其の23. 天孫 若日子
酒呑童子と茨城童子も流石の攻撃に傷ついた・・・しかし、其の傷跡・・・身体の中から無数の小鬼が這い出て来た。
「な、何だあれは?」
ぎゃあぎゃあ、キイキイ。
地上は忽ち無数の小鬼と餓鬼で埋め尽くされた。
「武角さま、どうすれば?!」
「ますます、大技が使えない。奴らは乗組員や地上の幕兵を取り囲んでいるぞ。攻撃の楯にしている・・・」
「波状攻撃でも全滅出来ません」
「人喰い蟲!」
其の昔、信長を食い殺した怨霊蟲が地面から無数に這い出て来た。
「小鬼と餓鬼を食い尽くせ!」
須佐が大技を使えば忽ち、粉砕出来よう。しかし、幕人と更に外国人をも巻き添えにすれば、国際問題に成りかねない。外国の侵略の大義になってしまう。
地上と海面では魑魅魍魎に襲われて逃げ惑い、助けを乞う人間たちが無数に居た。
若日子軍団は、須佐たちが大技を使えないように人間を利用しているのだ。
人喰い蟲の数も追いつけない程の数だ。
「こんなことでは神戸は壊滅する・・・」
うわあああああ、助けてくれーーー。
ぎゃあああああ。
「わははは、須佐め!どうだ?白狐やお前等のちまちました攻撃なぞ、無駄だ」
酒呑童子と茨城童子が高笑いだ。
「武角さま、若日子を滅っしましょう。長を失えば彼らは退散するはず」
「佐助、しないさ。下等な妖怪どもだ。長がいなくても殺略を楽しむケダモノ共だ」
「?」武角が空に居る若日子を見上げて怪訝な顔をしていた。
「武角さま、どうしました?」
「佐助、視ろ。若日子を・・・」
「若日子が?」
「指示もせず、黙って全体を見回して居る・・・これだけ士気があがっている最中に何を考えている?」
「どうでも善いことでしょう?我々はまずいことになっています。若日子を滅っしましょう」
若日子・・・・何でそんなに悲しい顔をしてる?・・・・武角は気になっていた。
其のとき。若日子が片手を空に掲げた。
魑魅魍魎たちが一斉に、其の姿を視た。
妖怪たちは戸惑っていたが、一斉に土に消え、空に消えていった。
「な、何が起きた?」須佐軍団全員が何が起きたのか?理解出来なかった。
酒呑童子が呟いた。「須佐、勝負はお預けだ・・・」そして消えた。
「武角さま、な、何が起きたんでしょう?」
「若日子が退却の指示を出したんだ・・・と思う・・・」
「何故?あそこまで我々を追いつめておきながら」
「わからん・・・もしかしたら・・・」
「何ですか?」
「若日子のあの仕草・・・奴は長い間の悪神としての呪縛が解け出しているのかも?しれない。天孫の心に戻りつつあるのかもしれない」
「・・・・・」
「心が戻ったにせよ、二度と高天原には戻れない。現世と黄泉の狭間を永遠に生き続けるだけだ」
「・・・・・・・・・・・・」
そして若日子も消えた。




