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須佐妖戦帖 第5章「幕末逢魔乱」  作者: 蚰蜒(ゲジゲジ)
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其の19 須佐、暗殺計画

其の後、後藤象二郎、福岡孝弟が土佐藩邸に土佐からやって来た。

「龍馬、乾、まだわからん。駄目かもしれん」

「わしゃ、藩邸は飽きた」

「須佐たちの処にでも行くか?新撰組が迂路迂路うろうろしてるぞ」

「其れもええな」

「坂本さん、須佐殿たちは旅籠泊まりでしょ?社中全員で行くんですか?相当怪しいですよ」陸奥陽之助が答えた。

「其れもそうじゃな」


陸奥宗光むつむねみつ

天保15年7月7日(1844年8月20日)-明治30年(1897年8月24日)

日本の政治家、外交官、武士(紀州藩藩士)。

文久3年(1863年)、勝海舟の神戸海軍操練所に入り、慶応3年(1867年)に、解散間際の海援隊(前身は亀山社中)に加り、終始坂本と行動をともにした。通称、陽之助。


暫くして、京都二本松・薩摩藩邸に西郷隆盛たちが来ていると云う。

京都二本松・薩摩藩邸は、最初に薩摩と長州が集まり、薩長同盟の会議が行われた。中々決まらず、結局、堀川・一条戻橋近くの薩摩藩士・小松帯刀こまつたてわき邸内に場を移し、其の場にてやっと決まった。慶応2年(1866年)1月21日、同盟結成。


「西郷さんが?陸奥、共に来い」

「何をしに行くんです?」

「大政奉還の話じゃ」

「ば、ばかな!殺されますよ」

「龍馬、よせ!先月、西郷と薩土討幕の密約(薩土密約)の会合を約束したじゃないきに!」象二郎が静止した。

「船中八策の前じゃき」

「武力討幕の密約じゃぞ」

「今は違う」

「西郷さんは、其れで待ってるきに」

「解き吹かせるさ」

「云うな!」

龍馬と象二郎、福岡孝弟は薩摩藩邸に出かけて行った。


「坂本さあ!京におったですか?半次郎どんから聞きましたが。土佐藩邸におるとですか?土佐と、分ち合えたとですか?」

「西郷さん、大久保さん、小松さん、三吉くん、ひさしゅうの」

大久保一蔵、家老・小松帯刀、あの池田屋騒動時、龍馬を助けた長州の三吉慎蔵も居た。


西郷隆盛さいごう たかもり

文政10年12月7日(1828年1月23日)-明治10年(1877年9月24日)

日本の武士(薩摩藩士)、軍人、政治家。通称、吉之助。


大久保おおくぼ) 利通としみち)

文政13年8月10日(1830年9月26日)-明治11年(1878年5月14日)

