第百二話 超メカ対戦
PCの調子がががが。
遠藤家の地下にある酒場、子供と妊婦さんにはソフトドリンクを提供、舞台の上ではミーネが踊り舞っている。
段蔵がミーネと自分の息子であるラウールを抱っこして踊りを楽しんでいた。
「どうだラウール、お母さんはカッコいいだろ?」
「きゃう、きゃう♪」
エナメルのロングブーツにビキニスタイル、デニムのショートパンツに黄金の首輪と手枷を振り乱して踊るミーネはセクシーさも然ることながら動作のメリハリからの格好良さが素晴らしい。
「お子さんを一人産んだ身体とは思えないですね」
「戦闘職だからか腹筋も背筋も引き締まってて綺麗ね」
「ああ、それで何の話だったかな?」
魔導戦車に使用された動力源『魔導式蒸気機関』。
集まったのはジェーン姫、その従者のアンク、レモン姫、オルタンス、メアリ姫の五名。
「当然、俺達が研究し開発した装置だ」
蒸気の利用というのは案外旧く、古代ローマでは既に実用化していてローマ帝国がもっと長く続いていれば蒸気機関車の発明も、もっと早かったなんて話もある程だ。
「そしてDr.デクスターも俺の変装・・・と言うには語弊があるかな?Dr.デクスターってのは機関開発に関わった全員の共通名義みたいなモンだ」
そう言った意味では魔物化して訳も分からず自分達を殺す為の戦車の部品を加工していた犯罪者達もDr.デクスターの一部になってしまっていたと言うのは皮肉な話だ。
「この惑星ユグドでは魔法が使える人は物品に魔力を込めそれぞれの属性を付与する事が出来るわ。例えそれが道端の石ころであっても。これが基本的な魔石なのよ」
「使われている石の成分によって込められる量も価格も変化するが、基本は何処にでも売っていて発動すれば魔力に変換されて消滅する」
「そして土属性術者ならば魔力から石を生み出す事も可能である為、再利用可能なエネルギーだと俺は考えた。簡単な話水の魔石と火の魔石を混ぜて発生した蒸気を利用した機関だ・・・が、問題が起きた」
当初ナイアールは直ぐに大した物は出来ないと踏んでいた。
地球から来たナイアールだって蒸気機関の細かな構造までは知り得ない、だから単純に「蒸気を発生させればそれなりに圧力で物体が動くだろう、最初は力が弱いかも知れないが徐々に改良しよう」位の感覚だったが、いきなりモンスターなエンジンが誕生してしまった。
「魔石の起動により蒸気と一緒に込められた魔力も運動エネルギーになって倍じゃ済まない程のパワーが生まれたのです」
「それこそ魔石の分量や扱いを間違えると暴走して大爆発を起こす程にな」
「当初、私達が集めた連中もジェーンお姉様と同じように魔物化薬を服用させる予定でしたが、どうせならと暴走させて始末する事にしたのです」
「レモンの戦車も暴走させるのは俺の想定外だったけどな、勝手に改造して限界以上に魔石を積み込んでアレだ。さすがに背筋が凍ったぜ」
「あの手紙(※四十九話)を受け取った時、お二人がこの世を去ろうとしている事を知り、旦那様に助けていただけるようお願いした甲斐がありました」
梅酒をカパカパ飲んでいたメアリ姫が赤い顔で吠える。
「私が知りたいのは、そのナントカ機関が完成しているかどうかにゃにょにょ!」
「赤ちゃんの前で酒臭い息を吐くなよ。この席はソフトドリンクオンリーだ・・・。正直に言えば暴走する条件をもっと突き詰めて事故を無くさなければ完成とは言えないだろう」
「それで?実験は更に地下でなさってるのですね」
「まあ、半分オモチャみたいになってるがな」
◇ ◇ ◇
~魔導式蒸気機関実験場~
「オラオラ!ぶっ飛ばすでありますよ~!!」
「ひええん!あるじさま~~~。土臭い妖精がハンドル握ったら変になっちゃった~~~!!」
「どぅわっはっはっはっ!!!信じられるかこの“超重ザリガニ”のパゥワ~~~!!!ユグド最初のロボット軍団であります!!!」
「科学と魔術と情熱と土妖精のアンポンタン頭脳が交差して暴走が始まってるよ~~~!止めて止めてぇぇ~~~!!!」
岩場を模したフィールドをキャタピラが土煙を巻き上げながら所々に設置されたターゲットに向かってペイント弾を当てていく。
「ビンゴ!!であります。次弾装填急ぐであります」
