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遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
探偵 帝国ヲ駆ケル
131/164

第百三十一話 西王からの依頼

随分とお待たせして申し訳ありません。

魔物蔓延る迷宮に落とされた美しき姉妹。

彼女達の目の前には巨獣キマイラ。

姉は妹を庇おうと巨獣の前に躍り出るが、一瞬で咬み千切られその生涯を閉じる事となった。

落下の衝撃で既に妹が死亡していた事に最期まで気付かないまま。

悪趣味な迷宮の主は安全な場所から魔物の捕食シーンを眺めながらほくそ笑むのだった。


・・・

・・


◇ ◇ ◇


帝国西部の森林を疾走する名探偵ケイオスナイトこと竜二は依頼内容を反芻していた。


『近年、我が西部の貴族であるマジェット侯爵に不審な動きがあると密偵からの報告があった。ナイアール君にはマジェット侯爵の始末を頼みたい』

『随分ストレートに切り出したな。西軍は使わないのか?』

『貴族の汚点はそのまま陛下の傷になる。依頼料金とは別に口止め料も出す。必ず奴を始末してくれ』

『いきなり始末とは物騒だな?』

『マジェット領には知り合いが居て事情があって密偵を通して生活の援助をしていたのだが、“彼女達”がマジェットに連れ去られたと重傷を負った密偵の最後の報告から知れたのだ』

『その密偵とやらは・・・最後の報告って事はどうなったか聞くまでも無いか』

『どんな戦力があるかは不明だ。しかし、西部の安全の為に一刻も早く始末して欲しい』


そう金髪ロン毛のエルフ男、西王チェスター・グラーキは西部に潜入した竜二に早々に接触して依頼してきたのだ。


「!!」


急に、竜二が走っていた地面が“抜けた”。

咄嗟にショットワイヤーで木の上に逃れた竜二はその光景に驚愕を禁じ得なかった。


「オイオイ、マジかよ・・・」


森林の中のマジェット侯爵の居城へ至る一本道、その道一本丸々が漆黒の穴へと変化していたのだ。


「落とし穴・・・ってレベルじゃねぇだろ・・・虎穴に入らずんばってヤツかな?」


竜二は警戒を強めながらもワイヤーを伝ってゆっくりと降下するのだった。


◇ ◇ ◇

~マジェットの居城 ある一室~


誰か何処かの強き勇者様、か弱き民をゲームの駒にする父の愚かな行いを止めて下さい。

どうか強き御方、迷宮を踏破し、魔物を打ち破り、父を殺めて、私の下へといらして下さい。

私に新しい世界を見せて頂ける強き勇者をお待ちしております。


◇ ◇ ◇


ダンジョン内は澱みの沼の力でかなり拡大されているとは言え罠は特に設置されてはいない石造りの迷宮である。

魔物はゴブリンやら地元特産の南瓜カボチャ西瓜スイカが魔物化したお化け瓜ジャック・オ・ランタンみたいな下級からライオンと山羊の頭に蛇の尾を持つキマイラなんかの大型まで様々だ。

沼は広大なダンジョン内に五ヶ所と汚染具合がかなりヤバい、人類の天敵である魔物を発生させる澱みの沼は発見次第報告の義務が大抵何処の国でも法律で制定されている。

特に近年はテロ組織ジム・モロアッチの作り出した魔物制御薬の登場で権力層が澱みの沼を秘匿する事はそのまま『トップ対し叛意アリ』と見なされる。

それではこの迷宮は?

