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遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
探偵 帝国ヲ駆ケル
117/163

第百十七話 あの人は今?

鉱夫の町ブラックストーンにある宿屋の中でも特上ホテルの更に最上級ルームの扉が勢い良く開かれた。


「お?遅かったじゃん。皇帝秘書官エミリー・レフュースリバーさん」


扉を開けたエミリーは肩で息をしながら部屋でくつろぐエミリー・レフュースリバーを睨みつけた。


「貴方が!馬の世話やら何やらを私に押し付けたからでしょう!!それと百人隊長さんをあんなに雁字搦めにして、外すのに大分苦労しましたよ!!!」

「あれ?そんな事までしてたの?それだったら戻ってくるのが結構早いね?」

「国家機密です。それより私が聞きたいのは何で私が頼んだ部屋を勝手に最上級に変更してるんですか!?どうやってお金を用意したんですか!?何で私の部屋に貴方が居るんですか!?何で私の姿をしてるんですか!?何で私の名前を知ってるんですか!?」

「落ち着けって・・・あっ!そうだ、コレ返すわ」

「?」


エミリーに変装した竜二は上質な魔物の皮で仕立てられた袋を投げ渡した。


「・・・・・って、私の財布じゃないか~~~!!いつの間に!?しかも殆ど残ってねぇ~~~~~!!!!!」


竜二がビシッとサムズアップ。


「美味しかったです」

「よし、喧嘩だな?皇帝陛下より賜った活動資金をよくも・・・いえ、どうやってこの短時間で一人で使い切ったんですか?ホテルの部屋変更と食事だけでそこまで行くとは思えません。オラ!吐きなさい!!」

