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遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
探偵 帝国ヲ駆ケル
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第百二十二話 ケイオス・ナイト 混沌の騎士と混沌の夜

年の瀬から新年、帝国内の犯罪者共の動きは活発である。

連中は年を越したり新年を祝う準備で物と金が溢れ出るタイミングを狙いあらゆる場所を襲撃するのだ。

無論、帝国軍だって黙ってはいないが、如何に優秀な帝国軍とて取りこぼしはどうしても出てしまうもの。

そこで竜二は遊びも兼ねて嬉々として犯罪者退治に向かうのだ。

高層建築物の上に立つ竜二の姿はこれまでのナイアールの姿からは大きく変わっていた。

全身に魔導金属製の黒いプロテクターと漆黒のマントを身に着け、外見的に最も異様なのはマジックミラー状になっており相手からは顔が見えない構造になっているヘルメットだろう。

両腕のプロテクター内にマジッククローや棒手裏剣を内蔵、背中に小型の改良型魔導式蒸気機関を搭載し、プロテクター全体に魔力を流し擬似的にナイアールの力を上昇させる事に成功している。これらは基礎技術の高い魔物娘である毛深き(ゴリラ)娘達と鋭い観察眼と突飛な発想力を持つラブ・キテレッツ・オキシゲンの共同製作の逸品。

軽い・頑丈・強いをコンセプトにダークヒーロー的な仕上がりとなっている。


「試験は重ねたが実戦は初めてだ・・・が!」


ナイアールは飛び降りると家族連れを襲っていたチンピラにダイブ、瞬く間に片付けて家族連れが唖然としている間に飛び去った。


「身体が軽いな、プロテクターに魔力を送り力を増していると聞いたが、逆に言えばプロテクターの破損は弱体化に繋がるって事か」


薄暗い地下室に拠点を置いた強盗の一派を無双するとナイアールは一息、腰部の収納ベルトからドリンクを取り出しフェイスカバーを外して水分補給。


「しっかし・・・」


倒れる強盗団を冷めた目で眺めてため息。


「どこの世界も都会の隙間ってのは変わらんね」


吐き捨てると次の瞬間には黒い風となりその姿は消えていた。

この惑星の住人は平均して地球人より高い運動能力を持つ一方、地球人より気配に疎い傾向にある。あくまで平均しての話なので地球人より運動能力が低い者も居れば地球人より気配に敏感な者も居る。そんな気配に敏感な者であっても上空を黒い何かが横切った感覚に空を見上げたとてその正体まで見極める事は出来ないだろう。

再び高層建築物の上に降り立ったナイアールの背後に似たプロテクターを装着した女性が続いて片膝立ちのポーズで声を掛ける。


「旦那様、帝国支社にて賊の襲撃あり。相手は高威力の魔道具で武装しており一般スタッフでは対処が困難との事。現在、帝-七忍隊にて全滅させない程度に対処しております、ラブちゃん達も性能を近くで見たいとの事ですので是非遊びにいらして下さい」

