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遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
怪盗 王国ニ舞ウ
75/163

第七十五話 彼女達の日常

まったく、エロを書かないと話が進まないとはトンだ三流だぜ。

つまり私です。

時系列はルミナスが来た後の適当なタイミングで、明確には決まっていません。

【激嬢ビフォアー・アフター】


・Before


「我が娘ファトマよ、例の新参子爵の下へと嫁ぎ奴を破滅させるデブゥ」


フトッテル家の当主は娘のファトマ(人)にそんな命令を下した。

命を受けた娘ファトマもエンドー家の莫大な資産とそれを自分の物とした時の悦楽を想像し自然と笑みが漏れる。


「しかしお父様、彼は極星の妹や水の極星であらせられるルミナス様と婚姻を結んでいるデブゥ、今更割り込む隙があるデブか?」

「そんなもの、お前がその美貌でダンを篭絡して仲違いさせるように動けば造作も無いデブゥ、極星2人を敵に回せば奴の破滅は確実デブゥ」

「デブゥ、エンドー家の資産で贅沢三昧、ヨダレが出そうデブゥ~♪」


ここでファトマ嬢の容姿に注目してみよう。

顔の肉は膨れ目は肉に埋没気味で口元が脂でテカテカ、腹はブヨブヨ、爆乳と言えば聞こえは良いがあまり嬉しくない形状で、掌は汗ばんで薄い褐色肌の全身から目に染みるような汗の臭いがして、それを非常に濃い香水で誤魔化している。

ぶっちゃけキモデブである。今もクッチャクッチャと骨付き肉に齧りついている。


「何、奴は爵位を金で買ったような商人上がり、傀儡にするなんて簡単デブゥ」

「ブフフ、真に高貴な者とはどういう存在か教えて差し上げますデブゥ」


・After


数ヶ月後、フトッテル家の門前に豪奢な馬車が停まり、中から数人の供を連れた美女が現れた。

綺麗な丸顔で唇はぽってりと厚く艶々とした薄紅色、ザックリと胸元が開いたドレスから覗く乳房は下着で支えなければ辛そうな程大きく張りがあり、それでいて柔らかく、肌の色は蕩けるようなミルクティー色、肉体労働を知らない貴人特有のムッチリと肉付きの良い身体から微かにミルクの香りが漂っている。

彼女を町中などで見掛けて鼻の下を伸ばさない男は少ないだろう。

門番は、しばし美女に見蕩れた後で自分の職務を思いだし声を掛ける。


「失礼ですが当家にどのような御用でしょうか?」


美女は、よく通る艶やかな声で答えた。


「娘が里帰りに来たと、お父さまに伝えて下さるデブか?」


門番の聞き間違えだろうか?今、目の前の美女は確かに里帰りと言った。しかし、門番の記憶の中には目の前の美女に該当する家人の記憶が無い、家人は全員ブクブクと醜く太ったオークみたいな連中である、こんな美人が出入りしていたら絶対に印象に残っているハズだ。


「ここは、フトッテル家のお屋敷です。失礼ながら、お間違いではありませんか?」

「ああ~ん、もう。私はエンドー家に嫁いだファトマデブゥ、お父さまとお話がしたいので早く通して欲しいデブゥ」


門番は、唖然とした。


(今、こちらの淑女は何と言った?自分の事をあの気色悪いファトマ様だと名乗ったのか?それはいけない!たとえ詐欺目的だったとしても、あんなモンスターの名前をこの美女が騙るなんて大地の女神様が赦してもこの俺が・・・いや!やっぱ女神様も赦さないと思う!)


