表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
怪盗 王国ニ舞ウ
81/163

第八十一話 敗北する宿敵

つまるところ何処まで行ってもこれは暗殺である。

状況証拠と被害者の証言しか無く、その被害者も捜査側の人間。

そして彼女は数学と魔法学の権威にして王国に多大な功績を残した賢人である。


「ふむ、こちらに向かっているという王国軍本隊とはナイアールを捕らえる為では無く私を始末する為か、ウッズさんにそれほどの指揮能力が有ったとは計算外でした」

「当然ですわ教授、彼女は私の一番の相棒ですのよ」

「ですが私の調べでは動いている兵数は僅か、私がその気になれば直ぐにでも魔物軍団を動かす事が出来ますよ?」


賢人は嬉しそうに自身の犯行を認め、それでも尚負けは無いと言う。


「動いているのはマットー少将の部隊ですね?確かに彼の部隊にジム・モロアッチの構成員は入っていません。だとしても王国軍の動きは筒抜けなのです。王国軍では私には勝てない」

「まあ、そうですわよね。抜け目無い教授の事ですから、自分に何かあれば魔物を暴れさせるぐらいの事はしますわよね」

「解っているではないですか、でしたら・・・」

「ですが教授の軍団は動きません、既に壊滅しましたわ」

「なっ!?一体どうやって?ここに向かっている王国軍以外は間違い無く動いていません。各地の領軍や他国の軍も動いた様子はありません。例え極星が動いたとしても国中に存在する魔物牧場や下部組織を同時に壊滅なんて不可能です」

「私の嫌いな連中から手を借りたのですわ。貴女よりは余程マシでしたのでね」


ジョゼフィーヌはキョトンとしている。咄嗟にアイリーンが何処の勢力と組んだのか思い付かなかったからだ。

しかし、「そんなまさか、あり得ない」と思いつつも、可能性のある人物を思い浮かべて、振り払った。


「いや、バカな、あり得ない!あなた達が組むなんて・・・。二人は相容れない存在です。万が一を考えて決定打も与えました」

「ああ、屍食鬼館で妙に絡んできたのはやはりソレでしたのね」

「そうです。例え本当に手を組んだとしても彼が現れて僅か数年、この短期間で我らを殲滅する力などと、例え可能だったとしても彼の周囲にはそれらしき戦士は・・・」

「これ以上の会話は不要!国家反逆罪にて即刻処刑いたします」


アイリーンには解っていた。教授も最初は確かに動揺したかも知れないが、理解した事柄を何度も聞き返す程愚かでは無い。

これは煽っているのだ。アイリーンとナイアールの繋りを露呈させる発言をアイリーンから引き出してアイリーンの・・・いや王家の権威を失墜させる切っ掛けを作ろうとしているのだ。

王家とナイアールの繋りに関してはアイリーンも前々から予想は出来ていた。行く先々でナイアールが不正貴族の悪行を見せ付けるように暴いているのだ、そしてパロット王子とのやり取り、嫌でも気付くと言うもの。

ともかくこれ以上教授の言葉を聞いてやる義理も答える義理も、そもそも喋らせる義理も無い。


「弓兵・魔法兵構え!!」


その宣言と同時に教授の身体が炎に包まれる。自身の火炎魔法を身に纏い鎧としたのだろう。しかし、兵達の数に押し負けあっさりと炎の鎧は破れる。

教授の肩に砕けるような激痛が走りテラスの柵まで追い詰められ、敗北を悟ったかテラスの先、断崖絶壁の海に飛び込もうとして腕と太腿を射抜かれ、アイリーンの火炎弾が炎の鎧すら突き抜けて腹部に直撃し、そのまま海へと落ちて行った。本当にアッサリと。


