其の21 龍馬暗殺
誰の声だろう?
「大政奉還?何の事だ?」
「まるで絡繰りだ。誰がそんなことをした?」
「土佐者らしい。誰だ?土佐の誰がやった?」
「土佐からの建白書として将軍・慶喜公に既に渡ったそうだ」
「わかったぞ。海援隊・坂本龍馬だ」
「坂本龍馬・・・」
処が、とうの本人は、
「あの馬鹿、狙われる云うのに、フラフラと町に出ているぞ」
「龍馬!藩邸に居ろ!」
「わしゃ、フリーダムじゃけん、堅苦しい所は合わん」
例のごとく、京の町をフラフラしていた。
龍馬がこんなことが出来たのも、元、江戸小千葉道場・師範代、幕末十士に入る剣士だったからであろう。下手に手を出せなかった。
11月15日 坂本龍馬、中岡慎太郎暗殺される。(近江屋事件)
其の日、慶喜は大久保一翁を呼んでこう云った。
「一翁、先日、話していた大政奉還案を打ち立てた、土佐の浪人・・・何と云ったか?」
「坂本龍馬でございます。浪人の身は許されたと聞いております」
「うむ、新撰組やら、見回り組などに云っておけ。彼には手を出さぬようにと」
「御意」
一翁は部屋に戻って行動に移ろうとした。ふと、視ると机の上に書が置いてあった。急を知らせる書である。
坂本龍馬、暗殺され候
「一歩、遅かった・・・」一翁は、うなだれた。
龍馬は現場にて即死。頭に刀傷、脳を損傷、脳髄がこぼれていたと云う。
中岡慎太郎は瀕死の状態で二日間生きた。中岡は事件の詳細を語ったが、犯人は特定出来なかった。
「坂本と中岡が・・・」武角は思った。
須佐の洞察力、妖力を持ってすれば、事件当時を透視出来る。彼らは犯人たちを知っていた。
「佐々木只三郎・・・と、複数犯だ。用意周到。計画されたことだ。坂本を斬るなら、それ、そうとうの覚悟がいるからな」
「武角さま、いかがいたしましょう?」
「我らが坂本たちの復讐をするか?幕府に、犯人は誰それでございます・・と、云いに行くか?」
「・・・出来ません」
「我らの目的は、若日子だ」
12月7日 ロンドン覚書に従って、兵庫が開港される。それを祝うため、英・米・仏の艦艇17隻が集結。各国公使も大坂に滞在。
12月9日 王政復古大号令。徳川慶喜の将軍職辞職を勅許、江戸幕府廃止。
12月12日 徳川慶喜、二条城を退去。翌日大坂城に到着。
12月16日 徳川慶喜、英仏米蘭伊普の6カ国公使に、外交権は幕府が保持していることを宣言。
「武角さま、兵庫港で何か不信な動きがある・・・と、須佐協力者から連絡が入りました」
須佐協力者は全国に滞在する庶民たちである。
「陰陽師を連れて、兵庫港に行こう」
八咫烏に股がり、京から兵庫港へ飛んだ。
兵庫港。港内には20隻近い軍艦が停泊し、各国の大使関係者なども居た。港内の水の底から泡が吹き出ている。水面にボコボコと泡が立ち、水蒸気を発し、日に日に大きくなっていった。
「海底火山か?」
「港内にそんなもの、ありはせぬ!」
港で幕臣たちが騒ぎ出した。
くぉーーーんんん・・・
「何事だ?軍艦の軋み音か?」
ざばあああああああーーーー
ぐわああああああああーーーーーー!!
海の仲から大怪物が現れた!
「う、うわあああああーー!何だ、あれは?ば、化け物だあああ!!」
うおおおおおーーーーんん!!
2頭だ。其れはまぎれも無い伝説の鬼だった。大鬼である。身の丈20mはあろう。
「うわああーー、た、大砲だ!大砲を持って来い!」
軍艦からも一斉射撃が起きた。
バリバリバリ!!
「砲を構えろ!」
「ば、馬鹿な!こんな港内で、それも外国の艦が密集している場で撃てるか!」
各国の艦である。もし、他国の艦に命中して沈没などさせたら国際問題である。機銃しか使えない。
バリバリバリ!!バリバリバリ!!「撃て!撃てーーー!!」
しかし、鬼たちは機銃などものともしない。
拳を掲げ、軍艦を叩きのめすと艦はまっ二つになり、沈没した。
「ぎゃああああーーーー」
船員たちが海にこぼれ落ち、逃げ出した。其処を鬼は捉えて・・・喰った!
陸地に居た者立ちは、此の光景を視ていた。
「な、なんだ?あの破壊力は?み、視ろ!喰ってる!人を喰ってるぞ!」
「我は酒呑童子。そして茨木童子じゃあ!」
地の底から聞こえるような・・・人間の声では無い。
「しゃ、喋った・・・」幕臣たちは只、呆然としている。




