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須佐妖戦帖 第5章「幕末逢魔乱」  作者: 蚰蜒(ゲジゲジ)
12/25

其の12 憑依

「須佐殿!」

「ああ、あなたは・・・大鳥殿。生きていましたか」

「須佐殿、1人ですよ、1人に手も足も出ない・・・わたしは、恥ずかしながら隠れました。武士として恥ずかしい」

「それで善い。あれは此の世の者ではありません。向かって行っても死人が増えるだけです。慶喜公は?」

「わかりません」


武角は接見の間の前に来た。

「慶喜公・・・」

「須佐殿か?・・・入ってくれ」

「慶喜公、心配致しました。ご無事で何よりです」

「奴は消えた。会津の報告の通り、奴には・・・死の匂いがした」

「元は新撰組からの報告です」


生き残った者達が横で死体を片付けていた。


「須佐殿、すまぬ。少し自分の部屋で休みたい」慶喜は相当まいっていた。

「上様、離れの部屋へ参りましょう」

須佐たちも家老たちと違う部屋に赴いた。


1人の家老が話し始めた。「須佐殿、二条城が襲撃されました。上様は精神的打撃を受け、疲れている。後は我々が話します」

「失礼致しかねた・・・」

「そう、あなた方が帰った後、新撰組が容保かたもり殿と共にやって来たのです。あなた方が云う魔を視たと。此の世の物では無いと。直に軍を固めた方が善いと。鉄砲や大砲ではだめだ。多分、火攻めが有効と思われると。で、急遽行った」

「土方ですね」

「兵達は、まだかいと戦っているのですか?」1人の家老が須佐に聞いた。

「はい。ご家老、大丈夫です。もうすぐカタがつくでしょう。・・・ところで若日子は何をしに?」

「それは・・・・・・・」

「?」

「今は話せません。上様の許可が無ければ・・・」


武角は何か怪訝おかしいと察した。


「何か隠している・・・若日子と何か密約でもしたか?」心の中で思った。

「ご家老、一言進言しておきます。奴と取引など絶対せぬよう」

「・・・」

須佐たちは退散した。同じ頃、延暦寺麓から都の端での攻防は終わっていた。餓鬼と小鬼は全滅した。


「何だ?!あの態度は?あの有様を視て頭が狂ったのか?そうでしょう?武角さま!」

「云うな・・・佐助・・・」

京は守られた。兵たちが歓声を上げている。白狐たちは退散していた。

人々は、安堵し、延暦寺の方に皆が手を合わせていた。助かった僧侶たちが手当を受けている。須佐たちを見かけると手を合わせた。


「上様・・・」家老は慶喜の部屋の前に居た。

「入れ」

「須佐殿たちは帰りました」

「大変な一日だった。生き残った者は幾人だ?」

「30人程・・・・」

「大阪城に暫く拠点を置こう。・・・お前は冷静だ。今の幕府の状況をどう視てる?」

「あれは此の世のものでは無い。江戸から救援が来ても皆殺しにされるでしょう」

「奴らが後方の敵としたら、志士は前方の敵って処か?どっちでも同じことだが・・・ふふふ」

「我々は・・・志士達にも勝てないでしょう」

「わたしもそう思う。さらし首になるか?身体をバラバラにされるか?・・・・どうすれば善い。志士と隗との板挟みだ」


「隗(若日子)の提案は?・・・・」

「吞む・・・しか無いか・・・・」

慶喜は思った。

「須佐殿、すまぬ・・・・我々も生き残りを掛けなければならない・・・」


明けて次の日、

「す、須佐さんたち!」

「何だ?主人、慌てて」

「ご、御所のお役人さんが数人、貴方がたを訪ねて来てます」

「わかった」

「へへーーーー」

旅籠の主人はどうやら須佐を探ったらしい。御所や二条城で噂を聞いた。

「何か、偉い人たちらしい。しかし、そんな連中が何でこんな汚い宿に連泊しているんじゃろ?」

今一、理解出来ない。


佐助が階下に降りて役人と会った。

「須佐どの全員、御所に宿を移して貰えませぬか?」

「我らは志能備しのび。志能備が御所で迂路迂路うろうろしては・・・」

「急務なのです。御門の命に関わる。助けてほしい」

「御上の病状が悪いのですか?」

「此処だけの話。医者にも原因が解らないのです。が、・・・」

「が?」

「皆が思っていることがあります」

「其れは?」

「呪い・・・・です」

「呪い?!」

「昨日からどうも様子がおかしい。顔つきも変貌して・・・・」

「若日子の仕業か?!陰陽師殿は?」

「彼らが始めに気づいたのです。須佐どの、ささ、どうか御所に」


須佐たちは役人と共に御所に赴いた。

廊下を女たちが忙しそうに走り回っていた。

「何をしているんです?」

「造花を作って御門の部屋に運んでいるんです」

「御上の要望ですか?」


「武角どの」

「陰陽師どの。何がどうしたんですか?」

「御上の部屋に行ってください。視れば一目で解ります」


須佐たちは足早に部屋に行った。

「御上、須佐です」

「入れ」


ふすまを開けると・・・・


「むう?」

部屋中、造花でいっぱいだった。

「此れは・・・・」

「佐助さま、此の造花は梅です」舞が答えた。

「梅?!」


「女中共め。梅を持って来いと云えば、季節柄無いと抜かしおった」天皇とは思えない言葉づかいだ。

「御上、梅の季節ではありませぬぞ。何故、急に梅を?」

「梅は善い」


「梅屋敷は此処では御座らぬ・・・・・」

天皇は佐助を見据えた。

「何と行った?佐助」

「梅屋敷は此処では御座らぬと申しました」

「梅屋敷は何処に行った?」

「御座いません」

皆が立ち上がった。

「もう無いのです。菅原道真すがわらみちざね公!」

天皇は皆を見据えた。

「御上に道真公が・・・憑依している・・・・・」

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