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遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
怪盗 王国ニ舞ウ
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第五十七話 サラワレタ副隊長 奇天烈ブリキ将軍ノ絡繰卍城 前編

世間的にはこのストーリーは俺つえー系になるみたいですが、私個人としては否です。

ナイアールの勝率は決して高くありません・・・今回もそんな敗北のお話。

屋敷の一室で段蔵と一人の女性が話し合っている。

彼女は段蔵の妻では無いが協力者ではあった。隠す様な話でも無いので何人かの妻達が客人をもてなす為部屋を出入りしている。

やがて話が終わり客人が帰った後、妻達が集まってくる。


「ダンゾー様、今のお話受けるんですか?」

「う~ん、ナイアールは世間ではルミナスと戦って海の藻屑と消えた事になってっからな~、ここらでそろそろ華麗な復活劇を魅せておくべきだと丁度思ってたんだよね」

「それじゃあ?」

「あちらさんが公爵様になってから未だ挨拶してなかったからな、ここらで大々的に祝ってやろうじゃないか、丁度ショルメ公領で魔物の巣になっていた古城をこっそり占拠できたしな」


その言葉に掃討作戦に参加した娘達が遠い目をする。古城周辺は蟲系魔物の巣となっており、ナノマシンの御陰で毒にこそ侵されなかったものの生理的嫌悪感を抱く外見の魔物が多く戦闘時は終始悲鳴が絶えなかった。蟲系魔物娘が仲間になった今でも彼女達の羽音に少しビビる。


「ダン様、今回は私達にお任せください」

「おっ・・・お前達は!!」


そこに現れたのは日頃から段蔵の技を学び、才能有りと認められた娘『レディー・ナイアール』達、通称『レディース』。


「今回の仕事は私達レディースに任せていただけませんか?」

「う~ん・・・」


段蔵は腕組みして俯き加減で深く考える。


(遊びの一環として彼女達に仕込んでみたものの本番にはまだ早い気がする・・・けれどもそう言って先延ばしにしていたらいつまで経っても始まらない、この遊びは俺だけが楽しんだって意味が無い、俺も妻達も民衆も好敵手である彼女達さえも楽しんでこそ価値が産まれるんだ)


段蔵は意志を固めると彼女達を見つめる。今日も色っぽい身体している。このままベッドに潜り込みたいが今はそれよりも作戦とそれに合わせた特訓の方が必要だろう。


「よし、それじゃあ今回は君達が主役だ。みんなでアイリーン女史を降参させよう」

(まあ、何かあったら俺がサポートするしな)


こうして今回の計画が開始されたのだった。


◇ ◇ ◇


~シントー領 黒蜥蜴城内対犯罪者研究所~


「これはこれは、ようこそおいで下さいましたショルメ公」

「今までみたいに『隊長~』で結構ですわよシントー夫人」

「りょ~かいで~っす隊長~、それじゃ私の事もギャルル隊員でお願いしや~っす」


今日、アイリーンとリトがここへ来たのは、以前ナイアールを逮捕した際に回収したナイアールの仕事道具の分析結果を確認する為だ。

彼の使用する道具から行動を読もうという計画である。


「以前隊長から渡された眠り玉一つとってもナイアールの技術の高さが伺えます。中に入ってる睡眠薬は強力かつ身体に負担が掛からない様調合されていました。私も薬師として自信があったんですが、正直このレベルの物を作るのには相当時間が掛かります」

「うへ~、やっぱナイアールってすごいんっスねぇ~」


アイリーンは額に手を当てて不出来な生徒を諭す様にリトに語る。


「論点はそこではありませんわよリト。今、ギャルル隊員は同じ物を作るのに相当時間が掛かるとおっしゃいました。ならば、逆を言えば時間を掛ければ我々にも同じ物が作れるという事ですわ」


ギャルルが笑顔でアイリーンに喝采を送る。


「分析は結構難航しました。隊長から送られてきた眠り玉を一個目は夫がうっかりと落しちゃって、その場に居た人皆ぐっすりでしたから。ですが、二個目の分解には成功して既に同じ睡眠薬も調合してあります」

