【918:×】探偵小曲集Ⅱ
俺は大学生探偵、丸井ポア。
警察官で腐女子の芝崎眞理と遊園地へ遊びに行って、黒ずくめの男の怪しげな取引現場を目撃した。取引を見るのに夢中になっていた俺は、背後から近づいてくるもう一人の仲間に気づかなかった。
俺はその男に毒薬を飲まされ、目が覚めたら…あんな事やこんな事をされていた。
丸井ポアが生きていると奴らにばれたらまた尻を狙われ、周りの人間にも危害が及ぶ。阿笠先生の助言で正体を隠すことにした俺は、眞理に名前を聞かれて、とっさにノンケディウス・ジョシスキーと名乗り奴等の情報をつかむ為に、父親が政治家をやっている山田の家に転がり込んだ。
たった一つの真実見抜く見た目は子供、頭脳はパリピ、その名は、名探偵ポア!
【ポア ぜろ○こが流行ってた頃の残骸】
「ヒュ〜阿笠の兄貴!こんな所で何してんすかぁ?」
「げ…」
最も会いたくない知人ランキング第1位の柏木が脳を刺激する軽薄な鳴き声で私に向かって囀ってきた。買い物をする為に楽器店に来たに決まっているだろう。
「兄貴も何か楽器やってるの?俺とバンドでも組んじゃう??ヤベー!超楽しそ〜じゃ〜ん!!!
「勝手に盛り上がっているところ悪いがな、特に出来る楽器は無いぞ」
「じゃあ…?」
「私が用があるのはこっちなのでな」
フレキシブルクリーナースーパーにグリス。マウスピースブラシ。それだけを手にレジに向かった。
「楽器やらないなら何でそんなものを」
「これらには他に使い道があるのでな」
にやりと笑うと柏木はヒッと小さな声を漏らした。
「犯罪は、駄目っすよ…」
何故そうなる。店員まで怯えた目で見ている理由が私にはさっぱり分からなかった。
【阿笠と柏木 掃除マニア】
「ハッピーハロウィーン♡」
「…まだ一月も先ですよ」
「だってぇ、私達全然予定合わないじゃない」
聖さんはくるくるのツインテールを揺らして悩ましげに首を傾げた。貴女今日は暇でしょ、と言って私にハロウィン用の衣装を着せて、メイクを施す。
「そうですけど…で、これは何のコスプレですか?」
「ゾンビちゃんよ」
鏡の中の私は、現役納棺師の手によって出棺直前のご遺体全とした姿をしていた。
「和製ゾンビですか!?」
「外国式の死化粧はまだ私にはちょっと…」
「無駄に意識高い!」
出発よ眞理ちゃん!と元気よく家を出る。すれ違う人という人がギョッとした顔を、私は一生忘れない。
【芝崎と西 フライングハロウィン】
「ハッピーハロウィィーーーン!!!」
「うるさい!!!」
「トリックオアトリート!!!阿笠さん、おかしちょ〜だいっ♡」
何がハロウィンだ。ポアの悪戯など日常茶飯事であるし、謎という意味ならばむしろ臨むところである。しかし、チンドン屋の様な格好をして仲間達と共に集られてはひとたまりもない。
「ほら菓子だ、さっさと異界へ還れ」
「ちょっと、豆まきじゃないんだからあめちゃん投げつけないでくれる!?」
「だいたい、今何時だと思っている!もう深夜だぞ!子供は家に帰って寝る時間だ」
「ハロウィンの夜はこれからっしょおっさん!!」
若者達は私の言う事など聞く耳を持たず、事務所の机にお菓子と甘いチューハイを並べて宴会をやり始めた。こうなっては私の居場所などある筈が無い。
「そうだ、阿笠さんも一緒にコスプレしようよ。ほら、カボチャの帽子あるよ」
そう言って魔法使いのポアが私の頭にジャックオランタンを乗せようとしてくる。顎の位置でマジックテープで帽子を固定され、実に間抜けな風貌にさせられてしまった。
「ギャハハ、似合わねー」
「マジウケる〜!!」
…何がハロウィンだ。大事な事なので二度言う。
「……ポア」
「なに?阿笠さ……って、」
「トリックオア、トリートだったな…?」
私の笑みに、百鬼夜行が凍り付く。窓の外でぴしゃんと雷が落ちる。
ーーミステリ小説の序章が始まった。
【阿笠とポア 恐怖のハロウィンナイト】
『うたの騎士さまっ♪』
