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入学、そして。

 新連載始めました。何個も作ってどうするんだって話ですが。

 ここ、自然ヶ丘学園(しぜんがおかがくえん)には、沢山の生徒がいる。

 何故ならば、小学校から、中、高、大学まで続いているからである。


 それほどまでに大きな学校に。

 私、進藤真理(しんどうまり)は、通っている。


 小学校のお受験勉強など大層なことはしなくても、自然ヶ丘学園っていうのは、受かってしまう。

 もちろん自然ヶ丘学園はレベルが低いわけではない。受験で油断させた後、しっかりと勉強の基礎から教えてもらうのだ。

 小学校の頃からそんな風に育ってきた私は、とりあえず学年で二十番目ぐらいの成績であった。八十人中二十番目と言う、かなり良い数値で、お父さんとお母さんもそれなりに誇りに思ってくれたようだ。


 そして。

 今から私は、自然ヶ丘学園初等部ではなく、自然ヶ丘学園中等部に入る。

 制服もかなり可愛いし、髪型は自由だし、小学校と変わらずの自由さに、他の学校から入ってくる人も多いぐらいだ。

 中等部に進学と言っても、殆ど仲間が一緒なので、そんなに卒業式で泣くなんていうことはない。だって初等部の階に下りれば、いつだって初等部の皆と会えるんだもん。

 後輩に、もっと一緒にいたいなって思う人がいたら、いつだって会える。なのに何で先輩達は、初等部に下りてこなかったんだろう。と不思議に思っていた。


「真理、おっはー」

「おはよ、真理ちゃん」

「あー、のどかちゃんに真優(まゆ)ちゃん、遅かったじゃん。入学式、もう始まっちゃうかもよ」


 私の肩を後ろからぽんぽん、と叩くのは、初等部の頃からの親友、山口(やまぐち)のどかちゃんと古田華(こだか)真優ちゃん。

 のどかちゃんは大人っぽくて綺麗な美人さんで、真優ちゃんはふんわりとした華奢で可愛い子。


「ごめんごめん」

「いつも真理の方が遅いのに、今日だけは早いのね」

「入学式に遅刻しちゃったらたまったもんじゃないよ!」

 二人して私を小馬鹿にしたような目つきをしている。やめて、私は繊細なのよ。



「ぷっ、だっせぇ、親友二人に馬鹿にされるなんて」

「……は? え、お前何て言った竜成(りゅうせい)



 またもや後ろから、小馬鹿にしたような笑みを浮かべて、私に文句を言ってくる人がいる。


 幼馴染みの、安城(あんじょう)竜成。

 家が隣同士、家族ぐるみで仲が良く、一緒にご飯を食べたことだって、一緒に寝たことだってある。

 そんなこいつも、自然ヶ丘学園初等部に無事合格し、現在、私達と同じ、中等部に通うことになっている……。


 世の中本当に、何が起きるか分かったもんじゃない。あんなに頭悪いあいつが、いつの間にか学年でトップスリーぐらいの頭の良さになっているなんて。

 我が自然ヶ丘学園が誇るバスケチーム、通称「最強バスケットチーム」略して「最バス」にもスカウトされるぐらい、運動神経が良くて。

 どうせ私は、毎年徒競走ビリッカスですよ、けっ。


「竜成、幼馴染みだからって、言っていいことと悪いことっていうもんがあるんだよ? それ分かる? あんた、成績学年でトップスリー常連だよね?」

「けっ、言ってろよ。運動会で毎年ビリッカスで、毎年運動会のダンスの振り付け本番に間違える真理さーん」

「はぁ!? うっさいわね、大体何であんたみたいな最低な奴がモテるわけ!? 精神科行ったらどう!?」


 ニヒヒと笑う竜成の表情がまた恨めしい。

 六年生の頃、女子達はよく「竜成君と幼馴染みなんて、超憧れる~」とか言われたけどさ。

 正直、何も得してない。トランプの神経衰弱とかしてなくても、竜成がといると神経が衰弱してしまうから。


「あーあ、また喧嘩始まったよ。お決まりの」

「入学式遅れるから、早くしてよねー」


 親友二人は、もう最早当たり前の光景に慣れ過ぎちゃって、自分の心配しかしていない。

 畜生、これじゃあ私が一方的に怒っているみたいじゃないか。


「竜成、何であんたなんかが皆の憧れの的になるの!? 教えてよ、私竜成より何倍もマシな性格してるのに、何で竜成みたいにモ・テ・な・い・の!? 何で私一回も告白されたことないの? 竜成なんてブッサイクじゃん」

「はぁー? 俺の方が何倍もイケメンですー。そりゃこの人気者にいっつも喧嘩吹っ掛けてくるからモテないのー。性格の悪さと顔面のブスさって比例するんだなー。よーく分かった!」