この間約0.2秒、門番の行動は早かった。


「いけません、お嬢さんみたいな美しい方が冗談でもあんな化物の名前を連呼するなんて、もっとご自身を大切に・・・」

「失礼デブゥ、超腹立つデブゥ」


美女の拳に信じられない程の風の魔力が集中し、正拳突きの動作から一気に開放された。命に別状は無かったものの門番は守るべき門ごと吹き飛ばされダウンしてしまった。


「やっぱり前までの私は周囲から醜い化物だと思われていたデブね。私を美しいと言ってくれていた人々もフトッテル家の家柄しか見ていなくて影では今の門番さんみたいに私達を蔑んでいたのデブゥ」

「ファトマ様・・・」

「今の私に敬称は不要デブゥ、私達は皆あの方から愛を与えられた仲間デブゥ、私達の愛欲の楽園を守る為に進むデブ、散!!」


号令と供に左右に素早く別れるお付のメイド服の女性達が屋敷に忍び込んだのを確認してから、ファトマは正面玄関から中へと入った。


「旦那様・・・その~、ファトマ様を名乗る女性が面会を求めておりますが・・・」

「おお、ファトマよ、やったデブか?よしよし通すデブ」

「あの~それが、何と言いましょうか・・・」

「いいからさっさと通すデブ」

「は・・・はあ、それでは」


しかし、応接間に現れた褐色の美女を見てフトッテル家当主は混乱した。


「だ・・・誰デブか?おい、執事、家に知らん人を入れたらダメデブよ!」

「お忘れデブか、お父様?ファトマデブよ」

「何をバカげた事を・・・いや、その声とネックレスは確かに娘の物デブ、まさか本当に?」

「お父様、今日はお願いがあって参りましたデブ、フトッテル家の家督を私に譲渡して欲しいデブ」

「な!?正気デブか?」

「私は大真面目デブ、お父様ではこの先大きく変動するお国の情勢についていけないデブ、領民を不幸にしない為にも私が後を継ぐデブゥ」


当主としては信じて送り出した娘からの急な裏切り宣言だ。怒りよりも先に疑問が尽きない。


「そうか、そういう事デブか、貴様やっぱり偽者デブね?大方ダンの奴の手下デブか?例え本物だとしても奴に懐柔された女など最早フトッテル家の娘では無いデブ!マルッコイ!この愚か者に思い知らせるデブ!!」


入り口から鎧を着込んだ巨漢が現れファトマに大剣を向ける。彼こそはフトッテル家の長男にして戦闘隊長のマルッコイだ。当然ファトマの兄でもある。

予想通りの・・・いや、予想を下回る陳腐な展開にファトマはため息一つ、それを挑発と受け取ったマルッコイは大剣を振り下ろす。


「そうデブね、あの方々を知る前の私でしたらきっと今のお父様達と同じ判断をしてるデブ」


ファトマは瞬時に大剣から身体を反らし、自身の真横に振り下ろされようとしている大剣の平らな部分のほぼ中心を拳で打ち抜いたのだ。更にインパクトの瞬間、拳から風の魔法を放ち威力を増強させている。

マルッコイの腕から離れた大剣はそのまま当主の真横を高速回転しながら通り過ぎ、深々と壁に突き刺さった。


「さて、お父様?」

「い・・・いや、認めんデブ!衛兵!衛兵!」


廊下からタッタッタと足音が響き人が部屋に近づいてくる。しかし入って来たのは当主の会った事も無い仮面を付けたメイドが2人だけ、当主が訝しんでいるとメイドはファトマの両脇に並んだ。


「ファトマさん、屋敷内の制圧が完了しました」

「衛兵は鍵付きの部屋に全員閉じ込めてあります」

「お疲れ様デブゥ。お兄様も無駄な抵抗は止めるデブゥ」


悔しさに顔を歪ませる当主は敗北を認めつつも罵声を浴びせる。


「フトッテル家はこの地の統治を古くから王家に任された家デブ、当主に対する裏切りは王家に対するソレと同義デブ!」


だが、その後のファトマの言葉に当主の心は完全に折れてしまった。


「何を言い出すかと思えば・・・その程度の話は既に“殿下”も織り込み済みデブよ」

「デブ!?では今回の事は王族が絡んでいるデブか!?」

「これ以上語る事はありませんデブゥ、お父様達には既に隠居先をご用意してありますデブゥ」


この日、フトッテル家に新たな当主が就任した。エンドー子爵から門前払いされたという褐色の美人当主は表向きは怨恨からエンドー家との対立姿勢を見せたが、後年の調査にて門前払いどころか最初からフトッテル家を裏で支配し、対抗勢力から情報を引き出す為のエンドー子爵の策略だった可能性が浮上している。記録上、夫の居なかったファトマ女史の子供達の父親がエンドー子爵であり、度々密会して情報と愛を交わしていたという憶測は演劇や小説のネタとして定番となった。


