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1-01 はじまり

 初連載。頑張ります。できればあらすじに目を通していただけると助かります。


 丑三つ時に響く、リズミカルな音。鬱蒼とニセアカシアが覆う山の中、少女がショベルを振り下ろすたびに、深淵のようだった穴は浅くなっていく。ジャキ、ジャキ、と一定間隔で響いていた音がやみ、少女はゆっくりと背筋を正した。頭上で輝いていたヘッドライトが、とても弱々しく光を放つ。その顔は逆光に加えフードに包まれて、見ることはできない。

 少女は荒い息を整えながら、落ちそうになった汗を慎重に拭い取った。見下ろした先には今しがた埋め終わったばかりの地面が見えている。そこにはショベルの後も付いておらず、一見しただけではここが埋められた場所だとは分からないだろう。傍によけられていた落ち葉が、慎重にそこにかぶせられていく。

 やがてそこが周りと同化し見分けが付かなくなったところで、少女は深く息を吐いた。顎の先から汗が落ちそうになる。やがて離れた汗は重力に従いまっすぐに地面に――。

 落ちる前に少女が掌で受け止めた。弱々しい光に照らされて土に汚れた軍手が、また一つ小さな汗染みを作る。緑青色のつなぎの袖口は、汗を吸ったのかじっとりと湿っている。辺りは真っ暗で誰もおらず、その事実を認識したのは少女のみであった。小刻みに震える右手を、固く握りしめてからもう一度開く。



 手袋の土を軽くたたき落とすと、近くの枝に掛けられていた鞄を地面に下ろし、タオルを取り出す。少女はその木にショベルを立てかけると、無造作に顔を拭う。そのまま首元へと移動し、服の中に残っていた汗も適度に拭った。それからビニール袋を取り出し、その中に毟り取った手袋とタオルを詰め込む。

 そして辺りを見渡すと、ライトを消し、着ていたつなぎのファスナーを下げてバサリと脱ぎ始めた。少女の未発達な様子を残す薄い肢体が晒されるが、あいにくとそれを見るものはいない。依然辺りを警戒しながらも、少女は鞄の中に入れていた服へと着替えていく。傾斜に足を取られないよう、その動きは慎重だ。

 パーカーに袖を通した拍子に前かがみになり、フードが少女の視界を一瞬覆い隠した。薄暗かった視界がさらに暗くなり、慌てたようにたたらを踏む。体勢を立て直し、息を漏らした。

 少女はそこで驚愕に目を見開くこととなる。少女の目線の先には土に薄く汚れた黒いスニーカーが見えていた。紐や模様の間に土が入り込み、丁寧に洗わなければ汚れが落ちないことは明白だろう。しかし、問題はそこではなかった。

 少女の目にそれが詳細に見えること、星の微細な光では見えないだろう、スニーカーの細かな様子まで分かったこと。何より。


 あたりが、朝日に照らされているように、明るいことである。



 混乱の中、少女は即座に荷物をまとめて持ち上げる。脱いだつなぎを手袋と同じ袋に入れ、鞄の中に詰め込んだ。ニセアカシアの木々はなりを潜め、見たこともない木々が青々とした葉を茂らせている。いつの間にか転がっていたショベルを拾い上げ、少女はあたりを見回した。鈍器で叩かれたかのように、頭がぐらぐらと悲鳴を上げる。突然の陽光がまぶしく、思わず眉をしかめる。

 見たこともない木々と、暖かな木漏れ日。カッコウのような声が、静かに朝を告げて回る。足元に積もっていたはずの落ち葉は消え去り、まだ少し冷たかった風は、今の少女には少し暑いほどまでに変化していた。どこからか聞こえる川のせせらぎと、湿った苔の匂い。小動物の駆けていく足音。戸惑いがちに一歩踏み出した足を、柔らかな大地が優しく受け止める。

 靄のかかったようにうだる思考を、頭を振ってはっきりさせる。何が起きたのか考えようとするも、少女の頭は正常に働いてはくれない。

 山頂から一陣の風が吹く。力強く、生命を感じさせる風だった。生ぬるかった空気や湿り気を吹き飛ばし、汗を拭いたばかりの額を乱暴に撫ぜていく。その心地よさに目を細め、少女は焦る気持ちを一度放棄した。


 美しいと、ただ純粋に思う。


 目に映る光景全てが、少女には煌めいて見えた。陽光が葉にあたり葉脈を浮かび上がらせる様。木々が風に体を揺する音。遠くに聞こえる楽しげな鳥の声。四方八方に満ちる生命の気配。それら全てを、美しいと感じた。次第に少女の表情には好奇心が宿り始める。こうしていても仕方がないと、前向きな考えが浮上する。


「よしっ」


 一度気合を入れるように声を出すと、その小さな背に不釣り合いなほど大きな鞄を背負う。少し位置を調整した後、ショベルを拾い、一度だけ振り返った。何もない地面。掘り返された後のない、まっさらな大地。肩掛け紐を、少しだけ握りしめる。

 そして少女はゆっくりと、下山し始めた。



 振り返ることは、なかった。



 プロローグなので短いです。ここから少女はどうなるのでしょうか。僕にもわかりません。

 あらすじがぴったり666字で、悪魔の子になるのかな?と思いました。ハッピーエンド目指します。

 初連載なので勝手がよくわかっていません。章分けってどうやるのでしょうかね。

 一人でも楽しんでいただけるよう、ゆるりと書いていきます。


 ここでは貪欲に生きようと思いますので以下一言以上。

 よろしければ感想、考察などお聞かせください。

 イラストなど書いていただければ飛んで叫んで喜びます。

 童話のように展開したいので挿絵も入れたいのですが、絵の下手さには自信がありますゆえ…。

 絵のうまい知人に了承が貰えれば、もしかしたら付くかもしれないです。

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