数体の魔物を切り伏せたケイオスナイトは思案する。


「操られている様子は無し、むしろ好き勝手遊ばせている感じすらある・・・」


ふと、ケイオスナイトは以前クラリースが遭遇したピッグマン兄弟の事件を思い出した。


「まさか・・・クラリース様の事件同様にただダンジョンと魔物を使って遊んでいるだけだと?」


キマイラをまた一体斬り捨てた後、床に転がる二人分の人骨を見てケイオスナイトは不快感を露にする。


「チッ、胸糞悪いなっ!!と」


ゲタゲタと嗤う西瓜を腹立ち紛れに叩き割り、脱出路を見極めようと天井を見上げた瞬間、悪意と愉悦の混じった視線を浴びた。


「・・・そうか、そちらからは見える仕掛けになっているんだな!」


ケイオスナイトはアーマーに仕込んでいた爆薬を天井で作動して空いた穴にワイヤーを射出し急上昇する。

すると開けた空間に出て足元には先程まで迷いこんでいた迷宮の全容が易々と見てとれた。

内部からは石の天井に見えても上からだと透けて見える一種のマジックミラーの様な魔道具になっていたのだ。

そしてダンジョンを俯瞰する支配者ゲームキーパー、驚愕に顔を歪ませるマジェット侯爵と目が合った。


「ひっ!?く・・・来るな!来るな!!」


ケイオスナイトは愛用の魔法付与エンチャント済みのサーベルで守鶴前から教わったセーマンなる五芒星を描きながら魔法強化ガラスをブチ破りマジェット侯爵に肉薄する。当のマジェット侯爵は割れたガラス片が刺さり既に血の気が引いて腰を抜かしている。

安全な場所で獲物を弄ぶ事には馴れていても獲物に反撃されるなど想定していなかったのだ。

ケイオスナイトはアッサリと侯爵の首を落とし、任務を達成した。


「これだけの大仕掛けだ。例の魔道具犯罪組織の情報があるかも」


予想は当たり、この悪趣味なダンジョンを作成した際に提供された魔道具類や設計に関する契約書等々出るわ出るわ、ただダンジョン作成後にはあまり関わっていない様にも見受けられたので情報の鮮度は若干落ちるものとも思える。

何人かの家人を捕まえ情報を引き出している内に厳重に施錠された大きな扉に辿り着いた。


「この扉には何がある?」

「し・・・知らない、ただ旦那様からは怪物を封じてあるとしか・・・そこの小窓から決まった時間に食事の出し入れをするように言われていたから人が入っているのだとは思うが・・・」


ケイオスナイトはサーベルを振り下ろし錠前を破壊して重々しい扉を開くと内部は案外清潔で風呂・トイレ完備のお高いホテルの一室みたいになっていて、バルコニーらしき作りの場所からは例のダンジョンを一望出来る構造になっていた。

そしてバルコニーに置かれた椅子には深窓の令嬢といった雰囲気を纏う金髪の猿獣人の少女が座っていた。


「よくぞ、よくぞいらっしゃいました強き勇者様」

「君は?」

「申し遅れました。私はセイ、セイ・マジェット、愚かなマジェット侯爵の娘にございます」


◇ ◇ ◇


ああ、何度この時を夢に見ただろう?

何体もの魔物を屠りダンジョンを踏破して、弱きが喰われる様を見て悦ぶ愚かな父も殺し私の前に来てくれた。

私の前に来るのは魔道具超人とやらだと思っていたけれどもどうやら違うらしい、でもそんな事は関係無い。

下品だとは理解してても止められない。

勇者様は辺りを見回して一瞬後ろを向いた。

逸る気持ちは抑えきれず、私はいつも通り流れる動作で愛用の金剛棒を手に取り・・・。


「伸びよ!金剛棒!!」


頭蓋を割る勢いで放った一撃は見事に回避され、私の胸はもう一段上の段階へと高鳴った。


◇ ◇ ◇


「ッッ!?」


背後から膨れ上がった殺気に咄嗟の側転、先程まで頭のあった地点に魔導金属製の長い棍が延びている。

次の瞬間には棍は半分程の長さに縮んだ事から魔道具の類いなのだろう。

セイ・マジェットの最初の落ち着いた空気はどこへやら、今は豪華なドレスに不釣り合いな攻撃的な笑みを浮かべ棍を構えている。


「ああ、私ったらはしたない、抑えきれずに奇襲だなんて・・・でも流石は勇者様、これなら初めて本気で殺し合えます」


瞬きの内に繰り出された棍を超低姿勢のダッシュでかわしながら私はセイ・マジェットに肉薄するが、読まれていたか顔面に向かって膝蹴りを繰り出して来た。

無論そのまま殺られる気は無く、私は相手の膝を両手で受け止め、そのまま腕をバネに宙返り、セイ・マジェットに背中を向ける形にはなってしまったがバルコニー側へと逃走する。

セイ・マジェットは下手な追撃はせずにゆっくりと棍を担いで迫って来た。


「これなら!!」


装備の中から煙幕を発射して撹乱を狙ったが白煙の中にあって私の剣を軽々と受け止めて見せた・・・そればかりか視界を奪われているハズのセイ・マジェットは正確に私の位置を捉え反撃を繰り出している。


「その程度ですか勇者様?もっともっと踊りましょうよ」


流れた冷や汗を拭った私の脳裏にあの人の言葉が過る。


『ユグド人は力が強く魔法も使えるが気配察知が極端に下手だ。反対に地球人は魔法が使えないし力もユグド人に劣るが技と気配察知能力では勝っている。でもそれは平均的な話であって何処の世界にも居るんだよ、全部出来ちゃう天才ってヤツが』


