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遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
怪盗 王国ニ舞ウ
80/163

第八十話 異星からの脅威

80話という事で、別小説のゲストも参戦。

話は決戦直後まで遡る。

暗い洞穴の中で火を灯し、倒れた男の顔を覗き見る。


「やっぱり・・・」


男の顔はアイリーンの予想通りクラリースの夫で貴族にして大商人、即ち・・・。


「ダン・エンドー氏」


異界より現れた怪盗ナイアールの素顔、もっと近くで確認しようと煤けた顔に手を伸ばした瞬間、倒れていたナイアールの腕がガッチリとアイリーンの手首を捕まえた。


「おうわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


と、女性にあるまじき奇声を上げて驚くアイリーンにナイアールは呆れた表情で起き上がった。


「お前が事前の打ち合わせで死んだフリしろって指示出したんじゃぇか」

「・・・ではやはりわたくしのメッセージに最初から気付いていたのですわね?」


それはエンドー・ダンドレジー男爵領とエンドー・フーディー子爵領の看板にだけ書かれた謎の記号。

この世界の人間には変な記号にしか見えなかっただろうが、そこには日本語でこうかかれていた。


『死んだフリ』


アイリーンが以前の絡繰城での騒動の時にナイアールの部下達が使っていた暗号の書かれた文書を幾つか持ち出して解読を試みたのである。特に『死んだフリ』は絡繰城でナイアールの部下がアイリーンの目の前で説明しているので今回の暗号に使用されたのだ。

これが本来は暗号などでは無く異界の言語である事を突き止めたアイリーンは、翻訳される可能性のあるジョゼフィーヌ教授の目から遠ざける必要があった為、作戦を立てるという名目で教授を一箇所に釘付けにしていたのだ。


「気付いていた割には本気で攻撃して来てましたわね」

「そりゃ、完璧に死んだフリするなら真に迫った方が確実だろ?観客も居た事だし」

「女伯爵の部下が見ていた事も気付いていましたのね」

「わざと囲いを緩くして目撃させるように仕向けていたのによく言うぜ・・・そんで?俺と密会の場を用意したんだ。まさかこの前の謝罪ってワケじゃ無いんだろ?」

「それこそまさかですわ。アレは自分の信念に基づいた行動・・・と言いたいところですが、あの時ばかりは少々その信念を曲げられたと言わざる負えませんわ」


ナイアールの顔が険しくなった。


「お前程の達人が自分を見失ったと?」

「・・・・・女伯爵、貴方も探っているのでしょう?何か掴めましたかしら?」

「俺の質問に・・・」

「どうですの!!」


アイリーンの剣幕に圧されナイアールは舌打ちする。


「チッ・・・、お察しの通り女伯爵に関してはこちらは何一つ掴めていない、奴の部下を捕まえても何も知らないし完全にお手上げだ」

「私が女伯爵の正体に気付いたと言えば・・・どうされますか?」

「ハァ!?・・・ふ~ん、へ~、ほ~、んじゃその正体を言ってみなよ」

「ジョゼフィーヌ・カリオストロ教授ですわ」

「・・・・・ハァ!?!?」


ナイアールの分析ではアイリーンが嘘を言っているようには感じられない、表情・呼吸・発汗何れも正常だった。故に不可解。


「ジョゼフィーヌってあの美人先生か?バカ言え数学者にして魔法学者、農業改革や奴隷解放にも多大な貢献をしているんだぞ、それ以外にも的確なアドバイスを度々行っていた人だ」

「まさかその程度で“信じた”のですか?」

「む!!」


ナイアールは、遠藤段蔵は人を信じない、只理解するのみ、当然ジョゼフィーヌ教授も信用なんてしていない。しかし、本当に理解したのか?と問われれば疑問がある。段蔵は自分だって信じられないのだから。


「前の事件でも思いましたが、自分の変装は完璧なクセに他人の変装を破るのは下手ですのね」

「変装だと?」

「教授は自身の人格を偽っていますわ。天性の技か魔道具に依るものかは不明ですが」

「どうして気がついた?」


一瞬、アイリーンが遠い目をして溜息ひとつ、非常に嫌そうな顔をする。


「私、在学当時からあの女の事が大嫌いでしたのよ。人間、嫌いな物程よく注視するんですわ。決定的だったのがポール・ダレット氏が貴方に宛てた最後の手紙とオギュスタンの部屋の蔵書の目録」

