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緋色の波涛  作者: ELYSION
第1章 開戦
7/10

第5話 6隻の戦艦

12月28日 題名を「真珠湾攻撃(3)」から変更しました。

ほぼ同じ時刻、異なる場所で、3機の日本機が着陸した。

1機は空母『天城』から発艦し、真珠湾攻撃を終えて帰還した淵田中佐搭乗の97式艦攻であったが、

残りの2機について、これから記してみる。



史実と同じく軽空母である『龍驤(りゅうじょう)』に着艦したのは、一式艦上偵察機だ。

この機体、史実の艦上爆撃機「彗星」にそっくりの外観をしていた。

それもそのはずで、この世界でも99式艦上爆撃機の後継となる「彗星」の量産試作機を、

一式艦上偵察機として先行運用していたのである。(史実でも「彗星」偵察型を二式艦偵として運用)

小型である同機は、軽空母でスペースが少ない『龍驤』には、うってつけの機体であると言える。

「戻って来おったのう・・・」

この艦に宿りし艦魂である龍驤は、飛行甲板の片隅から眺めながら呟いた。

『龍驤』は、『天城』や『赤城』、当初から空母として建造された艦としては世界最初である『鳳翔』、

ドイツ戦艦『オルデンブルク』改装の『淡路』と並び、空母としては古参である。

当然艦魂の龍驤もそれ相応の歳を重ねているはずであるが、

軽空母の艦魂ゆえにか小柄で、露わにしている身体は、まるで少女の如き幼さがあった。

そのくせ喋り方がやたら年寄じみているのは、自分の容姿に対する反発だともとれる。

エレベーターが下がり、一式艦偵が艦内に収納される。

それと入れ替わるかの様に、今度は零戦が上がってきて、甲板上に並べられる。

「これからが本番じゃ」

幼き姿の龍驤は、零戦の列を見ながら頷く。


『龍驤』は、山本司令長官が直卒する5隻の戦艦『大和』『加賀』『土佐』『長門』『陸奥』から成る精鋭、

第一戦隊の後方に離れて随航している。

役割は、この第一戦隊目指して攻撃を仕掛けて来る敵機を、艦載機でもって迎撃する事だ。

その為、先の一式艦偵数機を除けば、艦載機は零戦-零式艦上戦闘機で占められているのが特徴だ。

これは小型艦ゆえ、発艦に必要な長い飛行甲板を求める雷撃機(97式艦攻など)の運用が難しい

同艦ならではであり、艦隊随航の護衛空母を目指したものである。

この5隻の戦艦プラス『龍驤』の脇を固めるのが、阿武隈級防空巡洋艦(分類上は軽巡洋艦)

二番艦『阿賀野』率いる2個駆逐隊によって編成される秋月級防空駆逐艦10隻である。

纏めれば以下の通り。


単独旗艦・戦艦『大和』

第一戦隊・戦艦『加賀』『土佐』『長門』『陸奥』

第二防空戦隊

・旗艦 防空巡洋艦『阿賀野(あがの)

・第23駆逐隊 駆逐艦『宵月(よいづき)』『満月(みちづき)』『花月(はなつき)』『清月(きよづき)』『葉月(はづき)

・第24駆逐隊 駆逐艦『山月(やまづき)』『浦月(うらづき)』『大月(おおつき)』『夕月(ゆうづき)』『磯月(いそづき)

空母『龍驤』(零戦30機)


