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遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
怪盗 王国ニ舞ウ
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第九十七話 堕天姉妹

やっと大きな事件は一段落。

「メアリ殿下、貴女をナイアールを幇助した容疑で逮捕いたしますわ」


メアリ姫の部屋に入ってきたアイリーンの第一声がコレだった。

同室に居たマイクローナ将軍は一瞬呆気に取られた後に激怒する。


「貴様!誰に断ってこんな・・・」

「証拠を提出なされたのは・・・メアリ殿下ご自身ですわ。そうですわよね?」

「なん・・・だと・・・?」


相変わらず優雅に紅茶を飲む親友に目を向ける。彼女はこんな状況にも関わらず普段通りだ。

まるでそうなる事が当たり前のように。


「ええ、むしろ来るのが少しばかり遅かったのではありませんか隊長さん」

わたくしもギリギリまで迷いましたので・・・」

「迷う必要はありません、貴女は貴女の思う正義を遂行すればよろしい」

「殿下がナイアールと組んだのも殿下の正義だったのですか?こうして自ら幕を引く事も?」

「さて、どうでしょうか?少なくとも私は既に正義を捨て去ってしまいました」

「御同行願います。それとマイクローナ将軍には休暇を取って頂きます」

「どういう意味か?」

「いえ、左遷とか降格とかの陰謀めいたお話では無くて単純に陛下からの配慮ですわ。将軍に休んで頂かないと部下も休暇を申請し辛いので。心配しなくとも将軍にはあと三十年程現役でいてもらうつもりですわよ陛下は。休暇中に殿下の話相手になって欲しいのだと思いますわ」

「分かった」


それからの経過は早かった。スピード裁判にスピード判決、これはメアリ姫が弁護士を拒否して罪状に異議を申し立てなかった為であるが、ともかく彼女は予定通りある地方へ封じられる事となった。


「遠路遥々ようこそおいで下さいました」

「ここがエンドー・ダンドレジー屋敷ですか、案外質素ですねクラリース女男爵?」

「ええ、事情が事情ですから表くらいは地味にしておかないと、それで将軍までいらしたと言う事は・・・」

「『メアリが辱しめを受けるなら同罪の私も受ける』って聞かなくて」

「あらあら、奥まで入ると本当に後戻り出来ませんがお二人ともよろしいですか?」

「構いません、むしろ大悪党の秘密基地に興味深があるわ」

「それでは先ず長旅の汚れを落とす為にお風呂ですね」


クラリースがパチンと指を鳴らすと緑肌で小さな角の生えた小柄なメイド達が現れた。


「この子達が彼の言っていた魔物の女の子?」

「我々は魔物娘と呼んでいます」

「魔物娘・・・お話には聞いていましたが実際お会いするのは初めてですね」

「中々愛らしいな、それに知性を感じる。普通の魔物と違うと言うのも頷けるな」


ゴブリンメイド達はキラキラした瞳でメアリ姫とマイクローナ将軍を見上げている。


「お・・・」

「お?」

「お姫様です~~~!!」

「ウチの自称プリンセスじゃなくて本物です~~~!!」

「正真正銘VIPです。全力でおもてなしします!!」


もし、この場にタルトが居たら「私だって正真正銘の姫よ!」と反論していた事だろう。


「それでは皆さん、お二人を大浴場までご案内して、その後はエステをお願いします」

「「「は~い」」」


案内された大浴場を見て二人は驚いた。


「王城の風呂場より広くて良い香りがします」

「見てみろメアリ、複数の薬湯が効能別に仕切られているぞ」

「そして・・・」


半裸の女性二人が並んで礼をする。


「ドロシーです、お世話させて頂きます」

「王国諜報部のテレサです」

「諜報部のテレサ、そう言えばナイアールに付いたんだったな」

「おっと、私は今でも王国に忠誠を誓ってますよ。ただ彼の妻でいる事と王国への忠誠は両立出来ますので」

「まあ、今日からは私も仲間入りですから仲良くしましょう。ところでドロシーさん・・・でしたか?何処かでお会いしたような・・・?」


獅子獣人のドロシーはガックリと項垂れる。


「ええ、分かってます。一応王族ですが家の格はほぼ庶人ですからね。イベントとか滅多に呼ばれないし、呼ばれたら呼ばれたらで着ていくドレスやマナーに困るし・・・王子は初見で言い当てたのになぁ・・・」


