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遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
怪盗 王国ニ舞ウ
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第七十六話 彼女達は前進する

【参上(惨状?)よくってよ仮面】


屋敷の広いレクリエーションルームでは遠藤家中の赤ちゃんや子供とその保護者達が集まっていた。

赤ちゃんは大きく二つのグループに分かれている。即ち、段蔵の実の子か妻の連れ子かである。

連れ子の場合は例外無く女の子で段蔵達の光源氏計画(タヌキ姉さん立案)に基づき将来ハーレム入りが確定している娘だ。

そんな赤ちゃんや子供達を集めて何をするかと言うと。


「良い子のみんな~クラリースお姉ちゃんとお遊びの時間ですよ~」


珍しくまともな姿で現れた彼女に保護者達は疑問符を浮かべるが、これまでの経験から悪い事にはならないだろうと見守っている。


「今日はみんなに楽しんでもらう為、ショーを用意してま~す。良い子にして観るんですよ~」


だが、そこに高笑いが響く。


「んはははー、良い子だと?笑止!!この世は悪こそが唯一の真理なのだ」

「何者ですか!」


表れたのは黒のマスクにダークでトゲトゲな装飾に身を包んだドロシー(五十八話から登場)だ。


「我が名は大悪魔女王オズ、子供達に悪のエッチッチパワーを見せつける為に降臨した」

「何ですって!?是非見せて・・・じゃなくて。そんな事は、この私が許しません」

「何故だ?お前達の夫にしてその子達の父親であるダンゾーも悪を肯定しているではないか?」

「それでも、善を学ばせる事は間違ってはいません!大悪魔女王オズ、私が相手です」

「面白い、ツチノコマンド!」


大悪魔女王オズの号令で蛇柄タイツの女の子達が不思議な掛け声と共にアクロバティックに登場した。


「チー!」

「チー!チー!」

「チ~!!」


飛び跳ねたり連続バック転で移動しながらクラリースを囲むツチノコマンド達、クラリースは素手で応戦するがその様子を見て大悪魔女王オズは不敵に笑う。


「見事だ。やはり戦闘員では歯が立たんか?ならばでよ“ギガUMA獣チューチュパカブラ”」

「ちゅーちゅぱ~」


間抜けな鳴き声と共に現れたのは背中に翼の生えた二足歩行の爬虫類みたいなつぶらな瞳の着ぐるみだった。

現れた着ぐるみに蹴りを入れるクラリースだったが・・・。


「いってーな!打ち合わせでマジ蹴りすんなっつったでしょ!・・・じゃなくて、効かんちゅぱ~」


そこに出てくる解説のオデットお姉さん。


「このままじゃクラリースお姉ちゃんがギガUMA獣に勝てません。みんなでクラリースお姉ちゃんを応援して愛のパワーを送ってね~」


子供達は声援を送り、赤ちゃん達も何やらテンションが上がってキャッキャ騒いでいる。


「ああ、幼女の愛が注ぎ込まれる~」

(息子のジャン君はお母さんのコレ見てどう思って・・・あっ、結構ウケてる)


幼女エネルギーを受けて、かなりヤバイ感じにアへっているらっしゃる御貴族様は色々頂点に達したらしい。


「変態!!」


掛声と共に煙幕が張られる。そして、煙が晴れたその場には・・・1人の変態が立っていた。

乳と股間を申し訳程度に布っぽい物で隠し、右手には何やら真っ赤な布を持っている。

お母さんの1人が悲鳴に近い声で叫んだ。


「それ、私のパンティーじゃないですか!昨日洗濯に出したのに何で!?」


そのパンティーを何の躊躇いも無く顔面に装着した~!!


「クンクンペロペロ、まだベットリとしてる。あと濃厚な段蔵様の薫り・・・これは、パン○キしましたね」

「ぎゃ~!や~め~て~!!」

「意味がわからない娘はお母さんに」

「聞くな!」


ここでナレーションが入った。


「みんなが待ち望んだ(待ち望んだとは言っていない)スーパーヒロインよくってよ仮面、彼女は幼女の声援と使用済みパンティーからスキャンティッシュエネルギーを吸収し、よりエクセレントな女に変態するのだ~。(ドン引き)」


お約束として変身シーンを邪魔しなかったのか、はたまた近付きたく無かったのかは不明だが、準備が整ったよくってよ仮面に対して若干上擦った声でギガUMA獣に指令を送る大悪魔女王オズ。


