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遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
怪盗 王国ニ舞ウ
72/163

第七十二話 屍食鬼館殺人事件 前編

初の本格推理・・・だったら良いな~。一応トリックに関わるような都合の良い魔法や魔道具は出てきません。

登場人物


★オギュスタン・ダレット 屍食鬼(グール)館の主人である老貴族、悪辣な人物でナイアールから秘密結社ジム・モロアッチとの繋がりを疑われていた。自室にて何者かに殺害される

★アントワネット・ダレット オギュスタン氏の姪にしてただ一人残った親族であり遺産の相続人と目される人物だが一年前から行方不明

★マリー・バルフォア 屍食鬼館で雇われていたメイド、オギュスタン氏から避けられていた節がある

★ロッシュ オギュスタン氏の友人である傲慢な老貴族、オギュスタン氏の葬儀に参列する

★フランソワ オギュスタン氏と取引していた黒い噂の絶えない商人、オギュスタン氏の葬儀に参列する

★ランドルフ かつて帝国・王国共同戦線にてオギュスタン氏と知り合ったという帝国の元軍医、オギュスタン氏の葬儀に参列する

★スワーミ ランドルフ氏のメイド

★ジョゼフィーヌ教授 クラリースとアイリーンの恩師、仕事上の縁からオギュスタン氏の葬儀に参列する

★多面怪盗ナイアール 何故かオギュスタン氏の遺体を狙い屍食鬼館他に予告状を送る

★ハーロック・アドラー 屍食鬼館に侵入していた謎の美少年、一連の事件の犯人だと疑われる


~1年前 とある墓地~


「はっ・・・はっ・・・見たか・・・クソジジイ」


泥だらけで埋葬地から出てきたその男は先程まで死んでいたハズだった。


「見ていろよジジイ、お前に奪われた全てを・・・必ずマリーを・・・」

「だが、その身体では願いは叶うまい」

「!?」


そこに、黒い影が降り立った。


「お前は・・・一体・・・」

「俺か?俺は偶然通りかかった悪魔だよ。それよりどうする?このままじゃアンタは棺桶に逆戻りだ。俺と手を組まないか?」

「ク・・・ククク、やっと一族の埋葬所から抜け出たと思えば悪魔のご登場とはな。良いぜ、復讐が果たせるなら組んでやるよ」

「契約成立だな我が友よ」


そして二人は夜の闇に溶けるように消えてしまった。


◇ ◇ ◇


~現在 屍食鬼(グール)館~


一人の老人が書斎で額に汗を浮かべながら鬼気迫る表情で手紙を書いていた。

時折ビクリと背を震わせては振り返り何もなく安堵の溜息を吐いている、その繰り返しだ。

目の下にはくまができ、ここ数日まともに眠っていない事が伺えるだろう。


「だがそれももうすぐ・・・」


そんな時、部屋の扉がノックされた。屋敷の者には誰も近づくなと言い含めていたにも関わらずだ。

落ち着いて書きかけの手紙を鍵付きの小箱に隠し扉の覗き窓から様子を見て老貴族は安堵して扉を開いた。


「何だ、お前か。この部屋には近づくなと言っておいたハズだ・・・ガッ!?」


心臓に深々と突き刺されたナイフを見て驚きと同時に何故か納得してしまった。

自分を刺した人物は走り去った。ならば残った力で後始末をしなければなるまいと、老貴族は最後の力を振り絞り部屋に鍵を掛けそして事切れた。

机の上には鍵付きの小箱と一枚の手紙が残されていた。


『これで最後だ。今すぐに手を引け、さもなくば近くお前達に災いが訪れるだろう』


これが最初にして最大の悲劇だった。


◇ ◇ ◇


「嵐が来るな・・・」


ランドルフが空を見上げれば厚い黒雲が流れて来るのが見える。雷と強風を伴った強い雨になるのは確実だろう。


「せめて友を送る日は穏やかな天気であって欲しかったのだがな、あるいは私を恨んだアイツの怨念が嵐を呼んだか?」

「それは・・・」

「違うと?すまないな、どうも私自身が思っている以上に私は参っているらしい、気の迷いだから聞かなかった事にしてくれ」


辿り着いた館の正門両サイドには館の名称の由来である魔除けを目的としたグールの像が置かれていた。他にも庭・廊下・屋根など敷地内の各所に複数飾られていると聞いている。

