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遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
怪盗 王国ニ舞ウ
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第八十八話 地ヲ穿ツ怪盗 B面

予告が届いたと知らされた時、我々は先ずウッホ・ビスト氏の身辺調査から始めたっス。


「税もそれほど高くは無いですし、良いんじゃないですか?」

「うちの坊やが盗賊に拐われた時に軍を率いて仇を取ってくれたんです、きっとあの子も浮かばれます」

「槍術も強いですよ、正に正義の人って感じで・・・でも結婚していないのが心配ですね」


こんな風に良い評判ばかりっス、だからこそあの闘いを経験した私らは・・・裏があると確信したっス。


「ようこそ捜査部隊の皆様、歓迎致します」


屋敷で迎えたビスト氏は短髪の細マッチョで嫌み無い笑顔を向けている。あえて自分の陣地に捜査部隊を引き入れ、協力するフリして煙に巻こうとする自信家タイプっスね。


「家裁のレッド・マッパーです。皆様のお世話係を任命されました。よろしくお願いいたします」


こっちは筋骨隆々の金髪獅子獣人、世話役にしては些か繊細さに欠けそうな外見だけどビスト氏の横に並び立つと言う事は近しい位置の人っスね。

一通り挨拶した後、ゾクリと一瞬、ビスト氏達から嫌な視線を感じたっス、だけどこの視線は私や他の女性隊員に性的な欲望を持っているという感じでは無かったっス、むしろ・・・。


「???」


振り向いてもビスト氏達はにこやかな笑みを向けるだけ、少なくとも女性に対して如何わしい視線を向ける気は無いらしいっス。


「まあ、ともかく予告にあった【一角獣カイナラヤの宝石箱】について詳しく聞きたいっス」


ビスト氏は何とも申し訳なさそうな顔をした。


「それなのですがね、大変申し訳ございませんがお教え出来ません。おっと、ご気分を害されたのでしたら謝ります。無論、皆さんを信用してはいるのですよ?ですが念には念を入れて可能な限り情報を知る人間を少なくしておきたいのです」

「・・・まあ、理には適ってるっスね。分かったっス、これ以上は聞かないっス」

「ご理解いただきありがとうございます」


私は部下を呼びつけてこっそり命令を下したっス。


(ああ言ったけど所在の調査を目立たない様にお願いするっス)

(分かってますよ副隊長殿!)

「そっちは任せたっスよ隊長」


ナイアールとの戦いに赴いた隊長をお想いつつ、明日の予告時間まで、こちらも頑張るっス。


◇ ◇ ◇


アイリーンにナイアールの正体を知られた以上、最早下手な口八丁の誤魔化しは通用しない、如何なるコネを使い偽情報で翻弄しようとしても彼女が惑わされる事はあり得ない。

ならばどうするか?

非常に面倒ではあるがナイアールは現行犯逮捕以外での逮捕は不可能だと思わせるしか手は無いだろう。

手っ取り早いのはアイリーンにダン・エンドーとしての姿を見せつつレディースに盗みをを実行してもらう事だろう。

・・・しかし、それで楽しいのかナイアール?それで満足なのか遠藤段蔵?

俺はアイリーン・ショルメの監視の中で俺自身が【一角獣カイナラヤの宝石箱】を盗み出す方法を考えた。

勿論自分一人で全てを成そうなんて自惚れる気は無い、愛する人達と協力するから成功を掴み取れるのだ。


◇ ◇ ◇


「ウッズ副隊長殿、彼も捜査部隊の隊員なのですか?」

「見習い君っス、中々気の利く良い子っスよ」


ビスト氏は慈しむような眼で見習い君を見ているっス。

ナイアールもだけど正直何を考えているかは計りかねるっス。


「ふむ・・・未来ある元気な若者は国家の宝ですね」

「ホントっスよね」


そこへやって来たのは有能そうなタヌキ獣人のメイドさん、ビスト氏は彼女を見るなり舌打ちしたっス。


「ウッホ様、定例会議の準備が整いました」

「チッ、気の利かない・・・分かった、直ぐに行くと伝えろ」


ビスト氏は不機嫌そうに、且つメイドさんと目を合わせないようにしているっス、少なくともメイドさんを性的な目で見ているという事は無さそうっス、この感じはやっぱり・・・憶測だけで考えるのは危険っスね。


