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須佐妖戦帖 第5章「幕末逢魔乱」  作者: 蚰蜒(ゲジゲジ)
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其の16 危険な方策

「龍馬、素晴らしいぜよ。・・・しかし、此の大政たいせい奉還ほうかん?」象二郎、乾、福岡が唖然とした。


「読んで字の如しじゃきに」

「お前、こんなことが!馬鹿を云うな!大公儀がするわけなかろう!」

「象二郎、云うが、容堂は土佐の立場をはっきりさせなあかんぜよ。戦争を何処までも続けたいのか?」

「殿はそんなことは考えておらん」

「欧米列強は、俺らに武器や軍艦を幕府より安く売っているきに」

「どういうことだ?」


「最新兵器、重器を志士側に手に入りやすくしている。だから、わしゃ、社中で入手して売っている。幕府が外国から買う値より、それでも安く薩長は手に入る」

象二郎たちは社中の存在の意味を理解した。そして此の龍馬が恐ろしくなって来た。


「それが、かんぱにい・・・か?幕府を転覆させるか?」

「そんなことが出来るか!」乾も福岡も叫んだ。

「薩摩、長州、彦根、其の他諸々の藩が買っている、幕府側も気づいている。此のままでは危ない・・・とな」

「近代兵器の前に幕府は滅びると?」

「欧米はそう分析している、だから、志士側に加担している」

「志士に加担して何の特がある?」

「占領だ」

「!」


「わしゃ、死んだ長州の高杉さんから聞いた。密航して上海で現地を視て来たそうだ。其処では欧米から持ち込まれた麻薬に、侵された者達でいっぱいで内乱状態だったと。やり方はこうだ。まず、宣教師を送って麻薬を売りつける。麻薬欲しさに内乱が起きる。其処を鎮圧のために軍隊を送り込む。気がつくと占領下になっている。幕府は欧米列強が侵略するやり方は信長の時代から知っている。奴らは堅固だ」

「知っている。病的なキリシタン弾圧は、そのためだった。鎖国もそうだ」

「幕府の者たちはそういう教育を受けて来ている。志士はどうだ?」

「兵は大半が農民・・・藩侍は自藩のことしか頭に無い・・・」

「だから、幕府を潰したら、あかんぜよ」

「まて、龍馬、お前は大政奉還せよ!と訴えているではないか?!」

「慶喜公をさらし首にはするな、と云うことだ。奴らは負けるだろう。しかし、きっと幕府の力が必要になる」

「・・・・・・・お前、何処でそんな考えを持ったんだ?」

「フリーダムじゃ」

「フリーダムってのは、そんな考えが出来るのか・・・・」


「容堂さんは幕府を守りたいじゃろう?」

「当然だ。関ヶ原の勝利で土佐の土地を大公儀から与えられた、初代・山内一豊公から恩義がある。だから時代の流れに動揺している」

「わしらは長宗我部ちょうそかべじゃ」

「四国の覇者・長宗我部は御家断絶。お前等は下士として残され、250年間、さいなまれ続けて来た。多藩の者達は自藩主が次の将軍!と考えているのだろう?」

「殿様はそう思って、叛旗を許している・・・志士たちはそうは考えてはおらんが、彼らは藩と云う枠から出られない」

「・・・・・・フリーダム・・・か」


「象二郎、どうする?」龍馬は象二郎に決断を聞いた。

「乾、福岡、お前等はどうじゃ?」

「な、何を云ってるのか、わからんわい!象二郎、お前が決断してくれ」

「龍馬、大政奉還が叶っても、戦争は終わらないぞ。徳川が政権を放棄しても、薩長たちは恨みをはらすべく、戦さをおっぱじめるだろう」

「其のときは、考えがある」

「大体、我が藩主は慶喜公に信用が無い。四侯会議も制されて兵庫開港の勅許を得た」

「慶喜公に絶大な信用のある者達を知っている。彼らに力を借りようと思っている。徳川だけじゃない、薩摩や長州の藩主とも対等に話が出来る連中だ」

「そ、そんな者がおるのか?誰じゃ?」

「須佐じゃ」

「須佐?」


象二郎たちはつぶさに須佐の情報を聞いた。

「信じられないな・・・あの冷血漢、新撰組までもが・・・・」

「容堂を説得して書状を書かせてくれ」

「この案の出所は土佐藩主・山内容堂とするのか?・・・龍馬、説得させる自信が無い」

「象二郎、賭けだ。他に善い方策があるか?」

「・・・龍馬、此の案は我々の命も危ないかもしれないぞ。志士からも幕府からも狙われるかもしれない」

船は故郷土佐に着いた。

龍馬たちは脱藩は許されて降船を許されたが降りなかった。

「此処で俺たちが家族に会ったら、揺らいでしまうかもしれない」

後藤たちは急ぎ、容堂への接見を進めた。

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