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パリピ探偵ポア  作者: 吉良 瞳
19/50

【913:あ】ポアロvs怪盗マープル

 こちら以前同人小説向けに書き下ろしたお話の、あらすじの宣伝をしていたページになります。読まなくても結構です。

同様の内容、続きを全て更新致しましたのでそちらでお楽しみください。(2021.7.29)加筆



《登場人物》

 丸井ポア…大学生探偵。顔に似合わずミステリ好き。

 阿笠図書…探偵助手。ポアの手綱を握る保護者。

 山田太郎…刑事。阿笠の幼馴染。性格に難はあるが勤務態度は真面目。

 芝崎眞理…刑事。暴走しがちな山田の保護者。

 富永ジェーン…ミステリ研究会に所属する女子大生。

 ミステリ研究会の部員達…ジェーンの取り巻き。冴えない所があるが、彼女の言う事には忠実。





 一般的な大学よりも狭めのキャンパス。図書館と教授達の研究室、博物館が一体になった建物が一棟と、生徒達の使用する教室がある建物が五棟。学食やカフェ、講堂、何も徒歩圏内にあり、サークルの部室もその例外では無かった。三階の一番日当たりの悪い、奥の部屋。

 彼女は部屋に入る前に、コンパクトで前髪を整える。パステルピンクのフラットシューズに同色の縞模様のニーソックス。水色のプリーツスカートに真っ白なブラウスを合わせた女の子らしいコーディネート。黒髪のストレートヘアに星の形をしたヘアピンが良いアクセントになっていた。

 乱れを確認してから、その扉を開く。


「おっはよー!ってぇ、もう夕方かぁ。てへ。今日も元気に始めよーう☆」


 甘ったるいような高い声。その声で呼びかけると、中にいた男子大学生達がだらしない顔をして頷いた。


「今日も元気が良いねじぇんたん」


「じぇんはいつでも元気百倍なのだー☆」


「か、可愛い…」


 この場に漫才でいうツッコミ担当という者は存在しない。見目のパッとしない男性達の中に、語尾に星マークが付きそうな話し方の女性。察しの良い若年層読者諸君にはおわかりの事だろう。


 このサークルはインキャと呼ばれるオタク気質な男子と、女性一人で構成される。ちやほやされたいが褒められる程の容姿を持たない女子が、オタクなサークルに入って女性経験の無いオタク男子達に甘やかしてもらう逆ハーレムのサークルだ。日頃女性と関わり合えない男子達にとっても、これはウィンウィンの関係といえよう。

 これを世間一般の者達は、彼らのサークルをオタサー、彼女の事をオタサーの姫と呼んだ。

 こういった者達のサークルは、アニメや漫画の研究部、同好会のパターンが多い。 しかし、彼女達のサークルはそれらとは一風違っていた。


「でわでわ、時間になりましたので『ミステリ研究会』の活動を始めたいと思います!いちどー、礼!」


 形式的に彼女が号令を取る。本当は部長は一番後列の座席に座る、太めの眼鏡の彼である。

 10畳しかない畳敷きの部屋に男子部員が5名、姫が1人。本棚や家具でスペースを取っているお陰で、かなり窮屈な部室だが、彼等は更なる部員を募ろうとしているところであった。今日の議題も、まさしく新入生の勧誘についてだ。入学式も終わり桜も散り始めたというのに、未だ新入部員は一人も居なかった。


「みんな、部員募集のチラシはちゃんと配ってくれたんだよね?まだ見学に来る子いないんだけど、どーなってるの?ぶーっ!」


「ご、ごめんねじぇんたん…チラシは配ったんだけど、本に興味ありそうな人居なくてさ。読書好きって言ってた人も漫研にもっていかれて…」


「読書って、そいつラノベしか読まない奴だったんじゃない?そーいうのはいらないから」


「で、でも、ミステリって言うとみんな嫌がって…」


「え〜ん、そんなんじゃ先輩達が抜けたら、廃部になっちゃうじゃ〜ん」


 姫は嘘泣きをして、男子部員達にご機嫌を取って貰った。ある者はただひたすらに謝り、ある者は彼女の好きなジュースを注ぐ。更にある者は「じぇんたんの事狙う奴が来るよりはいい」などと宣っている。


「そんなぁ、あたしはみんなのじぇんだから、心配しなくて大丈夫だよぉ☆」


「流石俺達のじぇんたん…!」


 男達の望む返事をすれば、いとも容易く懐柔出来る。彼女はこの手管を完全にものにしていた。


 そんな時である。部室の扉を叩く音がしたのは。


 部員は既に室内に全員揃っている。という事は、ミステリ好き、本好きの新入生が見学に来たのかもしれないーー。皆は顔を見合わせて、頷いた。


「はぁい、どうぞ〜☆」


 彼女がノックに答えると、がちゃりとドアノブを回す音が響く。


「すいませ〜ん。ミステリ研究会って、ココっすか?」


「え………っ?」




 ーー顔を出したのは、金色に染めた髪を遊ばせた童顔の少年。大学生になって間も無いあどけなさを感じさせる。服装はラベンダーカラーのスカジャン。インナーにピンク色のカットソー。耳には大粒の苺のピアスを揺らした、個性派ファッションの男だった。オタサーの男子達は、ぽかんと口を開いて返事が出来なかった。


(うそ…超イケメンじゃん!すっごくタイプなんですけど…!)