【恩讐は彼方に】


我が一族があの忌々しいフトッテル家の策略によって滅ぼされてから数年、両親は死去し、妹のネモフィラ(犬獣人)は遊女となって貴族に身請されたと聞いている、そして私ことジャスミン(エルフ)は飲食店で賃金の安い雑用をして生き永らえていた。

叶うならばフトッテル家に復讐を、常にそんな事を考えながら細々と暮らしていたある日、働いている飲食店の客に声を掛けられた。

目元を隠すように帽子を深く被り白い髭を蓄えた老紳士だった。


「エンドー子爵家にフトッテル家の令嬢が嫁いだのを知っているかね?」

「エンドー家?聞いた事も無い家名ね?」

「近年頭角を現した商人上がりの新興貴族でな、何でも爵位をカネで買っただの胡散臭い話の絶えない家なのだがね。ああ、君の家が無くなった後に出てきた連中だから知らぬのも無理は無いか?」

「!?どうして私の家の事を・・・」

「復讐を果たしたくは無いかね?ワシはエンドー子爵に伝手があってな、色々口利きしてやっても良いのじゃぞ?」


私はその話を受ける事にした。少なくとも私の人生に今後明るい未来は見えない、ならば堕ちるところまで堕ちるのも運命なのだろう。

待ち合わせ場所には馬車が停まっておりメイドと女性の戦士が待っていた。私は女戦士に何故か目隠しをされ、馬車に揺られて何処かへと連れて行かれた。この時ばかりは騙されたかと思い少し後悔したが馬車から降ろされ目隠しを外すと、そこそこ立派な屋敷の前に立っていた。


(とは言っても昔の私達のお屋敷程じゃあ無いわね)


私は応接室に通された、内装はシンプルながら上品であり、家人の趣味の良さが見て取れる。今更だが落ちぶれたとは言え私の格好は少々薄汚れている、屋敷に置いてもらえるだろうか?そんな心配が沸き起こった頃、扉から数人の美女を連れ従えた青年、ダン・エンドー子爵が現れた。


「ジャスミンさんだね?彼から話は聞いているよ、何でもウチで働きたいとか?」

「はい、こんなナリですが是非・・・」


言いかけて私は言葉を詰まらせた。目の前のダン子爵は連れてきた美女の1人を抱き寄せ唾液の水音が響く程の濃厚なキスを誰の目も憚る事無く行っているのだ。それどころか今度は別の美女を膝の上に乗せ服に手を入れ乳房を揉みしだき、そのまま子爵は私の目を見つめ二ヤリと嗤った。


「見ての通りこの家はこういう家だ。ハッキリ言ってしまえば君の業務内容には俺に犯され汚され俺の子を孕むところまで含まれる。無論、拒めばそれ相応のオシオキが有る」

「そんな!」

「しかし、今ならまだ契約前だ。このまま何も見ず聞かなかった事にして出て行くなら別の働き口ぐらいは斡旋してやろう」


そう言って一枚の綺麗な紙の契約書を差し出した。


「だが、ソレに名前を書いてしまえば、お前も俺の女だ。逃れられないが相応の贅を約束しよう」


汗が流れ緊張でゴクリと喉を鳴らす。手が震え膝とペンの手前を行ったり来たりする。コレを逃せばこの屋敷の何処かに居るだろうフトッテル家の令嬢に二度と近づけなくなる。家族の無念が果たされる事はない、しかしサインすれば今夜にでもこの身は汚され、もし復讐が成功したなら次は追われ処刑されるだろう。迷う必要なんて無い。


