第十一話 怪盗、王国二現ル(初めての怪盗 後編 Spring has come)
いよいよ、念願のアクションシーン&濡れ場です。どこまでOKなのか不明ですがなるべく濁した表現で終わらせるよう努力しました。
「ヤーブ・ホピタルス医師(豹系獣人)、表向きは学院出の優秀な医師で通っているが、裏側ではならず者達と組んでインチキ薬品の販売・医療ミスのもみ消し・人身売買・魔薬(麻薬と同意の違法魔法薬)の精製なんかも行ってる大悪党だ。二人共運が良いな、小麦粉程度のインチキ薬で済んで」
ユナ・ユノ姉妹を迎え入れてから三日、段蔵は自分の持つあらゆる技術を使ってヤーブ医師の調査を行った。
「そんなに怖い人だったんですか?」
「ダンゾー達と出会っていなかったら・・・」
二人が恐怖に身体を震わせる。
「御用商人に化けたり、使用人に紛れ込んだりして奴の屋敷内を調べてみたら地下に魔薬の精製所を隠していたよ」
「直ぐに兵士達でヤーブを捕まえましょう」
クラリースはそうまくし立てるが段蔵は待ったをかけた。
「地下の事をどうやって説明するんだ?俺は家屋に無断で侵入する泥棒ですって言いふらすのか?それに下手に動けばこっちも共犯で疑われる」
「それじゃあ段蔵はどうするんだい?」
「兵士には“別の理由”で集まってもらう、それも農民混じりの領兵だけじゃなくて王国の正規兵も混ぜて盛大にな」
「「「「???」」」」
「クラリースにも手伝ってもらうぞ」
その夜、書斎で手紙と数枚の紙に何かを書いている段蔵にクラリースは声を掛けた。
「何を書いているんですか?」
「ん?予告状だよ、よこくじょう♪」
クラリースは机の上の紙を取って読んでみた。
「え~何々?『五日後の夜、ダンドレジー領ベルナール街にお住まいのヤーブ・ホピタルス医師が所有する名画【朝に咲く華】を頂戴に参上いたします。 多面怪盗ナイアール』ですって?」
「前に潜入した時に見たんだけどあのヤブ医者には勿体無い程の一級品だよ」
嬉しそうに笑う段蔵にクラリースは若干呆れ顔だ。
「それで何故わざわざ絵を狙ってる事を知らせるんですか?前に悪徳商人達から資金を盗った時みたいに黙って行けば良いじゃないですか?」
「今回の目的はヤーブの悪行を世間に知らしめる事だからね?観客が多い方が良いんだよ」
クラリースは手紙の宛先を見て驚いた。
ヤーブ本人はともかく領内の兵士をまとめる騎士宛だったり王都軍部の若き名将マイクローナ将軍だったりで一番驚いたのが・・・。
「メアリ・エルキュリア・・・王国第三王女様宛ですか!!」
「彼女達には“特に”特等席で見てもらいたいからね。さて、この手紙を関係各所にこっそりと送るぞ」
届く日を計算して同日に配送される様に調整しなきゃならないのが面倒だとぼやきながら今度は街中に張り出す紙の方へと取り掛かった。
かくして予告状は全て同日に関係各所に届けられ又同じ内容の広告も目立つ様にベルナール街の各所に張り出された。
◇ ◇ ◇
~エルキュリア王国王城のメアリ姫私室~
「メアリ!!」
ノックもせずに入って来た黒猫耳の親友に対してメアリは落ち着いた様子で席を勧めた。
「こちらにも届きました。とうとう動き出したのですね?調査団の準備は?」
「奴の言った通りにアイリーン・ショルメを中心とした調査部隊を組織したのですが・・・」
メアリは言葉を切ったマイクローナに続きを話すよう促す。
「正直アイリーン・ショルメが使い物に成る程有能とは思えません」
◇ ◇ ◇
~ヤーブ・ホピタルス医師の屋敷~
この屋敷の主であり世間では名医として名高いヤーブ医師は豹系獣人とは思えないまるで魔物のオークみたいに丸々と太った中年の男であった。今彼はとある重要な客人をもてなしていた。
「それでは貴方様が屋敷の警備に参加して下さると?」
ヤーブと対面するのは彼と真逆で筋骨隆々として坊主頭の中年の武人であった。彼こそは四極星の一人土属性魔法最強の使い手、ロック・ダグザその人であった。