館は古い時代に建てられたと聞いていたが此処数十年の内に補修と増改築を行ったらしく当時の雰囲気を残しながらも劣化は見られない三階建ての立派な建物だった。


「ランドルフ様でございますね?こちらへどうぞ」


マリー・バルフォアと名乗るメイドに案内されて部屋を宛がわれた。予定では葬儀は明日だったらしいが、既に外の雨が強くなり始めている。明日は無理だろう。


「どうせ今日はやる事がない、一度アイツの部屋を調べるからついてきてくれ」

「仰せのままに」

「堅いな、私のメイドならばもう少しユルくしても良いんだぞ」

「旦那様が普段通りのお顔であれば私もそうするのですが、気付いてますか?訃報を受けてから今日まで表情が硬いですよ」

「むっ?」


ランドルフは自分の顔を撫で回して、最早何度目かも分からない溜息を吐く。

廊下に出ればエルフと猫獣人の二人の中年男が話している。


「ボンジュール、あなた方も参列者ですかな?」

「む、どちら様かね?」

「これは失礼、私は帝国で医者をやっておりますランドルフと申します」


二人は不思議そうな表情を向けながらもランドルフに自己紹介をする。


「私は王国貴族のロッシュで、こっちのエルフはこの辺りで一番大きな商家の・・・・・」

「フランソワだ。ところで帝国のお医者さんがオギュスタン様とどんな関わりがあったんで?」

「あれは20年程昔でしたかね?小国の一つでドラゴンが大量発生した際に王国と帝国が合同で退治した事件があったでしょう?」

「ああ、ブロック谷の戦いですな」

「当時私は帝国の軍医でしてね、その時から交友を結んでおったのですが」

「なるほど、確かにオギュスタンもあの戦いに参加していたと聞いている」

「ですから訃報を聞いていてもたってもいられずに参ったという次第です・・・何でも殺人だとか?」


ロッシュ氏が不機嫌そうに鼻を鳴らす。


「フン、犯人なら分かっておる。当初無能な領兵は密室で胸を刺されて死んでいたオギュスタンを見て自殺と断定した。机の上の脅迫状には目もくれずにな、碌に調べもせずに引き上げてしまった」