「町の様子見てたらさ、みんな事件で大変そうだからお金払う時に金貨をガバッと取って店員さんに渡して『今、色々大変でしょうからお釣りはいりませんよ』って」

「死ね!!」

「喜んでたんだから良い~じゃ~ん。『帝国の使者様は何とお優しいんだ』って皆感動に打ち震えてたぞ?いや~良い事をすると気持ち良いな」

「お前の金でやれ!」

「だからエミリーのお金でやったのですよ。ホホホホホ、とまあそんなこんなで町の事情は大体理解した」

「成る程、抜け目無く調査はしていたのですね?」


エミリーはナイアールの奇行に頭が痛くなるのを我慢して冷静に対処しようと気持ちを切り替えた。


「まあ、昼間っから鉱夫が町中に大勢残ってる時点で予測出来てたが、鉱山一つをギャングに乗っ取られたとはな」

「解放した百人隊が間も無く到着して事態を解決しますから余計な事は考えずに大人しくしてて下さい!!」

「へいへ~い」


ドカドカと大股で部屋を出ていったエミリーを他所に竜二は変装を解いて町で購入した服に着替える。

すると丁度テレポーターから誰かが出現する予兆が始まった。


「おかえり」

「ただいま戻りました・・・って、ここは何処かのホテルですか!?」

「自分が来たでありますよ」

「ふっ・・・土臭い妖精だけでは主様にお手を煩わせるやも知れぬからな」


出現したのは大地の妖精スプリングと空の妖精オータム、そしてかなり肌色の多いウェディングドレス風の何かに身を包んだコーデリアだった。


「お前らな~、またそんな誘う様な服を無理に着せて・・・」

「だ・・・大丈夫です。リュウジ様の事は皆様に色々教えて頂きましたから」

「あ~もう、声が震えてるじゃん。とりあえずこっちの部屋で何か飲み物でも飲んで一旦落ち着こう、ルームサービスの食事も結構イケるよ?」


・・・

・・


「とか言ってたクセに三十分掛からずガッツンガッツンおっ始めたでありますな」

「うわぁ、声と音がこっちにまで・・・うわぁ~」


・・・

・・


「落ち着いた?」

「は・・・はい、愛し合うって本当はこんなに素敵な事だったんですね」

「以前の事を簡単に忘れろと言われても無理だろうけど、少しずつ新しい思い出で塗り替えて行こうぜ」

「以前の・・・。そうだ!ここはブラックストーンの町ですよね?でしたらギャングのボスがここの鉱山を占拠した別のギャングの話しをしているのを聞いた事があります」


その話を聞き竜二は急ぎ外出の為に脱ぎ散らかした服を拾い集めた。


「主様、お出掛けですか?」

「ああ、気になる話を聞いたからな、確かめに行って来るから二人はコーデリアの話し相手になってくれ、それほど時間は掛からないだろうから夜には戻る」


宣言通り竜二は二時間程で部屋に戻り、今度は四人で明け方まで愛を深め合ったのだった。

皇帝秘書官のエミリーが暗い顔で部屋を訪ねて来たのは丁度竜二が遅めの朝食を食べようと着替え始めた頃だった。


「ゆうべは随分とお楽しみだったみたいですね?人が仕事で大騒ぎだった時に!」


エミリーはチラリとシーツで身体を隠して恥ずかしそうに縮こまっているコーデリアに目を向けた。妖精二人は上手く隠れている。


「事件は帝国の皆さんの活躍で解決だろ?さっさと帝国に行こうぜ、出来れば今度はファーストクラスでの移動で頼むよ。俺の愛馬のヒッポーも連れてな」

「・・・・・ませんでした」

「何?」

「解決しませんでしたって言ったのよ!」

「へぇ・・・」


竜二にしてみれば帝国軍まで出張って来て返り討ちに遭うとまでは予想していなかった。

コーデリアから聞いた裏話の懸念もあるにはあったが、それは帝国軍が仕事を片付ける裏で始末すれば良いとも考えてもいた。


「興味を引かれた。何があったかお兄さんに言ってみ?」

「何ですかそのノリは?まあ、愚痴りたかったから良いですが、ゴーレムに襲われたんですよ」

「ゴーレム?」

「やたら巨大で動きが良くて・・・鉱山には町の子供も何人か人質になってて手が出せないって聞いてたから早く助けてあげたいのに、あれじゃ救出部隊を入れる事も出来ない・・・きっと沼から出現したゴーレムを密輸された魔物制御薬とやらで操っているのね。全く厄介な物を作り出してくれたわよ」

「ゴーレムねぇ、百人隊は無事だったのか?」

「ええ、幸い軽い怪我だけで死者は出ていないわ」

「ふ~ん」


◇ ◇ ◇


その頃、ブラックストーン鉱山に作られた牢屋の前でギャングの一人が幽閉されている人物に怒鳴り散らしていた。


「貴様!何故帝国兵を皆殺しにしない!!」


牢の暗がりの向こうからかすれながらもおどけた調子の返答が響く。


「仕方無かろう?飯も録に食わせてもらえず昼夜採掘作業までさせられては拙者の手元も甘くなると言うものでござろう」

「ふんっ!次に連中を殺し損ねたらガキ共がどうなるか分かってるんだろうな?」

「・・・・・承知致した。明日から本気を出そう」


ギャングが立ち去ったのを確認して幽閉されている男は何とか逆転の目を探していた。


(時間稼ぎもそろそろ限界でござるか、せめて人質さえ救出出来ればこのような連中なぞ遅れは取らぬのに)


◇ ◇ ◇


「それは本当ですか?」

「ああ、コーデリアから聞いた話だが裏も取った」


竜二は証拠となる資料をテーブルに広げた。


「でもその女性は昨日捕まえたばかりのギャング・・・」


言い掛けた瞬間、凶悪な殺気を纏ったトランプ型手裏剣がエミリーの頬の薄皮一枚を裂いた。


「君は二つ勘違いをしている。俺は誰一人信用しない、それが愛する妻や子供、俺自身であってもだ。今回の件では彼女の証言だけでは無く物的証拠も揃ったから結論を出したに過ぎない。そしてもう一つは・・・」