ついには隅の方でいじいじとイジケてしまった。


「ヘイ!ドロシー、これでも被って元気出しなよ」


テレサがどこからか持ってきたバケツヘルム(防水加工)をドロシーに被せるとドロシーは勢い良く立ち上がり急に自信に満ち溢れた声を張り上げた。


「はっはっは!姫殿下のおもてなしに抜かり無し!」


ドロシーがパチンと指を鳴らせばメイド風のフリル付きビキニを身につけた仮面の水着メイド軍団がズラリと並んで礼をした。


「お前達、先ずはその自慢のおっぱいで姫殿下を洗体して差し上げなさい」

「え?おっぱい?え?」


・・・

・・


「生き返りますね~」

「美容と健康の為の技術と聞くが、なるほど、最近書類仕事ばかりで肩が凝っていたから気持ち良いな」

「エステと言いましたか?ハマってしまいそうです」


エステティシャンに指示を出すクラリースもにこやかに弛む二人を見て微笑みを浮かべている。


「この娘達も中々技術は高いですが、当家には更に高等技術を持った超一流も居ますよ」

「む?メアリに超一流とやらを用意しないのは何の意図があってか?」

「彼女は魔物娘ですし、お高いですよ?もう少し当家に慣れてからにしましょうね。さて、それでは当家で一番偉い方にお会いして頂きましょう」

「やっとナイアールのお出ましか」

「ああ、夫ではありませんよ」


そんなクラリースの声と共に世界は暗転した。

気がつけば二人はドレスを着て立っていた。


「!?馬鹿な!?私達は今まで寝転がっていたのに

「それにこのドレスはいつの間に?」


疑問に思う二人の背後からひょんと軽い、まるで親しい友人と錯覚してしまいそうな声が響いた。


「後ろじゃよ、お二人さん」


その声に導かれるように振り向いた二人は・・・。


「ぐ・・・」

「こ・・・れは・・・」


突然周囲に光が戻り自分達が豪奢な部屋に立っている事に気付いた二人は皇国風のドレスを身に纏った狸獣人と目が合った瞬間、ぬらりとした重苦しいプレッシャーに思わず膝を突いた。


「あ・・・ああ・・・」

「なっ!?・・・」


現職の将軍であるマイクローナは元よりメアリも従軍経験のある武人だ。簡単に膝を屈するような鍛え方はしていない。

だが目の前の女には逆らえないと思わせる何か圧倒的な格があったのだ。


「少し脅かし過ぎたか?楽にせよ」


その言葉にプレッシャーが弱まり二人は肩で息を吐く。


「この国の姫にその友たる姫将軍、よくぞ参った。妾の名は守鶴、守鶴前もりづるのまえと呼ばれておる。お主達がナイアールと呼ぶ男の第一婦人であるぞ。これお前達、高貴な娘がいつまでも頭を下げるものでは無いぞ」

「第一婦人はクラリース女男爵では無かったのか!?」

「この圧力はナイアールが時々放つ物の数段上、恐らく影の支配者」

「あっはっはっは、妾は支配者などでは無いさ。ただ人に憧れ人に成れず、それでも人を愛する愚かな魔獣よ」


守鶴前が扇子を一振りすれば扉が勝手に開き廊下からクラリースが手招きしている。


「今日のところは顔合わせ、何か屋敷の事で困った事があれば妾を呼ぶが良かろう。既にこの屋敷は妾が肌も同然故」


最後の言葉と共に守鶴前は遠ざかり、いつの間にか二人は廊下に立っていた。


「それでは我等が夫、ナイアール、あるいはダン・エンドーダンドレジー子爵こと段蔵様の寝所へとご案内致しましょう」

「何故寝所!?」

「ご存知の通り夫は好色で方々から女性を集めては妻へと迎えています(注:半分以上はクラリース達が連れてきた女性です)」


クラリースは心底嬉しそうに語る。


「となれば次は子孫を残さなければならないでしょ?性愛の楽園はいつしか夫の意図を離れて快楽を叩き込む義務へ・・・っと喋り過ぎました、こちらです。当然中では真っ最中ですので驚かれないで下さいね・・・色んな意味で」