「がっはっはっはっはっ!ホピタルス殿、拙者が修業中にこの街に立ち寄ってみれば何やら面白い盗人が間抜けにも盗む物や入る家を指定しているというではござらんか?そんな面白い輩が居ると言うならば是非立ち会ってみたいものだと思たのでござる」
ロックは豪快に笑っているが対するヤーブはその笑顔に圧され引きつった笑みを浮かべるばかりだった。
「はははっ、しかしダグザ様には悪いですが、きっと誰かのイタズラですよ」
「だがこれほど広い範囲で大々的に宣伝しておきながら何もしないというのも納得がいかんでござるな、紙代やインク代だってバカにならんでござるからなぁ~、拙者はこの一件かなりの猛者の仕業と睨んでござる」
(王国の正規兵も応援に駆けつけるというが本当にそんな輩が来るのか?下手に大勢に屋敷内を回られると厄介じゃのう)
そんなヤーブの内心も知らずにロックは相も変わらず豪快に笑い続けるのだった。
◇ ◇ ◇
~予告前日とある宿屋の二階~
ダンドレジー家名義でとった部屋でクラリースと段蔵が打ち合わせをしていた。
「明日の夕方には向かいに見えるヤーブの屋敷の塀に爆薬を仕掛けるから君は夜、教会の鐘が鳴り終わったらこの部屋で仕掛けの糸を引っ張ってくれ」
「爆薬ってあの山で魔物相手に投げつけていた奴ですよね?大丈夫なんですか?」
「ああ、火はほとんど出ない音が大きいだけの物だから心配はいらないよ、上手く破裂したら糸を回収してこの部屋を引き払ってくれ」
「それだけですか?」
「そうそれだけ、でもとっても重要な仕事だよ」
未だに心配そうなクラリースだったがそれでも段蔵を信じる事にした。
「この仕事が終わったら屋敷の寝床で“お勉強”の実践をしてみようか?」
「っ~~~バカ!!」
段蔵は顔を真っ赤にしたクラリースを満足気に見つめてから宿の寝台で眠りに就いた。
◇ ◇ ◇
~予告当日、ヤーブ屋敷内~
アイリーン・ショルメは前日に屋敷入りして計画を練り当日の夕方から人員を配置し周囲の警戒に当たらせていた・・・のだが、当の本人は冷め切った感情で屋敷内を眺めるばかりだった。
(新設された部隊の隊長を任され訓練を続けた末の初仕事が子供のイタズラの確認とは・・・、以前王城で出会った影人間もあれ以来姿を消して結局面白い事なんて何一つ無かったですわ)
「隊長~配置が完了したっス」
長い黒髪を馬の尾の様に後ろで結んだ活発そうなエルフの少女がアイリーンの前に現れた。
「ええ、ご苦労様ですわ。え~っと貴女お名前は何でしたかしら?」
「自分はリト・ウッズっス、剣も魔法も苦手っスけど走るのなら誰にも負けないっス」
内心は彼女の名前などどうでも良かったのだが少しでも退屈を紛らわす為に話を続けた。
「ウッズさんは何故軍に入ったのかしら?」
リトは迷い無く輝く様な瞳で答えた。
「自分昔、魔物に襲われた時に兵隊さんに助けてもらった事があるっス。それで自分もいつかはああなりたいとずっと思っていたっスよ」
(夢か、私が軍に入ったのはどうしてだったかしら?憧れ?使命感?いいえ、そんな物は無くただ流されるだけでここまで来たのでしたわね)
自分より階級が低いハズのこの少女をアイリーンは羨ましく思っていた。隊長なんて呼ばれていても自分には彼女ほどの情熱の欠片も湧いて来ないしその事に絶望する感覚すら無くなってしまっていた。
そんな時近くの教会の鐘が鳴り響いた。
「もう夜も更けてきたっスね?」
「ここには極星様も居るらしいから私達の出番は無いかもしれませんわね」
「うひゃ~極星様っスか?どんな凄い魔法使うんっスかね?」
「さあ?あまり興味ありませんわ」
教会の鐘が鳴り終わった時にそれは起こった。
ズドーーーーーーーーンと外の方でいままで聞いた事もない様な轟音が鳴り響いたのだ。
「何?なんなんっスか!?隊ちょ・・・」
リトはアイリーンを見て言葉を失った。その時のアイリーンは紅い瞳を輝きで満たし満面の笑みを浮かべた女神の如き美しさであった。
「リト!兵達に通達、直ぐに音の原因を調べなさい!!」
「りょっ・・・了解っス」