「わかった、直ぐに向かう」


そしてナイアールは一陣の黒い風となった。

一方で帝国支社周辺では・・・。


「ワシの土地はまだ奪い返せぬのか!?」

「まあまあエチゴーヤさん。多少頑張ってはいるみたいだが所詮は王国出の田舎モンなんぞに遅れは取りませんよ。あんたが軍用品を流してくれてたお陰で楽に終わりそうだ」


ギャングのボスは黒い剣を掲げると魔風が吹き荒れた。


「コイツがあれば四極星すら敵じゃないぜ」

「ほぉ~、ちょっと貸せよ」

「あ゛!?」


魔剣の柄にワイヤーが巻き付き一瞬で奪い取られる。

二人が声のした方を見れば漆黒の人影が奪った剣を二人に向けていた。


「「あっ」」


と言う間にギャング団は吹き飛ばされてしまった。


「ある程度の出力調整は可能だが、最大出力はこんなモンか、オデットやロックのオッサンの足元にも及ばんな・・・んで、エチゴーヤはギリ生き残ったか、運の良い奴だ」


ナイアールはエチゴーヤの腕を掴み引き上げるが、その瞬間、強烈な殺気を背後から感じた。ギャング達では無い、ソレは彼方から一瞬でナイアールに肉薄したのだ。

ナイアールが振り向いた瞬間には既にソレはタックルの姿勢に入っていた。


「ぐっ!?!?」


その動きはナイアールの超人的な動体視力と反応速度を以てしても避けられる物では無かったのだ。

咄嗟にガードした腕のプロテクターは無惨にも砕け散り、ナイアール自身も全身を打ち付けられながら受け身を取り致命傷を避けるので精一杯だ。

ヨロヨロと立ち上がるナイアールが見たのは筋骨隆々な熊獣人の男、しかしその姿は黄金のタイツに下半身は鋼の甲冑、胸に虹色に輝く魔導金属製の熊のレリーフが目を引くまるでコミックのヒーローの如き出で立ちである。

更にヒーロー野郎はナイアールを掴んで突進、店の入り口を破壊し店内の陳列棚も崩して柱に押し付ける。

が、ここでヒーロー野郎は異変に気付く。

いつの間にかヒーロー野郎はプロテクターだけを掴んでいて中身が見当たらない。

瞬間、残ったプロテクターが小爆発。

プロテクターに内蔵されていた魔導式蒸気機関を意図的に暴走させたのである。


「クッソ!建てたばっかだっつーのに!!」


といった愚痴も次の瞬間には黙る事になる。

煙の中から剛腕が伸びナイアールの首を掴んだのだ。


(ナイフじゃ刃が通らね・・・叢雲・改を・・・)


ヒーロー野郎の腕にナイフを突き立てていたナイアールは無駄だと諦め刀に手を掛けた瞬間、別の方向から声が掛かった。


「そこまでです!手を放しなさいベアースター!!」


現れたのは皇帝秘書官エミリーだ。


「秘書官殿か、聞けませんな、こいつは一般市民を傷付けた帝国の敵だ。特に顔を隠している所が怪しい」

「バカ者が!この者が戦っていたのはギャング団と軍用品を横流ししていた指名手配犯エチゴーヤではないか!!」

「何?ではこいつは?」

「あ~え~それは~~~・・・そう!彼は帝国が新たに任命した特殊工作員です!名前をナイア・・・」


ナイアールはヘルメットの裏で渋い顔をしたが今はエミリーに合わせる事にする。


混沌騎士ケイオス・ナイトだ。お会い出来て光栄だよMr.ベアースター・・・いや、特殊魔道具により超人となったバンディー元大尉」

「こいつオレの本名を?オレの正体は軍内でも秘匿され顔も変えたんだぞ!」

「答える義理は無いな」

「貴様・・・」


ベアースターが再び掴み掛かろうとした瞬間、エミリーの凛とした声が響く。


「止めよ」


その声にベアースターのみならずナイアールすらも一瞬ビクリと反応する。

威厳はあった。

高貴さもあった。

だが、それ以前にナイアールの中の龍としての魔性が引き寄せられる聞き覚えのある声だった。

声を聞いたベアースターは一触即発の空気から急に大人しく言う事を聞き始めている。

エミリーと二・三言葉を交わしたベアースターは帝国軍基地へと帰って行った。


「この力は・・・秘書官殿、例の薬を使ったな!?」

「おや?案外早く気付きましたね?流石王国でコレの事件に長く関わってきただけありますね」

「ふん・・・まあ・・・どう使おうが・・・お前等の・・・」


そこまで言ってナイアールは倒れてしまった。


「!!ナイアール殿!?」


◇ ◇ ◇


~数日後~


「リュウジ氏はまだ動けませんか?クリスタ総帥代行」

「今しばらくは・・・今回の件は帝国軍にしっかり賠償金を支払っていただきます」

「・・・断れば?」

「忘れないで下さい、ナイアールは何処にでも現れ誰にでも姿を変えます。断るならば許可を出せる立場の者に成り代われば済む話です。その能力を買って彼を呼び寄せた貴女方には今更な話かも知れませんがね」

「分かりました条件を全て飲みましょう」

「示談の成立ですね」


苦い顔をして帰ったエミリーを見送ったクリスタは自分の顔を思い切り引っ張った。

クリスタの顔の皮・・・いや、マスクが外れると竜二の姿がそこにはあった。


「偶然とは言えナイアールが動けないと思わせられたか。さて、これからどう動くべきかな?」


ナイアールの瞳はギラギラと輝いていたのだった。

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