日本の武士(薩摩藩士)、政治家。位階勲等は贈従一位勲一等。

明治維新の元勲であり、西郷隆盛、木戸孝允と並んで「維新の三傑」と称される。また「維新の十傑」の1人でもある。通称、一蔵。


「後藤殿、薩土密約の件、いかがですか?」

「西郷さん、やりましょう」

「はっは、でっかい花火でも打ち上げたいもんですな。倒幕に向かって大三藩が足並みを揃えた」

薩土密約は成立した。


「西郷さん、あなたにどうしても話したいことがあるとじゃ。今、土佐は容堂公を返して、ある作案を進めちょる」

「作案?ほう、いかなるものですか?坂本さあ」

象二郎があわてて龍馬の尻をつねった。

「幕府の大政を奉還させる案じゃ」

「は?」

「慶喜公に徳川時代を終わらせようと云う腹じゃ」

「どういうことですかいの?」

「すでに我々が勝ったも同然じゃき。白旗をあげてもうおうと」

「な、なに?!」

薩摩側が数人同席していたが、皆、魂消てガヤガヤし出した。


「さ、西郷さん、そういう作もある・・・と云う夢想の話です」象二郎はあわてて弁解した。

「先日、おいどんの処に客人が来ましての。無駄な血の流し合いは止めなさいと云われた」

「須佐たちかい?」

「!・・・・・坂本さあ、須佐殿たちをご存知か?」

「知っている。共に今、話し合いをしている」

「・・・坂本さあ、知っての通り、我らは既に決起の準備が整っているでごわす」

「知っている」

「あんたの社中から買った軍艦や武器もある。長州もそうです」

「知っている」

「そんな話を桂小五郎にも話すのですか?」

「同意出来れば・・・」

2人は三吉慎蔵を視た。

三吉は下を向き、困り果てていた。


「あんた、幕府に寝返ったとですか?!」大久保がいきなり吐いた。

周りの薩摩藩士全員が刀の鍔に手を掛けた。

「う、ううううう」土佐者たちはどう対処すれば善いか焦っていた。

「西郷さん、よく考えてくれ。新時代を・・・」

「おいどんは薩摩を預かる身。答えねばならんとです」

「事は薩摩ではない。日の本ではないか?」

薩摩藩士が全員立ち上がり、刀を抜いた。

「解り合えぬか?・・・もっと理解し合いたいが、無駄のようじゃな」

龍馬は立ち上がり帰り支度をした。

「後藤、帰るぞ」「う、う、う」

「後藤さん、薩土密約は成立・・・でよろしいんですか?」西郷が睨みつけながら、そう云った。

こくり、とこうべを垂れた。

「土佐はどうなっちょります?容堂公と同じですか?酔えば尊王、さめれば佐幕・・・鯨海酔侯げいかいすいこう・・・意見がまとまりませんな。坂本さあ!」

「・・・また、来る」

そういうと其の殺意が渦巻く刀の中をゆっくりと龍馬たちは部屋を出て行った。

「薩摩も長州も血を見なければ収まらない・・・」

武角の言葉が頭をかすめた。


「龍馬!いきなり、あんなこと云って!理解するわけが無い!俺は死を覚悟したぞ!」

「三吉くんが居た。彼は冷静だ。西郷や大久保だって、落ち着けば・・・」

「なんで、急に?斬られるとは思わなかったのか?」

龍馬は、ニヤっとしながら云った。

「思わんかった」


西郷に落ち着きが戻った。

「三吉くん、君は坂本さあと死地をくぐり抜けた仲だ。どう思う?」

「わたしは・・・坂本さんを信じます。考えてみてください。社中や土佐、全体が佐幕派になったなど思えますか?其れをわざわざ、報告に来ますか?桂もそう考えると思います」

「・・・そうだな、三吉くん」大久保がそう云った。

「坂本はまだ、何か隠している・・・」

「須佐殿たちと何を企んでいる?」

「須佐を殺りましょう」そう云ったのは中村半次郎である。

「半次郎どん、早まるな。我が藩は天孫降臨の土地ぞ。須佐殿には手を出すな」

「何を云う・・・」半次郎はすでに須佐暗殺を目論み始めた。


「龍馬、幕府要人を後、取り入れる案は云わなかったので助かった」

「当たり前じゃ。其れを云えば、あの場で斬られてたろうさ」

「今はそんなことが云えるときじゃない。其れに、殿も建白書を出すかどうかもわからない」

「容堂さんが書いたとしても、いつ?出す気じゃ?」

「・・・・わしゃ、大政奉還案など無くても善い」

「象二郎!」

「視たじゃないか!龍馬、薩摩の反応を!何をし出すか、わからんぞ」

「土佐には手を出さんさ」


須佐は龍馬と土佐藩邸で数回会い、論議した。

7月、須佐は武角、伝七以外は出雲に帰った。佐助は御所に居るが、其の夜半、武角たちと旅籠に居た。

旅籠の周りを薩摩藩士30人が取り囲んでいることに気づかなかった。

「はい、はい、どなたですか?」旅籠の主人は誰か訪ねて来たので表を視た。

戸の隙間から刀が出された。

「静かにしろ。戸を開けろ」

「う、うう」

戸をそーっと開けると覆面をした武士数十人が立っていた。

「騒ぐと殺すぞ。須佐と云う者達は居るか?」

主人は恐怖のあまり、震えている。顔を縦に振り、2階だと云うのがやっとだった。

「よし、行け」10人程が階段を静かに昇った。

「階段の方で何か音がしましたね」伝七がそう云った。

「主人か?」

其のとたん、襖がバサっと開き、侍が刀を頭越しに襲いかかって来た。


「ちぇすとーーーーー!!!」

「まずい!!」

襖近くに居た伝七は不意を突かれ、逃げ切ったが腕を斬り落とされた。

「ぐわーーー!!」

「伝七!!」

侍たちがなだれ込んで来た。


武角と佐助は直ぐさま、避けた。佐助が手裏剣を出した。

「佐助!やめろ」

ドタン!ガーーーン!ドタドタドタ!斬り合いが始まった。


佐助と武角は凄まじい勢いで刀の嵐を避けた。

「こいつら、人間の動きじゃない!」侍達は眼を喰らった。

「示現流か。薩摩の者達だな」武角はそう叫んだ。

「伝七!無事か?!」

「だ、大丈夫です」

伝七は手傷を負いながらも刀で応戦した。

「死ね!須佐」

武角は凄まじい早さで、倒れ臥した伝七を庇うと、こう云った。

「やってみろ」そう云うと手のひらから気を発した。


「うわあああああーーーー!!」

ずばーーーん!!

侍達が吹っ飛んだ。しかし、窓を蹴破って、新たな連中がなだれ込んで来た。

たまらず、佐助は手裏剣を放った。

「ぐわああ!」

「佐助!致命傷は与えるな!」

武角は再び、側にいた武士に気を発した。

其の武士は天井に吹っ飛んだ。


佐助は逃げ回りながら手裏剣と小刀で応戦した。

武角は気をだけで応戦しているが、睨みつけるだけで武士の腕が折れた。そして足を折り、腹をえぐった。


「ちぇすとーーーー!!」

1人、窓から凄まじい勢いで斬り掛かって来た。武角はたまらず、刀を出した。

ギャリーーーン!

「貴様、薩摩の中村半次郎だな」

「武角殿!死んで貰う!」

「何故だ?」

「土佐と共謀して何を企てている?!」


武角の眼が緑色になった。すると刀から螺旋状に電撃が奔った。

武角は刀を返すと半次郎の着物を斬った。

すると着物が燃え出した。

「うわあ!あちちっち!」

「西郷の命令か?いいか!此の刀でお前等、焼き殺して欲しいか?!」

侍たちは退いた。

「こいつら、やっぱ人間じゃねえ!逃げろ」

ドタバタと去っていった。

「馬鹿!退くな!殺れ!」

半次郎はそう云ったが、1人では勝ち目が無い。

悔しそうに去って行った。

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