轟音が響いたと思われる場所は屋敷の外の塀だった。少し焦げて僅かに崩れている以外は特に異常が無いように見られた。
「アレ、思ったより大した事が無いっスね?」
段々と屋敷内の兵士や近隣の住民も集まって来た。
「ちょっちょっと皆さん通れなくなっちゃうから散開するっス、ねぇ?聞いてるっスか?」
リトが野次馬の交通整理に奮闘している様子を近くの宿屋からクラリースが眺めていた。
「あ~あかわいそうに、けれどもこれで屋敷内からは大量に兵達が、街からは野次馬が出て来ましたね。私は予定通り引き上げる事にしましょう・・・その後は・・・」
クラリースは妄想を膨らませながら宿を後にするのだった。
一方屋敷内では地下からモクモクと白煙が上がっていた。絵画が飾られている居間は何事かと大騒ぎである。
「何じゃ?一体何が起こっているのじゃ?」
「どうやら地下からみたいですわね。ヤーブさん?地下には何が?」
「うぐっ、そっそれは・・・」
ヤーブが言葉に詰まっていると突如床が爆発を起こしそして白煙の中から黒い影が飛び出した。
「それは地下に魔薬の精製所が隠されているのさ!!」
その人物の出で立ちは真っ黒なタキシード上下に同じ色のシルクハット首には真っ赤なリボンタイとそれを止める黄金のタイピン、目元を覆う真っ白な仮面、その仮面の奥に見える黒い瞳と目が合った時、アイリーン・ショルメはこの人物こそが以前王城で出会った影人間であると確信した。
「多面怪盗ナイアール、予告通り名画【朝に咲く華】を頂きに参上した」
そう言い放つと、ナイアールは大きな黒い布を取り出しさっと絵画にかざすとまるで奇術師の様に絵画を消してしまった。そうして黒い布をマントの様に装着すると混乱する兵士 ヤーブ アイリーン達を余所に上の階に駆け上がって行った。
感動に打ち震え冷め切った心臓に炎が宿ったアイリーンの指示は素早かった。
「飛べる者は外へ、その他の者達は半数は地下に、もう半数は私と共に奴を追い詰めます。外に出ている兵達も呼び戻しなさい!!」
屋敷の屋根の上、野次馬達が派手な破裂音を立てて登場した謎の人物に注目する。
ナイアールはマントの中に隠していた名画【朝に咲く華】を大きく掲げ外の野次馬や兵達にアピールした。
「ご覧の通り、名画【朝に咲く華】はこの私、多面怪盗ナイアールが頂戴しました。今夜はこれにてお暇させていただきます」
周りに群がってくる飛行兵達をトリモチ爆弾を投げて動けなくしながら再び絵画を収納した。屋敷前はまだ混雑から抜け出せていない、そんな時アイリーン達が恐る恐る屋根を登り始めた。
するとナイアールは空中でトンボを切って何の魔法も使わずに一気に庭に着地した。
「うそぉ!!」
驚愕のあまり屋根から落っこちそうになったアイリーンを他の兵達が引っ張り上げる。
後は庭を一気に駆け抜け、未だ野次馬達で混乱している通りに一般人に変装して紛れ込めば逃げ切れる。
そうナイアールが考えた時だった。
庭に筋骨隆々で坊主頭のオッサンが腕を組んで立っていた。
「やはり拙者の勘が当たり中央突破を目論んだでござるか。いや、その動きは大胆でありながらもその智謀は学院の学者先生達にも劣らない恐ろしい御仁でござるな」
坊主のオッサンがパンと手を打ち鳴らすと庭の土が一気に盛り上がった。
「それでは今度はその“武”を試させてもらうでござる!各々方手出しは無用にござるよ。四極星が一人ロック・ダグザ、いざ参る」
口上が終わると盛り上がった庭土は巨人の姿を取った。
「何ぃ~~~~!!」
ナイアールが驚く暇も無く土の巨人はその豪腕を奮って襲いかかって来た。
最強の土属性魔法使いロック・ダグザの成せる技か、土の巨人には意外と隙が無く逃げ出す糸口が見つからない、火薬玉を投げても破損箇所が直ぐに他の土で補修されるので効果が無かった。
「うおぉぉぉぉぉ!!マジかよ~~~~!!」
「はっはっはっ拙者の大奥義、ゴーレム召喚にどこまで保つでござるか?」
(ゴーレムだと!?ゴーレムって“あの”ゴーレムの事か?)
