第十三話 領主様の刺激的な休日 後編
結局彼はどうしようもない悪党です。打算で美女を助け身勝手な理由で幸せにします。
庭でみんな集まってそれぞれがスプリングの力を試してみた。クラリースは元々水の魔法を使えるようだがエルフ姉妹はどうだろうか?
「ユノ様は中々素質がありますな、本来は火属性でありますかな?」
「魔法なんて教わった事無いからよくわからないわ」
「ユナ様は少々風の力を感じるでありますが使える程では無いでありますね」
「クラリースはどうだ?」
スプリングが同じようにクラリースの中に入るとスプリングは驚きの声を上げた。
『おおおお!!何という事でありますか!!この魔力量は百年に一度・・・否千年に一度の逸材であります。極星であった父上をも軽く凌駕しているであります』
「えええええ!?私そんなに凄いんですか?今まで水を腕から出すだけだったのに、スプリングさんの力を借りれば私は二つの属性を同時に操る事が出来るのね」
「確かこの世界って基本的に一人一属性だったか?前の世界だと複数の魔法使うやつが居たんだが」
「二つ以上の属性を持っているなんて聞いたこと無いですよ」
『個々に得意な属性が一つあるのは間違い無いでありますが、だからといって使えないと決まっているわけでは無いであります。恐らく一人一属性と思い込んでそれがそのまま長い年月の間に文化として根付いたのでありますな』
専門的な話は魔法使いに任せる事にしてクラリースの力を見てみることにした。この世界最強と言われた魔法使い達をも上回る力にちょっとワクワクしている。
「いきます!!」
クラリースの腕から出たのは土だ。それがゆっくりとしたペースで放出されている。ユナが興味津々といった感じで彼女を見つめている。
「クラリースお姉ちゃん、他に何かやってみてください」
「お、お姉ちゃん?私お姉ちゃんか~えへへ」
「ダメでしたか?」
「そんな事ないわ、私一人っ子だから嬉しいな。お姉ちゃん頑張っちゃうわよ~」
しかしクラリースが他の魔法を発生させる気配は全く無かった。ポーズを変えたりうんうん唸ってみたがやっぱり腕から土が出る以外の魔法は使えなかった。
「うううっ、私は結局前方にゆっくりと放出する事しか出来ないんですね・・・学院では矢のような速度で魔法を飛ばしたり風に乗って空を飛んだり物体に属性を与えたりする人も居たのに私は武器に成る程の魔法は使えなかったの」
『う~む、魔力だけは山ほどあるのに・・・器用さの問題でありますかな?』
「いや待て、出した土を調べるぞ」
そう言ってまた段蔵は全員とスプリングを合体させてそれぞれが放出した土を以前から使っている解析ツールで調査した。
「やっぱりだ!これ腐葉土だよ、本来は長い年月を掛けて自然発酵した草木が土になったものだ。水の方も見せてくれ」
クラリースが水を出しそれを段蔵が見聞すると段蔵はまたも驚きの声を上げる。
「こっちはミネラルウォーターか。ナトリウム・マグネシウム・カリウム・カルシウムいずれも多すぎず少なすぎずバランス良く配合されている」
「ナト・・・何ですかそれ?」
「簡単に言えば植物を育てるのに非常に適しているって事だな」
「凄いであります、自分は腐葉土なんて作れないであります。どうやって植物要素を入れたでありますか?」
「そんなに凄い事なんですか?」
「腐葉土を使う事で痩せた土地を蘇らせる効果があるであります。クラリース様の腐葉土は嫌な臭いもしないしかなり良質でありますな」
「よし、暇な時に大量に作り出して領内の農村に送ろう、クラリースは農家の救世主になるかもしれないぞ」
「私が・・・人を助けられるんですか?多くの人を苦しめてきたダンドレジー家が本当に?」
涙を浮かべるクラリースの頭に手を置いて撫でてやる、掌から感じる彼女は春の日差しの様に温かかった。
「湿っぽい話はこのくらいにして、そろそろお出掛けしようか?一緒に遊びたい娘はついてこい」
全員かと思ったけれども名乗り出たのはクラリース ユナ スプリングの三名だった。他の二人はと言うと・・・。
「またあの暑苦しいローブ着るの面倒だから今回はパス」
「タルトお姉ちゃんが残るなら私も残る」
どうもアスタルトとユノは気が合うようだ。屋敷の事が心配だが罠や脱出経路に関しては伝えてあるので心配はいらないだろう、今回はこの三人でベルナール街へ遊びに行くことにする。
「「お土産よろしくね~」」
「おう、任せとけ。スプリングは護衛の為ユナの中に入っていてくれ」
