第百四十四話 英雄モドキに悪の華束を パート2
彼女は帰って来た。
嘗て英雄だった自分を犯罪者にまで貶めた東王領へと。
血濡れた偽英雄、鞭使いリッチー・ボーデン元特務中尉である。
魔道具超人と成った後、数多の犯罪者をつかまえた彼女はジャスティス・ウーマンなどと持て囃されたが、その殆どは拷問の末自白させた冤罪であった。
現在、冤罪の人々は帝国政府が責任持って釈放し賠償金が支払われ名誉も回復した。
真犯人も着々と逮捕されている。
英雄は一転大罪人である。
プライドだけは高い彼女がそんな状況に納得出来るワケも無く、逆恨みを募らせ、そして爆発させた。
「先ずは東王を血祭りに致しましょう。次はトレミーとか言うインチキ弁護士とオーギュストとか言う一兵卒よ!!」
上空でリッチーが魔力を最大まで込めて鞭を東王屋敷に振るう、鞭は巨大な暗黒の魔力と衝撃波を伴い屋敷を両断しようとして魔剣に止められた。
「!!?」
「結合剣【物干し竿・カスタム】」
それは90㎝の長剣、受け止めた魔力と衝撃波を余さず吸収した。
「・・・驚きました。まさか東王自ら出撃とは、そんなに私の鞭に打たれたかったのですか?」
その問いに答えず東王ナチェ・アトラクア・アカギは羽織っていたコートを脱ぎ捨てる。
コートの下には黒皮革のボンテージ、ある意味女王の出で立ちである。
「は・・・ははは、巫山戯ているのですか!?良いでしょう一撃では殺してあげません!私に赦しを乞いながら後悔して死になさい!!」
再び標的を打ち据えんと鞭を振るうリッチーに対しナチェは冷静に冷徹に長剣に魔力を込める。
「動け、カルンウェナン」
その瞬間、長剣はバラバラと分離し翔んだ。
よく見ればバラけた刃が一本のワイヤーの様な紐で繋がっているのが見てとれるだろう。
所謂漫画やアニメでお馴染みの蛇腹剣である。
竜二の後輩、魔法使い新堂英一がアーサー王が所持したと伝えられる短剣カルンウェナンを八本複製し北欧神話において『貪り喰うもの』の意を持つグレイプニルで一本に繋げた魔力喰いの魔剣である。
「クッ!私の鞭が!?」
グレイプニルが鞭を覆っていた魔力を喰らい短剣が鞭をズタズタに切り裂く、一瞬にしてリッチーの鞭はバラバラに切れてしまった。
武器を封じれば次は使い手に矛先が向くのは自明の理。
「魔剣『燕返し』!!」
魔剣はスルスルとリッチーを囲む様に伸び四方八方に回り込み一気に締め上げた。
「ぎゃぁぁぁぁああああああ!!!痛い痛い痛い!!!」
魔女殺しの刃がリッチーの全身に食い込み、そのままナチェが剣の柄を引く。
それはまるで怒れる蜘蛛神アトラック・ナチャの一撃であった。
血の華が咲く、魔女と女王の闘いは女王の勝利、並みの人間ならば動けない程の重傷だろうが、痛みや損傷に対する何らかの強化を受けていたのか血塗れのまま宙に浮いている。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!うぁぁぁぁあああああ!!」
「ぐっ!?魔力が喰い切れない!?まだそんな力が・・・」
リッチーは魔力を暴発させ強引に物干し竿・カスタムの包囲から脱出すると猛スピードで帝都の方角に翔んで行ってしまった。
「あれは私じゃ追えないわね。後は帝都組に任せましょう」
「奥様」
「ママ」
ナチェは屋敷の中で戦闘を見ていた愛娘と従者にサムズアップを送った。
「今度は護って見せたわよ。アナタ」




