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遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
探偵 帝国ヲ駆ケル
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第百二十五話 何でもない日とどこにでもある事件

ナチェの前の旦那さんの墓前に手を合わせ経緯の報告をする。


「・・・という次第で俺はナチェさんをこれから×××して△△△で○○○を□□□しまくります。娘さんのルリムちゃんも将来そうなりますのでご安心ください」


あの世の向こうから良い笑顔でサムズアップする紳士が


「地獄に落ちろクソ野郎」


と言っている様な気がした。

うん、気持ちは分かる。逆の立場なら絶対俺もそうする。


「貴方はいつもこんな・・・前の夫のお墓参りをしているんですか?」


ナチェの言いたい事も分かる。悪党を自称するクセに義理堅いと言いたいのだろう。


「前夫が悪人ならやらない、だが善人には敬意を払う、特に彼みたいな未来を護る仕事をしていた人物にはな」

「敬意ね、殊勝な心掛けだこと」

「必要悪を気取る気は無いが俺達の敵は善人じゃ無い、むしろ彼等は大事な顧客だ、俺の悪事げいじゅつを観賞・評価して後世に記録を残すって役割のな。ならば敵は誰かと言えば商売敵である悪党共なんだよ」


胡散臭げに見るナチェだが、実際俺は胡散臭いので気にしない。


「直ぐに抱かれたくないってんなら暫く監視でも観察でも何でもすれば良いさ」

「良いのですか?」

「そりゃ何時かは絶対抱くけど、それは今日じゃなくとも構わないよ」


まあ、暫くは事件らしい事件も起こらないだろうし、新しいの生活に余裕が出来るまでのんびりと過ごすか。


・・・

・・


のんびり過ごすとは何だったのか?今日は探偵アラン・スミシーとしての仕事なのだが、今、俺の目の前には血を流して倒れた男の姿が・・・。

場所はとある商業ギルド施設の急騰室、俺はただ単にこの男のエルフ奥さんから受けた浮気調査の結果報告の為に近くで奥さんと待ち合わせをしていただけなのに建物内から女性の悲鳴が聞こえ飛び込んでみればこのザマよ。

兎に角旦那さんを病院へ運び帝国軍から応援を呼んだ。


「私見たのよ!この女が旦那さんを突き飛ばしたのを!きっと痴情の縺れよ穢らわしい!!」


ギャーギャー喚く猿獣人の派手なオバハンに指差されたのはギルド職員のエルフ女性、彼女は必死に否定する。


「違います!私が来た時には旦那さんは倒れていました!信じて下さい」


オバハンはギルド幹部の奥さんだそうで夫の仕事ぶりを見に来たらエルフ女性が旦那さんを突き飛ばした瞬間を目撃したと主張している。

下劣な噂好きで有ること無いことベラベラ喋り倒す性格でご近所からの評判は最悪らしい。

ややこしいので今後は依頼を受けた奥さんをエルフ奥さん、ギルド職員の女性をエルフ職員、うるさいオバハンを猿奥さんと呼称する。

そうこうしているとオーギュストが部下を引き連れやって来た。まだ発足して間もない組織の為か例えるなら警察庁長官が現場刑事も兼任している状況か。


「では状況の確認をしよう、旦那さんは後頭部を打ち倒れていた。第一発見者はエルフ職員さんで間違いありませんな?」

「はい、確かです。私が来た時には倒れていました」


だが猿奥さんが大口で捲し立てる。


「嘘よ!この女が突き飛ばしたのを私が見たもの!ねぇ、エルフ奥さんも私が言った通りだったでしょ!?この女は旦那さんと不倫して痴情の縺れで殺そうとしたのよ!!」

「あ~失礼、こちらのご婦人は?」


俺がオーギュストに答える。


「彼女は病院へ運ばれた旦那さんの妻のエルフ奥さんですよ。そんで俺は探偵アラン・スミシーと言います。エルフ奥さんからの依頼報告をしようと近くでお話していたらこんな事態に・・・」


猿奥さんがビクリと一瞬体を震わせ忙しなく右手をソワソワ動かしている。各指にそれぞれ宝石付きの指輪をしているみたいだが何か違和感が・・・ともかく俺は成金趣味は嫌いでは無い、むしろ好きなんだが猿奥さんのアクセサリーの着こなしは最悪だ。折角の宝石が泣いてるぜ。

俺は事態の早期解決の為に依頼人であるエルフ奥さんに提案を持ち掛ける。


「本来は守秘義務がありますが事件の発端とも関係ありますしこの場で調査結果を公表しても構いませんか?」

「やむを得ないですね、夫が何故こんな事態になったのか解決の手掛かりになるかも知れませんしお願い出来ますか?」

「それでは・・・、旦那様は白でした。浮気の形跡は一切ございません」


無論、声を荒げたのは猿奥さんだ。


「そんなバカな!!私は見たのよ!そこの女が旦那さんとカフェで会ってたのを!!」

「それもひとえにエルフ奥さんへの愛の為、エルフ奥さん、貴女はもうすぐ誕生日ですね?旦那さんは貴女へのプレゼントを考える為にエルフ職員さんに相談していたんです。最近帰りが遅くなっていたのもプレゼントを選んでいた為です」