ランダムに投げた無数の手裏剣は全てあの棍に弾かれ、ワイヤーを使っての変則移動すら位地を読まれている。

ふと私は疑問に感じ、ついついソレが口から漏れた。


「これだけ強ければダンジョンに入れられた人だって助けられるのに」

「何故?弱き民に用はありません、助けて何になると言うのですか?」


その無慈悲な答えに私は唖然とし、同時に突破口を見いだす。

あの人はいつも言っていた、人助けする時はどんな小さな物でも必ず対価を貰えと、例え飴玉一個だろうが汚れきった銅貨一枚だろうが自分が利益になると思える物は必ず相手から貰っておけと、それが後腐れの無い方法なんだと、私を助け、私の人生を手に入れたあの人らしい考え方だ。

では今正に私を追い詰め棍を振り下ろさんとしているセイ・マジェットは?彼女は戦いの天才だ。私では勝てない、だが彼女はこれまで人を助けなかった、利益が少なかった、それは金銭だけの話では無い、誰かを護りながら戦うと言う不利な状況から得られる大きな戦闘経験値を無視し続けたのだ。

だったら。


「死ね!!」


だったらあの人の“私達”の敵じゃない。

私に振り下ろされるハズだった棍は急に発生した新たな気配に軌道変更を余儀無くされた。

背後からの手裏剣を弾いたセイ・マジェットは己が超感覚を疑った。


「全く同じ気配が四つも?」

「この程度は同じとは言えないさ、俺の知り合いには完全に気配を同化させるバケモンが居るからな、よくよく集中すれば誤差が見えるハズだ」


そう、ダンジョンに潜入していたのは私だけじゃ無い、竜二様や他にも仲間が居たんだ。ただ一番目立つ様に動いていたのが私だったというだけの話。

セイ・マジェットも一人で私達の攻撃を良く捌くがそれも限界、何ヵ所かに手裏剣が刺さり魔道具の棍も竜二様に奪われてしまった。

いつの間にか立ち位置もダンジョンのど真ん中の真上、眼下には澱みの沼が広がっている。


「使い方はこうだったかな?伸びよ!金剛棒!!」


伸びた棍はセイ・マジェットの足元を力強く破砕し、大穴を開けセイ・マジェットが落下する。

すかさず竜二様は愛用の叢雲・改を構え穴に飛び込み沼の中で倒れているセイ・マジェットの心臓に刀を突き立てた。


「あっ・・・」

「お前なら父親を斬り捨てこんな地獄を終わらせるのだって簡単だったろうに、好き好んで殺し合いを楽しむヤツってのはいつ見ても勿体無い・・・そうだ!俺がお前を変えてやる。殺しの才能をスケベの才能に変質させて常に発情する猿の魔物に変えてやるよ」


叢雲・改が妖しく輝きセイ・マジェットの身体がズブズブと沼の奥底へと沈んで行った。


◇ ◇ ◇


「冗談じゃ無い!私が色狂いの猿に成り果てるだと?まだ戦い足りない!例え魔物になったとしても必ず戦い続けて・・・」


本来、沼の成分は魔物化薬に加工しなければ人体に影響は無い、しかし異邦の魔法使いと天才科学者が生み出した叢雲・改は沼の成分をセイ・マジェットの心臓に流し込み、徐々に竜二が望む魔物娘に変化させて行った。


「おのれ・・・この怨み・・・うら・・・み?」


だが変質する刹那、セイ・マジェットの天才的な超感覚は沼の奥底に何かの存在を感じ取る。

奇しくもそれは方向性こそ違えど同じく天才だったクラリースの父、狂男爵コロジョン・ダンドレジーが見た存在と同一のモノ。

セイ・マジェットもその正体をユグド人の遺伝子に刻まれた本能で理解した。


「ああ、そうなのですね?こんな場所にて夢を御覧になられていたのですか、偉大なる御方」


セイ・マジェットの肉体の変異が進行し、闘争心や怨念が薄れ色欲と愛情が首をもたげる。


「ふふふ、良いでしょう。コレを見せてくれた御礼です。貴方好みの従順でスケベな牝猿に喜んで成りましょう、高々私の闘争心程度の対価でコレが見られた上に生かして帰してくれるのですから愛する理由としては充分です」


