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須佐妖戦帖 第5章「幕末逢魔乱」  作者: 蚰蜒(ゲジゲジ)
23/25

其の23. 天孫 若日子

酒呑童子と茨城童子も流石さすがの攻撃に傷ついた・・・しかし、其の傷跡・・・身体の中から無数の小鬼が這い出て来た。


「な、何だあれは?」


ぎゃあぎゃあ、キイキイ。


地上は忽ち無数の小鬼と餓鬼で埋め尽くされた。


「武角さま、どうすれば?!」


「ますます、大技が使えない。奴らは乗組員や地上の幕兵を取り囲んでいるぞ。攻撃の楯にしている・・・」


「波状攻撃でも全滅出来ません」


「人喰いむし!」


其の昔、信長を食い殺した怨霊蟲が地面から無数に這い出て来た。


「小鬼と餓鬼を食い尽くせ!」


須佐が大技を使えば忽ち、粉砕出来よう。しかし、幕人と更に外国人をも巻き添えにすれば、国際問題に成りかねない。外国の侵略の大義になってしまう。


地上と海面では魑魅魍魎に襲われて逃げ惑い、助けを乞う人間たちが無数に居た。


若日子軍団は、須佐たちが大技を使えないように人間を利用しているのだ。


人喰い蟲の数も追いつけない程の数だ。


「こんなことでは神戸は壊滅する・・・」


うわあああああ、助けてくれーーー。


ぎゃあああああ。


「わははは、須佐め!どうだ?白狐やお前等のちまちました攻撃なぞ、無駄だ」


酒呑童子と茨城童子が高笑いだ。




「武角さま、若日子を滅っしましょう。長を失えば彼らは退散するはず」


「佐助、しないさ。下等な妖怪どもだ。長がいなくても殺略を楽しむケダモノ共だ」


「?」武角が空に居る若日子を見上げて怪訝な顔をしていた。


「武角さま、どうしました?」


「佐助、視ろ。若日子を・・・」


「若日子が?」


「指示もせず、黙って全体を見回して居る・・・これだけ士気があがっている最中に何を考えている?」


「どうでも善いことでしょう?我々はまずいことになっています。若日子を滅っしましょう」




若日子・・・・何でそんなに悲しい顔をしてる?・・・・武角は気になっていた。




其のとき。若日子が片手を空に掲げた。


魑魅魍魎たちが一斉に、其の姿を視た。


妖怪たちは戸惑っていたが、一斉に土に消え、空に消えていった。


「な、何が起きた?」須佐軍団全員が何が起きたのか?理解出来なかった。


酒呑童子が呟いた。「須佐、勝負はお預けだ・・・」そして消えた。




「武角さま、な、何が起きたんでしょう?」


「若日子が退却の指示を出したんだ・・・と思う・・・」


「何故?あそこまで我々を追いつめておきながら」


「わからん・・・もしかしたら・・・」


「何ですか?」


「若日子のあの仕草・・・奴は長い間の悪神としての呪縛が解け出しているのかも?しれない。天孫の心に戻りつつあるのかもしれない」


「・・・・・」


「心が戻ったにせよ、二度と高天原には戻れない。現世と黄泉の狭間を永遠に生き続けるだけだ」


「・・・・・・・・・・・・」




そして若日子も消えた。

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