「ああ、俺が頼んだアレか」

「本来は貴方の物ですからお返ししますわ」


手紙と目録を受け取り目を通して段蔵は「ふん」と鼻を鳴らした。


「つまり教授の著書【星辰の魔法力学】を持っていたから教授が黒幕だと?安易じゃね?」

「それともう一つ、魔法に疎い貴方はアレを星の動きが魔法に及ぼす影響力を書いた学術書なんて思っているのでしょうけれども、アレの本質は惑星ユグドを破壊する魔力量を計算した破滅の方程式ですわよ?」

「んな!」

「教授は見所のある人間に自身の著書を渡して試していたのですわ。ダンドレジー家にもあったのではなくって?」


その時、段蔵は自分でも認識出来る程、間抜けな顔をしていた。自身の詰めの甘さに対して。そして、アイリーンを宿敵と認定しながら何度か敗北していたにも関わらず、未だに最初の頃の屋根から落っこちそうになっていた少女のままだと心の何処かで侮っていた自分の浅慮さに対して。


「・・・はは、こいつは・・・負けたな」

「それでは?」

「良いぜ、今回はお前に従ってやる。無論こちらでも裏付け調査はさせて貰うがな」


二人はお互い顔を見合せ合って不敵に笑った。


「そんじゃあ、この【フレミングの七詩集の原本】は報酬として貰って行くぜ」

「あっ!いつの間に!?」


洞穴から出ようとした段蔵は一度立ち止まり、振り返る事無くアイリーンに問う。


「ところで俺の顔はちゃんと見えていたか?」

「ええ、勿論見えていましたわよダン・エンドーさん」


敵対心を抱く人間に段蔵の顔は見えない、それは組織に植付けられた段蔵の呪いだ。だが、今アイリーンは段蔵の顔をしっかり認識している、つまりそう言う事なのだろう。

ナイアールは頭を掻いて洞穴から消え去った。


◇ ◇ ◇


~数日後~


ライヘンバッハ城でアイリーンと教授が睨み合っていた頃、ナイアール一味は王国各地の魔物牧場に同時に奇襲を仕掛けていた。

そんな事とは露知らぬカッター領主シラーヌ・カッターはのんびりとティータイムを楽しんでいた。

彼は凡庸ではあるもののどちらかと言えば善人であり女伯爵の陰謀やナイアールの遊びやアイリーンの闘いとはほぼ無関係の立ち位置に居る人物だ。

さて、彼の領地には魔道具を回収する為のダンジョンが存在する。魔物が跋扈するダンジョンには何故か時々魔道具と呼ばれる珍しくそして便利な道具が出現する事がある。ダンジョンをワザと残して高価な魔道具を回収して利益にしているのだ。

彼は全く知らなかった。ダンジョンの横にある山の内部が実は犯罪結社ジム・モロアッチの所有する魔物牧場の中でも最大戦力、【ドラゴン牧場】である事に。


「今日も我が領地は平和じゃのう」


ふと、彼がダンジョン近くの山を眺めたその瞬間、山の頂上が消し飛んだ。


「ブ~~~~~~~~ッッッ!?!?!?」


思わず紅茶を噴出した彼の出番はメタ的に言えばここまでである。彼の命じた調査隊は何故か足止めを喰らい真相に辿り着く事は無い、だが山の内部では激戦が繰り広げられていた。


~ドラゴン牧場~


「ヒャッハ~、一番乗りだぜ」


ぽっかり空いた山頂から奇襲を仕掛ける。こちらの奇襲に対応し飛翔し始めたドラゴン達の頭を刀で貫きながら八艘飛びの如く次々とドラゴンを飛び移る段蔵に続くように武装した女性達が守鶴前の指揮の下降下していく。


「炎に注意せよ、指揮する人間を押さえればドラゴンの動きは止まる、早急に陣地を形成し押していくぞ」


くりぬかれた山の中は中央に研究施設と思われる建物とドラゴン系を生み出す澱みの沼があり中は突然の攻撃に狼狽していた。


「落ち着け、ドラゴン共を全て迎撃に回せ、全て焼き払ってくれる!!」


女伯爵腹心のセバスチャン・ボーマニャンが怒鳴り散らしながら指示を出す。

しかし、彼の内心では身勝手にも女伯爵に対する不満で満ちていた。


(ええい、よりによってこの私が居るタイミングで攻めて来おって、邪魔者は皆殺しにしたのでは無かったのか?最早女伯爵などに期待はせぬ、ここを始末したら魔物軍団を率いて私が世界の王となってくれる)