「(飛行魔法や魔道具の類いは使っていない?)至急、水属性魔法使いを集め海中を捜索しなさい!急いで!!」


アイリーンの指示に人員が動くが、苦虫を噛み潰したような顔は変えられない。


「隊長・・・?」

「チッ・・・あの女、落下する直前で笑いやがった・・・」


リトは一瞬聞き間違えかと思った。普段感情が揺さぶられる事態が発生してもお嬢様口調を崩さなかったアイリーンが初めて冷ややかな声で悪態を吐いたのだ。


「私は崖下の指揮を執ります。リトは城内の調査をお願いしますわ」


しかし、城内に怪しい箇所は無く、女伯爵ジョゼフィーヌ・カリオストロの遺体もついぞ発見されなかった。


(自供は引き出せたものの明確な証拠は発見出来ず。更には暗殺も不完全に終わってしまった。私は王国の為に“次”に備えなければならない)


これ以降アイリーン・ショルメは生涯ジョゼフィーヌ・カリオストロと出会う事は無かった。

しかし、エルキュリア王国はアイリーンの主導で犯罪に対する研究に力を入れる事となる。もう二度と女伯爵のような連中に王国民を傷付けさせない為に。


・・・

・・


とある人気の無い海岸にて何かを担いだ半魚人が一匹陸に上がった。

半魚人は事前に与えられた命令通り主人を近くの小屋まで運ぶ。

小屋の中には半魚人と同じく直立歩行タイプの魔物が控えており傷を負った主人を寝台に横たえた。

部屋のテーブルにはひび割れた宝玉、そして魔物達の主人であるジョゼフィーヌ・カリオストロの隣の寝台にはあの日から昏睡状態のままの番外検体が死んだように眠っている。


『テン・ソウ・メツ』

『テン・ソウ・メツ』


魔物達の不吉な呪文に呼応するように魂魄転移の宝玉は妖しく輝き、禁断の儀式が今、始まろうとしていた。


◇ ◇ ◇


~数日後の深夜 埠頭~


黒髪黒翼の鳥人女性が人を待っていた。


「連絡ではこの場所のハズだが・・・」


冷たい風が一陣通り抜けると、いつからそこに居たのか黒い影が立っていた。


「貴様が連絡を寄越した例の組織のセバスチャンとやらか?死んだと聞いていたが?」


闇の向こうから現れた男、セバスチャン・ボーマニャンは女性に恭しく一礼する。


「何、抜け道などいくらでも用意出来ます。でなければあの組織では生き残れませんからな。それよりも、そちらこそ大丈夫なのですか?」

「何がだ?」

「いえ、未来の女王陛下が護衛も無くこのような場所まで・・・」


黒き女性、ジェーン・エルキュリア第一王女は鼻で笑う。


「貴様の話にはそれだけの価値が有ると言う事だ」


それだけ言うとジェーン王女は催促するように腕を伸ばし、セバスチャンはその手に紙束と木の小箱を差し出した。


「ご要望の通り最新の薬とその資料です」

「そら、約束の金だ」


金貨の詰まった大きな袋を片手で軽々と持ち上げセバスチャンへと渡す。受け取ったセバスチャンはその重さに僅かにバランスを崩す。


「おっとと・・・、その腕力も薬の成果ですかな?」

「貴様が知る事では無い」

「これは失礼。それでは私は帰らせて頂きます」


立ち去ろうとするセバスチャンにジェーン王女は声を掛ける。


「待て、貴様は今後どうするつもりだ?我らの敵になるなら容赦はせんぞ」

「組織は無くなり女伯爵も死んだ。後はこの金で一生遊んで暮らすだけです」


セバスチャンは来た時と同様に闇に溶けるように立ち去った。


「まあいい、貴様がどう動こうと結果は変わらん。運命は常に我らが手の内だ。ナイアール、例え貴様であってもな」


強化薬によって妖しく輝く翼を広げ妖艶な笑みを浮かべるジェーン王女も夜空へと消え、不吉な黒き羽根だけが一枚残された。まるで彼女達の運命を示すように。

今まで一話限りのヒロインとか登場しましたが彼女達は沢山居る段蔵のハーレムの一人です。こう言う人も居るという簡単な紹介なので基本再登場はしません。

段蔵にとっては大事な妻の一人ですが本編中は特別重要ではありませんので、今後も一発キャラは出ますが名前を一々覚える必要はありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