「すみません副隊長さん、そういう事ですので席を外させていただきますね」

「警備はお任せして欲しいっス」

「心強いです。レッド、皆様のお手伝いを頼む」

「承知致しました」


マッパー氏にこの場を任せたビスト氏は会議とやらに出席する為退室したっス、そして気付いたのはマッパー氏も時折女性に嫌悪の意思を示しているという事っス。

彼等の態度から女性隊員が攻撃される可能性を考え女性隊員には必ず複数人で行動するように伝えたっス・・・それが今回の間違いだと気付かずに。


◇ ◇ ◇


宝の位置は下見の段階で確認している。無論同じ部屋に隠してあった奴の罪過も確認している。

俺はこれ以上被害が拡大しない様に、且つ捜査部隊に事態の解決を任せる為にタヌキ姉さんを奴の屋敷に派遣した。

こちらも準備万端だ、隊長殿が訪問している今も数度の試験を繰り返しているが気付かれた様子は無い、当然だ、俺ですら彼女達の気配を感じていなければ気付かなかっただろう。

明日が楽しみだ。


◇ ◇ ◇


「見習い君が消えた?」


それを訴えたのは最近見習い君と仲が良かった女性隊員だったっス。


「そこの廊下を四人で見回っていたらいつの間にか彼だけ居なくなってて・・・」


騒ぎを聞きつけ会議から戻ったビスト氏とも意見交換するっス。


「やはりナイアールに捕まったのではありませんか?」

「ナイアールがっスか?何の為に?」

「泥棒の考える事なんて我々には解りませんよ、きっとろくでもない理由でしょう」

「むむむむむ・・・ふ~む」


私は廊下に飾ってある一枚の大きな絵画に注目したっス。例えばあの裏に隠し通路があるとか。

絵画を調べようとしたっスけれども・・・。


「それも結構高いので触れるのは勘弁してください」

「(そう来るっスよね)分かりました。ここには何も無さそうっスね」

(副隊長、それで良いんですかい?)

(勿論良くは無いっスけど興味無いフリして向こうがボロを出すのを待つっス)

(成る程)


その時、私達は不敵に笑うタヌキメイドの存在に気付いてなかったっス。


◇ ◇ ◇


夜が明け予告当日になった。

既に家の“中身” は地中を潜りビスト邸の真下まで移動している。移動中の慣性は感じられない、スプリングの移動がスムーズなのとオータムの空間制御能力が優秀だからだろうか?アイリーン隊長も気付いていない、こりゃ楽勝だな。

そう思った瞬間、家がグラグラ揺れてしまった。

ヤバ!!

アイリーン隊長は地震だと勘違いして外の様子を確認しようとしている。今、扉を開けられたら計画がパーだ。

俺はアイリーン隊長の注意を引く為に大袈裟に何も無い書斎へ飛び込み、如何にも怪しい事をしてますよ的な動作を隊長の目の前でしてやった。

何とか注意をこちらに向ける事が出来た、一安心だ。


◇ ◇ ◇


むむむ、怪しい動き発見っス。

タヌキメイドさんが例の廊下でウロウロしてるっス、きっと絵画の裏に隠し扉が・・・アレ?メイドさんその反対側の胸像の頭を掴んでクイッと捻ると、なんと胸像の横の壁が動いたっス。

メイドさんが隠し通路を通った後で絵画を調べてみても絵画には何一つおかしな所は無い、つまり・・・。


「しまった~~~~!何の仕掛けも無い絵画の方を警戒するように誘導されてたっス!」


こうしちゃいられないっス、一刻も早く隊員を招集しなくちゃ。


「全員集合!」

「副隊長!この通路は!?」

「なるほどタヌキのメイドが・・・ナイアールが隠れ潜んでいるやも知れませんな」

「直ぐにチェックするべきです。見落としがあればナイアールに付け入られる事でしょう」


全員分かってるから話を合わせ易いっス。満場一致で隠し通路の調査となったっス、外を見ればナイアールの予告した昼まであと少し、恐らくこの先が諸々の決戦の場になるっスね。