あたし海野春美!女子高校生!歌こそが力を持ち、平和へ導く力を秘めた時代。歌詞を作れるのは選ばれし乙女だけ。ある日突然作詞の力に目覚めた私の目の前に7人のナイト達が現れた!俺の為に曲を作れ?ええ〜っ!?第2話『恋の嵐!イケメンナイトに翻弄されて!?』お楽しみに♡
「ああ、いつの間にか新年明けてるよ」
12月31日。世の中の社会人達多くは仕事を納め、この日ばかりは家族と穏やかな時を過ごしているであろう。その一方、警察官である我々はニューイヤーイベントに湧く人々のお陰で駆り出され、年末だろうと元旦であろう関係無くとてんてこ舞いであった。幾ら人手が足りないとはいえ、一課くらいは休みにしてくれてもバチは当たらないだろうに。酒乱の暴力騒ぎが解決し、漸くひと段落着いて時計を見やると、時刻は既に深夜1時を差そうとしていた。
「明けましておめでとう御座います。先輩」
顔に疲れを滲ませ乍も、彼女は私に向き直って丁寧に頭を下げた。
「明けましておめでとう。今年も、宜しくね?」
「はい!宜しくお願いします」
こういうの照れ臭いですね、と笑う彼女は、少女の様にあどけなくあった。
「そうだ、少し混んでるかもしれないけど、折角だから神社へ甘酒でも飲みに行こうか」
つい後輩とお正月ムードを楽しみたくなって、そんな提案をしてしまう。案の定、彼女は少し困惑して眉を顰めた。真面目な事である。
「えっ?良いんですか、職務中に」
「構わないさ。ちょっとくらいバレないバレない」
私達は多くの人が出入りする有名神社は避け、少し住宅地に差し掛かった所にある犬角神社へ向かった。そこは人が疎らで、列に並ぶ事も無く甘酒を入手する。紙コップを片手に参拝をしてから御神籤を引くと、二人して大凶を引いてしまい声を上げて笑った。
「幸先悪過ぎませんか」
「クッ…神よ。未だこの私を許さんと言うのか」
「厨二病乙乙」
彼女は仕事サボってるのが神様にはバレているんですよ、と言い紙を枝に結んだ。私もその隣に結いつける。二人の御神籤が仲良く並んでいる様に見えて、妙に嬉しい気持ちになった。
「今年も宜しくね、芝崎君」
「それ、さっきも言いましたよ」
大凶を引いたというのにこんなに嬉しくて楽しいのは、きっとこの子が居るからだろう。今年もきっと、良い一年になる。
【山田と芝崎 幸せな新年】
「お疲れ芝崎ちゃん」
「ゲッ、沼谷先輩」
「酷いな。人が心配してるのに」
給湯室でお茶を飲んでいると、ひょっこりと沼谷先輩が顔を出してきた。いつも私を庇ってくれる山田先輩は、現在外出中である。
「そろそろあの人の相棒も疲れただろ。僕の所に来る?」
「…小林さんが居るじゃないですか」
女性受けする爽やかな笑顔の裏にある狡猾な一面。私は彼の人を試す様な発言が苦手だった。
「残念。振られちゃったか」
肩を竦めて笑う仕草が如何にも胡散臭い。
「当たり前ですよ。…でも、沼谷先輩。一つ、質問しても良いですか?」
「なに?」
私は以前から気になっていた疑問をぶつけてみる事にした。
「××××××××××××××××××××?」
私の言葉を聞いた沼谷先輩は、すっと貼り付けていた笑顔を消して、身が凍りつく低い声で警告してきた。
「ーーそれは、知ってはならない事を知ろうとしたからだ」
「え…?」
「今この時間が長く続けば良いと思うなら、知ろうとするな。何も、知る必要は無い」
分かったね、と再び笑みを浮かべる。
何故そんな事を言うのか。不満が顔に出ていたのだろう、微笑まれたまま、釘を刺された。
「もしも、真実を知ればただでは済まされない。君を案じているという事だけは、分かっていてね」
そんな事を言って私を騙そうとしているのではないか。有り得る話である。掴み所の無さが不信感を助長させている。
「…何があっても、そんな未来がある筈無いのに」
【芝崎と沼谷 世の中には知らない方が良い事もある】
小曲集なんて言いながら無法地帯。半ばゴミ箱。
ハロウィンネタは以前書いてたものの再利用です。今年のハロウィンまで温めるまでもない。
更新してないお茶濁しです、ごめんなさい。