「っはぁ? ちょっと私、全然耳が悪くて聞こえないんですー。大きな声でもう一度!」

「え? 耳悪いの? だっさ、耳鼻科行けよ」

「は? あんたの方が耳悪いのよ、大きな声でもう一度って言ったじゃん!」

「嫌だねー。どうせモテない女の僻みだろ、怖ぇなー。モテない女がモテる男に嫉妬って、マジひでぇ」

「僻みなんかじゃないもん! 何であんたがモテるのか、不思議に思っただけだもん!」


 私達二人がい つ も の言い争いをしていると、ふいに、後ろから誰かに引っ張られるた。

 誰かと思い振り向くと、そこには、親友二人がいた。


「ほれ、クラス見に行くよー」

「入学式遅れるでしょーって最初に言ったの、真理でしょー?」


 ずるずると引きずっていく親友。やめてください、制服が汚れてしまいますー。


 とりあえず私は、意地悪く笑みを浮かべている竜成に向かって、あっかんべーをした。

 竜成もあっかんべーを返す。


 これが、保育園の頃からの、喧嘩した時のお決まりの動作。

 幼馴染みって、片方の幼馴染みがやり始めたことを真似するから、本当、迷惑!


 もっと優しい男の子だったらよかったのに……。


 私がそう思いながら、竜成から目を逸らした瞬間。



「竜成くーん!」



 一際高い女子の声が、校庭に響いた。

 びっくりして、私はもう一度、竜成の方を向いた。


 竜成は、さっきの意地悪い笑みを引っ込めて、すぐに不機嫌そうな表情になった。

 ……あれ? 何で?


「竜成君、おはよぉ! 入学式だよぉ! 同じクラス、なれると良いね!」

「……あ、あぁ」


 竜成にギュッと抱き着いたこの女の子は、森尾姫(もりおひめ)ちゃん。

 ニックネームはひめっちで、いつも複雑で可愛らしい髪型をしている。そして可愛いと美人の比が七対三ぐらいの、まぁとりあえず、可愛い子。

 レースやフリルのあしらった服装を毎日着たり、筆箱やノートも、「どこで買ったの!?」と聞きたくなるほど可愛い物ばっかりの、あの、語彙力ないからよく言えないけど、そのつまり、めちゃくちゃ可愛い。

 今日の髪型は、ツインテールで毛先くるくると巻いてある髪型。結んでいる部分はリボン。うーん、爽やかな制服に姫ちゃんの髪型はよく似合っている。

 男子によくボディタッチをしている。しかもめっちゃ自然。体育の試合で勝ったときには、「やったね! 竜成君!」なんて抱きついているほどだ。

 他の女子からは度が過ぎたぶりっ子って言われているけど、そうかな。ぶりっ子、男子に好かれようと頑張ってるじゃん。ほら、姫ちゃんの周りには、沢山の友達がいるし、姫ちゃんの可愛さを伝授しようとしている子がいっぱいいるんだよ。

 正直、姫ちゃんのような可愛いの最高峰の女の子が、よく竜成なんかに恋出来るな、と思う。


「うげっ、姫だ。何で姫なんて名前がついているのか全然分からない」

「何であんなぶりっ子が平気で出来るわけ?」

「今日もお姫様だねぇ。姫ちゃん、いつもどうやって髪型変えてるんだろう」

「待って、真理だけ気になるところが超絶おかしい」

 のどかちゃんは姫ちゃんを見るなり、露骨に嫌そうな顔をして、真優ちゃんは、途端に顔を曇らせた。


「竜成君はぁ、中等部に入って、何をしたいですかぁ? はいインタビュー!」


 突然のインタビュー。竜成はかなり戸惑っている様子だが、言ってしまえ。姫ちゃんを失恋させたらお前にもう春は来ない。



「最バスに入って、バスケの基礎練を頑張っていきたい」



「キャー! 嘘、竜成君、最バス入るのー!? マジぃ? 都大会優勝常連で全国制覇もしちゃってるあの最バスぅ!?」

 はぁ? 竜成が最バス?

 スカウトされたからって、竜成がそんなに頑張れるもんなのかしら。私が想像する、最バスで頑張ってる竜成、どう考えてもチームの足手まといになりそうなんだけど。

 ってかそれなら、真優ちゃんの兄、古田華千聖(こだかちひろ)先輩に教えてもらえばいいじゃない。

 何たって、古田華先輩は、()()()()()だもん。真優ちゃんいわく、「最バスでも全然目立たない存在」らしいけど。それでも最バスの先輩であることには変わりはないもの。


 でもいいや、いつも憎まれ口叩く大嫌いな奴に、そんな風に言ってあげられるほど、私は優しくない。

 今は放っておこう。そして幼馴染みが最バスの足を引っ張っていると落ち込んでいるときに、自分は楽しく青春を謳歌していこう。

 どうせ竜成は女子にモテモテなんだからさ、私が助けなくたって、女子が助けるでしょう?



 そう思っていた私に、まさか災難が降りかかってくるなんて、この時の私は思いもしなかった。

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