その瞬間ナイアールの中に閃くものがあった。
(確か以前読んだ漫画にゴーレムの倒し方が・・・一か八かやってみるか)
ナイアールは刀を取り出し速度を上げてゴーレムを翻弄したがその全てをまるで武道家みたいに様々な姿勢でゴーレムが捌いていく。
「速度は中々でござるがそんな細身の刃では拙者のゴーレムは斬れないでござるよ?」
ゴーレムが裏拳の構えを取った瞬間にナイアールはとうとう目的の物を見つけた。
(あった、うなじ部分!!)
ナイアールは突き出されたゴーレムの拳を駆け上がり首の後ろに回り込んだ。そこにはエルキュリア文字で『真理』と刻まれていた。
「美の女神様、あんたの戦法盗ませてもらうぜ!!」
ナイアールは文字に刀を突き刺し祓詞を唱えた。
「一・二・三・四 五・六・七・八 九・十 布留部 由良由良止 布留部」
ゴーレムは一瞬ビクッと震えて光輝き始めた。
「バカな!?一体ゴーレムに何をしたでござる!!」
「知っているか?ゴーレムの語源は『胎児』って意味なんだぜ、さあ!俺のモノになれ、ゴーレム!!」
光り輝くゴーレムの中心に子供ほどの身長しか無い成熟した大人の女性のシルエットが見えた。
「マスターの登録修正完了であります!!」
そんな声が聞こえた瞬間ロックは自分の魔力を七割近く奪い取られたのを感じ、あまりの不快感にうめき声を上げた。
「うぐっ!」
ゴーレムの中から現れたのは、大地を思わせる褐色の肌・金剛石を散りばめた様な輝ける銀髪・その瞳はアクアマリンの如く澄んだブルーそしてボン・キュ・ボンの身体に纏うのは迷彩柄のスケスケ踊り子服にこの世界の土属性を示すエンブレムが刺繍された真っ赤なベレー帽、背中には水晶で出来た透き通る昆虫の翅、神秘的な人ならざる存在だった。
ナイアールは解析ツールを素早くかざしてみた。
名称:ノッカー及びノームに近い大地の妖精 正式名称不明
大地に潜む弱小精霊が“叢雲・改”の莫大な霊力の影響で異常進化したスプリガン級の強大なパワーを持つ大地を司る大妖精。
「スプリガン?イギリスの妖精守護者か、ならばお前の名前は今日からスプリングだ」
スプリングはナイアールにビシッと敬礼した。
「了解でありますマスター」
スプリングはロックの方を向くと一礼した。
「お父上、短い間でありましたが自分はマスターと共に行くであります」
「そうか、ゴーレムを作る時に込めた地の力が・・・・・はっはっはっ!ナイアールよ、真逆拙者から魔法をも盗み出すとは、正にその名に恥じぬ大怪盗!!お主は一体どこまで盗むつもりでござるか!?」
ナイアールは口元で満面の笑みを浮かべ両手を広げて高らかと宣言した。
「輝くものは惑星さえも、尊きものは生命すら!!」
その答えにロックも満足気な笑みを浮かべ相変わらずの豪快な笑い声を返した。
「がっはっはっはっはっ!!そうかそうか、だが魔力の大半を奪われたとは言え拙者はまだまだゴーレムを作り出せるぞ!!」
そう言うと四極星ロック・ダグザは自身の魔力全てを大地に流し込み十体のゴーレムを作り出した。本来ならば一体でも兵百人に相当する程の戦力なのだが、ここでスプリングが自信満々に飛び出した。
「任せるであります、マスター」
そう言うとスプリングは周囲の土を集めあっという間にロックの倍以上のサイズのゴーレムに姿を変えてしまった。スプリングのゴーレムが拳を振るうと接触したロックのゴーレムは一瞬でスプリング側に“吸収”されてしまった。
「なんだとぉぉぉぉおおお!!」
「大地由来のモノでスプリングに操れないモノなど無いのであります!」
ロックは今度こそ驚愕で笑みを浮かべられなくなってしまった。そうしている間にもスプリングは次々と相手ゴーレムを吸収し、最後の一体を吸収した時には恐ろしい程のサイズに膨れ上がっていた。
