第百三十六話 ここにあった怨嗟が逃げた
アタシの名はアンリエット・赤城、スケベ旦那がまだ遠藤段蔵を名乗っていた頃にお腹の娘共々見出だされ、今は表向きは政治家クラリース・アカギ・ダンドレジー女男爵の秘書を、裏ではアカギ家に嫁いだ女性達の調教と教育を担当しています。
アタシは家族の家計を支える為に両親に売られ、忌まわしいグリド・ザハークに孕まされた。
両親に対しては意外な程怨みは無い、貧乏が悪いと自分の中で納得したか、あるいは両親には興味が失せたのか?まあ、今更だ。
しかしグリドは違う。
アレは忘れたくても忘れられないアタシの怨敵だ。
だけどグリドは死んだ。
ジェーン姫様から直々に奴がどう惨たらしく惨めに死んだか聞いた。
これでアタシの溜飲は下がったのだろうか?
自分では分からない。
だったら奴の家族を同じ目に遇わせればどうだろう?
奴の母と妹は旦那の手に堕ちた。
アタシが培った全ての技術を全力で注ぎ調教してやる。
・・・
・・
・
何か違う。
妹のハイスさんも母親のミスティナさんもアタシの調教通りこの家に相応しい旦那の妻となった。アタシがそうしてしまった。
今、彼女達は蕩けた顔で旦那の上に乗っている。
特にミスティナさんの表情なんてどうだ。
貴族同士の政略結婚が当たり前で愛してもいない男と子供を作り、面子を守る為に高圧的な態度しか知らず、立場が悪くなると娘まで見捨てた女性だが、彼女はこれまでその方法しか知らなかったのだ。誰も教えなかったのだ。
だからこの家に来て初めて人を愛する事を知った。娘を愛する事を知った。家族を愛する事を知ったんだ。
そして変わった。
たっぷりと愛の証を注がれ肩で息をしながら旦那にしがみついて脱力している彼女達に『ふはははは、アタシの苦しみを思い知ったかしら?』と言うのは明らかにシチュエーションが違う気がする。
何でこうなった?
アタシは旦那に強引に彼女達を犯して欲しかったのだろうか?
確かに彼女達がそうなる結末は見たかったかも知れないが、同時に旦那のそんなプレイは見たくない・・・と言うか想像がつかない。
旦那が上手過ぎるのが悪い、こんなに良かったら幸せにならない女の子なんか居るワケない。
でもまだだ。
アタシにはソーニャが居る。
アタシの可愛い娘。
アタシの悪夢から産まれた娘。
絶望と希望の相反する要素か入り交じった娘。
やがて旦那に犯される事を運命付けられた娘。
この娘の初夜には必ず立ち会おうと心に決めている。
その時ソーニャはどんな顔をするだろうか?
その時アタシの心は漸く晴れるのだろうか?
・・・
・・
・
~十数年後~
ソーニャが肩で息をしながら竜二さんにしがみついている。
こんなところはミスティナさんそっくりだ。
アタシはソーニャの額の汗を拭ってやり、口元にジュースのストローを差し出す。
視線が定まらないながらもヤりきった満足感に顔を綻ばせながら水分を補給するソーニャに安堵した。
「ん、ママありがと」
「全く、初めてなのに全力で飛ばし過ぎよ。次はアタシ達が見本を見せるから休んでなさい」
「ヤダ~」
「ヤダ~、じゃありません。ハイスちゃんから気持ち良く精力的を吸う効率的なヤり方をおしえて貰いなさい、ミスティナさんも甘やかし方が上手だからちゃんと見ておくのよ?」
「は~い」
「あと妊娠したらナイアールの仕事は辞めるのよ?」
「え~、何で~?アテナちゃんは将来出産後でも落ち着いたら仕事再開する予定って言ってたよ?」
「バカ!あの娘は公務員でしょ!あんたはナイアールなんて不安定で危険な仕事なんだから早めに辞めなさい。あんたが予告状出す度に竜二さんが『心配だから俺も行く』って大変なんだから。もう十分稼いだでしょ?」
「は~い」
「あと今日からあんたはアタシの妹だからね」
「ママいやらし~、竿姉妹ってヤツ?」
「それも確かにある、けど家系図担当の娘が会議の時に死んだ目で『もういいじゃん妻は全員姉妹って事で・・・複雑過ぎて把握しきれないのよ』って言われたらね」
この世界はつい十年くらい前まで十○歳で結婚なんて当たり前だったから十○歳で結婚出産、その娘も同じぐらいで結婚出産したらお婆ちゃんが若いなんて事は結構ある。
んで同じく十年くらい前は犯罪や事故や戦争や魔物の襲撃なんかが多くて偶々男手を喪う事例も少ないがそれなりにはあった。
そうなるとエルダーさん一家みたいに母娘三代で引き入れて十年後には三人とも竜二さんの子が居るなんて事になるのは当然の帰結だ。
「まあ、家系図がそうなるってだけで呼び方は今まで通りで良いわよ、あとそれから」
「まだあるの!?」
「開発調教して欲しい時はアタシかタヌキ姉様か竜二さんにお願いしなさい」
「クラリースおば様は?」
「ダメ!絶対にダメ!!」
「どうして?ママの親友でしょ?」
「確かに親友よ、でもあの娘は調教の時に変な癖を付けるのよ」
「変な癖?」
「お風呂屋さんの二○三号室で夕方から働いてるメナちゃんは知ってるでしょ?」
「あの右足が悪そうな人?知ってる。ナノマシン飲んでるのに足の具合が悪そうだから変だなって思ってた」
「あれは八年前クラリースに右足の裏で感じる様に調教された後遺症よ。私が調教し直すまで三ヶ月はまともに歩けなかったんだから」
しかも足の裏を性感帯に変えた事は病気や怪我と違ってナノマシンからは異常と判断されなかったのだ。未だ完全には治っていない。
「アタシもあんたが初めてを無事に済ませて安心したわ。これからは好きな時に竜二さんと寝なさい、仲の良い娘がいたら抜け駆けせずに何人か誘いなさいよ?アタシも時々で良いから誘いなさい、竜二さんは母娘丼も好きなんだから」
ともあれ娘が竜二さんと愛し合うのを見届けるって目的は果たした。
そう言えば何で見届けようって思ってたんだっけ?