「ほう?」


私は迷いを払い契約書にサインした。


「そうかそうか、俺の贅と快楽を味わいたいか?期待して良いぞ、この屋敷に住む俺の女は正妻からメイド1人に至るまで存分に天上気分を味わっているからな」

「正妻・・・失礼ですが奥様の中にフトッテル家の御令嬢はいらっしゃいますか?」

「ん?ああ、この前俺に嫁いできた女だな?俺の金を狙ってきた欲深くて面白い奴だが知り合いか?」

「いえ、単に婚姻を結んだとの噂を聞いたもので」


ダン子爵は胡乱な者を見る目をした後、後ろに控えていた褐色肌のメイドに声を掛けました。


「ファトマ、君がジャスミンの教育をしてやれ。詳しい指示は明日行うが今日は基礎の①指導で頼む」


ファトマと呼ばれたメイドは一瞬驚いた後、ダン子爵に口づけした。


「お任せ下さいデブ、必ずご期待に応えてみせますデブゥ」


綺麗なのに何か残念な口癖の人だ。

ファトマさんに連れられて私は地下にある小さな風呂場に案内された。


「そんな薄汚れた格好だとお仕事も楽しくないしご飯も美味しくないデブゥ、しっかりと身体を洗ってあげるデブゥ」

「1人で洗えるデブ・・・洗えますから!」


ついつい口癖が移りそうになってしまった。


「ダメデブゥ、人に洗ってもらうのはとっても気持ち良いデブゥ~。さあ、入って入って」


ファトマさんは手早く私の服を脱がせ、自分も全裸になる。ボリュームのある乳房が大迫力でドプンと揺れる。私もそこそこ有る(有るとは言ってない)方だがこれには敵わない。


「2人で一緒に入って洗いっこするデブゥ」


浴槽に浸かった私は気持ち良さに「ほふ」と息が漏れた。ここ最近まともにお風呂なんて入っていなかったからだ。


「細い身体デブゥ、このまま放っておいたらきっと病気になっちゃうデブゥ、綺麗になったら直ぐにご飯を食べに行くデブゥ」


ファトマさんは最近流行のナントカ社が売り出した石鹸と洗髪剤を使って私の身体を洗い始めたが、途中でニンマリ笑っていきなり私を抱き寄せた。


「え?え?」


そのまま床に用意された柔らかなマットにゆっくりと倒れこむ。石鹸のヌルヌルがお互いに絡みつきグチュグチュと身体を擦り合わせる度に白く泡立っていく。

私は何とか起き上がろうとするがファトマさんが私に腕と脚を絡めるので立ち上がれない、ファトマさんはもがく私を蕩けた表情で見つめてキスをした。


「ん~~!?む~む~!?」


息苦しくてのぼせる寸前に唇が離れ、お湯を掛けられ泡と供に汚れが流れ落ちた。


「今のは・・・一体・・・」

「さっきの旦那様の話は覚えてるデブか?旦那様は好色で奥さんがいっぱいデブゥ、だけど喧嘩はダメダメだから私達は、お互いを理解する為に奥さん同士で愛し合うデブゥ」

「まさか!?」

「旦那様とは違った気持ち良さがあるから結構ハマるデブよ。今すぐにとは言わないけれど、ジャスミンもこの家の一員になったからにはお互いを愛し合える関係になりたいデブゥ」

「愛・・・ですか」


なるほど、ファトマさんには悪いが案外私には都合が良いかもしれない、フトッテル家の令嬢に自然に近づく為にこの遊びは利用価値がある。


「さ~て、身体洗ったから次は服を選ぶデブゥ」


驚くべき事に私はタオルを一枚だけ巻いたまま廊下に連れ出されてしまった。


「ちょっと待って!服!服!」

「あんなバッチイ服は他のに捨ててもらったデブゥ、衣裳部屋にもっと綺麗な服がいっぱいあるデブゥ」


大まかなサイズ毎に大きな衣装部屋が一部屋あって膨大な数の衣服が用意されていた、どうやって建築したかは知らないが地下は表の屋敷とは比べ物にならない程広大らしい。

そんな衣装部屋だが私達以外にも数人の女性が衣服を選んでいる。

ある女の子は右手に豪華なドレス、左手に袖と背中がザックリ切り取られた丈の異様に短い破廉恥メイド服を持って悩んでいる。


(どう考えてもドレス一択でしょ!)


