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遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
探偵 帝国ヲ駆ケル
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第百三十三話 西王カラ盗ム 中編

ナイアールは懐中時計を取り出しアイリーンと交互に見やりながら右足で二回軽くタップを踏む。


「昨日西王領入りしたばかりでしょ?来るのが数時間程早くね?」


先ずはしてやったりとアイリーンの顔が一瞬弛む、しかし隙は無い。


「さて、それじゃあ教えてもらいますわよ。予告状に書かれた真意を!!」


『○月□日 西王様の居城を頂戴する。 ナイアールが多面の一つ邪悪の皇太子ハスター』


「城を頂戴とは大きく出ましたわね?」

「西王様を困らせるにはそれくらいしか考えられなかったからな」

「何故そこまでして盗むのです?」

「家族をないがしろにしているから。当然だろ?二人も子供を成した程の女性と縁を切ったんだ、俺には理解しかねるし、嫌悪感を抱かずにはいられない」


それは遠藤段蔵が、ナイアールが、赤城竜二が、彼が彼である為の矜持だから。

ピクリと、西王チェスター・グラーキのみならずアイリーンも反応を示す。

アイリーン・・・いや、アイリーンに成る前のなにがしかもかつては家族を見限る選択をしたのだ。選択に間違いは無かったと胸を張れても思う所が無い訳ではないのだ。


「勝手な事を・・・人の気も知らないでぬかしやがる」

「知らんよ。あんたにも王としての体面やしがらみで葛藤が有ったんだろうが、情を優先する俺みたいな犯罪者には家族を捨てたあんたの考えは永遠に理解出来ん」


西王を抑えアイリーンが前に出る。


「御託は結構、わたくし達は貴方を逮捕するまでですわ」


そんな宿敵アイリーンを見て何を思ったかナイアールは大笑いする。


「見たか聞いたかね西王閣下、皇帝秘書官殿、オーギュスト長官、これだよ!貴族の地位も三将軍の立場も王妃の座さえもかなぐり捨てて他国にまで来て俺を逮捕しようという執念、正に体面や柵にこだわらない理想の人間だとは思わないかね?」

「減らず口を閉じなさい!」


アイリーンがレイピアを抜けばナイアールも全く同じデザインのレイピアを取り出す。

二人の刃が交わった瞬間・・・


『ブシュ~~~』


っと、最早お馴染みナイアールの煙幕である。

数度の剣戟の後、煙が晴れれば二人のアイリーンが掌に火炎を発生させていた。


「魔法が使えない癖に見事な手品ですわねナイアール?」

「白々しい、下手な小細工はお止しなさいなナイアール!」


見事に見分けがつかなくなってしまった。

だがしかし!幾度もナイアールと闘ったアイリーンにとってこの程度は想定内、対策も用意しオーギュストとエミリーには事前に打ち合わせをしておいたのだ。


「今だ!捕まえろ!!」


何とオーギュストとエミリーはそれぞれのアイリーンに同時に飛びかかり、エミリーの方は無抵抗で捕まったのだが・・・。


「うお?!こなくそ!!」


オーギュストが捕まえようとした方はうっかり(・・・・)反撃してしまったのだ。


「あっ!ちゃべ・・・」


ナイアールが気付いた時にはもう遅い、アイリーンは自分に変装される事を見越して二人に同時に襲い掛かるよう通達していたのだ。

アイリーンの読み通り、反応が良すぎたナイアールはうっかり抵抗してしまったのである。

一瞬の空白を見逃すアイリーン達では無い、アイリーンと倒れた状態のオーギュストが同時に投げ縄を放ちナイアールは雁字搦めにされてしまう。

しかし『パチン』と指を鳴らせば一瞬にして拘束からナイアールは抜け出した。


「いかんね、先手を取られると分が悪い、一度立て直させてもらうよ?」


ナイアールは部屋から飛び出し地下室への階段を下って行った。


「西王閣下、この先は何処へ繋がっているのですか?」

「何でもない単なる食糧保管庫だ。行き止まりで逃げ道は無いさ」

「・・・だと良いですわね」


地下室に入った西王は先ず驚愕の声を上げた。


「バカな・・・」


本来壁になっているハズのワイン樽の向こう側に広い道が出来ているでは無いか。


「大地の妖精の力を借りましたわね」

「師よ、大地の妖精とは一体?」

「ナイアールは以前、四極星ロック・ダグザから魔法を盗み出した事がありましたの」

「星の敗北・・・噂は聞いていましたが、ナイアールが相手でしたか」

「今でも憶えてますわ。ナイアールはロック・ダグザのゴーレムを介して魔力を奪い取り、その魔力が妖精の姿へと変化してナイアールに付き従ったあの光景を、それだけでは無く風と水の妖精も従えていますわよ。」


西王が青い顔で尋ねる。


「その妖精の力とはどれ程のモノなのですか?」

「この光景を見てもまだ分かりませんの?そんなの、四極星を軽く凌駕するに決まってますわ」

「師よ、それでは勝てんのではないですか?」


しかしその疑問にアイリーンは首を横に振る。


「ナイアールは巻き起こす事件に必ず遊びを入れますわ、付け入るならその一点。こちらを侮っているのではなくナイアールとはそういうモノなのですわ。逆に言えば遊ばなければナイアールではありませんのよ」


地下通路は迷路状になっていて足止めする気満々なのが見てとれた。


「なんか・・・この迷路、体が変な感じしません?」

「身体が何かに引っ張られると言うか、足元が覚束ないと言うか・・・」

「!!考察は後、どうやら足止めは終わったみたいですわよ」


一行の眼前には何処かで見たワイン樽。


「何だ?戻って来たのか?」


どうやら迷路を回って元の保管庫に戻って来たらしい、しかしアイリーンは何らかの違和感を覚え急ぎ階段を駆け上がる。


「相も変わらず・・・」


一行はその光景を見て絶句したが、アイリーンだけは冷や汗を流しながらも口元は笑っていた。

一行は城内では無く外にでていた。

城が忽然と消えていたのだ。だが驚く事はそれだけではない、まだ昼頃だと言うのに周囲は薄暗い。


「!?上ですわ!!」


誰もが空を見上げた。

四人だけでなく近隣住民も。

空に浮かぶ逆しまの城を。

一階の・・・いや、本来は最上階の窓から顔を覗かせるは仮面の男、城はゆっくりと降下していき、いつの間に掘ったのか帝国語で『Keep out』の囲いがされている巨大な穴に屋根からすっぽりと入って行った。

屋根部分が基礎に置き換わり最上階の窓がそのまま一階の入口へと役割を変えたたのだ。


「師よ、追いかけねば・・・師よ、どうされましたか?」


オーギュストの問いには答えず空を見上げながらただ一言短く


「来る」


とだけ呟く。

アイリーンと同じく空を見上げたオーギュストの目に映ったのは城を吊り上げていたと思しき四機の楕円形の飛行物体、その内の一機から魔力光弾が放たれアイリーンの足元に着弾したのだ。


「やれやれ、ご指名ですわね。残念ですが私はこれ以上ナイアールを追うことは出来ませんわ。オーギュスト長官、貴方の国です、貴方が護りなさい。それでは秘書官様、西王様、会談はコレが終わった後で」


そう言ってアイリーンは火炎魔法を噴射して空へと飛んで行ってしまった。


「火炎魔法にあんな使い方が・・・」

「我々はナイアールを追いましょう!!」


各々、一つの決着をつける為に、あるいは見届ける為に動くのだった。

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