いつも通り男爵に変装し、手を振って留守番組に応えた。
~ベルナール街~
悪徳商人が排除されたり公共事業の拡大により随分過ごしやすくなった。例えば以前エルフ姉妹が住んでいた貧乏長屋だが・・・。
「新しい建物になってます!」
「おう、更に住人の皆さんには仕事を紹介してやった。最近“信頼出来る新興商人”が現れたからな」
それを聞いてクラリースが額を押さえる、やれやれといった感じだ。
「自分が商人に化けたならそれは信頼も何も無いですよね・・・」
「ネタバレが早くないか?」
「悪徳商人達を排除し奪った金を元手に新事業を始める、真当な手段では時間が掛かってしまいますからね、多少の反則はお互い様という事でもう慣れました」
「クラリースも大分俺の妻らしくなってきたな。そうだとも、イカサマを見抜けなければ裸になって転がるだけ、連中がいつも使っている手をこっちが使っただけの話しさ」
『世知辛いでありますな』
ユナが何やら瞳を輝かせて二人の話を聞いていた。
(おとなの会話だ、悪い人に勝つ為には色々な事をしないとダメなんですね。ダンゾーお兄ちゃん)
歩き続けていると一軒の店にたどり着く、ここが今日一番来たかったところだ。
「服屋さんですね?」
「クラリース、前に新しい仕事を始めた娼館の話をしただろう?ここがその一軒だ。実はお前達の新しい(プレイ用の)服の仕立ても頼んである」
扉を開けると美しい女性が受付で出迎えた。
「やあ、姐さん儲かってるかい?」
「男爵様・・・残念ですが売上は芳しくありません」
「だろうな、やっぱ元娼館って肩書きはどうしても邪魔になるからな。そこでだ、以前の話を受けてくれる気になったかい?」
「“働いている娘を一人差し出せば土地・建物・資金・物資・そして男爵家御用達の証明書を発行する”って話だったわね」
(ちょっと~~~!ダンゾー様!?)
(『マスターは底無しでありますな、自分は歓迎であります』)
(また、お姉ちゃんが増えたら賑やかになるね♪)
反応は分かれたが、エロが魔力源になるスプリングと俺達に会うまで二人だけで暮らしていたユナは賛成、クラリースは分かっていてもやっぱり納得出来ないといったところか、ユノも基本は寂しがり屋だから文句を言いついつも賛成してくれるだろう、アスタルトはその場のノリで生きているタイプだからこちらも問題無し、クラリースに納得してもらう為今夜みんなで一緒のベッドで寝るのがいいな。うん、そうしよう。
「この機会に玉の輿に乗りたいって娘も結構居たからまあ、悪い話じゃ無いんじゃないかしら」
「注文の品も見たいし上がらせてもらうよ」
作業場の中ではいろんな女の子がおしゃべりをしていた。髪の長い娘・犬耳の娘・胸がボインの娘・お尻プリンな娘・身長の低い娘・肉付きの良い娘とどの娘を見ても結構レベルが高い、しかし肝心の服は俺の注文した分以外はほとんど用意されていない、店主である姐さんの言う通りやはり儲かってはいないらしい、入って来た俺達を見てお針子の女の子達が一斉に挨拶をする。
「領主様こんにちわー」
「うふ~ん、ご機嫌麗しゅうございます」
「オジ様こんにちわ~」
「・・・・・こんにちわ」
「あ~はいはい、みんなこんにちわ、良い娘にしてたかい?」
年長の女の子が奥から数着の服を持ってきてくれた。
「ご注文の品は完成してますよ、試着されますか?」
「ああ、娘のクラリースには若草色のソレを、このエルフの娘には一対で仕立ててもらった黒い方を、赤い方はこの娘の双子の姉妹に渡すから包んでくれ、あと大きめの外套も・・・うむ、注文以上にしっかり出来てて気に入った」
積極的に話しかけてくる娘や裁縫の指導をする娘、裁縫の練習をする娘達の中で一人の娘に目が留まった。歳はクラリースと同じ位で肩まで伸びた美しい金髪と肌は褐色のエルフ(ダークエルフという種族はこの世界に居ないので褐色肌の普通のエルフです)だった。彼女は話に混ざるでもなく作業をするでもなく黄色い果物をナイフで切って食べていた。
「ああ、あの娘かい?名前はアンリエット、1,2ヶ月程前、まだここが娼館だった時に両親に売り飛ばされて娼婦になったんだが最初で最後の客がとんでもない変態貴族でね、ヒドイ目に遭ったらしいよ」
「領主様が解放してくれなかったら、私達はもっとヒドイ目に遭ってたかもしれないデスね」
不機嫌そうに黄色い果物を食べる少女に違和感を覚える。
(1,2ヶ月程前・・・黄色い果実・・・不機嫌な顔・・・真逆!)