「行きなしゃ・・・行きなさい!チューチュパカブラ!」

「ちゅーちゅぱ~(ドン引き)」


両者の激闘が始まった。着ぐるみ怪獣は重々しく豪腕を振り回し変態ヒロインは軽快な動作で打撃と回避を繰り返す。


「これでトドメよ。エメラルドッ!ビーーーム!」


クラリースの瞳が妖しく緑色に光ると光線が放たれ、着ぐるみ怪獣に直撃した。


「ちゅぱ~(何の光)!?」


着ぐるみ怪獣はビクンビクンと痙攣した後ゆっくりとクラリースに近づいて・・・。


「クラリース様好き、抱いて♥️」

「デュッフッフッフ、愛は勝つ!」


大なんちゃらオズは悔しげに地団太を踏む。


「おのれ、よくってよ仮面。台本と違・・・もとい、次はこうは行かないぞ!」

「大悪え~っとオズ、恐ろしい敵だった。でも、私は負けない。世界を愛欲で満たすまでは」


こうして宇宙最低のヒロインショーは幕を閉じた。

赤ちゃん達の反応は四つ。

ジャンみたいに母の活躍を見て何かよくわからんが喜んでいる子、清明みたいに意味不明過ぎて途中で寝ちゃった子、アテナみたいに全く見ずに他の赤ちゃんと戯れる子、そしてソニアみたいに終始不機嫌そうにしている子だ。

どうもソニアと一部の(段蔵と血縁の無い)子はクラリースの事を『大好きな養父パパの隣に居る変なヤツ』という認識らしい。この娘達が成長し、段蔵と男女関係になる頃には『便宜上養母(ママ)と呼んでいる尊敬に値する愛の宿敵にして変態』という認識に変化するのだった。


『よくってよ仮面の前に現れたギガUMA獣ビクビッグフットの正体は幼い頃に行方不明となった母アンジェリカだった。大悪魔女王オズの卑劣な罠にクラリースは打ち勝つ事が出来るのか? 次回よくってよ仮面 【母娘丼って燃えるよね】 に絶頂せよ』



【冥府のシ者】


私は冥府の女神アレスタ様に仕える死神の1人ペルセフォネ、死が定められた魂を刈取り正しく冥府へと導くのが私達の役目だ。

この仕事が遅れると、人が沼と呼ぶ魔力溜りに魂が捕まり死者がアンデッド化してしまう可能性がある。そうなると私達みたいな下っ端では魂を導けなくなってしまう。故に私達の仕事は世界に必要なのだ。

今から一件、魂の回収に向かう予定だ。馬車カーナビだと確かこの辺の路地裏なんだけど。


『コノ先20キロメートルです』


はあ?さっきまで目的地はココだったのに、どうやって死に掛けの人がこの短時間で20キロも移動出来るんだよ?とりあえず時間が無いから直ぐに向かおう。

辿り着いたのは貴族の屋敷らしい、成る程な、死に掛けを助けられてココまで連れてこられたのか~。いや、無理だよ!例え人々が極星とか呼んでる特異魔力保持者でも死に掛けの人を抱えての移動は絶対無理。ナビの故障かな?

兎に角、私は魂を刈取る為に屋敷に入った。

対象者はまだ幼い少女だ、虐待され暴行を受けて棄てられたのだ。こういうのを見るとやるせない気持ちになるが、私に許されているのはせめて安らかに魂を導く事のみ、必死で治療している家人には悪いがこれも運命なのだ・・・・・さっきから何故かそこのタヌキ獣人がこちらを見ている気がする。下っ端とは言え上位の神霊的存在である私の姿は人には認識出来ないハズなんだけどな~。


「やはり昏倒しててナノマシンを飲めないみたい」

「しかし、早くしないと体力が落ちていく一方だ」

「口内から少しずつ浸透はしてるみたいだけど」

「光魔法も追い付かない、せめてもう少し時間があれば・・・」


彼らは最善を尽くした。確かにもう少し時間があれば私が現れる事も無かっただろう。慰めになるかは分からないが、この少女には最期は優しい人達に看取られたと伝えよう。

私は少女の魂を刈取る為、枕元に移動した。


「まあ待て、時間稼ぎなら妾がしよう」


タヌキ獣人の女は何を思ったかベッドを半回転するように指示を出した。折角枕元で待ってたのに面倒な事をしないで欲しい。

それからタヌキ女は移動し直そうとした私の顔をハッキリと見て不思議な呪文を唱えた。


「アジャラカモクレン・ブンブクブンブク・テケレッツのパー!!」


意味が分からない。

もう時間だ、残念だが魂を刈取ろう。

私は鎌を掲げ少女に振り下ろそうとした。しかし、不思議な事に腕が全く動かないのだ。

それだけじゃない、足が勝手に後退しようとしている。こんな馬鹿な現象が有り得るのか?