「おお~!」

「ですが、詰め込みと破裂時の拡散が意外と難しくって・・・同じ物を作ってみたのですが・・・」


ギャルルが取り出したのは拳二つ分程のボールだった。


「サンプルはコレの半分程だったし、過去の事件には更に小型の物を使用した記録も残ってましたからこの点に関してはウチらの技術不足ですね。今はまだ」

「ではコレも小型化の見込みがあるっスね」

「勿論です。閃光玉の方も平行して分析を進めています」


アイリーンが満足気に頷く。


「それから、手紙にあった件ですが、本当ですの?」

「ふっふっふっ、それこそが今日お二人をお呼びした一番の理由です」


二人が案内された部屋には大量のカツラと化粧品数点に謎の薬品が入った瓶やら、服も何着か置かれていた。


「この部屋が!!」

「その通りです!!ナイアールの変装術は確かに驚異的です。そのままの再現は非常に困難でした。しかし、私達はアプローチを変え私達が持てる魔法技術を注ぎ込んでナイアールに負けない変装術を独自に確立させたのです!言わば捜査部隊流変装術」

「この事は私達以外には?」

「無論誰にも伝えていません、お送りした手紙も信頼出来る者に届けさせましたから」


置かれているのは長い金髪と黒髪のカツラ、黒髪の方は作り物のエルフ耳が飛び出している。


「これは擬態が得意な魔物が蔓延る巣から回収した魔道具【変化の布】を使って作りました。このカツラを被ると元の髪の毛が見えなくなるんです。ナイアールはカツラを被る為、短髪にしていたらしいから、髪を切らなくても髪型を変えられる我々の方が優れているわ」

「素晴らしいですわ。よくぞ、よくぞここまで・・・」

「すげーっス、ギャルルちゃん。自分は走るしか能が無いから羨ましいっス」

「何言ってんですか、隊長だけじゃなく副隊長も頑張ってくれてるから今の私があるんですよ~、もっと自信持ってください・・・と、いうわけで早速変装しちゃいましょう!お二人の為に用意したんですから」

「「え?」」


二人はカツラを被せられメイクを施され、あれよあれよという間にその姿を変えていった。

アイリーンは黒髪を後ろで結んだカツラを被せられ服から出た地肌に化粧をされ、リトは長い金髪のカツラでエルフ耳は隠され肌は化粧で少し赤みがかった感じに変更された・・・つまり。


「この姿、隊長っスか~~~!!」

「なるほど、互いの姿を交換するんですわね。中々興味深いですわ」

「流石に目の色までは変えられなかったんだけどね~、このまま外に遊びに行こ~」


外に出た三人は思い思いに城下町を見て回った。最近シントー領にも出店した“黄金の朝焼け”で服を見たり“銀の星”で名物のスドーフを食べたりと普通の女子みたいに堪能した。不満を述べるならば変装に誰も気付かなかった事だろうか?そもそも写真技術がまだ存在しないこの世界では領主の妻のギャルルはともかく二人の顔なんて知らないだろう。

三人で町を散策していると一台の馬車が三人の前で停まって中から同じ仮面を付けた道化師や派手な衣装の踊り子達が現れて三人の周りでパフォーマンスを始め・・・一瞬の事だった。道化師達がアイリーンを拘束して馬車に乗せて走り去ってしまったのだ。


「へ・・・・・!?」

「たっ・・・隊長~~~!!」


呆気にとられた二人の前に綺麗に封をされた手紙が落ちていた。


『御機嫌よう親愛なる我が宿敵ディテクティヴ、先ずは公爵への出世お喜び申し上げます。これを記念してショルメ公に楽しんでいただけるよう余興をご用意させていただきました。ショルメ公領北の廃城改め“絡繰城”にてお待ちしております。あっ、そうそう、パロット王子の所持する『銀の靴』を持参してお越しください、もし来なかった場合は可愛い副隊長さんが大変な事になっちゃうかも? 復活の犯罪王ナイアールが多面の一つ“奇天烈ブリキ将軍ウィンキー”より』


「「大変だ~~~~~!!」」


あろうことかナイアールはリト副隊長と間違えて変装したアイリーン隊長を攫ってしまったのだ。


「いったいどうすれば・・・」


混乱するリトの脳裏に以前見た優しい男性の笑顔が思い浮かんだ。


(あの方なら助けてくれるかも知れないっス)


意を決するとリトはギャルルに指示を飛ばす。


「大至急王都のパロット王子の下へ向かうっス、馬車の手配と面会の手続きをお願いするっス」

「『銀の靴』をお借りするんですね。直ぐに手配します」


こうして、隊長不在の捜査部隊とナイアールの新たなゲームが開始されたのだった。

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