「妖精使いの荒い妖精ね、私だからこんな乱暴操縦でも当てられてるのに」
「今度はマジックアーム射出であります」
「塔を登ってる最中にアームが外された時は死ぬかと思った。妖精じゃなかったら死んでたよ~」
「固定部分を過たず狙い撃つとは流石はマスターのライバルであります」
「そう言えば、マジックアームを小型化してあるじさまの装備にするて計画が・・・」
そんな話をしている最中、二人の妖精と様子を見ていた守鶴前は空間に異常を感知する。
『何じゃ!?空間が歪む?』
「これは・・・恐らく空間転移、推定十メートルの物体だ!」
妖精も見学している一同も目を見張った。
現れたのは白銀の甲冑を身に付けたような細身のロボットである。
ロボットから女の声が発せられた。
「ここは遠藤さんのお宅でお間違い無いですか?」
異様な登場をした謎の巨大ロボにしては普通の質問にずっこけそうになる。
「お前は何者でありますか!?」
「おっと、これは失礼。私は元・アルカナ銀河防衛軍ワイルド隊隊長で今は榊智様の愛人のミリミアでございます」
ロボの胸部がパカッと開き、中から未来的なピッチリスーツを着たロングのブロンドに水色のメッシュを入れた女性が出てきた。
『榊智じゃと!?』
「知っているのか御前様!?」
「う~ん、自分も何処かで聞いた事があるであります」
『人類最強カップル榊智と神楽暦・・・妾がこれまで出会ったあらゆる神仏妖怪変化や武人の中で最も強い二人じゃ!』
「神楽暦・・・あっ!一番最初の料理大会でマスターにボディーブローかました女の名前であります!」
『意外じゃの、あのカップルはハーレムとは無縁と思っておったが?』
「あれは数年前の事でした・・・」
「え?ここで回想シーン?」
「アルカナ銀河の恒星の一つに破滅怪獣ギラギラゴスが巣を作り始め銀河中の知的生命体の住む惑星を破壊し始めたのです」
「おっ、スーパー系っぽい導入」
「私は禁断のスーパードリームボックスステーション64型エンジンを搭載したこの特機ERG-18の性能にただ一人耐えられるパイロットとして・・・」
「ERG-18・・・エロゲー18と呼ぶであります」
「銀河連合艦隊はギラギラゴスの巣までたどり着いたけども巣の周辺には1000m級のギラギラゴス数百万体が守護する地獄でした」
『まだ続くのか?あっ、キミィちゃんジンジャーエールおかわり』
「エリンとミアの機体も撃破され残るは私一人、遂にギラギラゴス達の母体エンプレス・ギラギラゴスの前まで辿り着きました。私は時空さえ崩壊させる危険性がある必滅兵器スピルコンソーラを放ちましたが、何とエンプレス・ギラギラゴスは耐えきったのです」
「見た目リアル系、武器はスーパー系みたいな機体だ」
「そんな時、一隻の巨大宇宙船が現れ、生身の男が飛び出して来たのです。彼は惑星程のサイズもあるエンプレス・ギラギラゴスの前に立つと(宇宙空間なのに?)一睨み、何とそれだけでエンプレス・ギラギラゴスの破壊本能を完全に消し飛ばしてしまったのです。彼は撃墜された隊員達を救い出し、エンプレス・ギラギラゴスをペットにしたのです。助けられた私を中心とした女性隊員は彼と共に歩む道を選んだというわけです」
「あっ、やっと終わったでありますか?それでこちらへはどういったご用件でありますか?」
「夫殿のご友人が戦闘ロボットを造ったと聞き腕試しをしたくなったのです・・・ですが、見た感じあまりにも原始的過ぎてまともな勝負にはならなさそうですね」
その言葉にスプリングはキレちまった。実際にこの新型魔導戦車はアームが上下に腰部を左右に動かすのが精々の下半身キャタピラメカだ。それはそれでロマンとも言えるが、とても人型ロボットですとは言えないだろう。
「ムッキーであります。心までキラッ☆鋼で武装した空にそびえる因果を超えて魔を断つ僕らのヒーロー王がや~ってやるであります!」
「土妖精が暴走気味で意味分からないが、我も言われっぱなしと言うのは気分が悪い」
「であればやることは一つですね」
ミリミアがコックピットに飛び込みERG-18の瞳が輝く。
妖精二人もエンジンの出力を一段上げる。
「それでは超メカ対戦!」
「レディー!」
「ゴーであります!」
ERG-18は何もない空間から銃を取り出した。