ドラゴンブレスが一斉に発射され嫁軍団にも被害が出始める。


「無理せず負傷した者は後退せよ、お前達を失えばまた段蔵がキレるかも知れんで・・・ああ、負傷者が出た段階で既にキレてしもうたか」

「なんかもう相当ハッスルしちゃってますね」

「ライバルに美味しいところを持ってかれた腹いせもあるんじゃろ?以前と違って周囲は見えてるみたいじゃから好きにさせとけ」


斬り捨てられるドラゴンを見て焦ったセバスチャンが最大戦力を投入する。


「ジャバウォッキーを出せ!これで決着だ!!」


地面が崩れ地中から超巨大ドラゴンが出現する。その衝撃だけで嫁軍団の何人かは後退を余儀なくされてしまった。


「はっはっは、これこそは我らの切り札!元々女伯爵の騎乗竜だったモノに強化を重ねた最高傑作よ!!」


そのドラゴンと目が合った瞬間、段蔵の脳裏に一つの記憶がフラッシュバックする。


「!!そうか、お前は・・・」


それは段蔵がこの世界に来て最初に見たドラゴン、段蔵が追っていたコロジョン男爵の部下を焼き払ったあのドラゴンに他ならない。


「随分とバカデカく成長したみたいだが丁度良い、ここであの時の決着を付けてやらぁ!!」

「無駄だ!このジャバウォッキーを斬れるもの・・・か?」


しかし、セバスチャンの予想に反しジャバウォッキーはあっさりと脳天を貫かれてしまった。

セバスチャンが驚愕に目を見開き段蔵達が快進撃を続けていた頃、その上空では二人の男性がその様子を見ていた。


「遠藤先輩はトカゲ相手に一体何を遊んでるんだ?」

「トカゲて、アレでも一応この世界のドラゴンっすよ。まあ、黒山君にしてみたら大抵の竜はトカゲ扱いだろうけど」


地球に住んでいる段蔵の後輩、黒山竜也と新堂英一である。


「急に遠藤先輩の様子が見たいなんて、どんな風の吹き回しっすか?」

「遠藤先輩・・・竜二兄ちゃんが天叢雲の所有者として抑止力になりうるかどうか・・・」

「は?竜二兄ちゃん?先輩の事か?って何しようとしている!?」


竜也は自身の指にナイフを軽く当て血を一滴落とす。赤い雫は真っ直ぐ落ちて行き、死体となったジャバウォッキーの傷口に染みこんだ。瞬間、邪竜の咆哮が響き渡る。

角は伸び禍々しく枝分かれし、目は黄色く濁り爪は血を滴らせながら伸び、鱗が一部剥げ落ち腐臭漂う肥大化した肉がむき出しになっている。


名称:ドラゴンゾンビ

下級の竜が真なる龍の血を得た事で蘇生・肥大化・暴走した姿、最早あらゆる命令は受け付けず、肉体の急激な変化によって発生する激痛に暴れるのみの存在。


斃したジャバウォッキーに完全に背を向けていた段蔵が振り向いた瞬間見たモノは、眼前に迫る邪竜の角だった。


「ゴッ・・・!?」


段蔵の妻達は硬直した。愛する夫の腹に深々と角が刺さり血を吐くその姿に。

真っ先に動いたのは第一夫人守鶴前、彼女は不穏な気配を感知し二体に分裂、一方を地上の建て直しともう一方を上空への攻撃に当たらせた。


「おおおぉぉぉぉ、貴様等!妾の夫をよくも・・・」

「タヌキ姉さん・・・」


怒気が膨れ上がりチリチリと空気が燃えるような妖気が空を包み込むが竜也は何処吹く風。


「今の俺に勝てないのはタヌキ姉さんだって分かってるだろ?」

「それでも妾は貴様達を!」


守鶴前の言葉の途中で英一がゆっくりと守鶴前の側に移動する。


「まったく、俺を勝手にアッチのカテゴリ入れんな!こうなった責任は俺にもあるしな、詫びついでにこのド阿呆をキッチリ始末してやる。分霊じゃ黒蛇一匹はキツイだろ?」

「魔法使い・・・」

「大方、黒龍の力が本格的に強くなったんで、暴走した時の為の抑止力が欲しかったってトコロだろ?ザケやがって、こっちを甘く見すぎだっての。手前テメエなんざ軽く捻ってやるよ」


