第四十一話 ある日のこと
前回今年最後だと言ったがあれは嘘だ。
朝、広い寝室にて段蔵と少女達が互いに身体を絡ませ合っているとドタドタと足音が聞こえ勢い良く扉が開かれた。
「おい、何だ!このふしだらな状況は!!」
憤怒の形相で入ってきたのは最近屋敷の一員となったモルガンであった。
「朝っぱらから大声出して何の用だよ。昨日まで仕事だったんだからどう過ごしたって良いだろ?侍委員長、今日は朝に美少女・昼に美女・夜に美熟女と後が控えてるんだからさ」
「拙者に勝手な渾名を付けるな!こんな・・・年端もいかぬ女子達を誑かして」
「ちょっと待てよ、一応王国法の適正年齢はクリアしてるし背が低く見えてもそれは家庭の事情で今まで十分な栄養が回ってなかった娘とかも居るんだよ、見た目だけで決め付け良くない!」
指摘されたモルガンは少し押されたがなおも怒鳴り散らす。
「だとしても貴様が破廉恥な人間だと言う事には変わりなかろう!!」
だがここで美少女筆頭のアスタルトがモルガンに反論する。
「さっきから聞いていれば破廉恥だのふしだらだのと、侍委員長は煩いわね。愛しい夫と次代の命を創造する神聖な行為をそんな目で見られるといくら魔物仲間とはいえ不愉快だわ」
「ぐぬぬ」
「何がぐぬぬだ」
「い・・・今はタイミングが悪いみたいだ。また後で来る」
お昼、食後の運動を段蔵達がベッドで行っている時に勢い良く扉が開いた。
「御免、今朝の件で・・・っておわ~~~~!!ソレ絶対入ってるよね!?」
突然現れたモルガンを歓迎するようにクラリースが手招きした。
「とうとうモルガンさんも“姉妹”なる覚悟ができたのですね?最初は痛いかもしれませんが直ぐに良くなりますからこちらへどうぞ」
「し・・・失礼いたす!!」
そそくさと退室したモルガンを残念そうに見送ってからクラリースはミーネと抱き合った。
「逃げられちゃいました」
「・・・・・クラリース、私がいるよ。もっとブタさんごっこしよ」
「家畜が喋っちゃダメでしょ」
「・・・ぶうぶう」
一番人数が多いグループの為自分の手番まで思い思いに部屋で過ごす面々、友情を確かめ合ったり新規開拓したり他者の行為を研究して試そうとしたり世間話に花咲かせたりキャッキャうふふと心地好い騒がしさだ。
「オデット、俺が割った屋敷の窓の交換だが義父さん達は喜んでくれたか?」
「あの一箇所だけ妙に豪華なステンドグラスになってて父上や使用人達がビビッてたぞ」
「そうか、喜んでくれてたか」
「いや、話を聞けよ。今回もまた負けちゃったし良い所無いわね」
「自分に出来ない事を隊長さんに任せて自分は一つの役割に徹したのは普通の人なら良い考えだったが、オデットの実力ならば隊長さんと一緒に積極的に行動してもらった方がもっと面白かったな」
「それはそうと今回の目的は果たせたのか?」
「ん・・・ブラクラ将軍が俺と面会したすぐ後で遠く離れたペレンナ領でナイアールが一度逮捕された。この事実は結構広く伝える様に手を回したからな・・・しかし恐るべきは女伯爵か、僅かな手掛かりから俺を特定するとは恐れ入る」
そこにイズンが全身果汁まみれになりながら割って入ってきた。
「折角の休みなんだべ?仕事の事は考えずに今は快楽に身を任せるだよ」
「まあ、それもそうか」
夜、一日の汚れを洗い流す為に風呂に入る。幸いこの世界では水魔法が存在する為水資源には困らなかったので風呂文化が根付いている国も多く存在している。
段蔵は広い浴室でオードリーを筆頭とした美熟女達と洗いっこしていた。
「あ・・・お止め下さいそんな事・・・私娘が三人もいるオバサンですのよ」
「あの娘さん達とはまた味が違うんだよ。それにまだまだ姉妹みたいにハリがあるじゃないか。明日は朝に親友・昼に姉妹・夜に母娘でヤルから夜の部に来ないか?」
「それ、娘達が昼の部にも出てるんじゃないですか?」
一方で守鶴前・ネフティス・オードリー達が湯船に浸かって順番待ちをしている。
「守鶴ちゃんって見た目的に昼の部ではないか?」
そんなネフティスの質問に対し守鶴前は複雑な表情を浮かべた。
「齢千年を超えると年齢ネタに自虐する段階すら軽くすっ飛んでしまってむしろ自身がBBAである事に誇りすら感じるようになるのじゃ、老練なテクで若い衆の邪魔はしたくないからな」
「見た目若々しいままで羨ましいです」
そんな空間を少し覗いて立ち去った人物が居た。
モルガンである!
