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須佐妖戦帖 第5章「幕末逢魔乱」  作者: 蚰蜒(ゲジゲジ)
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其の18 幕府の血

「幸明天皇が毒殺されたとは、聞き捨てなりませぬな。如何様にして、そう思いなさるか?」

「其の前に、坂本さん、あんた土佐藩と解り合ったのですか?」

「時代の流れじゃの。参政・後藤象二郎も噛んでる」

「かんぱにぃ・・・かい?」

龍馬は笑みを浮かべた。


しかし、乾は此の須佐たちが徳川にも通じていることに懸念を持っている。


「なるほど。では、答えよう。あなた方には沢山の敵がいる。幕府、諸外国、諸藩・・・もう1つ・・・」

「諸藩まで?」

「薩摩、長州との薩長連合?たわけた連合だ。彼らは自藩のことしか頭に無い。組んだ方が利があるからだ。目的が済めば、また争いが始まる」

龍馬が首を振った。「須佐さんよ。よくご存知だ。その通りよ」

「坂本さん、何故?中岡殿と彼らを組ます事に疾走した?」

「無論、組めば幕府を転覆させる力になるからじゃき。薩摩には西郷吉之助、大久保利通、小松帯刀。長州には桂小五郎、伊藤博文、山県有朋がいる。彼らは自藩主の私欲など知っているが、そうは動かん。しかし、彼らには藩侍の血が濃い、思考が藩から出ていない。皆が話が合わないのも当然じゃ」


「須佐殿、もう1つ・・・とは?」乾が聞いた。

「魔です。坂本さん、何処まで情報を持っていますか?」

「そこんとこが、ようわからん。教えてたもれ」龍馬の情報も此処までらしい。

「土方たちを襲ったのは古事記に書かれる、天若日子あめのわかひこです」

「あ、天若日子ーーーー??!!」龍馬も乾も流石に眼を丸くした。

「奴は我らと同じ法力を使い、岩倉と組んで幸明天皇を亡き者にした」

岩倉具視いわくらともみかいの?」

「若日子は岩倉をたぶらかし、協力させて厨房に毒を仕組んだはずです」

「うーーん、龍馬、岩倉が・・・とは、どうだ?」

龍馬は答えた。「あの男は喰えん男だ。次の天皇を我が範疇から・・・とでもは考えるはず。其のためには、何をするかわからん男じゃ」

「我らはそう読んでいるが、岩倉には何も証拠は無いのです」

「ううむ。須佐殿たちの能力があれば、厨房にも容易く入れる・・・しかし、毒殺とは・・・」

「徐徐にいたぶらせ、殺したのです」

「やり方が陰惨だ・・・須佐殿、若日子は何を企んでいると思われるか?」


「其れがわからんのです。実質、奴は尊王攘夷の強健だった孝明天皇を殺して幕府を決起付けた」

「幕府の味方ですか?」

「そんなことを考える奴では無いです。兎に角、あなた方には多数の敵が居ると云うことです。奴は幕府よりも強敵・・・いや、土佐も潰され兼ねません」

「・・・・・・・・・」


「其処でじゃ、須佐さんよ。こういう方案を作ってみた」

龍馬は書き記した物を見せた。

「船中八策?」

「船の中で、まとめたからじゃ」

「大政の奉還!?」

「どう思うね?」

「一部の国学者が云っていた意見ですね。しかし、実現は無理。そう云われていた案だ」

「其れを容堂公の名で慶喜公に建白書として出す」

「・・・・・・」

「どうじゃ?須佐殿」

「今なら考えられる・・・実現出来るかもしれない」

「龍馬!須佐殿はお前と同じ考えだ」須佐と龍馬は同じ考えなことに乾は吃驚びっくりした。

「慶喜公はどうじゃね?」龍馬が一番気がかりだったことを武角に聞いた。

「慶喜公は・・・弱気だ。家老たちも揺れている。其処を若日子に何か誑かされていると思う」

「善い事を聞いた。龍馬!薩長連合と組んで、一気に幕府を潰そう」

「乾!まだわからんか?!幕府を潰しちゃならん!と云ったろうが。お前も山内根性が抜けんの。其れでは協力はせんぞ!」

「龍馬、悪かった・・・」


「乾殿、慶喜公が何故?弱気になっているかわかりますか?」

「そりゃ、志士の勢いに吞まれそうだからでは?」

「公はそんな玉では無い。公も新時代の流れを読んでいる。武士の時代は終わりにすべき・・・とも思っている」

「本当か?!」

「其れは公自信の考えです。徳川のおさとして、其れは云えない。だから揺れている」

「聞いたか?乾、わしの考えが・・・幕府は無くしても要人達を推挙する考えを」

「龍馬・・・何故?そんなことが読めるんだ?」

「わしにゃ、勝先生を始め、多くの幕府の友人がいる」

「お前が幕府の人間と、つるむのは・・・そういうことか・・・」

「其れがフリーダムじゃ」


「処であの容堂公が此れに賛同するとは、思えませんが?」

「須佐殿、象二郎が必ず、解き吹かせます」

「容堂公は、ただの目立ちたがりじゃからの」

「龍馬!ぶしつけに云うな!」

「で、我らは何を?」

「慶喜公との接見時、共をお願いしたい」

「我らを?」

「慶喜公のあなた方への信頼が成功の鍵となるはず」

「土佐藩のために?」

「いえ、日の本のために」

「一言、云っておきたい。我らは先日、長州と薩摩に談判をしに云った。天皇まで暗殺する輩が出たからです。あなた方のしていることは、ただ、人がバタバタと死ぬだけだと問いたんです。暖簾に腕押し。せせら笑っていた。彼らは血に飢えている。何が起ころうと幕府の血を視ねば収まらないでしよう」

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