先ず手始めに竜也の飛行魔法を解除するが落下する様子は無い、落下して終わりならば話は早かったのだが。英一は溜息一つ、守鶴前が英一をターゲットから外したのは幸いだったが未だ怒り心頭なのは変わらない、連携は望めず啖呵は切ったものの本気の黒龍相手なら勝算は五分が良い所か。


「死んでくれるなよ先輩」


地上ではもう一人の守鶴前が体勢を立て直すべく奮闘していた。


「怪我人は早く陣地に運べ!足を止めるな、潰されるぞ!妾が教えた術理を使えばこの程度の雑魚竜など取るに足らぬ」


周囲を援護しながらも段蔵を注視して考える。


(妾の荒御魂は飛び出して行ってしもうたが、故に有る程度冷静に考えられる。クラリースは以前タツノオトシゴと段蔵もとい竜二は血縁であると言うておった。つまり竜二も当然龍の因子を持っているという事、何故妾が今まで感知出来なかったかは後にするがそこは問題では無い。タツノオトシゴは竜二が覚醒出来ると半ば確信して仕掛けてきた。なれば・・・)


守鶴前の思考の途中で龍の咆哮が響き渡る。ドラゴンゾンビからでも竜也からでもない、他ならぬ夫からの魂の叫びだった。


「ああああああ!?!?あづいあづい、俺は!俺はぁ!?」


ドラゴンの角から龍の力が流れ込んで段蔵の腹を焼きその熱が喉元までせりあがって、そして不思議と懐かしい気分になった。

溢れ出る万能感に身を任せ段蔵は我が儘に口から深紅の炎を撒き散らした。


「んな!?」


放たれた炎はよりによって負傷者を収容するスペースに直撃したのだ。

あとには燃えカスひとつ残らない、白い煙が漂うのみ。


(段蔵、暴走の果てに狂ったか!?)


守鶴前の脳裏に最悪のイメージがよぎるが、妙な事に気付いた。

白い煙は消えずわだかまり、焼き払われた仲間達の気配は未だ消えてはいない。


「この煙・・・いや、霧か!?」


霧は濃度と魔力を増し、やがて中から狼の群れが飛び出した。狼だけでは無い、カラスにコウモリなんかも飛び出し敵ドラゴンに襲い掛かる。やがて霧の中から焼き払われた女達が姿を現した。


「霧化に獣化じゃと!?それではまるで・・・」


名称:小ドラゴン(ドラクレア) 龍人等

吸血鬼みたいな半端な存在では無く正真正銘の龍の眷属、日光も流水もニンニクだって平気で他者の血液を求める必要も無いおよそ完璧な高位モンスター。


そして段蔵は腹に刺さったドラゴンゾンビの角を無理矢理引き剥がし、叢雲・改を手に斬撃ソニックブームにてズタズタにドラゴンゾンビを切り裂く。

ドラゴンゾンビの頭部はそのまま澱みの沼へトプンと沈んだ。

一方上空でも勝負が決まりつつあった。


「どうしたゼェゼェ・・・、世界最強の魔法使いがもう息を切らせおったか?」

「お・・・俺は理系なんだよ、お前らみたいな体育・・・会系と・・・一緒にすんな・・・ゲホ」


疲弊した二人に対し若干失望の表情を浮かべた竜也は溜息を一つ。


「やはりお前達では抑止力にならないか?」

「宿敵の山岸君を避けたクセに何をエラそうに・・・、フル装備ならとっくにシバき倒しとるわ」

「妾とて半身でなければ圧倒しておるわ!」


しかし実際は手詰まり寸前だった。魔法で空間ごと拘束してもダメ、魔炎で焼き払っても涼しい顔、斬ってもダメ突いてもダメそんな光景を地上から見ていた段蔵は、同胞の姿に歓喜してドラゴンブレスを吐き出した。