「マスター、乗るであります!!」
屈んだ姿勢でスプリングゴーレムはナイアールを誘導して肩に乗せ、ロックや激戦の中近寄れずにいた兵達 野次馬 ヤーブ リト アイリーンを尻目に悠々と屋敷を去って行き街を歩いている間に段々と小さくなって最後にはナイアールと共に霞の様に消えてしまった。
「見事・・・その一言に尽きるでござるな、拙者もまだまだ修行が足りん・・・」
全魔力を使い切ったロックはその場で立ったまま気絶してしまった。
極星の敗北、そんな大混乱の中アイリーンは益々歓喜に打ち震えながら部下達に指示を飛ばす。放心しているヤーブ・ホピタルス医師の捕縛に地下室の調査、ナイアールの手口の検証とやるべき事は山積みだ。そんな時リト・ウッズがボロボロの姿で戻ってきた。
「あら?ウッズさん、そんな姿で一体どうしたんですの?」
「うううっ隊ちょ~、野次馬や同僚のみんなの混乱を抑えられず押し合いへし合いでもうダウン寸前っス」
そんな情けない声を上げるリトを見てアイリーンは閃いた。
「そうですわね、細かく役割を決めた方が指令を伝え易いですわね・・・決めましたわ。先ずはリト・ウッズ、貴女を私の副官・・・この部隊の副隊長に任命します。他の者達もウッズさんの指令をしっかりと聞くように!!」
「えっ?ええっ~~~!!自分がっスか!?」
この日、アイリーン・ショルメとリト・ウッズの名コンビが誕生した。彼女達は今後その生涯を賭けてナイアールを始めとした王国内の闇の勢力と闘い続けやがて英雄と呼ばれる存在になるがそれはまた別のお話・・・。
◇ ◇ ◇
~ダンドレジー家屋敷~
「というわけで新しく妻となった大地の妖精スプリングちゃんだ。みんな仲良くしてくれよな」
魔物と違って伝説にしか語られない妖精の姿を見て皆目を白黒させている。特に双子エルフ姉妹は瞳を輝かせて妖精を見つめていた。
「先輩方、よろしくお願いするであります」
そんな中アスタルトが興味津々といった感じで質問した。
「大地の妖精なのよね?一体どんな魔法が使えるの?」
「地中に潜ったり穴を開けたりゴーレムを作ったり、土関連ならば大抵の事が出来るであります」
そう言うとスプリングはアスタルトに向かって突進した。
「きゃ!!危ないじゃないの・・・って妖精どこに消えた?」
そうするとスプリングの声がアスタルトの“中から”聞こえてきた。
『ここであります。自分は人の中に入って土の属性を与える事が出来るであります』
「何と、今なら私も土魔法を使えるって事ね♪」
数刻前の戦闘を思い出した段蔵が止めに入る。
「おいバカやめろ!!」
「大地の力を得た私は今こそ真のゴブリンプリンセス・・・否、ゴブリンクイーンに進化したのよ!!さあ、土魔法!!」
アスタルトが手をかざして魔力を開放すると小さな石ころ二つがポトリと落ちた。そして彼女は床に尻餅をついてしまった。
アスタルトの中から飛び出したスプリングがやれやれといった表情でアスタルトを起こした。
「自分が与えられるのは“属性”だけであって“魔力”そのものは本人に依存するであります。アスタルト様の魔力ではそれが限界だったという事であります。これなら自分一人で外に出た方が色々出来るでありますな」
「そっ、そんにゃ~」
大量の魔力を消費したアスタルトはそのまま椅子に座ってぐったりしてしまった。その後遅めの夕食をみんなで食べて、アスタルトは何とか魔力を回復させたのだった。
食事も終わった深夜、屋敷の寝室に集められた段蔵の妻達、用意された椅子にアスタルト ユナ ユノは座り、特大のベッドの上では下着姿のクラリースと楽しそうに飛び跳ねるスプリングの姿があった。