少女の顔に生命の色が戻った瞬間、私は反発したかの様に弾き飛ばされ屋敷の外に追い出されてしまった。

アレスタ様に創造されて六千年、まだ若いとは言え生命大混沌時代を乗り越えそれなりに経験は積んでいるが、あんな魔法は初めて見た。

ともあれタヌキ女は重大な罪を犯した。大丈夫、冥界多機能電話略して冥フォンで写真は撮った。

例え人助けであっても死神の邪魔は許されない、あのタヌキ女に神罰を与えよう。

もしもし?蝋燭管理部ですか?エルキュリア王国・新ダンドレジー公爵領担当のペルセフォネです。今から送信する写真の女性の蝋燭を確認して下さい・・・ええ、重大な不正行為(チート)の可能性がありますので・・・。


~10分後~


『ペルセフォネさん!貴女一体何に手を出したんですか!』


何って予定していた魂の回収に妨害が入ったからその制裁をと思いまして・・・何か不味かったですか?


『彼女の名はモリヅル、別の惑星から移住してきた方です』


へ~、宇宙人だったんだ~。私、宇宙人なんて初めて見た。

けど、宇宙人だからって死神の仕事を邪魔したらダメでしょ?彼女の蝋燭に何らかの制裁を加えるべきでは?


『そうね、実際見た方が早いかな?』


冥フォンに映ったのは蝋燭の動画だ。

何も変なところは無いように見えますが?


『うん、それじゃあ一部拡大してみるね』


蝋燭の根本部分が拡大されて私は度肝を抜かした。根本周辺に同僚達が米粒大に映し出されていたのだ。


『下部面積およそ冥界ドーム2個分、高さはおよそ冥界タワー3個分ってところね。この映像も上空からドローンで撮影してるわ』


これは蝋燭なのだろうか?


『試しに炎部分に水を掛けてみたら炎が爆発的に膨れ上がって作業員26名が火傷による重軽傷よ。あと、蝋の部分をバーナーで融かそうとしたけど焦げ目一つ付かないわ』


それは蝋燭ですか?


『はい、一応蝋燭管理部で管理しているので蝋燭に準じる何かです。それからこの件をアレスタ様に報告したところあの屋敷の関係者に関わる事を禁ずるとの厳命を受けました』


アレスタ様直々の指令だって!?


『それも、最重要事項としてです』


女神アレスタ様の厳命という言い訳を得て内心安堵した。

私は改めて屋敷を見た。あの少女の魂は安定し、確実に回復している。最早私の出る幕では無い。

よく屋敷を見れば不思議な輝きを放つ魂が無数に見える。その幻想的な光景に思わず溜息が漏れる。

少なくとも、必死にあの少女を救った人達が邪悪では無いだろう。

出来ればあの少女の元気な姿を確認したかったが、名残惜しくも馬車に乗ってナビを起動する。私にはまだまだ導かなければならない魂があるのだから。

次の魂は不幸に泣く子供で無い事を切に願う。



【神秘を求めて】


今、守鶴前達が来ているのは王位継承戦争よりも数千年も前の時代の遺跡だ。守鶴前は思うところがあって、自ら調査隊を率いてこの地を訪れた。


「セージ、進捗状況はどうじゃ?」


学院の考古学者にして妻の一人、セージ・アルマータ(人間)は目を輝かせながら興奮した様子で報告する。


「やっぱりこのナノマシンの言語翻訳機能は素晴らしいです。国内の学者が総出で数十年掛りで解読する古代文字がスラスラ読めるのは感動的ですね。損傷の少ない壁の文字は、ほぼ翻訳と書き写しが完了しました」

「では?」

「先達の学者先生の見解通り魔王と呼ばれた独裁者、女帝パープル軍の砦跡みたいですね。壁画の文字から世界中から集まった反パープル軍の攻撃で陥落し、その時活躍したのがエルキュールなる人物だと書かれています。エルキュリア建国の祖、エルキュール様の事で間違い無いでしょう」

「反抗軍の背後に描かれたドラゴンは何じゃ?反抗軍を襲っておるのか?」

「いいえ、これは恐らく反パープル軍をまとめ上げた大英雄、初代龍皇(ペンドラゴン)コゴロウ・アケチ様の比喩だと思われます。伝承では王国の祖エルキュール様と帝国の祖グレタ様、そして皇国の祖コゴロウ様は親友であったと伝わっています」


土壁の建物内に残された大迫力の壁画には反抗軍の勝利の様子が描かれている。整列する軍勢の絵を見て守鶴前は違和感を覚える。


「各旗に集っておるのが現在の各国の元となった軍勢なのじゃろ?」

「ええ、そうですね。軍旗や紋章は現在と若干違ったり使われなくなったりしてますが、あの大翼鷲おおよくワシの軍旗はキンダー諸島連合王国で今でも似たようなの使っていますね。あっちの翔龍旗も・・・」