「む!?」


深紅のブレスは黒龍の鱗を貫き天まで届く炎の柱を作り上げた。この光景を外から見た人々は、火山でも無い山が突如噴火したように見えていただろう。

炎の直撃を受けた竜也は所々焼けた状態で何処からともなく現れた鎖に絡め取られズルズルと何処かに引っ張られている。


「これは・・・奥さんが迎えに来たみたいだな」

「ふむ、抑止力は我らでも段蔵でも無く龍の巫女じゃったというワケじゃな、覚えておこう」


鎖は異空間を通じ地球まで繋がってる。このまま引っ張られれば地球まで直行だろう。しかし・・・。


「「ムカツクからキーック」」


二人の蹴りが竜也の腹にめり込み迷惑な騒動の元凶は地球まで吹き飛んで行った。


「すまないタヌキ姉さん、この埋め合わせは必ず」

「貰える物は貰っておく、じゃがタツノオトシゴの懸念も分からんでもない、段蔵と出会う前の妾も暴走の可能性に怯えていたからな」

「遠藤先輩は?」

「龍の力を発現した際に傷口は塞がったらしい大したものよな」

「黒山君といい海野君といい、あの辺の出身は龍の血族が多過ぎる。それも下手したらオリジナル以上の突然変異ばかり、頭の痛い話だ」


魔法使い新堂英一は地球に転移する前に、尊敬する先輩の姿を確認し空へと消えて行った。

そんな段蔵だが、龍化の影響か極度の興奮状態に陥ってしまっている。


「邪魔だオラ」


愛刀を一薙ぎすれば衝撃波でドラゴン達が纏めて吹き飛ばされる。唐竹割りは空飛ぶ翼竜諸共地面まで叩き割る。最高にハイな状態だ。

一方で死んだドラゴンが生き返ったり人が火を噴いたり剣一本で地面割ったりと信じられない光景を目の当たりにした若干空気気味の女伯爵腹心セバスチャン・ボーマニャンは逃げることも忘れて施設内で驚愕に震えていた。


(バカな!何故最強のドラゴン軍団が負ける!アレは何だ?何なのだ?)