スプリング以外の四人は皆頬を染めてそわそわと落ち着きが無い、今夜はいよいよ実践の時であった。普段は騒がしいアスタルトも何か言いかけては用意された紅茶を口に含むといった事を繰り返していた。
そんな中ユノが口を開いた。
「スプリングは何だか楽しそうね・・・」
「妖精は色情狂なのであります。むしろそれが魔力の素と言っても過言では無いでありますから食事と同じであります。勿論クラリース様の料理も最高でありますよ?」
そんなやり取りの中、段蔵が本来の青年の姿で寝室に入って来た。
「今日は頑張ってくれたクラリースとスプリングの番だな。他の娘達は~え~と・・・あれだ、数年は無理だろコレ色々と!!だから見学な」
クラリースの全身がいよいよ真っ赤っかに染まる。すると段蔵が言った。
「表向きは未婚の・・・それも領主の娘に子供がデキちゃったらマズイだろ?」
「は?・・・え?・・・それじゃあ一体何を・・・?」
「だからソッチは使わない」
その時行なわれた行為はクラリースが何時も読んでいる如何わしい官能小説程激しくは無かったがその生々しさは小説以上の出来事であった。
だが短く文章にまとめるならば、『まず清処にて本来は出口となる部分を注入器具で何度も塩水でしっかりと洗浄して完全に汚れが落ちた後特殊な薬品を混ぜた軟膏で時間を掛けて揉みほぐしてから行った』といったところだろうか。終わった後、にやけた表情のまま虚ろな瞳で風呂場に向かって行ったクラリースを見ていたスプリング以外の三人は完全に言葉を失っていた。
「おーい、今度は風呂場に移動な」
その言葉にまだ全てが終わっていない事を悟った三人は、恐れながらもやはり好奇心が勝ったか下手な操り人形みたいな足取りで風呂場に向かい今度はスプリングともう一度クラリースに事が行なわれた。
今度こそ全てが終わった後で湯船に浸かりながら各々自然に感想が漏れた。
・クラリースの場合
「はへ?もう無理でしゅ~戻ってこられないでしゅ~」
・アスタルトの場合
「はっ、ははは・・・〇ナ〇妖精ってホントにいたんだ・・・」
・ユノの場合
「あと何年かしたら私達もこんな風に・・・ゴクッ」
・ユナの場合
「あと何年かしたら私達もこんな風に・・・ポッ」
・スプリングの場合
「いやはやボコォってなった時は流石に驚いたでありますがマスターとの相性バッチリ魔力も充実であります」
こうしてダンドレジー家の長い夜は更けていった。
◇ ◇ ◇
~何処とも知れぬ一室~
暗がりの中何本かの蝋燭の炎が揺らめく中で初老の男が部屋の奥の黒いヴェールの向こう居る人物に語りかけた。
「“女伯爵”様コロジョン・ダンドレジー男爵はやはり完全に我らの方針に背き独自の方針に舵を切った様ですな」
ヴェールの向こうに隠れた女性は悲しそうな声で男の意見に答えた。
「その様ですねセバスチャン、やはり娘のクラリースを我らの組織に無理やり加えようと意見した時に始末しておくべきでした。いえ、今からでも遅くはありませんね」
セバスチャンと呼ばれた男は後ろに向き直って、膝まづいて頭を垂れている女性の方に語り掛けた。
「それでは何時も通り貴女に始末していただきます。よろしいですかな?オードリー・フーディー」
「仰せのままに・・・」
美貌の暗殺者、オードリー・フーディーは一礼して部屋から去っていった。
その様子を見て女伯爵はセバスチャンに静かに指示を出した。
「今回はあまり良い感じはしませんね。セバスチャン、彼女が失敗した時の為に“彼ら”も向かわせなさい、もちろん男爵だけでなくオードリーも対象です」
「かしこまりました」
本当はスプリングも妖精という事で幼くなる予定でしたがこれ以上の幼女率上昇はお姉様好きの自分には許せなかったので小さな大人の女性に変更しました。