「うっ・・・破廉恥な」


メアリもマイクローナも少々顔を赤らめているがメアリは敢えて何でも無いように振る舞う。


「と・・・当然ね、喜んで抱かれましょう。いえ、むしろ私が抱いてやるわ!」


段蔵にとって寝所は聖域・安全地帯・結界でなければならない、その扉は絢爛豪華にして重厚、重々しく開いたソレの向こうからアロマの香りと女の嬌声が漂ってくる。

礼をして入室を促すクラリースにおっかなびっくり二人は歩を進める。

そこで二人は驚愕の光景を目撃する。真っ最中だったから驚いたのでは無い!


「ああん♥️段蔵、私にももっとオシオキして♥️」

「お姉様ズルい、私も私も♥️」


そこには権力闘争の末、相討ちになったハズの第一王女と第二王女が段蔵を挟んで寝転がっていたのだ。


「・・・・・(絶句)」

「・・・・・(絶句)」

「あれメアリ?やっと来たの?」

「意外と遅かったな」

「お姉様方・・・何故?」

「まあ、何故も何も・・・」

「最初からグルだったと言う事だな」

「一体何時から・・・」

「それには俺から答えよう。そもそもこの計画は俺がこの世界に来るよりずっと前から始まっていたんだ」


現国王が少年の頃から王国の腐敗は目に見えて酷く、彼の成人後妹である王女が陰謀か逃亡かで行方不明になる事件だって起きてしまった。

そして彼の娘二人は王国の浄化の為に怪しげな貴族達を集めて相討ちさせる計画を立てたのだ。


「そこで俺が計画の改善とサポートをしてやったんだよ」

「これは父上にもお話してる事よ」

「父上が!?」

「そもそもナイアールは自他共に認める女好きで美姫に声を掛けたのだぞ?まさか美姫は自分だけだとでも思っていたのか?」

「それはちょっと調子に乗りすぎじゃないかしら?ね、メアリ?ちなみに私は言われなくてもすぐに気付いたけどね」


そんなレモン姫のからかいにメアリは羞恥で真っ赤になった。


「まあ、ヨグス国の侵攻やジム・モロアッチの暗躍で結構大変だったけどな」

「ちなみに私達が段蔵と男女の関係になったのもヨグス侵攻の直前だったな(第六十話参照)」

「パロットには絶対手柄を立てて生きて帰って欲しかったから、私達の初めてを対価にナイアールに手伝ってもらったんだよねー♥️」

「一応言い訳させてもらうなら元々対価無しでこっそりと独自にヨグスは始末するつもりではあった。俺としても邪魔だったからな」

「それで軍師としてパロットに付いてもらったのだ」

「あっ!あの軍師はナイアールだったのですか!?」

「気付かなかったの?貴女達の部下のアイリーン・ショルメは真っ先に気付いてたみたいよ?」


メアリ達は呆然と話を聞いている。


「んで女伯爵を始末したりでやっと落ち着て国内の膿を一掃しようかと言う時に、このバカ娘二人は勝手に計画の前倒しを始めやがった」

「私達の失政でこれ以上民に負担を強いるワケには行かなかったからな」

「俺は何とか計画を遅らせようとジム・モロアッチの幹部に化けてリミッター付きの魔物化薬を渡したり(第八十一話)アイリーンに止めさせるよう工作したり(第九十五話)手を回していたんだが、誰かさんの所為で二人の連携が早くて対処が後手に回ってしまったんだ。気が付けば計画は引き返せない段階まで進んでいた」