「皆幸せそうだな・・・考えてみればこの家の財力ならどれだけ子供が産まれても養えるだろうし結局拙者の独り善がりだったか」
自身の存在意義に疑問を持ち始めた頃、ソニアを抱いたアンリエットが廊下の向こうからやってきた。
「うん?アンタはモルガンだったかい?そんな暗い顔してどうしたのさ」
「アンリエット夫人・・・拙者は・・・」
「食堂でお茶でもどうだい?」
あったかい紅茶をいただきながら一息つく二人、ソニアにはイズン印の果汁を混ぜた白湯をスプーンで少量ずつ与えてあげると気に入ったのか頬を赤くして喜んだ。
「かわいいにゃ~~~~、それに比べて拙者ときたらこの屋敷に保護されてから大してお役に立っていないような気が・・・」
「確かにアタシ達は皆色んな仕事してるけど最初っから何かを任されていたわけじゃないんだよ。アタシだってクラリースの秘書をやる前は読み書きすらできない馬鹿娘だったからね、それに全員が仕事を持ってるわけじゃないし」
「それでも拙者は何かしていないと気が済まぬのです」
「!!ちょうど良い案件を今思い出した。来春から領内の子供向けの学校“小学校”が始まるんだけど入学希望者が少なくて、学費も無料でお昼ご飯も出るのに皆あんまり勉学を重要視していないみたいでさ、それでモルガンって夢魔なんだろ?だからさ・・・」
◇ ◇ ◇
~ある村の少年少女~
「スペード(仮名)はがっこうにいくのか?あたちはおっ父もおっ母も行ってみんさいってゆってるだ」
「オラ行かねぇ、んなとこであそんでるよりもはたけしごとしろって父ちゃんも母ちゃんも言ってた」
「でも字よめたらおもしろそうだべよ?」
「字よめてもオラたちのうみんはエラくはなれねぇ、行きたきゃハート(仮名)だけで行けばいい」
それから数年後、スペードの家は文字が読めない事が祟り、畑は悪徳商人に理不尽な契約内容で奪われてしまった。更に年月が経過しスペードは街で仕事しようにもそもそもどうやって仕事を見つけるかすら分からないままいつしか小汚い泥棒になってしまった。
「ちっドジったぜ」
街の兵士に捕らえられたスペードは留置所に放り込まれそこで意外な人物と再会する。
「おい!オマエもしかしてハートか?」
他の兵士よりも上質な鎧を身に纏った女兵士はスペードの幼馴染のハートであった。
「ハート隊長、お知り合いですか?」
「いえ、知らない顔ですね。泥棒はいつも通り処罰して下さい」
「ハッ!!」
牢から引っ張り出されたスペードは訳も分からぬまま片腕を台に固定されてしまった。
「おい!こりゃ一体どうなってんだよ」
「うん?おかしな事を聞くなオマエさん、泥棒は逮捕次第片腕を切り落とす法律が制定されただろう、領内のそこかしこに張り出したから知らぬとは言わさぬぞ」
「待て!俺は文字が読めないんだよ待て待ってくれ!!ハート!ハート!!助けて・・・」
無情にもサーベルが振り下ろされた時『ガタン!!』とスペードは寝台から転げ落ちた。
「え・・・あ・・・夢?」
腕は繋がっていて体もまだ子供のままだ。外を見れば雪をかぶってはいるものの慣れ親しんだ畑が見える。
翌日、スペードが両親に学校に通いたい旨を伝えると昨日とは打って変わって賛同してくれた。
「ハート、昨日のことだけどやっぱりいっしょにがっこう行くべ」
「スペードといっしょに行けるだか?うれしいべな」
喜ぶハートの笑顔の中にスペードは夢で見た綺麗な女兵士の幻を見たような気がした。
・・・
・・・・・
・・・・・・・・
「こんな感じで良かったのか?」
「完璧だね、これで子供たちは学校に集まるよ」
「しかし泥棒の腕はぶった斬るってのは酷くない?俺泣いちゃうよ」
「ふん、自業自得だろ」
「侍委員長は厳しいなぁ~」
モルガンは学校に来る気の無い家庭に似たような夢を見せて勉学の大切さを伝えたのであった。
子供たちが集まるのが今から楽しみだ。
勉強・・・この歳になるともっと勉強しておけばと後悔する毎日です。