「しかし、その後で館にナイアールからオギュスタン様の遺体を盗むとの予告状が届いて事態は変わった」

「失礼、その“ないあーる”というのは?」

「ああ、そうか帝国のかたは知らないか、極めて悪質な泥棒だ。奴の所為でどれほどの貴族が破滅した事か」

「まったくです。こちらも大損害を受けた事がありますよ」


二人は吐き捨てるようにナイアールについて色々と語ってくれた。


「それでそのナイアールとやらがオギュスタンを殺害したと?」

「そうとしか考えられまい?」

「ですが妙ですな、遺体が欲しいならば殺害した直後に奪えば良かったのでは?」

「ナイアールは変人だ。まともな常識なんか通用するわけがない」

「そんなものですかな」

「まあ朗報もあった。この嵐ではもう一人の変人も来られまいよ」

「ああ、あの新参公爵もどきですかな?」

「今度は誰です?」

「無能なショルメ隊長殿さ、ナイアールを捕まえようと躍起になっているが捕まえるのはいつも無関係な貴族や商人ばかり、まったく迷惑千万」

「あの小娘が来られないのは陰気な嵐の中で唯一の救いだろうさ」

「迷惑なヤツってのは何処にでもいるものですな友よ(モナミ)、私の患者にも・・・」


などと暫く談笑を楽しんだ後、挨拶もそこそこにオギュスタンの部屋へと向かった。


「これはランドルフ様、何かお探しですか?」

「貴女はマドモアゼル・バルフォア・・・でしたかな?」

「ええ、マリーとお呼びいただいて結構ですよ。ええーっとそちらの御付きの方は・・・」

「・・・・・ランドルフ様の使用人のスワーミです。よろしく」

「えっと・・・あの・・・」


スワーミの睨みつけるような挨拶に若干たじろぐマリー、そんな様子のスワーミをランドルフが窘める。


「これスワーミ、今回の君の仕事は何だったかな?」

「し・・・失礼致しました」

「マドモアゼル・マリー達館の使用人も大変でしょう、私の用事が無い時間で良ければスワーミを遠慮なく使ってやってくれ」

「そんな、お客様に対して・・・」

「ああ、良いんだ気にするな。スワーミもそれで良いな?」

「はい、問題ありません」

「っと、話が逸れたな。早速だがマリーさん、オギュスタンが殺されたという部屋を見せてもらえないか?」


マリーの案内でオギュスタンの書斎へとやって来た二人、入り口の扉は破壊され、室内には本棚が一棚と高級そうな机と椅子にリラックス用のソファーとテーブル、別の棚には酒瓶とグラスが収められていた。


「マドモアゼル、オギュスタンはどの辺りで?」

「扉のすぐそばで倒れていました。そこに血の跡が」

「おっと」


スワーミが不機嫌そうにマリーに尋ねる。


「随分頑丈そうな扉ですね。お話によると最初は閉まっていたとか?」

「ええ、食事の時間になっても出てこない旦那様を不審に思った執事の一人が異変に気付き私達同僚を呼んで数人で破壊しました」

「扉に大きな穴があいてますね?破片などはどうしましたか?」

「後日、捨てに行く予定で今は物置部屋の中に」

「結構・・・おや?本棚の本が」


ランドルフが本棚に目を向ければ本と本の間に不自然な空きがあった。丁度一冊分が抜け落ちたかのように。


「蔵書の目録なんかはありますかな?」

「私ここで働いてまだ1年ですから詳しい話は・・・でも、もっと長い人なら知っているかもしれません」

「よろしい、用意していただけるようお願いできますかな?」

「かしこまりました」


一通り部屋を調べ終え談話室へ向かう。スワーミには館の仕事を手伝うようにと伝えマリーと共に別行動をする。談話室では美熟女が優雅に座ってフランソワと話しをしていた。彼女は優しい笑みをたたえてコーヒーを飲んでいる。


「ボンジュール、マダム。貴女も参列者ですかな?」

「ああ、ランドルフさん、こちらは王立学院教授の・・・」

「ジョゼフィーヌです。どうぞよろしく」

「これはご丁寧にどうも、私は帝国で医師をしておりますランドルフと申しますジョゼフィーヌさん。いや、素敵なお名前だ。そして、とても美人でいらっしゃる。これほどお美しい先生だと生徒さんが講義に集中できなくて落第者続出ですな」

「あらまあ、こんなオバサンにお上手ですね」

「ノン!お世辞じゃありませんよ、フランソワさんもそう思うでしょ?」

「ええ全く、私もこの歳になって今更ながら学院に入るべきだったと後悔しておりますよ」

「学びたいと思う心がおありでしたら歳なんて関係ありませんよ。学院の門は何時でも開いております」

「いやはや、参りましたな~」


そこへ執事の一人がこちらへと近づいてくる。


「フランソワ様、お手紙を預かっております」

「うん?私にかね?」


執事から手紙を受け取ったフランソワが少し内容を読んで一瞬固まった。そして大急ぎで懐に手紙を仕舞い込んだ。


「どうかなさいましたかムッシュ・フランソワ?」

「い・・・いやあ大した事じゃ無いんだドクター、気にしないでくれたまえ。ああそれと執事の君、いつも通り夜に私の部屋には近づかないように皆に伝えてくれたまえ」

「かしこまりました」

「ムッシュ・フランソワはよく館に足を運ぶのですかな?」

「ええ、オギュスタン様とは良き取引相手でしたから、今回もいつもと同じ部屋を用意してもらっています」

「近づかないようにというのは?」

「私の家は敬虔なアレスタ宗派でしてね。深夜のお祈りを欠かした事は無いんですよ。これで商売が上手くいってるんで皆さんも夜に私の部屋へと近づかないようお願いできますかな?特に今夜はオギュスタン様の為にいつも以上に祈らないといけませんからね。私の部屋は二階の東端ですのでくれぐれも注意して下さい」