竜二はシーツに隠れるコーデリアの横に座るとその身を抱き寄せ頭を撫でた。


「彼女はギャングに捕まり無理矢理働かされていた被害者で今は俺の女だ。変な言い掛かりを付けるなよ?アンタも八つ裂き死体にゃ成りたか無いだろ?」


エミリーには一瞬、死の塊とも思える顔の無い怪物の姿を竜二に幻視した。


「無礼をお許し下さい」

「分かれば良い。それで作戦だか、アンタら帝国軍がそっちをメインで押さえろ。俺は鉱山に向かう。内部の見取り図くらいは用意してんだろ?」

「ええ、それでは・・・」


・・・

・・


「お~、居る居る。どっかで見た事あるゴーレムだ」


作戦は至ってシンプル、入口正面のゴーレムは相手に出来ない、スプリングの力なら勝てるだろうがその間に人質が傷付いては意味が無い。


「なら裏から入るまでだ」


スプリングの高速穴堀とオータムが空気振動を消す消音能力で直接人質の牢屋に脱出穴を開け、更に竜二が侵入して内部を殲滅する計画だ。


「流石大地の妖精、ほぼ完成されたトンネルを掘り抜いたな」


あっさりと人質の子供達の所へたどり着いた。


「みんな、もう大丈夫だ。他の子にぶつからないように落ち着いて逃げるんだ!」


子供達がトンネルを抜ける間に見張りの一人がやって来た。定期巡回だったのだろう。


「テメェ!何やって・・・」


竜二は鉄格子の隙間からマジッククローを射出、見張りを引っ張って鉄格子に頭を叩きつける。


「何!?今の魔道具、カッコイイ」


見ればボサボサ髪の女の子が竜二のマジッククローを見て瞳を輝かせていた。


「ほら見てないでさっさと逃げた逃げた」

「ああ~ん、もうちょっと見せてよ」


ボサボサ髪の子を外へと追い出して気絶している見張りを調べる。


「鍵め~っけ」


外ではエミリーの部下数名が人質を回収する手筈になっているので、竜二と妖精二人は安心して牢屋の鍵を開けて内部に気軽な足取りで潜入するのだった。

さて内部は迷宮の如くなれども見取り図は頭に叩き込み、更には簡易の地図も持ち歩いている。

点在する見張りを始末して辿り着いたは子供達とは別の牢。


「む?見張りの者では無いな?何者でござるか?」

「俺俺、俺だよ俺」

「なんと!詐欺師でござったか、極星成り立ての頃は見知らぬ親族が大挙して押し寄せて来たものでござるが、こんな場所まで来るとは見上げた根性」

「アンタも苦労してんだな」


そう、牢の中に幽閉されていたのは・・・。


「父上、父上でありますか!?」

「ぬ?その声に言い回しはいつぞやの妖精か?ならばお主は多面怪盗ナイアールか!?」

「やっほ~、ロックのおっちゃん。元気してた~」


囚われの人物とは世界最強の魔法使いの一人、土の極星ロック・ダグザだった。

ギャング退治に来た彼だったが人質を盾にされて返り討ちに遭い用心棒も兼ねての強制労働させられていたのでした。


「元気だともさ、貴殿に今度こそ勝つ為に修行の旅をしていたのでござるからなぁ、今直ぐにでも勝負!・・・・・と強がりの一つでも言えれば良かったのでござろうが、生憎そろそろダウン寸前にござる。子供達と拙者を助けてはくれまいか?」

「え?子供達ならさっきもがもが・・・」


余計な事を言い掛けたオータムの口をスプリングが塞ぐ。


「俺は悪人だぜ?助けて欲しけりゃ対価を支払って貰わねーとな」

「む?金は無いでござるぞ」

「違う違う、ちょい耳貸せ。今、俺な・・・」

「ふむ・・・まあ、そんな事で良ければ・・・」

「そんじゃ契約成立だな、とりあえずお握りと水筒だ」

「子供達は?」


竜二はペロリと舌を出す。


「もう助けてある。今頃は帝国軍に保護されてるハズだ」

「あっ、騙したでござるな!?」

「人聞きの悪い、多少順番が前後しただけだろ?」

「性格悪いでござるな」

「悪人に何期待してんだよ」

「むぅ、ごもっとも」


特産の牛肉を具にしたお握りと水筒一本を空にして「さて」とロックが立ち上がる。

そっからは快進撃、人質は解放され世界最強の魔法使いと彼を出し抜いた怪盗達が暴れれば勝てる悪党なんて存在しない、事態に気付いたギャング達が慌てて数を揃えようとするも全ては無意味に終わる。

そうしてギャングのボスが待つ部屋へとたどり着いた。


「ぐっ・・・まだ人質が残っていたでござるか」


そう、ギャングの手下が女の子の首筋にナイフを押し当てニタニタ笑ってる。


「動くなよ極星さんよぉ、派手に暴れてくれたみたいだが・・・」


しかし、竜二はガン無視。

容赦無く敵を切り裂き始めた。


「お・・・おい、聞いてねぇのか!?このガキが・・・」

「殺せないだろ?出資者の娘さんは」


驚愕に顔を歪めたのはギャングもロックも同時だった。

そう、竜二がコーデリアから聞いたギャングの話とは・・・。


「町長がお前達と結託してる事はバレてんだよ!んでそのガキは町長の娘で連絡役や、いざって時はこうやって人質のフリして時間稼ぎ役も引き受けるって寸法さ」

「そうでござったか!領兵や公国兵が手を焼いていたのは町長が情報を流していたからでござったか!」

「諦めろ!既に町長宅は帝国軍が押さえている!!」


ギャングの気が抜けた一瞬の隙に町長の娘は部屋を抜け出てしまった。


「ナイアール、娘が逃げたぞ!!」

「対策はしてあるさ、放っておけ」


極星を前にして卑劣な策も通用せず自棄になったギャング達の行動はと言えば・・・。


「火炎魔法だ!撃ちまくれ!!」


所謂グミ撃ちってヤツである。


「へ・・・へへへ、いくら極星様でもこれ程魔法を受ければ・・・」


しかし炎は土壁に防がれている。


「お前等さぁ、ここがどこでコイツが誰だか忘れてないか?まずこんな洞穴で火炎魔法を使えば空気が無くなるだろ」


竜二の隣でオータムが光輝いていた。燃焼した酸素を上手く供給しているのである。


「もう一つは四方を“地”で囲まれたこの部屋だ」


竜二がパチンと指を鳴らせばギャングの四方八方から岩石が飛び出し押し潰す。


「残酷と思うかね極星?」

「否、こ奴等を放っておけばまた涙に濡れる者が現れる、ここで始末するが良かろうさ。それに拙者とて命のやり取りは慣れている、命の価値をどうこう説教垂れる権利などござらぬよ」