「ご安心下さい、銃は訓練用のペイント弾です」
牽制の為かERG-18は録に狙いも定めず弾をばらまく、その弾の一発が偶然にも魔導戦車の横の岩石に当たった瞬間、岩石がバラバラに砕け散った。
「ふぇぇぇ!ペイント弾だって言ってたのに」
「実弾とは卑怯であります!」
「?ちゃんとアルカナ銀河星間統一規格のペイント弾ですよ」
よく見れば確かに岩石の破片にはオレンジ色の液体が付着している。
「チクショウメー!反撃であります!!」
「そうは言ってもこちらは発射方向がかなり限定される!向きを合わせろ」
砲身から風魔法で弾を撃ち出すがERG-18にあっさりとかわされてしまう。
「あいつ今・・・」
「空中で真横に残像が残る速さで動いたであります!」
「こちらもお返しです!」
撃ち出されたペイント弾は貧弱な魔導戦車の右アームとキャタピラの左側を正確に撃ち抜いた。
「これで終りです」
沈黙する魔導戦車の中で妖精二人は苦々しい顔をする。
「チッ、ここまででありますか・・・」
「まさか、マスターの妻である我等が、たったこの程度で諦めると?」
「ふふ、そうでありましたな。本番は・・・」
「これからだ!」
『何をしておる!?』
実験場を監督していた守鶴前は魔導戦車の急激な魔力の高まりに二人がエンジンを暴走させた事を悟る。
『いや、暴走していない!?』
だが、膨れ上がった魔力は爆発する事無く限界ギリギリのまま安定している。
「センサーが高エネルギー反応を感知、原始的な蒸気機関でこれだけの出力を!?」
妖精二人は吼えた。
「行くであります!!」
「超・魔・変・形!!」
地中から金属の塊が飛び出し魔導戦車の各部にくっつく・・・いや、くっついてるように見えて若干の隙間を空けて浮かんでいた。
完成したその姿は正に鋼鉄の巨人。
「変形した・・・だと!?まさかタンク形態はカモフラージュ!?」
その四肢は完全に人間のように動いていた。
「でも速度はこちらが・・・ぐっ!?機体の動作が鈍い?まさか制御プログラムに干渉されてる?」
「“アレ”やるでありますよ」
「よくってよ」
鋼鉄の巨人は跳躍すると飛び蹴りのモーションに移行。
「超!」
「サンダー!」
「「蹴り~~~!!!」」
見事跳び蹴りがヒットした瞬間、何故か稲光のイメージ映像が流れる。
「ぐはぁ!!」
倒れたERG-18にペイント弾を直接押し付ける。
「「私達が地獄だ!!!」」
弾は割れ、中から塗料が溢れて鋼鉄の巨人の腕とERGー18のボディーを汚す。
「参りました。ペイント弾の撃ち合いからの何でも有りなんて・・・バカやってた訓練生の頃に戻ったみたいで楽しかったです」
そんな音声が機体越しに聞こえた。
ERG-18のボディーから光のオーラが放たれると塗料の汚れが一瞬で剥離する。
「智様の愛人は私達だけではありません。この惑星出身の者も一人居ます。いずれ彼女も挨拶に伺う事でしょう」
ERG-18は鋼鉄の巨人を見据えた。
「パイロットのお二方、素敵な時間をありがとうございます。機会があれば次は宇宙空間でのバトルを楽しみましょう」
そしてERG-18は来た時同様空間転移で消えてしまった。
『お主ら、勝った気でいるみたいじゃが妾に言わせれば反則負けじゃからな』
「ありゃ、バレてたでありますか」
「でもでも、相手が気付かなかったんだから良いと思うの」
つまりあれは変形では無かったのだ。
エンジンの出力を上げて発生したエネルギーを妖精達が吸収しパワーアップ。
地中から四肢に加工した魔法金属を召還、関節の機構なんて作れるワケも無いから風魔法で浮かして可動してるように見せ掛ける。
ついでに空間魔法で相手の動きを止めてトドメ。
「あいつ宇宙で戦いたいと言ってたであります」
「良き強敵を得た気分だ」
『妾としては榊の愛人にこの星の出身が居ると言うのが少し気になるがな』
「それより無茶な魔力吸収したから身体が火照って疼くであります。宇宙用のロボットを作る前にマスターに天上まで絶頂させてもらうであります。お前も付き合えであります」
「ふええ!?ちょっと引っ張らないでよ~~~」
そろそろ地母神ルブランの祝祭が迫る慌ただしい廊下を飛んで行く妖精二人であった。
年内に出来ればもう一話、頑張ります。