そう考えたからだろうか?セイ・マジェットの変質はそれまでより加速し快感が肉体も思考も支配する。


「多分ここで見た記憶は帰る頃には忘れていますね。早く赤ちゃん産まないと、コレを見た私から産まれた赤ちゃんならきっと・・・原初の・・・」


思考が完全に塗り替えられる直前、ユグド人の一般的な文化様式と叢雲・改から与えられる地球の知識が混ざり合った瞬間にセイ・マジェットは普通のユグド人では辿り着けない一つの回答を導きだした。


「つまり“澱みの沼”は“コレ”から発生してるのですね」


そんなネタバレは許さないとばかりに浮上していく毎に沼の底で見たモノは頭から抜け落ち、美しい魔性の肉体を持ってセイ・アカギは帰還した。


名称:セイ・アカギ

種族:岩猿 妖怪猿 ましら 猩々 等

様々な神通力を持つ美しき猿の魔物娘、闘争心は薄れたが実は戦闘力自体は増大している。家では子守りの仕事を積極的に引き受けるようになった。ポールダンスが得意。

あたま:E キンコティアラ

からだ:E 御札テープブラ&御札前張

ぶき :E 金剛棒


名称:西瓜子姫スイちゃん

種族:ジャックオランタン亜種 瓜子姫亜種

ダンジョン西側の沼から生まれた地元特産の西瓜の魔物娘、黒髪おかっぱの物静かな女の子、ベッドだと水気が多いらしい。

あたま:E スイカお化けの帽子

からだ:E 薄緑の着物


名称:南瓜子姫カボちゃん

種族:ジャックオランタン亜種 瓜子姫亜種

ダンジョン南側の沼から生まれた地元特産の南瓜の魔物娘、金髪ロングの生意気な女の子、ベッドだとネットリしているらしい。

あたま:E カボチャお化けの帽子

からだ:E オレンジのドレス


名称:赤城逆夜サクヤ

種族:ゴブリン亜種 天逆毎 天の邪鬼

ダンジョン北側の沼から生まれたスイちゃん、カボちゃん二人の守護騎士を自称するゴブリン娘の騎士、最初の魔物娘にしてゴブリンの姫であるアスタルトには敬意を表すもののあくまでスイちゃんとカボちゃんの配下であるという姿勢を貫いている。どこが天の邪鬼かと言えば真面目な態度の時はどちゃくそエロい事を考えていて、エロい事してる時は学者も舌を巻く様な凄い事を色々考えているところだろう。

あたま:E 聖騎士の兜

からだ:E 聖騎士の鎧

ぶき :E ナイトソード

たて :E セントシールド

したぎ:E 超ドスケベエロエロ下着

そのた:E 大人のオモチャ


問題は東側の沼から生まれた魔物娘である。この娘が異質な魔物娘の中でも特に異彩を放っていた。


名称:ウル(ライオン部分)ヴェルザ(山羊部分)クルト(蛇部分)

種族:キマイラ キメラ 等

何故名称がこんな事になっているかと言えばライオンのウルを中心にして右半身からヴェルザ、尻尾にあたる部分からラミアの様なクルトが生えているというかなり奇抜な姿をしている。

話によるとヴェルザとクルトはダンジョン内で死亡した姉妹だったらしいがウルについては知らないと語っている。ただウルの容姿は事故死した二人の母親に非常に酷似しているらしい、この点に関して母親の墓所を調査したがきちんと埋葬されたままだった。恐らくメインとなる独立した魔物娘がダンジョン内で死亡した姉妹の亡骸や魂を取り込み、逆に容姿が形成される段階で取り込んだ姉妹のイメージが混ざり合った結果だろうと考えられる。

二人を支える為かウルは大柄で最近の魔物娘にしては珍しくナノマシンを摂取するまで会話が出来なかった。行動も獣に近くトイレ以外は基本四足歩行である。尻尾のクルトは問題無いのだがウルの右半身と背中が融合しているヴェルザは「食事の時くらいは縦方向になって欲しい」と常々思っている。

更に問題なのはヴェルザの持ち物だった。

そのた:E グラーキ家紋章のペンダント


「あ~、依頼の時に聞いた知り合いってお前らの事か?」

「ウルは知らんゾ」

「いやお前じゃねぇよ」


代表してヴェルザが答える。


「恐らくそうだと思います。私達は西王様の隠し子ですから」


爆弾発言である。

どう報告すべきかと竜二は頭を悩ませるのであった。

次回は久々ナイアールの仕事?

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