しかし、女の子は破廉恥メイド服を選んで嬉々として着替え始めた。

それだけでは無く、別の娘はスケスケの踊り子服で、また別の娘は下着姿で部屋から出てしまった。一番驚いたのは全裸で部屋に入って髪飾りだけを交換して出ていった金髪メガネで緑眼の女の子だ。


「くおぉら~、クラリース!下着ぐらい着けなさ~い!」

「いやん、お母様、ケダモノみたい♥」

「あんた母親になったんだろ!?もうちょっと落ち着いた格好しないとジャン君に悪い影響与えちゃうでしょ!」

「そろそろジャンにオッパイあげる時間だから脱いでるんです~」

「パンツ脱いでる理由になってねぇ~~~~!」

「パンツだけは許せないんです」


そんな声が廊下から聞こえてきた。今のは何だったんだろうか?


「あの・・・今のは?」

「あの方は上下関係のユルい私達の中での例外【栄光の十一輝石】第二石、エメラルドのクラリース様デブゥ、流石にあの方のぶっ飛び加減は特別デブゥ」

「偉い方なのですか?」

「最初にダン様の女性となった11人を私達は【栄光の十一輝石】と呼んでいるデブゥ」


この中で注目すべきは最もダン様と付き合いが長いと言われるモリヅル様と、そのモリヅル様が認める程ダン様と相性が良いとされるクラリース様、対してクラリース様の親友にして秘書である調教師アンリエット様には目を付けられない様に注意するべきだろう。他は魔物とか妖精とかよくわからない説明を受けたけれど何かの暗喩でしょうか?


「って、すごい高価そうなドレスがありますが、着ても良いんですか?」

「ここにある服は自由に着て良いデブよ。でも高価なドレスを三日以上着た女の子は居ないらしいデブゥ」

「どうしてですか?皆さん遠慮しているんですか?」

「飽きるんデブよ、ただ単に豪華なだけのドレスだと無駄にジャラジャラして重くて動きにくくて興奮が冷めてきて刺激が足りなくなって」

「全裸・・・」

「そこまでは行かないデブが・・・」


ちらりと視線を移すと女の子が目を輝かせながらワンピース形の黒い網を持っている。網なので着たら当然モロ見えだ。


「普通の上着とスカートにします」


誤算だったのはこの家の普通のスカートが私の知っている普通のスカートの半分しか丈が無かった事だろう。ともあれ次に私が案内されたのは大きな食堂だった。


「普通は家内通貨が無いと無料の日替り定食しか貰えないデブが、今日は先輩として奢ってあげるデブ」

「家内通貨?」

「コレデブ」


ファトマさんが取り出したのは数字と精巧なパンツの絵が描かれた不思議な紙だった。


「屋敷の中には色んな商売をしている女の子がいるデブゥ、そんな時、取引に使われるのがこのエロリン紙幣デブゥ」

「この紙がお金の代わりなんですか?」

「旦那様は希少な金を使用した硬貨は何れ廃止されると考えているデブ、そこで試験的にエロリン紙幣を屋敷内だけで導入しているデブ、外で買い物する際は出掛ける前に王国金に換金してくれるデブが、大抵の物は屋敷の中で揃うから、長期の外出以外で換金する女の子はあまり居ないデブ」