この一個艦隊を持って、

まずは来襲するであろう敵航空隊を『龍驤』の艦載機と各艦の対空兵器によって排除・壊滅。

次に、ミッドウェイまで接近、五戦艦の艦砲射撃で敵基地を無力化。

しかる後に、遅れてやってくる別動の上陸部隊によって占領。

以上が、ミッドウェイ攻略の概要である。

しかし、先ほどの一式艦偵によって得た情報によって、この概要に大きな変更は無いものの、

修正作業の必要に迫られていた。


「戦艦が6隻居るって?」

山本は驚きの声を上げる。

「はい、(クラス)までは不明ですが、確かに6隻と。

おそらく真珠湾の太平洋艦隊所属艦10隻の内の6隻が分派して、此処に居るのでしょう」

宇垣参謀長は、この様な時でも淡々と話す。

「という事は、我々の真珠湾ならびにミッドウェイ攻略作戦は、連中に察知されていたのかね?」

「いえ、そこまで考えるのは早計かと。たまたま此処に居るだけかもしれませんし」

「いずれにしても、我が艦隊はその6隻と(やいば)を交える事になるね」

「そうなります」

「その場合の勝算は?」

「最悪その6隻の中にサウスダコタ級2隻、コロラド級2隻、4隻の40cm砲搭載艦が含まれるとしても、

我が方の5隻は全て40cm砲以上を搭載しています。

加えて連中の戦艦は脚が遅い。アドバンテージは確実に我が方にあります。

5隻対6隻という数の上での劣勢は何ら不利になるとは考えられません」

「うむ。そうだな。しかし我々はまず、連中の航空機とやり合わないといけない。勝負はそれからだ」


「6隻の戦艦ですか・・・」

艦魂担当官・鈴木維夢少佐の元に集まった、大和とはじめとする艦魂たちも又、驚きを隠せなかった。

「ええ、その中に現時点でアメリカ最強艦とされる、サウスダコタ級が含まれているか不明だけど」

重々しい空気が流れる中、いきなり土佐が言い放つ。

「ぼっちり(丁度)良かったが!

ミッドウェイば、しゃっちみち(わざわざ)行って、艦砲射撃ばあ(だけ)じゃー退屈じゃったきね!

あしらぁ(私たち)軍船(いくさぶね)の艦魂ちや。相手とするにゃ不足しやーせんよ」

「・・・たしかにそうだ。サウスダコタ級であれば、私や土佐と同じ「偉大なる6隻(グレート・シックス)」の一つ。

相手とするに不足は無い・・・」

「ていうと、陸奥、私たちの相手は、さしずめコロラド級って事になるかな?」

「そうなりますね。姉さん」

土佐に始まり、加賀、長門、陸奥が次々明るく言うのを聞いて、戸惑いがちだった大和も次第に和んでくる。

維夢はそんな彼女の露わな肩に手を添えると言う。

「大丈夫。貴方が宿りし艦以上のものはアメリカだって持っていない。貴方の力、見せ付けてやりなさい」

維夢はそう励ましてから、彼女たち全員を見渡し、

「でも、みんな。その前に敵航空機による空襲が予想されるわ。対空兵装の準備は万端にね」

続いて彼女は、戦艦の艦魂たちの脇に控える、もう一人の艦魂を見た。

はち切れんばかりの体躯を誇る戦艦の艦魂たちの中にあっては、随分貧弱には見えるが、

スレンダーながらも整った裸身を晒す彼女は、防空巡洋艦『阿賀野』の艦魂である。

真珠湾攻撃に向った6隻の空母を護衛している阿武隈の妹に当たる。

彼女は維夢から一瞥されただけで、言わんとしている事が解った様だ。

「大丈夫です。敵機についての対処は任せて下さい」

阿賀野は控えめながらも力強く言う。

「龍驤は大丈夫かしら?」

「はい。配下の花月、清月、大月、夕月が護衛に付いておりますから」

本隊の後方を航行している龍驤たちは、艦魂の転移出来る範囲を越えており、集まりに参加出来ないのだ。

「解ったわ。みんな、くれぐれも頼んだわよ!」

維夢が激励して締め括った。



そして、三機目が着陸した場所は、トラック諸島のうち、夏島の飛行場である。

大日本帝国海軍の一大拠点が形成されつつある、此処トラック諸島。

降り立った機体は、双発のスリムなものであった。一式陸上偵察機「爽雲(そううん)」という。

先の一式艦偵が「彗星」にそっくりなのと同様に、この「爽雲」も又、陸軍の100式司令部偵察機と瓜二つだ。

実際そうなのである。あの史実で「ビルマの通り魔」と称された同機と。

100式司偵の高速性に注目した海軍が、自軍用にも「爽雲」と名付けて採用しているのである。

その「爽雲」のもたらした情報に、このトラック諸島の海軍基地は色めきだす。

空母4隻を中核と成すアメリカの機動部隊が接近中との情報だったのだ。

この世界における真珠湾攻撃は、クリスマスイヴである24日に行われた事としてますので、

それに倣って投稿させていただきます。

そう言いながら、今回は真珠湾攻撃の話じゃないんですよね。駄目じゃんorz

読んでいただければ解ると思いますが、同日に三つの戦域が舞台となり、各話のタイトルも、

もはや真珠湾攻撃ではなくなってきてます。

ですから、一通り終わったらタイトルも変更しますね。

最初からですと、ネタバレにもなりかねないので、フェイクなタイトルですみません。

(前書きの通り、12月28日に変更しました)



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