私達は隠し通路を通り地下へ続く階段を駆け下りたっス。


「!!これは・・・」


その先で見た物は、豪奢な台に鎮座する宝石箱と複数人の少年を閉じ込めた鉄格子だった。


「見習い君!!」


見習い君と仲が良い女性隊員が鉄格子に駆け寄る。行方不明になってた見習い君もここに閉じ込められグッタリして倒れている。


「あのお姉さんが言った通りだ!」

「助けが来た!」

「お家に帰れるの?」


鉄格子の中の子供達が一斉に歓喜の声を上げ泣きじゃくった。


「まさか、人攫い!?」


その時、コツコツと背後から二人の足音が響いてきた。


「あ~らら、気付かれちゃった♥」

「しかたありませんね」


それはウッホ・ビストとレッド・マッパーの声、私達は振り向いて絶句した。

彼等の姿は所謂ボンテージとか言われるヤツだろうかピッチリテカテカした皮のパンツと上着を着ている。


「これは一体どういう事っスか!?」

「それはこっちのセリフよ、私達の楽園に土足で入り込むなんて」

「イケナイ子達ね」


口調まで変わって気色悪い、子供達も青い顔をしている。


「誘拐・監禁・暴行の容疑で二人を逮捕するっス、観念するっスよ」

「観念ですってウッホお姉様♥」

「いや~ん、怖いわ~♥だ・か・ら奥の手使わせてもらうわよん」


二人はパンツの中に手を突っ込みゴソゴソまさぐると、錠剤を取り出した。


「まさかそれは!?」


錠剤を自分達の舌の上に乗せ、ウッホ・ビストとレッド・マッパーは抱き合い、濃厚なキスシーンを演じている。その異様な光景に男性隊員達は吐きそうになっていた。


「ん・・・ぷぁ~~。キタキタキタキタ~~~~!!」

「ビンビンのギンギンよ~~~~~~!!」


そしてやつらの体は筋肉が膨れ上がりウッホは白い外骨格がレッドは赤い外骨格に覆われた。

最も特徴的なのは股間から突き出した鋭利な槍だろう、比喩表現では無く本当に槍が飛び出ている。

そしてお互いの槍の柄を掴んで・・・。


「はう♥」

「ウホッ♥」

「「「「「引っこ抜いた~~~~!?!?!?」」」」」

「さ~て、私達のヤリに貫かれたいのはどの子かしら?」


ウッホのねっとりとした視線に男性隊員達は尻の穴に寒気を感じたらしい、尻を押さえて青い顔をしている。


「女は邪魔ね」


女性隊員の一人に振り下ろされた槍を私は渾身の力で剣を使って受け止める。


「ぐ・・・ぐぐぐっ」

「あら~?頑丈な剣ね~、じゃあ私も張り切っちゃおうかしら?」


他の隊員も武器や魔法で応戦するが、二人の外骨格にはダメージが通らない。


「もっと~気合入れなきゃダメじゃな~い♪」


いけない私も押されてこれ以上は耐えられない。相手の力が強すぎてまるで地面が揺れてるような錯覚が・・・。


『ゴゴゴゴゴ』


いや、コレ本当に地面が揺れてる!!