やがて施設の壁は粉々に吹き飛ばされセバスチャンの前に赤龍が姿を現す。


「ダン・エンドー」

「おや?俺の顔を知ってるのか?って当然だよなセバスチャン、女伯爵が上手く隠すもんだからお前の動きを掴むの結構苦労したんだぜ?」


並みの悪党ならここで固まって死ぬまで動けないところだが、そこは王国随一の犯罪結社の幹部であるセバスチャンは時間稼ぎの為の命乞いを始めた。


「そうだ!私は貴方の手下になる!私達が組めばジム・モロアッチ以上の組織が作れる。我々の研究資料や資産、コネクションは全部貴方の物だ!だから・・・」


真っ当な正義の味方なら怒ってセバスチャンをボコボコにするのだろうが、段蔵は・・・ナイアールはあくまで悪人である。


「へえ?悪くないなソレ」

「だったら・・・」

「そんじゃ全部俺が貰っとくわ。あっ、アンタはツラだけ寄越せばいいから」

「へ?」


段蔵は刀を持つ手に力を入れるとセバスチャンを部屋ごとズタズタに刻んだ。


「は~~~ぁあ、サッパリした♪いや?スッパリか?」


ドラゴンは壊滅し、操っていた連中も殲滅、残るはドラゴンを生み出す澱みの沼だが。


「あ~、もう我慢出来ん。帰ったらヤリまくらないと治まらん。女だ、俺の女を早く!」


叢雲・改を乱暴に突き立てグリグリと“力”を込めて掻き回す。

その為だろうか、先程の興奮は何処へやら、二人の魔物娘が誕生する頃にはすっかり力が抜けてヘロヘロになってしまった。


「ダンゾー様!?」


驚いた妻達が駆け寄り、顔を覗けば・・・。


「幸せそうな顔で寝てる・・・」

「メディック!メ~ディック!」


一人に合体した守鶴前が段蔵を担ぎ上げ溜息一つ。


「やれやれ、お面の連中め。段蔵に投薬して強化したつもりだったのじゃろうが、逆に龍の力を抑えて弱体化させたんじゃな。つくづく迷惑な」

「例のダンゾー様が幼少の頃を過ごした組織ですね。容態はどうでしょう?」

「心配するな、今まで溜め込んだ分を一気に解放したから反動で疲れただけじゃろ。腹の傷も塞がったみたいじゃしな、問題は・・・」


守鶴前が向いた先には二人の魔物娘が居る。

一方は全体的に青白く目の下に隈がある不健康そうな顔の二本角とドラゴンの翼そして所々に鱗を持った女性。

もう一方は全身を黄金の和毛で包みネコとウサギを足して二で割ったような耳に額には真っ赤な宝石がくっついた小さな女の子だ。


「似てる」


そう、青白い方は段蔵と死闘を繰り広げたジャバウォッキーに何処と無く似ていた。


名称:ドラゴンゾンビ

堕ちた竜、誇りは無く威厳も無く、何らかの呪いを受け総てが腐り果てた者。強い生命力によって死んでも死に切れない。


「段蔵があの邪竜を呼んだのやも知れぬな」


妻の一人がドラゴンゾンビの手を取って立ち上がらせようとするがビクッと震えてイヤイヤと懇願するように首を振るばかり。


「何でしょう?動けないんですかね?」

「ヴヴヴ~、触らないで・・・」

「キャ~ッシャベッタ~~~」


ドラゴンゾンビは目に涙を浮かべながら喚き散らす。その様子はまるで聞き分けの無い子供みたいであり、ある種の哲学のようでもあった。


「わたし、いっぱい痛くて悲しくてちっちゃくなって身体が変な感じで、わたしどうなっちゃったの?」


頑強な鱗は指が沈む程柔くなり、片角は折れ、灼熱のブレスはイランイランの香りに変わり、かつて大空を制した翼は穴だらけで剥き出しの神経は性感帯となり僅かに羽ばたかせる事さえ苦痛きもちいい

最強の生物が一転して庇護欲他色んな感情をくすぐる弱気っ娘になったのだ。


そんな様子を見ていた金毛の謎の魔物娘は小さな体をばたつかせ、ドラゴンゾンビに何かを訴え始めた。


「ふみゅ~!ふみゅふみゅ!(頭が高いぞ青トカゲ!愛玩動物らしく伏せよ!)」

「人語は話せないか?後でナノマシンを与えるかの?」


小さな魔物の女の子が可愛く鳴き声を発する姿はとても愛らしい、恐らくドラゴンゾンビを励ましているのだろう。


「ふみゅ~、ふみゅ~、みゅみゅ(夫から愛欲の呪いを受けたか、まあ良い許す、愛妾らしく存分に嬌声を上げよ)」

「なんだろう?キミを見てると元気が出てくるよ」

「みゅ~、みゅ~ふみゅ~(たわけ、愛妾ならばそのイヤらしい身体で快楽を貪る事だけ考えておれば良いのだ)」

「うん、そうだね。このヒトたちは、優しそうだからキミの言う通りついていく事にするよ」

「みゅみゅ(まだ余と貴様の立場が理解出来ぬと見える)」


金毛の女の子はドラゴンゾンビに向かってニパっと笑った。


「可~~愛い~♥️」

「みゅ~みゅ~みゅい~(笑顔とは本来攻撃的な意味を持っているのだ 注:諸説あります)」


そして何の動物かは不明だがケモノっぽい腕をブンブン振る。


「みゅい~!みゅみゅみゅみゅみゅ~(受けよ!八連大蛇突き)」


ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに。


「うわ!?くすぐったいよ」


魔物娘達は一緒に暮らす事になったらしい。


「何はともあれ、妾達の仕事は終わりかの?」


各地で戦っていた仲間達からも作戦成功の連絡が届き始めた。

脇役達の活躍はこれにて閉幕、ここからは名探偵の手番ターンである。


◇ ◇ ◇


~おまけ~


各地で仲間入りした魔物娘


・ゴブリンナイト&ゴブリンメイド

ルミナス達が担当したゴブリン牧場にて誕生。アスタルト待望の同族、プリンセスに忠誠を誓うがゴッコ遊びの域を出ていない、基本アスタルトの命令は聞かないし夜の生活も平気で抜け駆けする。


・ハルピュイア

オデット達が担当した怪鳥牧場にて誕生。ハーピーとも呼ばれるギリシャ神話あるいはダンテの神曲等に登場する鳥人間、この世界の鳥人と違い鳥率が高め。ベースとなっているのは北アメリカ大陸南部辺りに生息するケツァールに酷似した鳥と思われる。この惑星には本来存在しない魔物。風魔法や天候魔法を操るので結構頭が良い。


・ラミア

ミーネ達が担当した魔獣牧場にて誕生。ギリシャ神話では女神の呪いを受けた一人の女性の名前だったがいつの間にか量産され種族名になっていた。この惑星には本来存在しない魔物。下半身ヘビのエロネーチャン。


・大きな悪魔&悪魔執事

クラリースが担当した悪魔牧場にて誕生。この惑星の神話にて神々と対立したとされる巨人族に酷似した魔物で太古から分かり易い恐怖の象徴になっている、その一方で神々と互角だった巨人族と違い人間でも対処可能なので劣化巨人という位置付けでもある。この惑星の悪魔は地球の悪魔と違い悪魔の形をした強めの獣に過ぎないが、今回仲間入りした二人は知能が高く大柄な娘は気が優しくて力持ちを地で行くタイプ、女執事の方は魔法特化で楽天家タイプである。

今回の段蔵達はあくまで主役をサポートする舞台袖の端役です。

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