。

「ほんじゃあ、ただの風邪か、インフルエンザ? インフルエンザだったら、やばいな。移っちゃうかもしれないな、お前ら」

「嫌だぁー先生ったら!」

「冗談抜きでやめてくださいよ、インフルエンザで死ぬ人もいるんですから」

 私の空気の読めない発言で、二人の視線が突き刺さってしまったのは言うまでもない。

 自業自得だが、何か切ない。


 ◆◇


 翌日のA組は、少しだけいつもと違った。

 いつもは、主に先に朝練から帰った竜成が馬鹿なことしてたり、男子が消しゴムだか定規だかを使ったゲームをしていたり、女子は何グループかに固まって楽しそうにおしゃべりをしているんだけど。

 男子は何かを取り囲むようにして「うわぁ、マジやべぇじゃん」「普通に犯罪なんだけど」などと話している。おいそれよく見たら私の席周辺じゃないか。何々、ちょっと怖い。

 対して女子は、教室の隅に固まって、何かをひそひそと話している。


 ま、まさか、私の噂かな……。中学早々、最バスのマネージャーになったからって、悪目立ちしちゃった?

 うわーん、これから一年間やっていく仲間に早々、「あいつは男狙いの悪女だ」なんて言われたらどうしよう……。


 私はためしに、誰にも気付かれないようにその子達に近寄った。すると、その中の一人の女子が、「あ、真理ちゃん、おはよう」と声をかけてくれたのだ。すっごく有り難いけど、おはようって話しかけてくれることは有り難いけど、今、私の悪口を言っているのでは……? 私の存在に気付いて、即刻悪口を言うのをやめるのでは?


「あ、真理だ」

「ねぇ、大丈夫だった?」

「え?」

 結構な量の女子に話しかけられるけど、何が? それに、「大丈夫?」なんて聞かれなくても、私は常時、朝っぱらから大丈夫ではないんですが。主に体力が。

「あ、ああ、マネージャーのこと? それなら、私、大丈夫だけど。死にそうだけど、皆ありがとうって言ってくれるから平気平気」

「じゃなくて! D組に辻本由莉香って子がいるでしょ?」

 初等部の頃、いつも可愛い格好をしていた女子が私の顔に自分の顔を近付けた。

「あぁ、ツジユリ? あの子がどうしたの?」



「あの子に、いじめられてるって聞いたけど、大丈夫?」



「へぇっふ?」

 驚き過ぎて変な声が出た。どうした、誰だそんなデマ流したの。私とツジユリは仲が良いって思ってたんだけど。

 っていうか、悪口じゃなくてよかった。今考えれば、何て被害妄想なのだろうと思う。

「ツジユリは優しいよ。可愛くて明るくて。そんな子がこんな私いじめて、得するものなんてないと思うよ」

 必死に説明する。ツジユリがどんなに可愛い女の子なのかを。そしていつか「可愛い女子あるある」で盛り上がろうと私が考えていた矢先だった。

「え、じゃあ、その机の上に置いてある人形何な訳?」

 はい?

「人形?」

 そこで私は自分の机を振り返る。私の視線に気付いたのか、男子は私の席周辺から離れた。確か私机に馬鹿みたいな落書きしちゃったんだけど、大丈夫かな。もしかして男子が「普通に犯罪」とか言ってたの、落書きのことかな。確かに机に落書きするのは基本的に駄目だけど。えー、私普通にアニメのキャラクター描いてただけなんだけどな。何だ、絵が下手すぎる奴は机に落書きしたら犯罪になっちゃうのか。



「え?」



 私そっくりの人形の胸に、カッターが突き刺さっていた。

「う、へぇ……?」

 誰がやったのかも、何のためにやったのかも分からなかったが、私は人形があまりにも自分にそっくりなことに驚いた。

 耳の横で一つ結びにされた髪に、伸びっかけの前髪、マネージャーをやって少しだけ焼けた肌に、私が小学校の頃着ていた服が見事に再現されて人形に被せられている。


「ちょっと……マジで趣味悪いよなー」

「本人来たから、流石にやべぇんじゃねえの?」

「っていうかどんだけ進藤見てたのって感じだよな。中々素人じゃ再現出来ねぇぜ」

「職人にでも頼んだんじゃないの?」

「マジか。めっちゃ手の込んだ呪いじゃん」


 周りからひそひそと話し声が聞こえる。

 私は辺りを見渡した。皆、私に視線を向けている。何故だか妙に気恥ずかしかった。


 その中に竜成はいなかった。竜成は離れた教卓前で、ただ私のことをジッと見ているだけだった。

 ……何それ。幼馴染みがこんな目に遭っているのに、何も話さないなんて。

 別に「大丈夫かよ」なんて声をかけられることなんか期待していなかった。けれど、それでもこんな状況で冗談の一つも言ってくれない竜成に、よく分からない感情を抱いていた。

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