 姫の目の色が変わった。

 今まで、ニキビ面の脂っぽいデブ、汚い長髪のガリガリ、ボサボサ、薄い顔のチェックシャツ野郎にしかモテなかった。それが、今度はイケメンを彼氏にするチャンス。なによりパステルカラーな服装…お似合いのカップルになれるに違いない。年下は趣味では無かったが、彼なら有りだ。


「…え〜っと」


 戸惑っている新入生に、我先にと姫が声を掛けた。


「はじめまして☆あたし、富永ジェーンです☆ミス研へようこそ〜〜ぱちぱちぱち!!君のお名前は?」


「…丸井、ポアです。どーも」


「ポアくんね!珍しいお名前!あたしもね、ジェーンって珍しいって言われるんだけど、イギリス人のママと日本人のパパのハーフなの。日本語しか喋れないんだけどね☆」


「へ、へぇ〜〜」


 普段より更に高い声で、きゃっきゃと可愛こぶってみせる。そんな姫の態度に、男子達は焦りを覚えた。


「ま、待ってよじぇんたん。我がサークルはお遊びじゃないんだ。こんなチャラチャラした男…本当に本が好きなのかなあ?」


「そそそうだ!冷やかしなら帰れ帰れ!」


「ちょっ…みんなひどーい!!」


 ごめんねぇ〜☆☆と困った顔でそばに寄り、「本当は良い子達なの」としな垂れかかる。部員達に向かって、余計な事を言うなと視線を送るが、コミュニケーション能力の高くない彼等には察する事が出来なかった。

 少年は、困った様に顔を歪めた。


「…え〜っと。本は好きだよ。いや、本当に」


「なら好きな作家の一人でも上げてみたまえ!」


 イケメンが苦手なインキャのガリガリが、震える声で抵抗する。周りのデブやチェックシャツも、よく言ったとガッツポーズをした。好きな作家や作品を挙げれば、俄かかそうでないかなんとなく判別がつくものだ。


「…コナン・ドイルとか」


「ほーらみろ。どうせシャーロックだろ。にわかだな」


「アガサ・クリスティーに、ポーも読むよ。日本人だと江戸川乱歩、綾月来人も好きだし、縦溝世史も好き」


「…フ、フン!メジャー所ばかりじゃないか。これだから…」


 眼鏡の部長が腕を組んで、これでは入部を認められない、と言い出す。


「な、何言ってんのよ!そんなのアンタの決める事じゃないでしょ!?これはあたしが決める事なんだからっ!!」


 部長はこれだけは譲れないと突っぱねた。このサークルにイケメンは不要なのだ。姫は思い通りにならない空気に憤慨する。

 素気無い対応に、少年はムッとして言い返した。


「メジャーの何が悪いんだ。そういうお前等はどうなんだよ」


「お、俺は島田庄司先生の…」


「へー、占星術殺害事件か?」


「そ、そうだ」


「他には?何読んだの?どのトリックが好き?」


「そ、それは……」


 部長は何も答えられない。当然だ、この一作しか読んだ事が無いのだから。


「………はぁ。俄かが悪いとは言わないけど、期待はずれだな。俺、真面目に語り合える友達が欲しかったんだけど…女の子もイマイチだし。これなら阿笠さんと話してる方が断然良いわ。さいなら」


「ちょっ…」


 少年は溜息を吐いて、あっさりと部室から出て行った。追い返した筈の男子達も、敗北の表情になっている。姫も、逃した魚の大きさにガタガタと震える他ない。


「…一体、なんだったんだ」


「なんだったじゃないっつの!どうしてくれんだよこのグズ共!!!」


「ヒィッ、姫が御乱心だ!!!」


 姫に夢中の、“推理小説読む俺カッコイイ”集団には絶対に勝てない相手だった。そして、本当は本なんて一つも読まない姫に彼の相手など、出来る筈が無かったのだ。


「だいたいなんなんだよ、このあたしを見て、イマイチ…!?ふざけんじゃねェーーッ!!!!絶対に許さない…許さないだからなァァア!!!!」


 アニメの女の子の様に可愛かった声が嘘のような、低い声で呪詛を唱える。


 そんなミステリ研究会の面々の事など既に頭に無い少年ーーポアは、ひとつクシャミをして帰路に着いていた。



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