「えへへ~♥️でも実際御前様から貰ったテレパス能力のお陰で助けられたのよ(第二十二話)」


二人は守鶴前から与えられた思考伝達テレパス能力にて情報交換を行いながら互いの派閥を調整し合っていたのだ。勿論ジェーン姫の側近であるシスター風の女はレモン姫であり、逆にレモン姫の側近だった喪服の女はジェーン姫であった。

最終決戦にて二人の姫は確実に邪魔者達を消す為、危険を承知でそれぞれのリミッターを勝手に外して暴走してしまった。


「最後の手段でレモン専用の魔導戦車にこっそりテレポーターを仕込んでいたからギリギリで助けられたがな」

「テレポーター?」

「ああ、メアリは知らないか、瞬間移動を可能にする魔道具だよ。私とレモンの部屋にも一つずつ設置してあるんだ」

「ではダン子爵がいつの間にか城内に居たりしたのはまさか・・・」

「実は半分以上は私達の部屋から出入りしてたりして」

「これからメアリにも使ってもらう事になる。それより話の続きだ。何とか二人を回収したもののどちらも瀕死の重症だったから、知り合いに頼んで大掛かりな治療をして貰った。その結果・・・」


するりとベッドから抜け出た二人の姫にまたしてもメアリとマイクローナは驚いた。

ジェーン姫の肌が徐々に青く変色し、黒髪は金髪に、頭から角が生え、翼はコウモリの物へと変じた。

一方レモン姫は身体の所々が金属の装甲に覆われていく、最も特徴的なのが背中のウイングと右手が変形した砲身だろう、まるでアニメかゲームのキャラみたいだ。


「ジェーンは使用した薬物で魔力暴走による異常再生を起こし完全に身体が変質してしまった。結果、暴走が止まった現在でも魔物状態がデフォルトになってしまい外出の時は人に擬態する必要がある」

「命があっただけでも上々だわ。この子達もね」


ジェーン姫の周囲にパタパタと妖精みたいな女の子が三人飛んで来た。よくよく見れば三人ともジェーン姫そっくりである。

これはあの戦いで切り落としたジェーン姫の腕と脚と翼が独立再生して個別の生命体になった女の子なのだ。

テレポーター起動の際、彼女達もジェーン姫と見なされこちらにやって来たのだった。


「レモンは戦闘による身体の損傷が酷く半分以上を別の物に置き換える必要があった」

「頭と生殖器はしっかり残ったのが幸運だったわ」

「何が幸運なもんかよ!!」


実際はレモン姫自身の細胞から培養した生体パーツを移植したのだが、担当した魔法使いとドクターとレモン姫本人が悪ノリで魔改造、脳内に補助演算装置を仕込み、眼球に分析能力、背中にジェットウイング、心臓は世界システムを組み込み霊界・魔界・天界等の向こうの世界から無限に魔力供給が可能で、バストはこっそりCからDに増量、そして最大の特徴は右腕に装着された魔力を放つ【レモンバスター】だ。

これは魔力光を弾丸状に撃ち出すワンドの発展型で溜め撃ちが可能、最大チャージ時はレモン派で使用されたワンドより範囲は狭いものの威力・貫通力は倍以上を誇り、使い捨てだったワンドと違い使用回数に制限が無い。

更に、魔道具を解析してバスターの能力として使用する事が出来る。


「俺は普通に生きてくれれば良かったんだがな、先走ってくれたお陰で何人かの取り逃しが出てしまったし」

「つまり?」

「近い内にまた面倒な奴らが出て来るかも知れないって話だ」


そしてまた二人がベッドに戻り段蔵に絡みつく。


「だから私達がこうしてナイアールに抱かれてやる気を出してもらうの」

「今日からメアリも愛して貰うのよ、王国の・・・私達の平和の為にね」


こうして姉妹はやっと元の仲良し姉妹に戻る事が出来たのである。

事件はこれからも起こるだろうがひとまず一件落着であろう。


「ところでレモンお姉様、あの変な語尾は止めたんですか?」

「あれは単なる役作りだから」

次はセクシー話

いくつか事件を解決したら他国編になるかも。

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