まあ、世間様では異常かも知れないがこの家では母娘、姉妹、親友が初夜に立ち会うなんて珍しくも無いからどうせその流れだろう。
ふと、竜二さんがアタシを引き寄せて頭を撫でながら『落ち着いた?』と聞いてきた。
何のこっちゃ?今から最高に興奮する行為をするのに意味が分からない・・・けれども何故か何となく『ええ、もう大丈夫』って答えちゃった。
「ママ、今度はママがお手本見せてよ」
「ふふん、ママも酔狂で筆頭調教師なんてやってないからね。見てなさいよ」
次は久々にユノちゃんが公演から帰って来るから誘っちゃおうかしら。
とか考える楽しい毎日を送っているわ。
◇ ◇ ◇
~おまけ~
「嫁図鑑5%達成おめでとう記念、妾の友達妖怪もハーレム入りするぞ」
「怖!!あんだけ人数増やしてもまだ5%なのかよ。てか100%だと何人になるんだよ」
タヌキ姉さんの横には2メートル超えの超モデル体型のギャル系美女が立っている。
「妾の三百年来のマブダチじゃ」
「人間社会では清子って名前で生活してました。段蔵さん・・・ええっと今は竜二さんでしたか?タヌキお姉様からお噂は予々」
「そこでちょっと自己紹介も兼ねて清子ちゃんが何の妖怪か軽くクイズをしてみようと思う、回答する時は挙手な」
「はい」
「じゃあ竜二君」
「八尺様」
「言うと思たわ、三百年前にネット発祥の妖怪なんぞ居るか」
「よく言われますけど八尺(240センチ)までは行って無いですよ」
「あっはっは、竜二はモノを知らないわね~」
「じゃあ次はタルト」
「今時はアクロバティックさらさらって言うのよ」
「じゃから三百年前から居る妖怪だと言っとるじゃろうが!」
「すみません、高身長なのは私個人の特徴で妖怪としての特徴じゃないんです」
「質問良いか?」
「はい、竜二君」
「な~んかどっかで見た記憶があるんだよな~、俺って人の顔を覚えるのはそこそこ得意なんだが・・・ダメだ出て来ない」
「それは多分表社会で女優業をやってたからですね」
「えっ?マジ?それなら尚更覚えてるハズなんだが・・・」
「あまり一般の方が見る様な作品じゃありませんから」
「マイナー作品って事?演技力は妖怪の特徴?」
「演技力そのものには妖怪は関係無いですが、演技の時に妖怪の特徴を活かす事はあります」
「はい」
「イズンさん」
「小豆婆だべか?小豆で波の音を再現したり」
「違います」
「違うだか~」
「じゃがやっとまともな回答が出たな、つまりはそっち系統じゃ」
「ヒント、鳥山(石燕)先生の浮世絵では女性としては描かれてません」
「ぬらりひょん」
「泥田坊」
「しょうけら」
「天狗」
「油すまし」
「!?思い出した!!」
「竜二?」
「いつだったかタヌキ姉さんが勧めたAVに出てた女優さんでしょ?確かタイトルは『高身長ギャルKIYOKOの長舌おしゃぶり地獄』だったか?」
「何観てんのよ!!」
「いや、世の男性に夢と希望を与える良い仕事だと俺は思うよ?ハーレム入りするなら今後の男優は俺限定にして欲しいがね」
「つまり舌が長い妖怪さんだべか?」
「う~ん、天井嘗め?」
タヌキ姉さんと清子さんは『そっちか~』と残念そうな顔をした。
「と言うワケで正解は?」
「垢嘗めでした~、今後ともよろしくね」
「うわ!本当に舌長!」
「お口の技には自信あるわよ」
「つまり八尺様じゃなくて尺八様だったと」
「酷いオチだ」