「な・・・何!?何なの?地震?」

「ウッホお姉様、私怖い」


そして地面を突き破ってソレは現れた。

鋼鉄で出来た巨大な壁?柱?小屋?は登場した際に鉄格子を半壊させた。


「な・な・な!?」


鋼鉄の塊りが複数の口を開き中から鋼鉄の巨大な腕が飛び出しウッホを弾き飛ばした。


「グエッ!?」

「お姉様!?イヤ!!お姉様!!お姉様は私のお姉様になってくれるかもしれなかった乙女なのよ!!」

「は・・・裸の男の子達・・・これは夢なの?」

「副隊長、奴らの魔物化が解除されていきます!」


そして鋼鉄の怪物は【一角獣カイナラヤの宝石箱】に狙いを定める。


『あう・・・お兄ちゃんそこ違う、もっと右側』


巨大な腕が右往左往している。


『旦那様、私が操作しましょうか?』


私達が攻撃しても鋼鉄の怪物はびくともしない、恐らくコイツがナイアールの予告にあった鉄鬼王シュド・メルなんだろう。


『ん、ゲーセンでは結構鳴らしたクチだから・・・ん、イケたか?』


巨腕が宝石箱を掴むとそのまま空いた口に放り込み腕は引っ込んでしまった。

私達の集中攻撃も虚しく鉄鬼王シュド・メルは元来た地中に潜ってしまった。地面の穴もどうやってか綺麗に埋められてしまったので追跡も出来ない。


「む~、とりあえず被害者の保護を優先っス、変態二人は拘束して連行っス」


こうして今回の事件は捜査部隊の敗北という形で幕を閉じたっス。

以前から男の子を攫っては犯し殺していたというウッホ・ビストは盗賊退治の際に同じ趣味の盗賊の頭領だったレッド・マッパーと意気投合、他の盗賊達を皆殺しにして愛人関係を結んだらしいっス。

子供達の話ではタヌキのメイドさんが来てからはウッホ達は子供達に手を出さなくなり、美味しい食事を与えられ「もう少しで助けが来る」と励まされたらしいっス。あの後、屋敷を調べてもタヌキのメイドさんは見つからなかったっス。

幽閉されていた子供達の中には盗賊に殺されたと思われてた子供も居たので家族は息子さんの生存を大変喜んだっス。


「隊長、星の智慧スターリー・ウィズダム医療研究団と名乗る方々から被害に遭った子供達への検診の許可を求めてるっス」

「そうですわね、性病の診断、暴行の治療や心のケアは必須ですわ、直ぐに許可なさい」


これは後から聞いた話っスけども犯人のウッホやレッドも幼い頃に虐待を受けていたらしいっス、同情はしないっスけれども何ともやりきれない話っス。

助かった子供達が正しく成長してくれる事を願うばかりっス。


◇ ◇ ◇


盗んだ宝石箱は正直好きなデザインでは無かった。

確かにちりばめられた装飾は美しいが、どう見ても一角獣が戦士の尻を狙ってる構図にしか見えないのだ。


「対犯罪研究所の玄関先にでも置いといてくれ」


こうして俺は不吉な宝石箱を手放したのだった。


「旦那様、丁度お二人の出産の準備が整っております」


そう、今日はミーネとオードリーの出産予定日、どんな子供が産まれるか楽しみだ。


「・・・ん、段蔵・・・」

「段蔵様」


並んだ二人の頭を優しく撫でて手を握ってやると辛そうな表情が一瞬柔らかくなった。

もう何度も経験したが、こういう時、何も出来ない自分が情けなくなって、その都度「側に居てくれるだけで嬉しい」と言われてしまう、何度経験しても慣れないものだ。


「産まれましたよ!」


室内に響く元気な泣き声。


ミーネが産んだのはエルフの男の子でオードリーは雀鳥人の女の子だ。

何度か経験しているがやっぱり両親と違う種族が産まれる場合があるというのは不思議でしょうがない、とは言えタヌキ姉さんと俺の子である清明は狸獣人なのでユグド人特有の性質なのかも知れない。


「ともかく二人ともお疲れ様、今日から新しい部屋を用意してあるからそこで過ごしてくれ」

「・・・・・今までの地下牢は?」

「コラコラ、いくら快適と言っても産まれた赤ちゃんに鉄格子を見せるわけにはいかんでしょ」

「・・・うん」

「家族全員でしっかり育てような」


約束の六人の子供まで直ぐかも知れない。いや、きっとそれ以上の兄弟姉妹になるかも。

今から楽しみだ。


◇ ◇ ◇


~おまけ~


妻達の段蔵に対する呼び方


家族になったばかりの妻の場合:「ダン様」領主としてのダン・エンドーから

慣れてきた妻の場合:「ダンゾー様」本名から

長い付き合いの妻の場合:「段蔵様」発音が自然になった

幼い妻の場合:「お兄ちゃん」「お兄さま」血の繋がらない妹的なやつ

一部の幼い妻の場合:「パパ」「お義父とうさま」犯罪臭がパネェ

次回はそんな赤ちゃん達のお話。

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