「ええ、もちろんですとも」

「冥府の裁判官女神アレスタ様がオギュスタンさんを天国へと導いていただけるよう、私も祈らせていただきますわね」


しかし、この時彼等は気付いていなかった。既に館内に侵入し、誰の目に触れる事無く館内を闊歩している人物が居る事を・・・。


・・・

・・


自室に戻ったランドルフはスワーミと今まで得た情報を整理する。


「遺産ですがオギュスタンのジジイには親族がおりませんので現在は宙ぶらりんですね。唯一の肉親だった姪が行方不明である以上、遺言状に特別な記載が無ければ王国の預かりとなるでしょう。館の使用人の給金も葬儀が終われば相続人か、誰も居なければ国が支払う事になっているみたいです」

「ロッシュ氏とフランソワ氏それからジョゼフィーヌ教授が受取人である可能性は?」

「全くありません、あるわけがありません」

「だろうな、他に変わった情報は?」

「コックが包丁やナイフが数本無くなっていると、あと庭師も大工道具が無くなっていると言っていました」

「不味いな、あからさまに凶器になりそうな物ばかりだ。きっと殺人はまだ続くぞ」

「旦那様は何か掴みましたか?」

「さて、フランソワの奴は自室にこもって誰も近づけさせないつもりだ。明らかに怪しい、きっとロッシュの奴と悪巧みでもしてるんだろうさ、途中で受け取った手紙もロッシュからの打ち合わせだろう、一応は奴等の部屋を調べてみるがね・・・難しい話はここまでにして、こっちに来いよ、ストレス発散は健康の秘訣だぜ?」

「・・・はい」


自身の服に手を伸ばそうとするスワーミをランドルフが止める。


「そうじゃない、メイド服は着たままだ。解るな?」

「はい」


熱を帯びたスワーミの瞳を真っ直ぐ見据え、ベッドに乗った彼女をランドルフは優しく抱きとめた。


・・・

・・


深夜、暗がりの中こっそりフランソワの部屋へと向かったランドルフだが彼の部屋の様子がおかしい。


「何だ?ドアの前に誰か居て、ドアそのものも妙だ、まるで何かを飾ってあるみたいな・・・ん!?」


ドアの前に居る人物がランプを掲げた。


「誰だ!?・・・何だランドルフさんか?」

「ムッシュ・ロッシュ?どうして?(中でフランソワと悪巧みしてるんじゃなかったのか?)」

「うむ、トイレの帰りにフランソワのドアが変だと気付いてな、近寄ってみればコレだよ」


ロッシュに促されてフランソワの部屋のドアを見てみれば、大量の斬り傷と刃物が3本突き刺さっていた。


「いけない!中を確認しましょう!!」

「あっ・・・ああ」


試しにノブを回すと意外にもあっさりとドアは開いた。

室内は開け放たれた窓、外から吹き荒れる風が入り込み室内で暴れるが、フランソワの姿は見つからない、無人だった・・・いや。


「ムッシュ!部屋の隅に誰か居ます!」

「むっ!?」


ロッシュがランプを向けるとそこには光を当てられ眩しそうにする少年が立っていた。


「お前は・・・誰だ?」

「僕の名は・・・あ~、ハーロック・・・ハーロック・アドラー」

「ここで何をしている!?フランソワはどうした!?」


そしてハーロック・アドラーと名乗る紅眼美貌の少年は窓を指差した。


「彼なら死んだよ」


ランドルフ達が窓の外を覗けば、頭を血塗れにしながら落下したフランソワの死体がそこにはあった。

ヤバイ、頭の中ではトリックとか考えてあるけど、矛盾とか見落として無いか今からすげ~不安です。

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