俺は急いで解析ツールでアンリエットを調べてみた。結果は、思った通りだった。
「アンリエットだったね?落ち着いて聞いて欲しい、君は・・・妊娠しているんだ」
クラリースもユナも(見えないけど)スプリングもお針子の娘達も皆一斉に固まったそんな中でアンリエットは持っていたナイフを泣き笑いの表情で見つめて迷わず・・・。
「ダメだ!!!それだけは絶対にダメた!!」
彼女の喉にナイフが入る寸前俺は強引に刃の部分を握り奪い取った。刃を握った手から血が滴り落ちるが気にしている場合ではない。
「返して!!アタシはもうまともに生きていく事は出来ないんです!!」
「勝手に決めんじゃねぇよ!!今お前が死んだらその“娘”はどうなる?お前を犯した男はサイテーだったかもしれないがその子も、お前にも罪は無いだろうが!!まともに生きていけないってんなら俺がまともに生かしてやる。だからそんなマネだけはやめてくれ」
アンリエットはその場で崩れて泣き出してしまった。騒ぎを聞きつけて受付に居た店主の姐さんも作業場に駆けつけた。
「姐さん、この娘にするよ。俺が見張っていないとこの娘は消えてなくなってしまう、この娘が消えるのは世界の損失だからな」
「そうかい・・・アンリエットを頼むよ男爵様、私もこれ以上同じ飯を食った仲間が自ら命を絶つのは見るに耐えないからね・・・」
そう言った姐さんの顔はどこか安堵したようだった。もしかしたら以前にも似たような理由で泣き別れた事があったのかもしれない、俺は大きな布切れを取り出した。
「今はこの程度の物で悪いが受け取ってくれアンリエット」
泣き崩れる彼女に布を被せてさっと引っ張ると服が豪華なドレスに入れ替わった。以前メアリ姫に変装した時に拝借した物だ。彼女の身体をそっと立たせその髪にこれもメアリ姫から拝借した豪奢なヘッドドレスを着けてあげた。悪いなメアリ。
服屋の娘達に見送られアンリエットを連れた俺達は屋敷に帰る為馬車を呼んで皆で乗り込んだ。クラリースが何故かジト目で見つめてくる。
「ダンゾー様、一つ嘘を吐きましたね?貴方と生活してまともな人生なんて歩めるわけ無いじゃありませんか」
「認識の違いだな、俺自身は十分まともなつもりだよ」
『美味しいものが食べられて、住むところと寝るところと愛する殿方が居るならばそれは十分真当な人生であります』
「え?今どこから声が?」
アンリエットが狼狽するが説明は屋敷に帰ってからだな、話すと長くなる。
「それとダンゾー様、さっきお腹の子を“娘”って言いましたよね」
「言ってたね」
『言ってたでありますな』
「確かその小さな本をかざすと色々な事が調べられるんでしたよね?性別、女の子で決定しているんですね?」
「うぐっ」
「産まれてくる女の子も欲しかったんですよね」
クラリースのメガネがギラリと光る。
「あ~も~、わかったよ。そうだよ、お腹の女の子も欲しいよ。だってこんなに綺麗で可愛いお母さんなんだよ?産まれてくる女の子も絶対綺麗になるに決まてるじゃん、母娘揃って愛してあげないと損失だろ?主に俺の!!」
見た目渋いおじ様の突然の豹変に目を白黒させるアンリエットはさっきの感動のシーンを返せといった感じだ。そうしているとユナの身体からスプリングが飛び出した。
「ぷは~、ユナ様の身体も心地良いでありますがそろそろ外に出ないと体が鈍ってしまうであります」