ファトマさんは受付に注文してパンツ紙幣1枚とブラ紙幣3枚を渡し、しばらく待つとドカドカと見たことも無い、されども美味しそうな香り漂う料理の数々が運ばれてきた。


「いただきますデブ」

「いただきます」


ご馳走を口に運んだ時、舌に衝撃が走った。こんな美味しい料理は貴族だった頃にだって食べた事がない、私は頭が悪いから上手く味の説明出来ないけど、涙が出そうなくらい美味しい料理だ。

気がつけば食堂の皆さんが私を笑顔で見ていた。


「うんうん、良い顔をするようになったデブゥ、美味しいものを皆で楽しく食べるのは悪い事じゃないデブ、私はそれをこの家で知ったデブ」


ここでは誰もが笑い合えている。でも、この屋敷の何処かに憎き仇が居るのだ。もし、その時が来たら私は?今笑い掛けてくれている人達は?

今日は簡単な案内だけで本格的な仕事は明日からになった。寝室には数台のベッドと同数のクローゼットが置かれている。聞いた話では屋敷の生活に慣れた女性は空いてる寝室であればどこでも寝起きして良いらしい、これは住人同士の相互理解を深めるのが目的だと聞いている。また、先の家内通貨エロリンを支払って私室を購入する事も出来るそうだ。何にしても疲れた、小さなテーブルで静かに酒盛りしてる女の子達も居るけど、ファトマさん含め大半はベッドに入っている、私も寝よう。

ベッドに入ってどれ程時間が経っただろう?寝室のドアがキイとゆっくり開く音で目を覚ました。


(こんな時間に誰?まさか夜這い?)


そう思い至った瞬間、私は契約の話を思い出した。


(ひょっとして今から?心の準備が!)


足音はヒタヒタと私のベッドに近付き・・・そのまま通りすぎてファトマさんのベッドで止まった。


「ねえ、ファトマお姉ちゃん、一緒に寝て良い?」


聞こえたのはそんな幼い少女の声。


「むにゃ?眠れないデブか?おいでおいで」


ファトマさんはそのまま少女を招き入れ添い寝するみたいです。


「私もお姉ちゃんみたいにおっぱい大きくなるかな?」

「美味しい物いっぱい食べて、たくさん運動して、ダンお兄ちゃんとラブラブしてたらきっと大きくなるデブ」


後で聞いた話だけど、この時の少女は孤児だったそうです。彼女だけでは無く、ダン子爵は身寄りの無い女の子を引き取っては将来自分の妻にする為に育てています。彼曰く見返りの無い人助けこそ胡散臭くて反吐ヘドが出るそうで、必ず対価を提示して合意の上で引き取っているのだとか。彼は確かに好色な悪人かも知れませんが、少なくとも妻とする女性に対しては真剣で努力家に見えました。

朝・・・何か陽が結構高くなっているような気がする。いや、コレ完全に寝過ごした。


「ずいぶん疲れていたみたいデブから寝かせておいてあげたデブゥ」

「あの・・・すみません」

「全く問題無いデブゥ、この時間に起きる人は沢山いるデブゥ。それよりお仕事を探しているなら姐さんの案内所に行くと良いデブ」


地上の屋敷の使用人の控え室だった部屋にはアンリエット様と仲の良い“姐さん”と呼ばれる方が屋敷内の仕事をまとめてらっしゃるそうです。


「昨日入ったジャスミンちゃんだね?今アンタに回せる仕事はランク①のこの中のリストから選べるわ。それと、昨日聞いてると思うけど・・・」

「ええ、今の私は指定された区域以外に入ってはいけないのですね?」

「悪く思わないでね、アンタにはまだ知ってはいけない事が多過ぎる。およそ全ての欲望を満たせる楽園にだって存続する為のルールがあるって事よ」

「・・・(当然、家人を傷つける事、ましてや殺人なんてもってのほかなのでしょう)」

「とりあえずこのリストに時間と場所と仕事内容と給金が書いてあるから好きなの選びなさい」


家内通貨がどれ程の価値があるかまだイマイチ分からないが、似た様な賃金の並ぶ掃除・洗濯等に混じって明らかに二・三桁数字の大きい仕事が混ざっていた。


「教材?実験?お飯事ままごと?」

「教材ってのは、まだ妻見習いの幼い娘達にダン様に相応しい立派な人間になる為の教育をする重要な仕事よ。実験ってのは第一夫人のモリヅル様が行ってる魔法研究ね。お飯事はユナちゃん達のお遊びの相手だね」