「だとすると妙じゃな」

「何がですか?」

「各勢力は一大反抗作戦の中で一つの種族しか派遣しなかったのか?」

「!!」


そう、各旗に整列しているのは一つの種族だけなのだ。例えば先程話の出た大翼鷲旗の下には翼の生えた鳥人だけ、翔龍旗には背が低くトンガリ耳のドワーフ系エルフが描かれている。


「・・・のお、妾はあまりこの世界の歴史は勉強しておらぬが、もしや女帝パープルとはエルフじゃったか?」

「ええ、よく分かりましたね。女帝の宮殿があったのは現在の聖ルブラン国南部とされていますが、現地で発見される女帝の姿を残した絵はエルフの美少女として描かれていますね」

「やはり・・・」


この壁画には意図的にある種族だけ描かれていないのだ。


(数千年前、エルフは人類の敵だった?だが、そんな事が起こりえるのか?)


少なくとも現代に単一種族の国家・街・村・集落は存在しない、どのような種族同士で婚姻を結んでも産まれる子の種族は完全にランダム、この世界での人間・人とは【人間・エルフ・獣人】の総称の事である。


(じゃがこの壁画には現在獣人のカテゴリーに組み込まれている鳥人やエルフのカテゴリーとされるドワーフが別々に隊列を組んでおる。各勢力が己が存亡を賭けた戦いで一種族しか派遣しなかったとは考えられない、まるで・・・)

「まるで数千年前は別々の種族だったみたいですね。何で今まで気付かなかったんでしょう?」

「・・・・・セージよ、この事は妾達遠藤家の者以外には伏せるように言っておいてくれ」

「そうですね、憶測だけで話を進めるのは危険ですからね。それでは御前様、今回のメインイベントであるモノリスの調査をお願いいたします」

「うむ」


ボロボロの砦跡の中央に傷一つ無い黒く巨大な板が直立していた。表面はツルツルしていて特に何も書かれてはいない、世界中の遺跡で時々同じ物が発見されていて各国の学者が調査を行っているが現在までにその正体は解明されていない。


「ふむ、材質はその辺の土と同じじゃが、強固な錬金術の類で変質しておるな」

「ええ!?普通の土なんですか?どんな武器や魔法を使っても傷一つ入らないのに?」

「なにやら魔法的ロックが掛かってる形跡があるが・・・何かすれば何か起きるみたいじゃが、術式が暗号化されててサッパリ分からん」

「そうですか、残念です」

「しかしこの形状、昔ゲーセンで遊んでたシューティングで似た物が・・・当時を思い出すと腕が疼く・・・」


そして何を思ったか守鶴前は目の前のモノリスに拳を叩き込んだ。それも1発や2発では無い、残像が見える程の速度で叩き込んでいる。


「ちょ!御前様!?」


そして丁度256発目の拳を叩き込んだ瞬間、モノリスは輝きを放った。


『タヌキの娘が256発の打撃を与えし時、道を指し示さん』

「なんじゃ?その酷く限定的な起動方法は!?」

『タヌキ娘とその仲間達よ、世界の真実を求めるならば残り四つの遺跡を目指すが良い。即ち、ナガシ大古墳・テニスン帝宮・ボルトアンペアー寺院ワット・メンコウラ王ピラミッド。必ずやお前達の求める世界の真実の一端を垣間見れるだろう』


そして、その場に居た全員の頭の中に一つの光景が流れ込んでくる。

深紅のドラゴンに導かれた勇猛な軍勢が砦を攻略し、砦の中では敵将を単騎で討ち取った若き狼獣人エルキュールの勇姿がハッキリと見えたのだ。


「今のは・・・?」


モノリスの輝きは消えていた。


「もっかい起動してみよう」


ドガガガガガガ・・・・。


『タヌキの娘が256発の打撃を与えし時、道を・・・』


そしてまた繰り返されるさっきのやり取り。


「つまり、このモノリスは意思を持っているのではなく、起動したら今の動作を行うように作られているというワケじゃな」

「えっ?やっぱりそれは変ですよ」

「何故じゃ?」

「このモノリスは数千年前からここにあるんですよ?でもボルトアンペアー寺院がキンダー諸島連合王国のオーム島で発見されて今のボルトアンペアー寺院と名付けられたのはここ数十年の話なんです。モノリスの製作者が寺院を知っていたとしても、その当時は別の名称だったハズです」

「つまりモノリスを作った何者かは何らかの方法で未来を知っていたか?新たな謎が出て来たのぉ」

「楽しそうですね」

「永い人生を楽しむんじゃ、“難解こそが我が娯楽”じゃよ」

「勉強になります」


彼女達は次に出会う世界の神秘に思いを馳せるのだった。

次回からは遂に色々決着編か?

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