「そんな・・・それじゃあ・・・」


ソワソワと両手の指をこすり合わせる猿奥さんに鬼警部オーギュストも違和感の正体に気付いたらしい。


「猿奥さん、倒れた旦那さんには近付きましたかな?」

「いえそんな・・・恐ろしい、その女が怖くてそんな事・・・そうよ!旦那さんは浮気していなかったとは言えこの女が突き飛ばした事には変わり無いわ!!」

「ふむ・・・」


オーギュストは部下に何らかの指示を飛ばし思考に耽る。答えには辿り着いているのだろうが、まだ犯人に言い逃れされる可能性を視野に入れて決定打を探しているんだろう。

少し反則な手ではあるが俺がその決定打を作ってやるか。


「あの・・・オーギュストさん」

「君は探偵のアラン・スミシーだったか?」

「ちょっと耳を・・・ゴニョゴニョ」


俺の作戦を聞き生真面目なオーギュストは眉を顰めたが、王国での研修が効いたのだろう、頭を切り替えて賛同してくれた。


「よくこんな悪辣な手を考えるモノだ。アンタ、実は人を騙すのが本業じゃ無いかね?」

「人聞きの悪い、事件の早期解決を願う一市民ですよ」


猿奥さんとエルフ職員の主張は平行線のまま時間だけが過ぎていったが、オーギュストの部下が報告に来た事で進展する。


「ふむ・・・ふむ・・・分かった。旦那さんの治療は一先ず成功したそうです」

「夫は無事なのですね!?ああ・・・良かった」

「現在、帝都中央病院の103号室に居ますが決して面会しないで下さい、まだ絶対安静で頭部に少しでも衝撃を与えると危険状態に戻ってしまい最悪死亡してしまう可能性がありますので、我々も事情聴取をするのは安定してからにしますからな。何、旦那さんの容態が良くなれば事件も解決だ」


こうして一時解散、エルフ職員は疑いが晴れるまで一時自宅謹慎となった。

その夜。

帝都中央病院、消灯した103号室に女性の影があった。

女性は寝ている患者の服をまさぐると目的の物を見つけニヤリとほくそ笑んだ。

そして持っていたハンマーを振り上げた瞬間


「はい、そこまで」


明かりが灯された。

声の主はオーギュスト、そして患者もガバッと起きて女性からハンマーを奪い取った。

患者の正体は旦那さんでは無くこの俺、探偵アラン・スミシーである。


「やっぱりアンタだったか、猿奥さん」


照らしだされた猿奥さんは訳も分からず立ちつくしていた。


「その指輪は被害者の服のポケットに入っていた物だが、アンタの物で間違い無いな?聞かせて頂こうか、被害者には近づいていないと言ったアンタの指輪が何故被害者のポケットに入っていたのか」


俺とオーギュストが気付いた違和感は正にソレだ。猿奥さんは九本の指にド派手な指輪をはめていた。だから何もはめていない指があるのはあまりにも不自然だったのだ。本人は隠そうとモゾモゾしてたみたいだが却って不自然さは増していた。


・・・

・・


◇ ◇ ◇


「それからどうなったんですか?」

「猿奥さんは殺人未遂で逮捕、離婚調停中だな」

「原因はその事件ですか?」

「いや、そもそも猿奥さんは家の貯金を無断で使った挙げ句借金までしていたらしい、今回の事件も被害者旦那の弱味を握って金を巻き上げる為に詰め寄ったんだがやましい事の無い被害者旦那は脅迫をつっぱねた。そんで逆ギレして突き飛ばしたんだ。猿奥さんは有責で離婚確実、更に実家の金にも手を着けてたらしくて猿奥さん両親からも絶縁、一方エルフ奥さん夫婦は誤解が解けてラブラブ、誕生日プレゼントは怪我の治療も兼ねて温泉旅行だそうだ」

「・・・貴方は私が美しいから身柄を欲しいと言いました」

「ん?言ったな」

「ではもしも・・・もしも貴方が前の夫である東将軍の危機の瞬間に直面していたら」

「助けてただろうな、東王・東将軍夫妻に恩を売っておけば活動が楽になる。あと、これは個人的な嗜好による話だが、仲の良い夫婦には幸せでいて欲しいからな」


私は尻尾を振って他の達と遊ぶルリムを眺めた。

最初はナイアールを出し抜いてルリムだけでも逃がそうかと考えたが、今の世界に魔物に変じたルリムを受け入れ幸せに過ごせる場所は此処しか無いのだと諦めた。

それにルリムがナイアールを見る目は既に命の恩人に対して向けるソレでは無く・・・ああ、あの子は意味を理解した上で未来の夫を決めてしまったのだ。


「非常識に次ぐ非常識、私も気持ちを切り替えて・・・んん!?」


今、横を通り過ぎた女の子は・・・。


「ねえちょっと貴女!」

「何か私に御用ですか東王様?」

「貴女、もしかしてコーデリア・・・コーデリア・メイスンじゃありませんか?」

「え?何で私の名前を?」

「覚えていませんか?ご両親が東部に来た時に・・・あっ!ごめんなさい、あんな事件があったのに私ったら無神経に・・・」

「待て!ナチェはコーデリアの素性を知っているのか!?彼女は幼い頃にギャングに捕まっていたから自分の出自もよく覚えてないんだ」

「確かに、前に会ったのは私も結婚する前でしたから無理も無いわね。いい、落ち着いて聞いて、貴女は帝国一の大商会ギザイア商会のご令嬢なのよ」


新たな事件の幕開けだった。

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