「すごい、他の仕事とは比べ物にならない」

「あ~、悪い事は言わないから普通の仕事を・・・」

「コレ三つとも受けます」

「聞けよ!せめて一つに・・・ってもう居ないし」


美味い話には裏がある。思えば私の両親もそうやって全てを失ったのだと今更ながら思い知らされました。

指定された部屋に入った私は問答無用で縄で縛られ開脚状態に固定されてしまいました。犯人は普段はエンドー家の出資で新設された学校で先生をしている女性でした。

私は瞳を輝かせた少女達の前で衣服を剥ぎ取られそして身体の構造を徹底的に・・・へ~、ソコってそんな構造になってたんだ~。結構為になる講義の次は、縛られた状態のまま第一夫人モリヅル様に引き渡され下腹部に妙な紋章を刻まれてしまった。紋章は数十分で勝手に消えましたが、その間お腹の奥が疼いてアタマが沸騰しそうになりました。ようやく拘束を解かれた私は青い髪のエルフの女の子に連れられお飯事をしました。まさか擬似的にとはいえベッドシーンまで用意されているとは夢にも思いませんでした。子供なのになんて濃厚なキスと指使い、出されたジュースに何か仕込まれていたのか少々フラフラします。

頭がボーッとしていたからでしょうか、私は迂闊にも立ち入りを禁じられていた区画へと入ってしまったみたいです。


(早く離れなきゃ、・・・ん?あれはファトマさん?)


金属トレイに酒と少量の料理を載せてどこかの部屋に入るファトマさんが見えた。

気になって部屋を見てみるとドアが僅かに開いていた。悪いと思いつつも隙間から中を盗み見てしまう。


(ファトマさんにダン子爵それともう1人・・・えっ?何であの子がここに!?)


お2人と一緒に居たのは・・・一緒に居たのは私の妹のネモフィラ、黒い犬耳に先の白い尻尾と幼い顔立ちに特徴的な青い瞳、間違いようがありません。妹は透き通った細かな刺繍の入った薄桃色の下着と宝石をふんだんに飾った金細工のアクセサリーを身に纏い、蕩けた顔でダン子爵に侍っている。


(ネモフィラを身請した貴族というのはダン子爵?)

「君達もすっかり馴染んだみたいだな、だが良いのか?ファトマは君の家を滅ぼしたフトッテル家の令嬢だぞ?」

(今、何と!?)

「あはは、ちっぽけな復讐心なんてここの享楽に比べたら些細な話よ。それに似た様な話は貴族ではよくある事、ウチの家系だって元々は・・・」

「本当に私を赦していただけるデブか?」

「ええ、今の貴女はフトッテル家の令嬢では無く私と同じダンゾー様を愛する女だから」

「そう簡単に復讐心を捨てられるのか?『復讐は何も生まない』『復讐の連鎖は断ち切らねばならない』なんて綺麗事だろ?怒りは人の重要な要素だと思うがね」

「無論、おっしゃる通りです。破滅すると理解していても怒りに身を任せ暴れるのは人の愚かな部分ですが、快楽に溺れて復讐心さえも忘れるのも人の哀しきサガです」

はなばなれになったという君のお姉さんも復讐は考えないかな?」


その瞬間、ダン子爵が私の方を見たような気がした。


「まっさか~、生真面目なくせに要領の悪いお姉様だったらきっと今頃、無駄に復讐心を滾らせて空回りしてると思うわ。だからお願いダンゾー様、早くお姉様を見つけて連れて来て」

