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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

人工物の悩み。

作者: 猫依颯

 学会は無事終了した。

 アンドロイドであることを示すラバースーツを脱ぎ、衣服を身につけると漸く肩の力が抜けた気がする。学会では、俺は人格(アンドロイドにそんなものがあるのなら、だが)を否定された、ただの一個の物体と化すからだ。

 クレスタはそれを嫌って、俺を創り上げた後に表舞台から姿を消した。それでも年に数度か、こうして俺を伴って参加せざるを得ない。

 俺は別に構わない。人工物であり、その所有者がクレスタである以上、彼が俺をどう扱おうがそれは彼の自由だ。息苦しく、肩が凝るのは確かだが。時折腹立たしいのも。


「アドニスだけ強制するなんておかしいって、云ってきた」

 夕食の席で、学会後からずっと黙りを続けていたクレスタが口を開いた。

「強制? 何のことだ」

「服を着るなって、あれのことだよ」

「ああ……それは仕方ないんじゃないか? お前の腕が良すぎる所為だし」

 俺は衣服を身につけていれば人間と全く区別がつかない。発声は滑らか、瞬きもするし表情もある、その上呼吸まで備わっているからだ。

 だが俺が知る限りでは、第二の俺と云える個体は未だに完成していない。まあ俺一体を創り上げる為にクレスタ達は10年近く掛けたそうだから仕方ないのかも知れないが。

「本当に全裸で、って話もあったんだろ? それに比べたらずっとマシさ」

 クレスタは何を考えていたのか知らないが、俺にはそれなりに立派な生殖器までついている。残す遺伝子こそないが、排泄以外でもきちんと機能するものが。

 向こうにもそれを知る人物が居たのと、クレスタが断固拒否したのとで、薄皮一枚身に纏うことを許された。身体機能も低下させられるのは、素手で人を縊り殺せるだけの能力があるから。

「それより、プロジェクトが凍結するっていう話だったけど、どうするんだ?」

「ん……」

 俺の問いかけには曖昧な笑みを浮かべるだけで、クレスタは何も答えなかった。



 俺は、知ってしまった。

 限界まで機能停止した俺を見下ろして、数名の研究者が話していたから。

『本当に似ているな、ディース博士に』

『その為にデスマスクはおろか全身の型まで取ったって話だからな、当たり前だろ』

『クレスタ博士の執着には頭が下がるぜ。本人は嫁さんがいて振り向いてくれなかったからって国を挙げて代替品を創っちまうんだからな』

『で、創り上げたらプロジェクトはポイ、だろ? そりゃ上層部から睨まれる訳だよ』

『まあそれでも、あの優秀さを手放すのは惜しい、か。羨ましい話だぜ全く』

『プロジェクトを凍結させて援助を切られたくなければ、新たな開発に着手しろ、だもんな』


 記憶代わりのデータベースにアクセスする。該当1件。

 俺が創り出される丁度11年前に他界した、人工知能のスペシャリスト。クレスタの人工知能分野の師でもある――そこまで確認して、俺はアクセスを切った。

短編ですが微妙に続き物っぽく。


数年…十数年振りに彼らを書いたが、意外とすんなり動くので驚いた。

書きながら色々と細部を再構築。

いつもだいたいこんな感じ。だから途中で破綻するし完結もしないのだが。

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― 新着の感想 ―
[一言] 明らかに続き物じゃないですかーv 強要するわけじゃないです(!)が、楽しみにしつつこっそりとお待ちしています。
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