「さよか、だがボスだけは色々と帝国軍も聞きたい事が有るだろうしな」

「ふむ、しからば」


ギャングのボスの周囲に箱状の岩石が二つ現れボスを挟み込むようにピタリとくっついた。岩の箱に頭だけ出した状態で閉じ込められた形だ。


「これで引き渡しも容易でござるな」


完成した箱をロックのゴーレムが持ち上げる。

終わってみれば大した事も無い連中だった。外は夕暮れ、山に沈む夕陽が被りいい感じに絵になる帰還である。

エミリーが手を振って出迎えた、後はお任せして良さそうだ。

竜二は密かにロックに目配せする。


「分かっている、契約でござるからな」


・・・

・・


次の日、相変わらずぐるぐる巻きにされ馬車に乗せられている竜二の姿があった。


「おぉ~ヒッポー!多少砂埃で汚れてはいるが元気そうで何よりだ」


髭の隊長さんも満足そうだ。


「それじゃ行きますよ~」


エミリーが百人隊に合図を送ると彼等は帝国へ向けて歩みを進める・・・ブラックストーンの町から十キロ地点で髭の隊長の絶叫が響き渡る。


「あああああぁぁぁぁぁぁ~~~!?!?ヒッポーが・・・ヒッポーが」

「どうされましたか隊長・・・!?これは・・・」


そこには崩れた土の山に跨がる隊長の姿があった。

その光景にハッと気付かされたエミリーは竜二が拘束されている馬車を覗く。


「しまった!やられた!!」


中にはナイアールの衣装を着た土人形が置いてあるばかりだった。人形には手紙が一通張り付けられている。


『希望したファーストクラスでの席をご用意頂けない様なので自力で帝国まで向かう事にします 多面怪盗ナイアール』


その様子を離れた場所から見る坊主頭の男が一人。


「奴の妖精の力を使えば同じ事が容易に出来るだろうに・・・拙者に対価を払わせる為か、相も変わらず不思議な御仁であった」


一方で竜二はと言えば未だブラックストーンの町に留まっていた。

証拠は領主から公国・帝国に渡り町長やギャングのボスも極刑だそうだ。


「魔道具を利用した犯罪組織ね、今回の件は魔法の杖みたいな人でも作れる魔道具の製造に利用する鉱山資源が目当てか、帝国も動きを掴んでいるらしいが、さて・・・」


マジッククローを射出して町長宅の屋根に上がる、何気無く下を見た竜二は驚いた。

何と鉱山で助けたあのボサボサ髪の女の子が右腕を竜二の方へと突出し、次の瞬間バシュッと何かが射出されたのだ。

咄嗟に飛んできたソレを見た竜二は更に驚いた。


「マジッククロー!?」


しかも、しっかりと巻き取り機能を利用して屋根の上に乗って見せたのだ。


「お前・・・一度見ただけでコレの構造を理解したのか?」

「まあね、久々楽しい物作りだったよ」

「お前ナニモンだよ、この町の子じゃ無いな?」

「よくぞ聞いてくれた。我っち様の名はラブ、ラブ・キテレッツ・オキシゲン、今は亡き天才魔道具研究家Dr.ダイスケ・セリーザ・オキシゲンの娘だ!というわけでコンゴトモヨロシク」

「ヨロシクって、家は?家族は?」

「そんなの無いよ、天涯孤独ってヤツさ、君についていけば面白い物が沢山見られそうだ」

「(確かに見ただけでおおよその構造を理解して作り出す知識と技術は今後伸びるかも知れない)良いのか?俺は一度引き入れた女の子は逃がさないぜ?」

「なんだ?交尾したいのか?面白い物見せてくれたらいいゾ」

「女の子がそう言う事言うんじゃありません」


こうしてコーデリア、ラブ、ヒッポーと帝国を目指すのであった。

そうそう、逃げた町長の娘は・・・。


「まあまあ、ようこそ我が家にいらっしゃいました。多少生意気で悪い娘みたいですが直ぐに馴れますよ」


魔王の軍勢に捕らえられていたのだった。

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