「ああ、きっと近い内に会わせてやるさ」


私はその場から逃げるように走り出してしまいました。


「これが今回の報酬よ。疲れた顔してるけどやっぱり初日にあの依頼を受けるのはハードだったんじゃない?」

「はい・・・」

「これに懲りたら報酬の良い仕事を安請け合いするのは控えるのね」

「はい・・・」


正直、仕事内容のショックよりもあの部屋で盗み聞きした話の方が衝撃的で姐さんの言葉が入ってこない。


「・・・まあ、いいわ。何があったか知らないけど今回の報酬ね。派手に使っても2・3日は遊べると思うから気晴らしにパ~っと使いなさい」


部屋に帰る途中の廊下で私はあの時の老紳士に出会った。


「何故こんなところに?」

「ふむ、お前さん仇を見つけたのだろ?眼を見ればわかる」

「それは・・・」

「何じゃ?ここに来て怖気づいたか?覚悟が決まらんのなら後押ししてやろう」


老紳士はナイフを床に放り投げた。


「刀身には魔物から抽出した毒が塗ってある。かすっただけでも苦しみ悶え死に至るじゃろう」

「私は・・・」

「何を迷う?この屋敷の主だって復讐を否定しないぞ、手が届くならば成すべきだ。お前の目的は何だった?」

「私の目的・・・」


私はナイフを拾い上げそして・・・。


・・・

・・


部屋に入ってきたファトマさんをベッドに突き倒し、驚く彼女の唇を私の唇で塞いだ。そして、報酬で買った強力な媚薬を口移しで流し込む。効果はお飯事の時に確認済みだ。私は彼女の肉を舐めしゃぶって堪能する。彼女の方もその気があったのか積極的だ、私達は周囲の目も気にせずに絡まり溶け合った。


・・・

・・


段蔵はジャスミンに返された玩具のナイフを指で玩びながら溜息を吐く。


「『相手を殺すだけが復讐じゃ無い』か、甘い復讐だが良しとしよう」

「とか言って、ホントは安心しているクセに」

「フンッ、仮契約は終わりだ。明日からジャスミンにも俺達の秘密を知ってもらう」

「妹さんも喜ぶわね」

「それと、グリド・ザハークへの復讐は誰が何と言おうが成す!奪えるモノは全て奪ってジワジワと嬲り殺す。この決定は何があっても覆らない」

「別に止めないわよ。仲間を痛めつけた相手に同情するほど私達は聖人じゃ無いからね」


数ヵ月後、ファトマとジャスミンを含む数名はフトッテル家を掌握した。


「これ以上語る事はありませんデブゥ、お父様達には既に隠居先をご用意してありますデブゥ」


この騒動に死者は出なかった。ファトマの隣に立つ仮面のメイドは恍惚の表情でファトマの活躍を眼に焼き付ける。


(ああ、私の愛しいファトマが復讐を果たしてくれた。そうファトマ、貴女は私のもの)


ジャスミンの香りが微かに鼻をくすぐった。


◇ ◇ ◇


~オマケ~


【栄光の十一輝石】

・第一石 マラカイトのモリヅル

・第二石 エメラルドのクラリース

・第三石 ムーンストーンのユノ

・第四石 ラピスラズリのユナ

・第五石 アメジストのアンリエット

・第六石 シトリンクォーツのアスタルト

・第七石 ターコイズのスプリング

・第八石 ルビーのイズン

・第九石 サファイアのジェイン

・第十石 ホープダイヤモンド(呪宝石)のオードリー

・第十一石 コ・イ・ヌール(呪宝石)のミーネ


ジャスミンの花言葉は【愛らしさ】【官能的】【あなたは私のもの】等です。

ちなみに妹のネモフィラは【どこでも成功】【可憐】【あなたを許す】だそうです。

なので姉が貪欲でネットリしていて妹の方が世渡り上手でサッパリした性格です。

デブはダイエットに成功しても長年使っていた語尾なので治りませんでした。

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