その光景を見たアンリエットはまたもやビックリ、何が何だかわからないといった感じだ。事情を知らなきゃ・・・いや、知ってても女の子の身体から子供サイズの女性が突然出現したら誰だってビビるよ。
「何なのこの集団?」
「その内わかります・・・・いえ、私もよくわからない時があるので聞かれても困ります」
俺はナイフで切った掌を見つめた。傷を負った時は今命が在る事に感謝する、それが自分の命でも大切な誰かの命でも。
「とりあえずアンリエットにはこの傷の分以上に幸せになってもらう義務があるな。覚悟しろよ、幸せ過ぎて泣いちゃうかもしれないぜ」
馬車は屋敷に着き領主姿の段蔵は真っ先に馬車を降りて屋敷に駆け込む、案内はクラリースとユナに任せて手早く着替え、庭で育てていた薬草を使って浴場で薬湯の準備を始める。他には石鹸・特製マッサージオイル・タオル・簡易の寝台等々を用意してアンリエットを招いた。
「ようこそアンリエット様、私当家でメイドを勤めておりますナイラと申します。主様の命によりアンリエット様には蕩けるくらい幸せになっていただきます」
「は・・・はあ?」
アンリエットを薬湯に浸からせる。湯の温度が心地いいし、薬草の香りが彼女のつわりを軽減してくれる筈だ。次に身体をしっかりと洗いまた薬湯に浸からせて十分温まったところで今回のメインに移る、浴場から出て暖かい部屋にさっき用意した寝台が置かれている。彼女を寝かせて準備完了、俺はマッサージオイルを手に取って全身マッサージを開始した。
「うわひゃい、ちょちょちょっとやめ・・・」
「暴れないでくださ~い」
足の指先から臀部にかけてじっくりゆっくり揉みしだくと張りの良い褐色肌がフルフルと震えた。
「ひゃっ!!」
「あっと間違えた」
ついうっかりデリケートな部分を指が直撃してしまったが気にする事は無いだろう、腰に背中に肩・腕・指先とやわやわもみもみ繰り返しマッサージする。さっきみたいに敏感な部分を触るようなマネはせずに余計な身体の力を抜き取る様に蕩けさせていく。
「はふぅ~あふっ」
「ん~良い感じですね、反応が可愛いですよ」
ツボ押しマッサージも試してみる。
「ひぎぃ!・・・・おおおおおおぉぉぉぉ~~~~」
「ぎゅ~ってしますけどガマンしてくださいね~」
全てが終わると恍惚の表情で身体を弛緩させたアンリエットが一言だけ感想を言ってくれた。
「て・・・天国でしゅ」
「そう、それを聞いて安心しました。っとジュースと病を退ける特別なお薬です、赤ちゃんの為にも健康でいてくださいね」
その後、正体を明かしたり自己紹介をしたりお土産のきわどい下着に赤面したり美味しい料理を食べたりで幸せな時間が流れた。
大きなベッドで裸のまま横になるクラリースとスプリングに参加はしていないもののずっと情交を見ていたアスタルトが腕に絡みつく。
「なあクラリース、俺達そろそろ結婚しようか?」
「・・・・・ん」
「以前から言ってるけど俺には前の世界からの恋人も居るから一番ってワケにはいかないけどさ」
「・・・・・ん」
「これからも女の子が増えていくけれどもさ」
アスタルトがペロペロと俺の腕を舐める、言葉は無いが彼女なりの嫉妬なのかもしれない。
「素顔の俺と夫婦になってください」
「・・・・・・・・・・・・・・ん」
深いキスで返されてしまった。
次回は美人暗殺者登場?




